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第61話 始まりの場所、始まりの少女と

読者の皆さまへ


第1部最終話となります。

あとがきにて作者からのメッセージがございますので、

ぜひお読みいただけると嬉しいです。


それでは、本編をお楽しみくださいませ。


【ニャニャニャ! 今週のフェアリー・チューブ関連のニュースを配信していくニャ!】


 よく晴れた日の昼下がり。


 ゴーシュたちは、揃ってモスリフの地で獣人族の少女がやっているニュース配信を見ていた。


【もう言うまでもないことだと思うけどニャ。今週の目玉は何と言ってもギルド《黄金の太陽》の黒竜ニーズヘッグ討伐配信ニャ! どっかんシビレたニャ~! あれはまさに神回……いや、伝説の配信ニャッ!】


「ははは……。凄い言われようだな」

「でも、嬉しいですね! こういう風に取り上げてもらえるの」

「あ、この人、テトラだ」

「知ってるんですか? ロコちゃん」

「うん。私とは別の獣人の里なんだけど、よく遊びに来てて仲良くなった。まだ私が一人で配信を見ちゃいけない時、一緒に配信見せてもらっていろんな言葉も教えてもらった」


 その言葉にゴーシュとミズリーは顔を合わせ、ロコの言葉遣いが特徴的なのはそういうことかと苦笑する。


 テトラと呼ばれた獣人少女はロコとはまた種族が違うようで、猫のような細い尻尾を振りながら陽気に話していた。


【それからそれから~。《黄金の太陽》さん、初の日間同接数ランキング1位獲得おめでとうニャ! これはとってもめでてぇことニャ!】


 テトラが配信画面の中で大絶賛を繰り返し、コメント欄には大量のお祝いの言葉が流れ、ゴーシュはやはり照れくさいなとそんなことを思う。


 ――ニーズヘッグを倒した後、ゴーシュたちの元には多くの称賛が寄せられていた。


 ゴーシュたちのスポンサーともなっている高級レストラン《シャルトローゼ》の支配人グルドから。

 王都グラハムのギルド協会からは受付嬢のアイルや協会長のキール。

 ロコの祖父であるヤギリ老師や以前ミズリーをナンパしようとしたウェイス、度々ゴーシュらの配信に顔を出す公爵家の令嬢メイシャ・アルダンや領主ケイネス・ロンハルクなどなど……。


 多くの人間からメッセージが届くたび、本当に激動だったなと、ゴーシュはミズリーと出会ってからの一ヶ月を思い出していた。


「そういえば、お姉ちゃんからもメッセージが届いていましたね」

「メルビスから?」

「はい。同接数1位おめでとうと。それから今度ギルドに遊びに行くって言っていました」

「え……?」

「おおー。ミズリーのお姉ちゃん、また会ってみたい」

「そういえばお姉ちゃんもまたロコちゃんに会ってみたいって言ってましたよ。今度はゆっくりお話したいって」

「ふむ。それはなにより」


(歌姫が遊びに来るって、何か軽いな……。いや、ミズリーの姉だしそんなものか? うーむ)


 ゴーシュは困惑気味に頬を搔き、引きつった笑みを浮かべていた。


【そうそう、みんなは知ってるかニャ?】


 配信画面から聞こえてきた声に、テトラが何かを思い出したように手をポンと叩くところが映っている。


【あの黒封石をぶっ壊した犯人、アセルス・ロービッシュが牢屋にぶち込まれたらしいニャ。そんでだニャ。関係者に取材したところ、どうやらアセルスにはある刑が執行されているらしいんだけどニャ。牢屋でアセルスは人が変わったかのように『ごめんなさい、ごめんなさい……』って繰り返しているらしいニャ】


「「「……」」」


【一体どんな刑を執行したらそうなるのか気になるニャ~! なんかどこぞのお偉いさんが介入してるって噂もあるけど、そこまでは教えてもらえなかったニャ……。一体誰なんだニャ! 気になって夜しか眠れないニャ~!】


