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異能力者達の午後  作者: ゆーろ
異能力者達の午前
7/32

化け物達の午後

0:『化け物達の午後』


0:登場キャラ


デザート・D・クラウン:男。男を兼ね役


リットン・アンクス:女。女を兼ね役


バニー・ドレッドパーカー:男


セノ・アキラ:男


アンダンテ・S・グローザ:女


アーモンド・コクリコ:女


ザックス・シェアザード:女


ポルジッコ・レオン:男


ドミニク・ロックスミス:男


エンディオ・ロックスミス:男


ヴルカーン・サウスパーク:男


リカルディオ・アッシュホード:男


アレジ・ロンドン:男




0:『セノ。デザート。グローザ。ザックス。ポルジッコ。』





セノ:はーいどぉも。ぼかぁセノ・アキラ。



セノ:分かる?うるさいよね。ここは大陸の最北端。何でもこの街は、大陸憲法の一切が通用しない。例えるなら、セーフティの付いていない絶叫マシン専門の遊園地。みたいな所だ



ポルジッコ:「仕上がりました。社長」



デザート:「ああ。ご苦労、アンはどこに?」



ザックス:「こちらに。」



グローザ:「…」



デザート:「こんばんは。アン」



グローザ:「…」



ザックス:「社長が挨拶をしている。挨拶を返せ」



グローザ:「…はい」



0:グローザの髪を掴んだ



ザックス:「おいこら。挨拶をしろよ。挨拶を」



グローザ:「…はい」



ザックス:「てめぇの挨拶はァ…!」



ポルジッコ:「おい、ザックス」



ザックス:「はい」なのかって話だろうがよォーーーッ!



0:机にたたきつけた



グローザ:「…っ。」



ポルジッコ:「ザックス。社長の前だろうが。やめとけ」



ザックス:「…失礼しました」



デザート:「いいさ。構わない。教育は必要だ」



グローザ:「…」



デザート:「アン、問題だ。」



グローザ:「はい」



セノ:そんなこの街の名前は



セノ:バグテリア法外特区。



デザート:「私は今白いハンカチを持っている。このハンカチの色は白か。黒か。」



グローザ:「赤です」



デザート:「ああそうだな。それが正解だ」



セノ:ゴミの掃き溜め。大陸地図からも消された、喧騒と、自由の街。ここの住民はどうもおかしい



デザート:「次。このハンカチを赤色じゃなくして見せろ」



グローザ:「はい。」



セノ:それは異常性と呼ばれる、超常の力



グローザ:――Espadaエスパーダ



セノ:人々は口を揃えて言う



デザート:「…そうだな。このハンカチは赤色では無い。白色だ。そういう、思考だ。今、私は。」



セノ:この街には、化け物達が住んでいる



デザート:「良い商品に、仕上がったな。アン

デザート:ああ。合格だ。」



グローザ:「YES.BOSS」



セノ:心から言おう。僕、セノ・アキラは



セノ:この街が大好きだ



ポルジッコ:「1992年。六月十五日。アンダンテ・S・グローザの生産完了を報告、品質管理へ引き渡す」



0:「ポルジッコOUT。リットンIN」



ザックス:「1992年。六月十五日。生産管理からアンダンテ・S・グローザの引渡しを確認。」



デザート:「行っておいで。アン」



ザックス:「実験地域は、バグテリア法外特区全土」



ザックス:「只今より。威力実験を執り行う」



0:『ザックスOUT。バニーIN』



0:場面転換



0:バグテリア 考察屋リットン



リットン:「あ〜。金がなぁ。欲しいなぁ。金がなぁ。」



セノ:考察屋の看板を引っさげたボロ屋で珈琲を啜る彼女の名前は



セノ:リットン・アンクス。



リットン:「丁度お昼。昼飯は食べたし、食後の珈琲も飲み終わった。

リットン:売上は80。今日のうちにあと50は稼いでおきたいなぁ。」



セノ:彼女はマトモでは無い。マトモでは無いと言うか、尋常では無い。尋常ではないと言うか、正常では無い。



リットン:「お。お。お。お客さん?へいらっしゃい!金さえ払えば何処まででも一緒に考えてあげる

リットン:考察屋リットンへようこそ!」



セノ:彼女は俗に言う情報屋のようなものだが、その本質は全く別のところにある



リットン:「はい?なんです??情報屋ぁ?あばばば。そんな古典的で胡散臭い商売なんて今更流行んないよ

リットン:君のお悩みを最も正解に近い場所まで何百通りと考察してあげるのが私。言っておくがクーリングオフは無いからね」



セノ:彼女には。というかこの街の住民の殆どは特異体質であり、それを世間は



セノ:異常体と呼んでいる。



リットン:「人探しだね。バグテリアに居る人間だし、大物でも無いし、うんうん、30って所かな」



セノ:異常性。そう呼ばれる、超常の力。それを操るのが異常体。



セノ:であれば、この街はさながら、異常体の街と表現するに相応しい



リットン:「高い??馬鹿言うんじゃないよ、金がないやつの為には指一本動かさないよ、私は」



セノ:ああ、言い忘れていたが、彼女は守銭奴だ。ケチだ。金の亡者だ。



リットン:「ちょちょちょちょ、帰んないで!待って!ちょっとした冗談!にへっ!

