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第43話 ギルドメンバー《+1》


「左様ですか。ロコがその話を申しましたか」

「はい」


 屋根の上でのやり取りがあった翌日、ギルド前の庭にて――。


 ゴーシュはロコの祖父であるヤギリ老師と微精霊を介した交信魔法で話をしていた。


「ロコは……お孫さんは、とても真っ直ぐに話してくれました。きっと勇気がいることだったと思います」

「ほっほっほ。あの子はとても素直な子でしてな。きっとゴーシュ殿に自分の気持ちを伝えることができてほっとしていることでしょう。……と、それよりもゴーシュ殿」

「はい、何でしょう?」

「あの子の声を聞いてくださり、本当に感謝申し上げます」


 ゴーシュの目の前に表示された画面の中で、ヤギリは深々と頭を下げる。

 その所作は、相手に対する心からの尊敬と敬意を表すものだった。


「い、いえ、そんな。俺はただ話を聞いて考えを伝えたまでです。ですからそんな感謝をされるようなことは――」

「だとしても、です。先程あの子と話した際の晴れやかな表情を見れば分かります。ゴーシュ殿はロコが子供だからと気休めの言葉で応じるのではなく、真正面から向き合って話してくださった」

「……」

「そのことが私には何よりも嬉しいのです。もちろん、ロコはそれ以上でしょうが」


 言って、ヤギリは白い顎ひげの奥で口の端を上げた。


「本来であればあの子が訪れた当日にこうしてお話がするのが筋なのでしょうが、申し訳ありません。ちょっと最近は腰の調子が悪くてですな……ア、タタ」

「は、はい。それは、ロコからも聞いています。確か、ぎっくり腰なのだとか……。どうか無理なさらず」

「むぅ……。お恥ずかしい限りです」


(……獣人族は誠実な種族だと聞くが、本当にその通りだな)


 ゴーシュはそう考えながら、腰をさするヤギリを見て苦笑した。


「あ、ヤギリ老師。俺もお伝えしたかったことがあるんです」

「ほう、何ですかな?」

「俺、ヤギリ老師がかつて行ってくれた配信のおかげで《四神圓源流》を扱わせてもらっていて、一言お礼が伝えたくて……。本当にありがとうございます」

「あ、ああ……。配信もいくつか拝見しましたが、確かゴーシュ殿は朝の運動代わりにして習得されたんでしたな」

「う……。そう言われると本当に恐れ多いことをしたような気になるのですが、その、何と言いますか……」


 ヤギリに言われて、ゴーシュはしどろもどろになった。

 画面向こうのヤギリに向けてペコペコと何度も頭を下げており、ゴーシュの生真面目さが伺える光景だ。


「ハッハッハ、けっこうけっこう。それくらい規格外な方が《四神圓源流》の習得者として納得がいくというもの。私も鼻が高い」

「そ、そうですか……」

「ロコも、自分も使えるようになるんだと言って張り切っておりましたからな。不躾なお願いではございますが、色々と教えてやってください」

「は、はい。それと、ロコについてなんですが――」

「ゴーシュ殿のギルドに入れてくださる、というのでしょう? そして、配信活動を共にやると」

「え……?」

「ほっほ。ロコがゴーシュ殿の所に行くと言い出した時からそのようになると思っておりました。あの子は元々配信が好きですからな。私としても、ぜひにと思います。あの子が持っていったバックの中身は、養育費用の代わりとでも思っていただければ」


(お見通し、か……)


 ゴーシュはヤギリの言葉を聞いて流石だなと溜息を漏らす。


 昨晩、ロコがゴーシュたちの配信ギルド《黄金の太陽》に入る決意をした後のこと――。


 ロコはそういえばと言って、自分がギルドの扉を叩いた時に背負っていた謎の巨大バックの中身を差し出してきたのだ。


 その中身は獣人の里近くで採れる大量の宝石類であり、ロコ曰く、獣人の里を出発する前、ヤギリに持っていけと言われたお土産なのだという。


 お土産にしては多すぎるとゴーシュたちは思ったのだが、ヤギリはこうなることを見越していたのだろう。

 それにしてもあり余る量だったが。


「ゴーシュ殿。あの子をよろしくお願い致します。そして、いち視聴者としてゴーシュ殿やミズリー殿の配信を楽しみにしておりますぞ」

「は、はいっ!」

「ほっほ。今度ぜひ、獣人の里にも遊びに来てくだされ。ゴーシュ殿の話を聞きたい者も大勢おりますでな」


 そう言って、ヤギリはにこやかに笑っていた。


   ***


「ゴーシュさん、『プリネアの花』を使ったお菓子ができましたよ~」

「ミズリー、ちょー気合入ってた」


 ゴーシュがヤギリとの交信魔法を切り終えると、ミズリーとロコがそんな声をかけてきた。

 どうやらロコのギルド加入を祝う会の準備が整ったらしい。


 ロコはギルドの中から出てきて、庭にいるゴーシュの近くまで駆け寄ってきた。


「ししょー、早く。じゃないとミズリーがみんな食べちゃう」

「ははは。そうだな。それは早くしないとだな」


 ゴーシュは近づいてきたロコに手を引っ張られ、ギルドの方へと向かおうとする。


(あの追放配信から始まった縁か……。思えば、半年で随分と色んなことが変わったものだ)


 ゴーシュはそんな感慨とともに、隣を歩くロコを見やる。


 ロコはどこか楽しげな表情を浮かべていて、その尻尾はとても嬉しそうに揺れていた――。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

ここで第3章が終了となります。


第4章も更に盛り上がってまいりますので、ぜひお楽しみくださいませ。



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