Afterストーリー① 新たな配信へ
「うぅ、またやっちゃいましたぁ……」
「おはようミズリー」
ある朝、ギルド《黄金の太陽》にて――。
ミズリーが半泣きになりながら階段を降りてきた。
既に朝の日課である運動を終えていたゴーシュは、苦笑しながら挨拶を交わす。
ミズリーは沈んだ顔で応じ、ゴーシュとロコが座っているテーブルのところまでやって来た。
「ミズリー、おそよう」
「ろ、ロコちゃん、おそようとは……?」
「普通ならおはようだけど、ミズリーはねぼすけさんだから、おそよう」
「うぐ……」
ロコの純粋な言葉にグサリと刺され、ミズリーは胸を抑える。
モスリフから帰還した一行の、変わらない朝の風景だった。
***
「それで、今日はどんな配信をするの?」
遅めの朝食を皆で食べ終えた後。
ロコが頭から生えた獣耳をピクピクと動かしながら尋ねる。
モスリフでの一件を解決したゴーシュたちは、王都グラハムにある自分たちのギルドへと戻ってきていた。
アセルスが黒封石を砕いたことにより復活した魔物、ニーズヘッグを倒した後は少しの間モスリフに滞在していたのだが、王都に戻ってからが大変だった。
馬車を降りてすぐに大勢の人混みに囲まれ、ギルド協会に報告しに行く途中で多くの報道系配信者から質問攻めにあったり、ファンのリスナーから持ちきれないくらいの贈り物をされたりと。
まさに英雄たちの凱旋というイベントを終えて数日が経ち、やっと普段の配信活動を行える状態にまで落ち着いてきていた。
「ふっふっふ。それなら私、良い案がありますよ」
今日の配信で何をやるかというロコの問いに対し、ミズリーが得意顔になって切り出す。
「お、自信ありげだな、ミズリー。聞かせてもらえる?」
「はい。実は先日、ギルド協会のアイルさんとお茶をした時にある噂を聞いたんです」
「ある噂?」
「何でも、《シナルス河》の水質が元に戻ったことで付近に魔物が出なくなったらしいんですよね。だから、河辺で遊ぶ人が増えてるんだとか」
「ふむふむ」
「それでですね、何人かの人が『見た』らしいんです」
「見た? 何を?」
「すっっっっごく大きいお魚の影を、です!」
ミズリーは言って、両手を一杯に広げてみせた。
その様子にロコは尻尾を揺らし「おおー」と感心した声を漏らす。
「どうですどうです? そのお魚、見つけに行ってみません?」
ミズリーが興奮した様子で提案し、それでその日の配信の企画は決まることになった。