第59話 田舎農家のおっさんが伝説のドラゴンを駆除した結果
凶敵ニーズヘッグを次の攻撃で仕留めるというゴーシュの言葉。
その言葉にミズリーとロコの二人は、はっきりと頷いた。
「分かりました。ゴーシュさんを信じます」
「私も。ししょーなら絶対にやってくれるって信じてる」
「……ああ。任せてくれ」
信じるという言葉とともに、青と赤の瞳が一瞬、だが真っ直ぐにゴーシュを見つめる。
そして、二人はニーズヘッグを引き付ける役を買って出た。
黒弾を躱しつつ、前へ。
決定打にならないことは承知の上で、ミズリーとロコはニーズヘッグに攻撃を繰り出す。
「ハッ――!」
「ていっ!」
ミズリーは持ち前の素早さを活かした刺突剣で撹乱し、ロコは黒弾により崩れた大岩をニーズヘッグに投げつけた。
――ガァアアアアア!!!
ミズリーとロコの決死の突撃は、黒弾の射出を中止させ、ニーズヘッグの注意をゴーシュから逸らすことに成功する。
(本当に、俺は恵まれたな……)
ゴーシュの胸の内にあったのは、二人への感謝。
少しの迷いすら無く信じると言ってくれた二人に応えるべく、ゴーシュは手にした大剣を握りしめる。
【おお、いいぞ!】
【攻撃は最大の防御だ!】
【よし、あの黒い弾を打ってこなくなったぞ!】
【大剣オジサンが何かやろうとしてる?】
【ゴーシュのおじ様ならきっとやってくれますわ!】
【しかし、どうするのでござろうか? やはりミズリー殿とロコ殿が与えているダメージもすぐ回復しているようでござるが……】
【クックック。見ものだ。頑張れ】
【もしかしてあのクリスタルゴーレムを倒した時の技か?】
【確か《玄武》とか言ったっけか。しかし、あの技は叩き割るって感じだったぞ】
【打撃系の攻撃じゃ結局また回復される気がするな】
【となると別の技、か……?】
【大剣オジサンならきっとやってくれる!】
配信を見ていたリスナーたちはミズリーとロコに声援を送り、そして剣を構え精神を集中させているゴーシュに対し期待と信頼を寄せていた。
(二人が作ってくれた好機。絶対に逃さない)
ゴーシュは皆の想いを受け、ニーズヘッグに照準を定める。
視線はそのままに大剣の切っ先を地面に付けると、深く息を吸い込んだ。
「炎帝の名の持つ者よ。我が全霊の一振りに朱の理を与えよ」
ロコの祖父ヤギリが現代にまで受け継いできた、四神圓源流の奥義。
その発動の符丁となる言葉をゴーシュは口にした。
そして、地面を擦り上げるようにして、剣を上段へと構え直す。
すると――。
【た、大剣オジサンの剣が……!?】
リスナーの一人がその現象を目の当たりにして呟いた。
ゴーシュの大剣は、刀身が熱を帯びたかのように朱く染まっている。
周囲には火の粉のような粒子が舞い、それはさながら、炎を纏った剣のようだった。
「ロコちゃん! 今ですっ!」
「らじゃー!」
ミズリーの合図で、ロコがニーズヘッグの足元を殴る。
地面が陥没し、ニーズヘッグは一瞬、足場を失うことになった。
――ゴーシュには、その隙で十分だった。
瞬時にニーズヘッグまでの距離を詰め、そして、朱く染まった剣を横薙ぎに払う。
「四神圓源流奥義、《朱雀》――」
刹那、暗い洞窟内に朱が走る。
――ガァッ!?
その一閃で決着だった。
いかに凄まじい回復力を持つニーズヘッグといえど、生物であることに変わりない。
それ故の、致命に至らせる手段がある。
即ち、首を斬り落とされて無事でいられる生物はいない。
ゴーシュの振るった剣は硬い鱗にも勢いを殺されることなく、ニーズヘッグの首を一刀両断したのだ。
さしものニーズヘッグも回復のしようなどあるはずがなく、巨体を震わせた後で動かなくなった。
「やった、ししょー!」
「ゴーシュさんっ!」
【おぉおおおおおおおっ!!!】
【大剣オジサン! 大剣オジサン!】
【お前ら落ち着――やったぁああああああ!!!】
【↑お前も落ち着いて……られないよなw】
【黒竜討伐じゃあああああ!!】
【伝説確定な】
【さすがすぎる! さすがすぎる!】
【一生ファンですわ~!!】
【ゴーシュ殿、お主こそ誠の強者でござる!】
【ミズリーちゃんもロコちゃんもよくやった!】
【凄い、本当に凄い】
【信じてた! 大剣オジサンならやってくれるって信じてた!】
【最高の配信だわ!】
【伝説を目撃しました】
【同時接続数:1,584,998】
奮闘したミズリーもロコも、そして配信を見ていたリスナーたちも歓喜の声を上げる。
まさに、伝説の竜を討伐し、世界にゴーシュの実力が配信された瞬間だった。
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