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第65話 選考オーディション開始


 ゴーシュたちがギルドメンバー募集の配信を行ってから二日後――選考会を行う当日のこと。


 ギルドの二階から建物前に集まった者たちを見下ろし、ゴーシュたちは呆気に取られていた。


「お、多いな……」

「人がめちゃんこたくさん」


 大狩猟イベントに参戦する上での募集、という名目だったからか。

 そこに集まっていたのは、戦闘経験がそれなりにありそうな者たちだった。


 いかにも「俺は斧を使えるぜ!」といった戦士風の男から、「後方支援は任せてください!」といった感じの修道服を着た女性、「自分の肉体こそが武器だ!」といわんばかりに筋骨隆々の武闘家などなど。


 いわゆる腕に覚えのありそうな者たちの集まりといった感じなのだが、一つ問題があった。


 選考会に集まった応募者たちの人数は、ゆうに百を超えていたのだ。


 ゴーシュたちのギルドの庭はそれなりに広いのだが、それを埋め尽くすほどの人だかりである。


「ミズリー、ちゃんと少なくした? おーぼしてきた人全員集まってない?」

「し、しましたしました。これでも10分の1とかにはなってるんです。ゴーシュさんにサインほしいとか、ロコちゃんにおやつをあげたいとか、興味本位っぽい人は丁重にお断りしたので」

