第73話 新たなメンバーを向かえて、初配信
「皆さんこんにちは! ギルド《黄金の太陽》の配信、今日も元気にやっていこうと思います!」
よく晴れた日。
ゴーシュたちのギルドの外に、ミズリーの明るい声が響いていた。
配信開始の挨拶が行われ、今日も多くのリスナーが集まっていく。
いつも通りの光景とは少し変わっていて、今日は四人による配信となっていた。
「昨日の配信でご存知の方も多いと思いますが、私たちに新しい仲間が加わりました。じゃじゃん! 新しくギルドに加入したパルクゥさんです!」
「刮目するといいわ! 私が天才魔女、パルクゥ・アライアよ!」
ミズリーに紹介され、パルクゥが意気揚々と挨拶する。
なかなかにハイテンションであり、集まったリスナーも興奮気味の様子だった。
【待ってました!】
【パルクゥさん、ギルド加入おめでとうございますですわ~!】
【残念系ポンコツツンデレ天才魔法少女の方でしたっけ?】
【魔法使いキター!】
【四人になったかあ。最初の頃ゴーシュさんとミズリーちゃんが二人で配信してた頃が懐かしいぜ】
【感慨深いでござるな。拙者が初めてゴーシュ殿を見たのは別の者が行ってたナンパ配信の時でござる】
【そういえば女性陣多いな。そのうち男性メンバーも入るとかある?】
【この前の選考会はパルクゥが圧倒的だったからな。そのうちあるんじゃね?】
【ゴーシュさんとはまた違う感じの渋いおっさんとか……。いいな】
【配信ギルドだからな。雰囲気崩れないなら色んなメンバー見てみたい気もする】
【なおギルド結成からまだ一年経ってない模様】
【すげぇw】
【配信ギルドとして大躍進すぎるだろw】
【このギルドは最初から凄かったけどな】
【ミズリーちゃんが告知幕を逆さで出してたのが懐かしい……いや、今もやってたわw】
【草】
【パルクゥのメンバースレッド勢いヤバいらしいな】
【↑もう10スレ突破してたわw】
【加入して最初の配信前に10スレ突破はおかしいですよw】
【キャラ濃すぎるもんこの子w】
「フッフッフ。どうやらみんな私に注目しているようね。いいわ! これからこの私の活躍をたくさん見せてあげるから、期待していなさい!」
得意げな笑みを浮かべて宣言するパルクゥ。
そこだけ見ればカッコよくもあるのだが、コメント欄では「ポンコツムーブ期待してます!」などというコメントが流れている。
「パルクゥ、ノリノリ。昨日の夜、すっごく頑張ってあいさつ考えてたもんね」
「ロコ、それは言わないであげた方が……」
脇に控えていたロコとゴーシュのやり取りだったが、しっかりと配信に拾われており、リスナーたちは期待を裏切らないなと盛り上がっていた。
と、パルクゥの被っている魔女帽子がもぞもぞと動き出し、唐突に喋りだした。
喋る帽子であり、パルクゥの使い魔でもあるギギである。
「クックック。歓迎されてるみてえだなぁ、ご主人。どれ、オレ様も一つ、イケボで挨拶するとして――」
「ミズリー。次いっていいわよ」
「おい、そりゃねえだろパルクゥ! せっかくこのギギ様が喋ってやろうってんだぞ!」
「アンタが喋りだしたら収集つかなくなるでしょうが! 第一使い魔が目立とうとしなくていいってば!」
「なにおぅ!」
「なによ!」
既に収集がつかなくなっているんじゃないかと思いつつも、ミズリーは喧嘩を始めた両者の間に入ることにした。
「まあまあ、落ち着いて。ギギさんに関してなんですが、実はリスナーの方たちからも質問がいくつか来てまして。きっと盛り上がると思いますので、ギギさんにはまた別枠でお話してもらおうかなと思ってるんですが、どうでしょう?」
「お、マジ? そっかぁ、オレ様に質問が来てんのかぁ。まあミズリーちゃんが言うならしょうがねえなぁ、うん。そうだなぁ、今日は大人しくしといてやるかぁ」
「え……。何その態度。自分の使い魔なのに初めて見るんですけど……」
「あはは……」
どうやらミズリーに対してこの喋る帽子は思いっきり下手に出るらしい。
急にデレデレとしだしたギギに、パルクゥは若干引いていた。
「それでは切り替えて。今日の配信の内容をお伝えしましょう。今日はパルクゥさん加入後初の配信ということもあるのでバッチリな企画を立ててみました! ズバリ、『ルームツアー』です!」
【え? 大剣オジサンたちのギルドが見られるの?】
【お部屋紹介とな!?】
【今まで配信でちょこちょこ映ってはいたけどちゃんと見られるのは初めてかも】
【前に料理配信とかでチラッと見えてたね】
【確かにこのギルド、色んな設備がある気がする】
【気になりますわ~! 楽しみですわ~!】
「そういえば私が来た時には最低限の紹介しかされなかったわね。あれはこの配信をするためか」
