備忘録の13
冬休みを港町のばあちゃんちで過ごしていた小学生のボクは、午前中から、よくおばさんと地元の商店街へ買い物に出かけていた。
街中をぐるぐる回るバスに乗って、商店街前で降りる。
そして、少し歩いて、まずは商店街近くにある地元デパート3階のゲームセンターに行く。
ボクがばあちゃんからもらったお小遣いで遊んでいるあいだ、おばさんは掘り出し物を探しに、エスカレーターで行ったり来たり、売り場をぶらつく。
デパートのゲームセンターと言っても、港町のデパートなので、そんなに立派なものではない。
こじんまりした街のゲーセンだ。
ボクが遊ぶゲームは決まっている。
三角形のくじをすくうクレーンゲームだ。
A賞、B賞・・・といったように当たりくじがあり、アルファベットのAに近いほど、大きいお菓子がもらえる。ハズレはなく、最低でも10円で売っているあの人気のお菓子がもらえる。
千円札片手にこれに10回挑戦する。小学生のボクの何よりの楽しみだ。
10回の挑戦を終えると、いつも10円のお菓子がたくさん入った袋を片手にしているのだが、そんな悲しいときは、様子を見に来たおばさんが、参戦してくれる。
掘り出し物を買っているのに、この参戦で、だいたい掘り出し物は、掘り出し物ではなくなるのが、ボクとおばさんの冬休みの定跡。
そんなこんなで昼になると、いつも商店街近くの蕎麦屋さんか商店街内にあるラーメン屋さんに行く。
どちらも地元民なじみにお店。
蕎麦屋さんに行くと、更科のもりそばを頼んで、ラーメン家さんに行くと、しょうゆラーメンか、チャーハン、たまにあんかけ焼きそばを食べる。めっちゃおいしい。
お腹を満たすと、ボクの大好物のあれを、食べに行く。むしろ、これが一番の目的だ。
目的地は、商店街内にある喫茶店の2階。
小学生なのでもちろん、コーヒーでも紅茶でもない。
「クリームソーダ」だ。
そして一番重要なのが、「オレンジ」のクリームソーダということ。
かき氷のオレンジシロップをソーダで割ったオレンジソーダにくるくると濃厚なずっしり固めのソフトクリームがのっかっている。
これをおばさんはご馳走してくれる。
ちなみにおばさんは、「ソフトクリーム」を頼む。
ボクはひたすら、オレンジソーダにのっかったソフトクリームを、まずはソフトクリームとして、食べてから、第2段階として、オレンジソーダに浸かったとろとろソフト部分を食べる。
とろとろソフト部分を制覇したころには、オレンジソーダにクリームが溶け込んで「オレンジミルクソーダ」になる。
それが第3段階なのだが、ここまでくるとボクは悲しい気持ちになる。
なので、ボクのおばさんは、自分が頼んだ「ソフトクリーム」からスプーン2、3杯を「オレンジミルクソーダ」の上にのっけて、過ぎ去った第1段階に戻してくれるのだ。
そうしてボクは、一杯500円のクリームソーダを2度楽しんでから、ばあちゃんちに帰るのである。




