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ボクのおばさんは忙しい  作者: 銀杏玲
16/19

備忘録の16

 夏休み。

 おばさんと神社に行く。

 五円玉を投げ入れ、手を合わせる。

 「神様、どうか、どうか…」

 おばさんとボクは同じことを願っている。

 神社から十分ほどのコンビニでお弁当を三つ買う。

 「あとシール三枚だね」

 シールが二十五枚たまると、一枚の絵皿がもらえる。

 お弁当をもち、コンビニ横の坂道を歩いて繊維問屋へ向かう。

 「ご苦労さま、暑かったでしょ」

 玄関で、ばあちゃんと、水槽の金魚がボクたちを出迎える。

 おばさんとボクはスリッパを履いて、いつも事務室横の応接室に入る。

 革張りのおっきいソファでおばさん、ばあちゃんとお弁当を食べる。食後は、会長さんがお菓子をもってきてくれる。

 「これもよかったら、食べてね」

 三十分くらいゆっくりごはんを食べた後、たまにモップがけのお手伝いをする。

 ツルツルした床にスーッとオレンジ色のモップを滑らせるのがちょっと好きだった。

 「じゃあ、もうそろそろ行くか」

 「うん」

 ボクのモップ遊びが終わると、おばさんとともに「じゃ、行ってくるね」とばあちゃんに声をかけて、繊維問屋を出る。

 坂道を国道へ向かって、二、三分歩いたところに、病院がある。

 「あ~。生き返る」

 クーラーのきいた病院のエントランスは涼しい。

 「いるかな」

 「今日は検査ないから、いると思うよ」

 いつものエレベーターの中での会話。

 看護ステーションの看護師さんたちに「こんにちは」と言って、西側、つきあたりの個室へ行く。

 ドアを開けて、カーテンからヒョイと顔を見せると「お~、ご苦労様さん」とじいちゃんが出迎える。

 だいたいじいちゃんはグルメ番組を見ている。

 「またそんなの見て、なおさらストレスたまるでしょ」

 「見るだけでムっと胸焼けするからちょうどいいんだ」

 じいちゃんとおばさんは決まって、そんな会話をする。

 「今日は、なに、うまいもの食ってきたのよ」

 じいちゃんのお昼ごはん確認がいつもある。

 「ボクはあんかけ焼きそばで、おばさんは冷たいそば。あとシール三枚でたまるの」

 「そんな皿ばっかりためてどうすんのよ」

 じいちゃんはあきれているように見せながら、ボクのシール集めの進捗状況を確認する。

 「じいちゃん、また明日ね」

 おばさんが、着替えやティッシュを補充し、一休みしてから、また繊維問屋に戻る。

 「社長元気そうだったかい?」

 会長さんがいう。

 ばあちゃんも「じいちゃん今日はどうだった?」と聞く。

 「またねぇ、グルメ番組見てんのさ。こっちもグっとくるからやめてほしんだよね」

 春休み、夏休み、冬休み。

 ボクは一年で二枚の絵皿をためた。

 それが三年続いて五枚。

 小学五年生の冬休み前に絵皿集めは終わった。

 じいちゃんは、たぶんおいしいごはんを食べられるようになった。

 辛くて悲しいけど、ほんのちょっと安心した。


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