第70話 大剣オジサンによる最終面接
「うぅ……。恥ずかしい……」
二次試験が終わった後のこと。
先程の醜態が頭から離れず、ミズリーの紅潮はなかなか収まらなかった。
「……? ミズリー、前にタオル一枚でギルド走り回ってなかった? あっちの方が恥ずかしくない?」
「ろ、ロコちゃん、それは今話題にあげないでおきましょう」
ロコの無邪気な質問がミズリーをずぷりと突き刺す。
もし穴を即座に開けられる魔法があるとしたら、今のミズリーにはさぞかし需要があるに違いない。
「フフフ。何はともあれ、これで二次試験も突破よね? さっすが私!」
魔女帽子の奥で、パルクゥが満面のドヤ顔をキメる。
配信の映えを狙ってやっているわけではなく、それはあくまでパルクゥの素なのだろう。
登場からずっと印象的なパルクゥの姿を見て、リスナーたちも熱狂している様子だった。
【二次試験突破おめ!】
【この子めっちゃ生意気なんだけど、何故か嫌な気持ちにはならないなw】
【ポンコツでイジりがいあるし】
【こんな短時間で残念系魔法少女の称号が定着してるからな】
【キャラが強いw 推せるw】
【愛されるポンコツ、自称天才魔女、生意気でちょっぴりおバカ、絶望的な運動音痴、色んな意味で攻められると弱そう、でも魔法の実力は本物でカッコ可愛い】
【属性多すぎw】
【まとめ助かる】
【おい、誰だよフェアリーチューブの掲示板にパルクゥのスレ作った奴】
【ホントだ、もうあるw】
【まだ加入決まってないだろw】
【草】
【パルクゥちゃん二次試験突破おめ!】
【次は三次試験ですわね。ゴーシュのおじ様が出すのでしょうか?】
【加入試験の配信がこんなに面白いギルドある?】
【同時接続数:910,334】
「コホン。とにかく今は切り替えないとですね。最後の試験はゴーシュさんの予定ですが、どうしましょうか?」
何とか落ち着きを取り戻したミズリーがゴーシュに声をかける。
ロコも集まり、《黄金の太陽》の面々は一旦、話し合うことにした。
「どうしましょうか、ってことはミズリーも考えていることは同じみたいだな」
「あ、ゴーシュさんも?」
ミズリーの問いに対してゴーシュははっきりと頷く。
ロコが行った一次試験の時といい、ミズリーが二次試験といい、パルクゥは申し分ない結果を打ち出していた。
身体能力……とりわけ運動神経は難ありのようだったが、戦闘面においてパルクゥの実力は証明されたようなものだ。
そもそも今回の新規メンバー募集は、来る精霊祭の中で行われる大狩猟イベントの参加資格を満たすためのものだ。
ずば抜けた能力を持つゴーシュたちと比べても、パルクゥの扱う魔法は一級品で優れた技能を持っていると言える。
これならば、最終の試験を行うまでもなく、今回まさに欲しい人材だった「それなりに戦える人」という条件を十分に満たしているだろう。
「しょーじき私もおんなじ意見。あの人すっごく強い。それに悪い人じゃないっぽいし。……お調子者な感じはあるけど」
「そうだな。自信家ではあるが、変に人を見下したりするようにも見えない」
「ゴーシュさんもそう思うなら、決まりですかね?」
「ただ、俺から確認しておきたいことがある。ちょっと本人と話してくるよ」
ゴーシュはギルドの面々と話した後、パルクゥの方へと歩を進める。
そして、少しだけ真剣な様子でパルクゥに問いかけることにした。
「パルクゥ、だったな。俺からいくつか聞きたいことがあるんだけど」
「フッフッフ。何でも答えるわよ」
【大剣オジサンの最終面接きちゃー】
【ん? 今、何でもって言った?】
【まず我がギルドを選んだ志望動機をお聞かせください】
【くっ……。この前別のとこの最終面接で落ちた俺に刺さる】
【↑ドンマイw】
【これをクリアしたらギルド加入が認められるかな?】
【ドキドキですわ~!】
【バトルとかじゃないけどこれはこれで気になる】
【この子、調子乗って変なこと答えそうw】
「まずそうだな。志望動機、って言ったら堅いけど、俺たちのギルドに入ろうと思った理由を教えてくれるか?」
「理由?」
「ああ。正直、君ほどの実力を持つ者なら引く手数多だろう。これまでどこかのギルドに属していたわけでもないみたいだし、どうして俺たちのギルドに、と思ってな」
「ん、と……。それはちょっと、プライバシーな問題っていうかぁ……」
「何でも答えるんじゃなかったのか……」
思いっきり言い淀むパルクゥに、ゴーシュはガクリと肩を落とす。
リスナーたちからもツッコミが入り、コメント欄は逆に盛り上がっていた。
「言いにくいことだとしても、これから同じギルドで仲間になるかもしれないからな。できれば答えてほしいんだが」
「分かってるけどぉ……」
魔女帽子のツバを降ろして顔を隠そうとするパルクゥ。
それまで自信ありげに振る舞ってきたのが打って変わって、という感じである。
どうしたものかと戸惑うゴーシュだったが、突然、高らかな笑いが響き渡った。
「ギャハハハハ! ゴーシュのおっさんよぅ、コイツが言えねえのも無理はねえさ!」
「へ?」
唐突に聞こえたその声に、ゴーシュだけでなくミズリーやロコ、リスナーたちも驚いた反応になる。
パルクゥの方から聞こえてきたが、明らかに口調が違う。
というより、ゴーシュの眼には信じ難いものが映っていた。
「帽子が……喋った……?」
そう――。
パルクゥが被っている大きめの魔女帽子。
そこにはニヤリと笑う謎の口が現れており、先程の声はそこから聞こえてきたものだった。