「うーん。そうなると、そもそもの人数が多すぎた問題」

「俺たちのギルドに興味を持ってくれるのはありがたいが、ここまで大勢だと収まりきらないな」


 選考会を実施するにあたり、事前にミズリーが応募者の選定を行っていたのだが、それでもこの人数になっていた。

 ゴーシュたちが思っている以上に、今の《黄金の太陽》は注目度が高いということらしい。


 選考会では各々の戦闘技能なども確認するための試験を行う予定だったのだが、これでは明らかにスペースが足りていない。


 結局ゴーシュたちは場所の変更を告げ、王都の外れにある岩場地帯へと移動することになった。


   ***


「はいはーい! 皆さん、本日は私たちの選考会にお集まりいただきありがとうございます! それでは、ゴーシュさんから挨拶を!」

「ええと、俺自身こういうのは初めてなので緊張してますが、今日はよろしくお願いします。あ、あとその、移動させちゃったりしてすみません。今日の流れなんですが――」


 王都外れの岩場に移動したゴーシュたちは、応募者たちに簡単な挨拶を行っていた。

 ゴーシュはやたらと腰が低い感じで説明していたが、こういうのもゴーシュらしいというべきか。


 一方で応募者たちは整列して聞いていたのだが、大人しくとはいかなかったようだ。


 配信画面を通してではなく、実際のゴーシュたちを前にしたこともあってか、そこかしこからざわつく声が聞こえてくる。


「大剣おじさん、やっぱり体格いいなぁ」

「あんなにデカい大剣をいつも振り回してたのか。恐るべし……」

「ロコちゃんがすっごくカワイイ~! 尻尾フリフリしてるのとかたまんない! お持ち帰りしたいくらい!」

「な、な、生のミズリーちゃんが破壊力ヤベェ……」


 ゴーシュたちの配信を普段から見ている者たちだけに、それぞれの推しもいるようで、興奮を隠しきれない様子だ。

 憧れの存在を前にして静かにしているというのも無理な話だろう。


「本日の選考会なんですが、事前にお伝えした通り配信をしながらやろうと思います。もし不都合な方がいまたらその人の時だけ配信を切りますので教えていただければと」


 ゴーシュが念の為の確認をするが、《黄金の太陽》の配信に映れることを喜んでいる者たちばかりで、結局異論は一つも出てこない。


 そうして、さっそく第一の選考試験が行われることとなった。


「ふふん。とっぷばったーは私」


【今日も配信が始まった!】

【選考会の配信とはまた斬新だw】

【新メンバーが決まるかもって考えるとこっちまでドキドキしてくるな】


【《黄金の太陽》の配信に出れるのいいなー】

【オレも参加してみたかったな。でも今回は戦闘経験ある人重視って感じだったからなぁ】

【ワタクシもですわ~! ゴーシュのおじ様を見習って武術でも始めましょうかしら……】

【↑ミズリーちゃんはまたメンバーの募集やりたいって言ってたし、機会はあると信じよう】


【最初の応募者1000人超えだってよw】

【ヤバすぎるw】

【緊急募集って感じだったのにそこまで集まったのかw】

【けっこうな実力者も参加を表明してたぞ】

【ここに残ってるだけでも倍率10倍とか恐ろしい……】


【どんな試験やるのかも楽しみやね】

【最初の試験官はロコちゃんか】

【参加されてる人たち、頑張ってください!】

【相変わらず同時接続数も多いw】


【同時接続数:723,897】


 配信も開始され、視聴しているリスナーたちが打ち込んだコメントが流れ出す。

 リスナーたちは試験の様子に注目しつつ、参加する応募者たちに声援を送っていた。


「それじゃ、ちょっと準備します」


 一応事前にミズリーが応募者たちの経歴を調べてはいるが、目的は多くの魔物と戦う大狩猟イベントへの参加である。


 戦うことができるかを見るために、ミズリーとロコの二人で試験内容を決めていたのだが、最初の担当はロコだった。


「ぞりぞりぞり」


【ロコちゃんは癒やし】

【石で地面に何か描いてる?】

【言いながら描いてるの可愛すぎる】

【さてさて、どんなことをやるやら】


 リスナーたちはロコの可愛らしい行動にコメントを打ちつつ、どんな試験が行われるのかと気になっているようだ。


 そうしてロコは描き終えたらしく、応募者たちの方へと向きなおる。


「ルールはかんたん。この円から私を外に出せればごーかく。武器を使わなければ方法はなんでもおーけー」


【なるほどそれはシンプルだ】

【ロコちゃん大丈夫? 危なくない?】

【↑でかいイノシシとか蹴り飛ばす怪力幼女だぞ。参加者たちの心配をした方がいい】

【第一試験でだいたい落ちそうw】


【ふむ。拙者の国にも『スモウ』という競技があるが、それと似たような感じでござるな】

【↑それ見たことあるー】

【イノシシでも吹き飛ばす子をどうやって攻略すればいいんですかね……】


 幼いロコ相手なら余裕だと、応募者たちの中でそう考える者は一人もいなかった。


 怪力で知られる獣人族の中でもロコは特に力持ちであり、これまでの配信でも巨大な魔物をバッタバッタと倒す様子を見てきたからだ。


「よ、よし。それじゃ俺からいくぞ」

「うん。ばっちこい」


 最初の挑戦者が現れ、円の中でロコと向き合う。

 挑戦者の体格は大柄で、見るからに力自慢といった感じである。


 確か王都の腕相撲大会の配信で上位入賞していた人だと、ミズリーが説明し、ゴーシュは大丈夫かなとハラハラした様子で見守っていた。


 そして――。


「どおりゃぁあああ!」


 挑戦者は勢いよくロコに向けて突進したのだが、その結末は呆気ないものだった。


「ていっ」

「ごわぷっ!」


 ロコが張り手を繰り出すと、挑戦者の男は勢いよく吹っ飛ぶ。

 円を出るだけでは止まらず、ゴロゴロと転がり、かなり離れた所でやっと止まることとなった。


【吹き飛んでいったw】

【大丈夫かよw】

【大男を吹き飛ばすロコちゃん、ヤバすぎるw】

【そりゃあそうなるか……】


【参加してみたいって言ってたけどこれ無理ですね】

【なるほどこれは戦闘経験ないと危ないわw】

【こんなの合格できる奴いるのかよw】

【第一試験で全員落ちる可能性】


「あ、ごめん。ちょっと強すぎた」


 ロコがうっかりうっかりといった感じで頭を掻く。


 その圧倒的な光景を見て、「やっぱり凄いな……」と応募者たちは息を呑むこととなった。



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