第64話 新ギルドメンバー募集
「大狩猟イベントか……。確か、去年から始まったと聞いたことがあるな」
「ですです。去年は精霊祭の中でも特に盛り上がった催し物でしたね」
ゴーシュの呟きに、ミズリーはうんうんと頷きながら補足する。
一週間という期間に渡って行われる精霊祭の中には、いくつか参加型のイベントがある。
その一つがミズリーの言った大狩猟イベントなわけだが、元々この世界では配信分野でも魔物討伐系のジャンルが人気だ。
闘いを見たくなるのは人間の性ということなのだろうか。
色んな国々から参加した者が魔物討伐をする光景が人気を博し、今回の精霊祭でも行われることになっていた。
「んー。でも、魔物討伐ならししょーの得意分野じゃない? 優勝はもらったもどーぜん」
「フッフッフ。それが一筋縄じゃいかないんですよ、ロコちゃん。大狩猟イベントは単に魔物をたくさん捕らえれば良いというわけじゃなくて、指定の魔物やレアな魔物を見つけるとボーナスが貰えたりするんです」
「おお、なるほどー」
「参加者の実力だけじゃ分からないってことですね。運や判断力も大事な要素です」
「ししょー、ものすっごく運が悪いもんね。これはぴんち」
ロコから辛辣な言葉をもらい、ゴーシュはがくりとうなだれる。
以前、ミズリーと二人だった時に「レアモンスター見つけるまで帰れません配信」をやったのだが、その時も散々な結果だったりと、とにかくゴーシュは運が悪い。
こればかりはどうなるものでもないのだが……。
「まあまあ。大狩猟イベントはギルド協力型ですから。みんなで力を合わせていきましょう」
「そーだね。やるからには優勝めざそー」
「ロコの言う通りだな。イベントの様子は配信で世界中の人が見るらしいし、気合い入れていこう」
互いに顔を見合わせ、頷きあう三人。
そうして二週間後に迫った一大イベントに向けて奮起していたのだが――。
「あっ。そういえば一つ問題がありまして」
不意にミズリーが何かを思い出したように声を上げた。
ゴーシュとロコも何かとミズリーの方を見やる。
「ミズリー、問題って?」
「ええとですね……。後でそのことも相談したかったんですが、その大狩猟イベントには参加条件が設定されているんです」
「参加条件?」
「はい。ギルドの人数、四人以上という」
「私にししょーにミズリーで三人。うん、足りてないね」
「となると、参加するには新たにギルドメンバーを加える必要があるわけか……」
新たに湧いた問題に三人は一様に難しい顔を浮かべる。
以前にも、新しいギルドメンバーについては話をしたことがあったのだが、当然誰でもいいというわけにはいかない。
日々の配信を優先して置き去りになってしまっていた問題でもあった。
「今から集めるとなると、知っている人とかでしょうか?」
「ロコ、ちなみにヤギリさんとかは?」
「おじーちゃんはまだぎっくり腰の調子が良くないって」
「そっか、さすがにご老体だろうしな……」
「大狩猟イベントのことも考えると、それなりに戦える人の方が良さそうですね」
ううむと頭を悩ませながら、ゴーシュたちは考え込む。
そして、ミズリーが良い案を思いついたといったように、ポンと手を叩いた。
「ひらめきました! 配信で呼びかけてみるのはどうでしょう?」
***
ミズリーが妙案を思いついてからすぐ――。
ゴーシュたちは早速、新たなギルドメンバーを募るべく告知を行うことにした。
「どうも皆さん、こんにちは。配信ギルド《黄金の太陽》です」
精霊を介した配信を開始し、いつもの如く挨拶をするゴーシュ。
するとすぐにゴーシュたちの配信を視聴する大勢のリスナーが集まり、各々がコメントを打ち込んでいった。
【待ってました!】
【ゴーシュのおじ様、こんにちはですわー!】
【キター!】
【今日もワクワク】
【この前の着せ替え配信見ました。ミズリーちゃんとロコちゃんが神でした】
【武器屋の配信も面白かったよー】
【相変わらず人がたくさんでござるな】
【今日は何の配信です?】
「ふっふっふ。今日は皆さんにお知らせがありまして。この場を借りて告知をしようかなと」
ミズリーが不敵な笑みをリスナーたちに向ける。
その様子にリスナーたちは興味を唆られたようで、またも大量のコメントが流れ出した。
【お?】
【お知らせ、とな】
【一体何が始まるんです?】
【ご結婚おめでとうございます!】
【ついに大剣おじさんの武術講座か!?】
【精霊祭も近いしそれについてかもよ?】
【ドキドキですわ~】
【もしかして視聴者参加型とかか? それなら絶対に行くぜ】
「この度、俺たち《黄金の太陽》は新たにメンバーを募集することにしました」
ゴーシュがその言葉を告げると、リスナーたちは大熱狂の渦となった。
***
一方その頃――。
ゴーシュたちの配信を見ながら、ニヤリと笑みを浮かべる一人の少女がいた。
少女は、《黄金の太陽》が新たなメンバーを募集するという言葉を聞き、勢いよく立ち上がる。
「ついに来たわね! この時が!」
少女は明るく、そして少しだけ偉そうに声を上げる。
それは自信に満ちた表情で、どこか期待に胸を膨らませているようでもあった。
少女は興奮が抑えきれないのか、再びにんまりと笑みを浮かべる。
そして――。
「ついに来たわね! この時が!」
大事なことなので、少女はもう一度同じことを言った。