「パルクゥさんの新鮮なリアクションも欲しいですからね。それでは早速行ってみましょう!」
ミズリーが元気よく言って、ゴーシュたちはギルドの裏手へと向かう。
「まずこちら! ゴーシュさんがお野菜を育てている畑ですね!」
配信画面に映し出されたのは家庭菜園用の畑……と呼ぶには少し広すぎた。
そこは小さな農場と言って差し支えなく、さながらゴーシュのゴーシュによるゴーシュのための場所だった。
「こ、これは……! ゴーシュさんが前に配信で話していたあまあまトマト! こっちにはしゃきしゃきキャベツやこりこりゴボウもあるわ! ああ、配信画面を通して見ていた野菜の数々が生で見れるなんて」
「生野菜ってか?」
「ギギは黙ってて」
ギギのギャグに突っ込むのもほどほどに、パルクゥはキラキラとした目を畑に向ける。
どうやらパルクゥにとってはかなり興味深い場所のようだ。
「そういえばパルクゥさんはゴーシュさんの配信ファンなんでしたね」
「ハハハ、そんなに見てくれていたとは。ちょっと恥ずかしいが嬉しいな」
「ゴーシュさん、その……もし良かったら今度野菜を食べさせてもらっても……」
「ああ、もちろんだ。というかミズリーやロコには毎日のように食べてもらってるよ」
「ししょーのお野菜おいしいよ。でもにがにがピーマンは苦手」
「こ……このギルドは天国だわ!」
【パルクゥ、表情豊かだなw】
【これが限界化ってやつか】
【私もゴーシュおじ様のお野菜食べてみたいですわ~!】
【そういえばこの人元農家なんよなw】
【忘れてたわw】
【それにしても種類が豊富w】
まだ最初の場所にもかかわらず、パルクゥは大層ご満悦だった。
普段の少し偉そうな態度ともまた違って、無邪気な子供のようである。
「では次ですね。ここは使ってなかった場所なので初公開のはずかと。中に入ってみましょう」
ゴーシュたちの前にあったのは小屋とも少し違う、煙突尽きのこじんまりとした建物だった。
ミズリーが軋んだ扉を開くと、暗い室内が配信画面に映し出される。
【これは何だ?】
【倉庫? とも少し違う感じがするが】
【炉があるな】
【あ、分かった。これ工房じゃね? 鍛冶師の人とかが使ってる設備っぽいもん】
「工房と答えた方、正解です! ここはギルド協会に紹介してもらった場所なんですが、この建物は元からあったんですよね。どうやら前に使っていたギルドに鍛冶師さんがいたらしく、作ったものなんだとか」
「残念ながら俺たちのギルドだと使う人がいないからな。余ってる状態だけど」
「クモの巣たくさん。ほこりもどっさり」
「いずれは鍛冶師さんなんかもギルドに入ってほしいですね。最近、自分たちで大工作業しながら家を改築する配信が流行ってるらしいですし、本職の人がいたらここで武器とかも作ってもらえそうです」
とりあえず簡単にするかと、ゴーシュたちはざっと工房の内部を紹介する。
と、工房の中を観察していたパルクゥが口を開いた。
「ゴーシュさん。ここ、使ってないんだったら私の研究部屋にしてもいい? 掃除さえすれば設備もいいものが揃ってるし、薬の調合をしたりするのに使えそうだわ」
「なるほど、パルクゥなら確かに使えるかもな。俺は問題ないぞ」
「おおー。薬の調合っていうとまさに魔女っぽいですね。私ももちろん賛成です」
「ちなみに薬ってどんなの? おっきなドラゴンに変身したりする?」
「そんなことできないわよ。まあでも、一時的に浮いたりとか、爆発する薬とかだったら作れるわね」
「なにそれすごい」
さらっととんでもないことを言うパルクゥに、ロコは好奇心から獣耳をピンと立てる。
ゴーシュはあまり危険なものは作らないようにと苦笑して、一方でミズリーは魔法アイテムの配信をやったら絶対に盛り上がるだろうな、などと考えていた。
それからゴーシュたちはパルクゥへの紹介も兼ねて屋外の設備を回っていく。
以前ゴーシュとロコが作ったプールなどもあったりして、パルクゥもリスナーもその充実ぶりに驚いていた。
そうしてギルド内部の紹介に移ろうとした、その時だった。
「あ、パルクゥさん、待っ――」
「へ?」
パルクゥが玄関の扉に手をかけようとして、ミズリーが慌てて止めようとする。
制止が間に合わずパルクゥが扉の取手に触れると、その現象は起こった。
「ボェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」
それは悲鳴か、叫び声か、断末魔か。
とにかく形容し難い大音量が扉の上部から発せられ、辺り一帯に響き渡ったのだった。
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