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第7話 大剣オジサンの決意


「あっはは。けっこう濡れちゃいましたね……」

「ごめんな。俺がもう少し早く気づいていれば良かったんだが」

「いえいえいえっ! むしろゴーシュさんのお家にお呼ばれするなんて感激です!」

「そこ、喜ぶところ?」


 ゴーシュとミズリーは、家の入り口でそんなやり取りを交わしていた。


 けっこうな強さの雨に見舞われ、二人ともびしょ濡れの状態である。


「ところで、ミズリー、さん……?」

「ふふ。『ミズリー』で良いですよ、ゴーシュさん」

「……分かった。えっと、ミズリーは服の替えとかあるのか?」

「あー、持ってきてないですね。でも、大丈夫です! こう見えて普段から鍛えているのでご心配なさらず」

「いや、そのままだと風邪をひくかもしれないしな。それに、目のやり場に困るというか……」

「……?」


 今のミズリーは、短めのスカートに、上は白い薄手のブラウスを着衣しているだけという軽装だ。

 それが雨に打たれたことで濡れ――というか肌が透けているのである。


 そんな姿を直視するというのはゴーシュにとって自戒すべき事項だった。


 また、濡れたままで放置しておくのも可哀想だろうとゴーシュは考え、ミズリーを見ないようにしつつ歩を進めた。


 そして、自身の持っている衣服の中でも一番新しいシャツを引っ張り出し、ミズリーに声をかける。


「一応洗ってあるやつだから、これに着替えるといい。話をするのはそれからでも遅くないだろう」

「え? 良いんですか?」

「あ、でも嫌だよな、こんなオッサンの服なんて……。ちょっと待っててくれ。村の人に頼んで女性の服を借りてく――」

「いえいえっ! 私はそれがいいです!」

「そ、そうか? それじゃあ、俺は一旦家の外に出てるから」


 シャツを受け取ったミズリーが喜んでいるのを見届けて、ゴーシュは外へと出ることにした。



 ゴーシュが外で着替えを済ませた後も、雨は相変わらず降り注いでいる。


 今日の朝にやっていた占い師の天気予報配信によれば、雨は一時的なものらしい。

 もう少しすれば雨も上がるだろう。


「それにしてもあの子、とんでもなく一直線な子だな……」


 独り呟き、ゴーシュは空を見上げる。


「…………」


 ゴーシュには密かな「夢」があった。


 かつて自分が《炎天(えんてん)大蛇(だいじゃ)》に所属し、ギルド長のアセルスから必要以上の雑務を押し付けられ激務に追われていた頃のことだ。


 ただ仕事をこなして宿舎に帰って眠るだけの日々。


 こんな日々を送る意味なんてあるのかと、憂鬱な毎日を送っていた頃のこと。


 ――きっかけは、そんな中で見た一つの動画配信だった。


 ゴーシュがいつものように疲労困憊(ひろうこんぱい)でギルドの宿舎に戻り、何となくその日フェアリー・チューブで話題になっていた動画配信を流していたところ。


 ある有名配信者が歌を唄っていた。


 確か最近話題の若い女性配信者だなと思いながら、ゴーシュはその配信に惹きつけられる。


 疲れで(すさ)んでいた心に、たまたま突き刺さったのかもしれない。

 その女性の眩しすぎる笑顔が、当時の自分と対照的だったから惹きつけられたのかもしれない。


 ――何故かは分からない。


 何故かは分からないが、誇張でも何でもなく、命を救われた気がした。


 それからというもの、ゴーシュはその女性の動画配信を毎日見るようになる。


 そしていつしか、自分もその女性のように、見る人に何かを届けるような配信がしたいと思うようになっていた。


 ゴーシュの中で、その想いは今でも変わっていない。


「あの人のようになりたいなら……」


 ゴーシュはまた独り呟き、ある決意を固めていた。




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