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劇団彼岸花  作者: 友好キゲン
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第一話 売れない脚本家と芸者の少女

休日にパッと思いついたので書いてみました。

霊達の話に残酷な描写があるので、R15にしました。

「…本日はありがとうございました。失礼します。」


俺の名前は岸橋渡きしばし わたる。年齢は29歳。

東京で活躍する売れっ子脚本家…を目指している何処にでもいるただのフリーターだ。

他の人と違うところといえば、幽霊が人と同じくらいはっきり見えること、そして幽霊の話がしっかり聞き取れることくらいだ。とは言え、それが何かの仕事で役立つかと言われると、答えはNOだ。

だからいつもは日雇いのバイトで金を稼いで、小さなアパートの部屋で、稼いだ金で買った紙とペンを使って脚本を書く。

練りに練った脚本を創っては、自分の作品で芝居をしてくれないか色々な劇団を回って頼み込んでいる。…が、俺が無名だからか、誰も使ってはくれない。どこがダメなのかすら教えてくれず、また一から脚本を考えて書く。

そんな生活を過ごしてもうすぐ10年目に入る。


「はあ…今日もダメか…」

今日も脚本が受け入れられなかった。

こういう時は、決まってよく行く居酒屋で酒を呑む。

「皆があっと驚く作品を考えてるってのに、何で誰も受けてくれないんだ。やっぱり、俺には向いてないのか〜?」

1人でボヤきながら杯を乾かす。こんな時は、現実がボヤけてくるまで酔っ払うに限る。


一頻り酒を呑み、勘定して店を出る。視界がボヤけるくらい酔っ払いながら、帰途に着く。

いつもの帰り道をフラフラと歩いていると、ふと公園の前で一人の女の子が目に入った。黒い髪のおかっぱ頭で、着物を身に纏った座敷童子のような女の子だった。

こんな夜遅くに何でこんな幼い子が?と思ったが、すぐにそれがただの子供じゃないことが解った。

皆、少女の前を、まるで何も見えていないかのように素通りする。夜に見回りをしているお巡りさんすら素通り。俺だけがこの子を認識しているような雰囲気だった。

「なあ、そこのお嬢ちゃん、こんな夜中に何してるんだい?」

俺は酔って気分が上がっていたからか、その子が只者じゃないと判っていながら声を掛けた。

「お前さん、儂が視えるのか?」

「ああ、見えるぞ。酔った俺の目でもお嬢ちゃんの姿がはっきり見える。」

そう言うと、少女は涙を溢した。人ではないにしろ少女を泣かせるのはまずいと思い、俺はその子を公園のベンチに座らせ、自販機で買ったお茶を少女に渡した。お茶を飲んで少し落ち着いたのか、少女は自身のことを話してくれた。


少女の名は椿。

昔、江戸で芸者の見習いをやっていて、あともう少し稽古を積めば、夢に見た都一番の芸者達の仲間入りを果たせるところだった。

しかし、稽古場が火事になった時に逃げ遅れたことが原因で、10歳という若さで死んでしまった。もう少しで夢が叶うって時にこんな事件に巻き込まれたので、未練が強くて成仏できず、300年近く彷徨っていたらしい。


「お嬢ちゃん…いや、椿さん。もし良かったらなんだが……うちで芝居してみないか?」

俺は椿さんの話を聞いて、芝居を誘わずにはいられなかった。この人の未練を晴らしたいというのもそうだが、彼女の芝居を見てみたくなったからだ。

「芝居じゃと?」

「ああ、俺はこう見えて脚本家なんだ。まあ今は全然扱って貰えないから、フリーターだが…でも最高の作品を創れる自信がある。」

「じゃが、儂は今の芝居なんぞ知らんぞ?」

「確かに、今の芝居は、江戸の芸者とは雰囲気も演じ方も違う。とはいえ、椿さんは芸に携わる者。きっと素晴らしい芝居が出来るようになる。だから、貴女に俺の作品を演じて貰えないか?」

そう言うと、椿さんは少し考え込んだ後、

「…こんな見習いの芸者じゃが、よろしくお願いします」

と、勧誘を快く受けてくれた。

それから気分が上がった俺は、公園を出てアパートへと帰った。




次の日の朝…

目を覚ますと、俺は布団の上で横になっていた。あの後、俺はちゃんと帰れて、寝るところまで行けたんだな。

そう安堵して起き上がる。起き上がった瞬間、頭にガンガンと痛みが走る。

「いって〜……呑みすぎたな…」

二日酔いで頭が痛む。蛇口を捻り、水を飲む。

痛みが幾分かマシなったが、まだ痛い。

幸い今日は仕事がないので、ゆっくり休もう。

再び布団に向かおうとした時、視界の端に誰かが居るのが視えた。

ふと振り向くと、そこには昨晩会ったおかっぱ頭の少女が立っていた。

「うわあっ、えっ、椿さん!?何で…」

「おやっ、起きたんじゃな。おはよう。」

「あ、おはようございます。じゃなくて、何でウチにいるんですか?」

「うちで芝居をするっていうから、お前さんの家に招かれたんじゃ。」

「招かれた?」

その言葉が引っかかり、椿さんに問うと、酔っ払った俺がこのアパートまで招待していたらしい。そして、その拍子に彼女はこの部屋に住む権利を獲得していたらしい。

酔っ払っていた時の記憶が曖昧で覚えていないが、酔った俺が招いたのなら仕方がない、このまま住んでもらうことにしよう。

それに、どうせ俺の脚本は売れないんだ。この人に演じて貰って皆に見せてやれば、きっと俺の未来もいい方向に行ってくれるだろう。

「というわけじゃ。お前さん、これからよろしく頼むぞ?」

「任せてください。最高の芝居を創って見せましょう。」





「ところで、今役者は儂以外に誰がおるのじゃ?」

「……まだ、椿さんだけです…」

「お前さん、芝居をすると意気込んでおったのに、何で儂1人しかおらんのじゃ!?」

「すみません、すみません!自分も昨日閃いたもので…」

「はあ…じゃあまずは役者を探すところからじゃな」

「はい…」

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