 テトラが大げさに頭を抱えて叫ぶ様子が映し出され、ゴーシュたちは顔を見合わせる。


「あの後、王都の兵団がやって来てアセルスの身柄を引き渡したが、そんなことになっていたんだな……」

「何というか、やっぱり悪いことって良くないですねぇ」

「こーゆうの、何ていうんだっけ? 悪が食えたメシはなし?」

「たぶん『悪の栄えたためしなし』ですねロコちゃん。まあ、牢屋に入れられたらしいですし、あながち間違いじゃないかもですけど」


 アセルスのその後の状況を聞いた一同が揃って溜息をつく。


 結局のところ、アセルスは自身の行動で身を滅ぼしたわけだ。

 それも元を辿れば、同接数8,000の配信と引き換えだったというのだから皮肉極まりない。


 テトラの話によれば、ゴーシュが元いたギルド《炎天の大蛇》も解体を余儀なくされ、メンバーも散り散りになったとのこと。


 ゴーシュは一つの気持ちの区切りを付けるかのように、その様子を聞いていた。


「おーい。そろそろ準備できたぞー」


 遠くから声をかけてきたのはロイだ。


 ロイは肉やら野菜やらを詰め込んだ大きめの籠を持っており、奥では他のモスリフの村人たちが火を(おこ)しているのが見えた。


 今日はこれから、黒封石の調査に出かける前にロイが提案してくれたバーベキュー兼、ニーズヘッグ討伐の祝勝会を行う予定なのである。


 場所はゴーシュの畑のすぐそば。

 ニーズヘッグを討伐したためか、今では魔物の発生も収まり、ただ自然豊かな土地が広がっていた。


 ゴーシュたちはロイの声に応じて、駆けていく。


 それからまもなくして、宴が開始された。


「この『ぷちぷちモロコシ』おいしー」

「はわ~。屋外で飲む麦酒(エール)は最高ですねぇ」

「うん。このワイルドボアの肉も美味いな。『あまあまトマト』もよく熟れてる」

「ミズリー、泡でおヒゲついてる」

「おっと……。あ、ロコちゃん、ダメですよ。『にがにがピーマン』をゴーシュさんのお皿に避けちゃ」

「……バレた」

「お前ら、まだまだ肉も野菜もたくさんあるからなー」


 賑やかなやり取りが繰り広げられ、皆が笑い合っていた。


 そんな光景を見ながら、ゴーシュは思う。


(思えば、前はここで配信をしていたんだよな。あの時は同接数もまだまだ少なくて、ニャオチンさん――というかミズリーが毎回見に来てくれるくらいで……)


 かつて配信していた頃のこと、そして、毎回訪れてくれていた少女の名前を思い出し、ゴーシュは昔を懐かしんでいた。


 ――ピロン。


 と、不意に無機質な通知音が鳴り、ゴーシュは視線を落とす。


 何かと思いゴーシュが通知を開くと、そこには一通のメッセージが表示されていた。


【ゴーシュさん。私、今が本当に楽しいです!】


 メッセージの差出人には『ニャオチン』と記されており、その文字を目にしたゴーシュは隣を見やる。


 満面の笑みを浮かべる金髪の少女がそこにはいて、だからゴーシュも笑顔で返すことにした。



 柔らかな陽射しが降り注ぎ、気持ちのいい風が吹き抜けていく。


 それはまるで、ゴーシュたちのことを祝福してくれているかのようだった――。




●あとがき


ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!


ここで第1部が終了となります。

アフターエピソードを公開しておりますので、そちらもぜひご覧いただけると嬉しいです!


●読者の皆さまへ大切なお願い●


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― 新着の感想 ―
[一言] 文庫本を購入しました。良き作品であります。
[気になる点] 「おおー、ミズリーのお姉ちゃん、会ってみたい」 「そういえばロコちゃんはまだでしたね。ふふ、楽しみです」 ロコってギルド協会で一度メルビスに会っているのでは?
[良い点] よくある配信→バスったというテンプレ系かと思いきや、それぞれ独自の設定があり、世界観が他の作品とは一線を画しており、良い意味で期待を裏切られた。 ストーリーの運びも程よいテンポ感で一気に読…
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