備忘録の15
ボクが小学生くらいのとき、遊びといえば、同じ市営住宅に住む同年代の子たちと、外で鬼ごっこをしたり、市営住宅敷地内の公園にあるブランコや鉄棒で遊んだり、自転車に乗って近くの公園までサイクリングしたりする、「外遊び」が中心だった。
とくにあらかじめ約束をするわけでもなく、市営住宅4階の窓から、外を見て、誰かがいたら、家を飛び出していくのがボクが住んでいた市営住宅のみんなのスタイル。
ただそんな市営住宅での外遊びも、春休み、夏休み、冬休み期間中は「休業」する。
なぜなら、ボクがばあちゃんちにずっと滞在するからだ。
ばあちゃんちに滞在中は、友達とはまったく遊ばなくても、
友達との遊びの楽しさを上回る日常が繰り広げられる。
例えば、ドーナツ作り。
ばあちゃんちに滞在中、必ずばあちゃんと一緒に早朝からドーナツ作りをする。
ただ、ドーナツと言っても、あのおなじみのチェーン店のようなフワフワドーナツではない。
噛めば噛むほど味が出る、結構固めのドーナツだ。
最初は、サクッと歯が入るが、そのあとは弾力のある固い生地の抵抗を受ける。
材料はシンプル。
ベーキングパウダー、小麦粉、砂糖、水のみ。
分量はテキトー。
とりあえず材料をすべて混ぜる。
そして、こねる。
ボクとばあちゃんが交代しながら、ひたすら、ただひたすらこねる。
ばあちゃんがこねているとき、ボクは、生地を伸ばす木の棒を食卓テーブルのへりに叩きつけながら、
「ばあちゃんガンバレ、ばあちゃんガンバレ」と声援を生地に送り込む。
あとは生地を丸めて放置。
その後、生地を伸ばして、コップの口を生地に押し付け、丸型の生地をたくさん作り、日本酒のおちょこの口をその丸型生地に押し付けると輪っかになった生地ができあがる。
これを高温の油で揚げると完成。
昔ながらの、噛み応えのある揚げドーナツは、味のしない固い揚げパンなのだが、なぜがもう一回食べてみたくなる不思議な無味のお菓子。
そんなドーナツをばあちゃんとボクが食べていると、だいたいおばさんは、朝、微妙な顔で起きてくる。
その理由はふたつ。
1、ボクが木の棒を食卓テーブルのへりに叩きつける音で、心地よくない目覚め方をする。
2、大量に作られる、その無味の固いドーナツを食べたくない。
おばさんの朝は、なかなか快適にはならない。