リットン:15だ。これでいいだろう?」



セノ:もう一度言おう、彼女は守銭奴だ



リットン:「先に言っておくが、私はあくまで考察屋だ。この考察が合っているかは分からないし、例え外れていても私を責めるなよ、返金も求めるな」



セノ:もう一度言う?あー、彼女は守銭奴だ



リットン:「じゃあこの紙に探し人の特徴を思いつく限り全部書いて。体型、容姿、好きな食べ物嫌いな食べ物、思いつく限り全部だ」



セノ:そしてここからが異常体。リットン・アンクスの真骨頂



リットン:「浮気の回数?言ったろ、思いつく限り全部の情報だ。」



セノ:彼女は、天才では無い



リットン:「…ふん。ふんふん。おっけ。じゃあ潜るからちょっと黙ってて」



セノ:天才では無いが、面白い



リットン:マイケル・スミス。男性、32歳。無職。捜索理由、借金の踏み倒し



リットン:好きな食べ物、ジャンクフードなど、体に悪そうな物全般。嫌いな食べ物、東洋系の健康食品。姿をくらましたのは今から四時間と10分前。



リットン:三番路地から逃亡。繁華街、廃工場、河川敷



リットン:徒歩、公営バス、異常性による高速移動。



リットン:肥満体型、暗い所が嫌い、人が多い所も嫌い



セノ:彼女は天才では無い、が。生まれつき、過集中の能力に抜きん出ている。その間、呼吸する事も意識せず、鼻血も出る。かぁいいねぇ



リットン:「…ぷはぁっ!はぁっ。はぁっ。あーーー、くそ、頭痛い!酸欠だ、気持ち悪い」



セノ:そしてここからが、情報屋紛いの、「考察屋」。その真骨頂



リットン:「マイケルくんが辿ったルートはこの73通りだと思う。一番現実的なのはレッドストリートかな。

リットン:まぁ、今から行ってもマイケルくんは死にかけだろうね。

リットン:取り敢えず送るよ。私の「考察」を」



セノ:彼女の異常性は、自身の過集中の間に考え抜いた数々の取捨選択を、他人にそのまま讓渡する。



セノ:つまり、「思考讓渡」。考察屋は、自分の脳を売る



リットン:「あぁぁ。はい、確かに。じゃあ行ってらっしゃい、私はちょっと、横になる。え?凄くない凄くない、こんなの」



セノ:ひとつの考察につき、十五分程度の休憩を挟む。燃費が悪い。そんな彼女は、自分の事をこう揶揄する



リットン:「私は普通だから」



セノ:尋常ではない彼女が自身をこう言い張る。僕はそれが、一番面白い。



セノ:場面は変わり、三時間と46分前。ここはこの街で唯一と言っていい比較的マトモな飲食店、喫茶「コクリコ」だ



アーモンド:「そうですか!借金取りに追われてるんですね!」



セノ:マスクをして愛想を振りまく彼女はアーモンド・コクリコ。この店を一人で切り盛りする、ブルーストリートの名物、可愛らしいオーナーだ



アーモンド:「おかわりですか!あのねマイケルさん、いくら何でも飲み過ぎですよ。こんな昼間っから。お金が無いから追われてるんじゃ無いんですか!」



セノ:う〜ん親切、丁寧、可愛い!三拍子揃った超絶良い子にマイケルもにっこり!



アーモンド:「でもでもマイケルさん、この街で逃げ切るのはほぼ不可能だと思いますよ…

アーモンド:「考察屋」にも手が伸びてると思いますし、大変大変大変だと思います!多分無理!」



セノ:きゃ〜!大変大変大変親切!そんな金無し職無し彼女無しの残念野郎に警告してあげるなんて!



アーモンド:「だってマイケルさん。「バラエティ」の金を踏み倒したんでしょ?まぁ、なんと言うか。なんとなんと言いますか」



セノ:言いますか?



アーモンド:「人生に飽きちゃったのかなって、思いますね。へへっ」



セノ:そう!バラエティ!このぐっちゃぐちゃの街を牛耳る大手マフィアグループ、マイケルくんはそこの金を持ち逃げしちゃったらしい、ひ〜!僕でも顔が真っ青になってケツが四つに割れちゃうよ!



アーモンド:「そう怖がらないでください、貴方が来たことは内緒にしておきます。お代も結構ですので。どうぞ裏口から逃げて下さい」



セノ:親切!やっぱり良い奴だね!アーモンド・コクリコ!憎いね!この色女!



アーモンド:「はい、無事逃げれたらまたご利用下さい。ありがとうございました!」



セノ:そう言うとマイケルくんはそそくさと喫茶コクリコを出ていった。彼女は散々飲み食いされたテーブルをアルコールで入念に除菌しながら机を叩いた



アーモンド:「ぁあっ!!くそ!!汚ぇな!!これだから嫌いなんだよこの街の連中はぁ!どん、な、育ち方、したら、こんなに机を汚せるんだ、よっ!」



セノ:彼女はねーー。なんと言うかねーー。潔癖症なの。かぁいいね。



セノ:そんな彼女も勿論、異常性を持ち合わせている。



アーモンド:「ああ〜だるい。飲食店の掃除はね、本当にだるいんだ」



セノ:彼は頭をポリっと掻いて呟いた



アーモンド:「無かったことにする」



セノ:なんと彼女の異常性は自身が張ったテリトリーの中の全ての結果を無かったことにするものでした!



セノ:めでたしめでたし!



アーモンド:「あーもう、いくらなんでも、こんなもん客に出せるかボケェ!」



セノ:きゃあん!異常性が使えなかったのか!めでたくない!テーブルを窓から捨てたァ!



アーモンド:「あ。いらっしゃいませ。喫茶コクリコへようこそ」



セノ:そしてこの代わり身!惚れちゃうね!この色女!その店に尋ねてきたのはさっきリットンに依頼をしていたバラエティの構成員!



アーモンド:「ああ、探し人。肥満体型で、金髪の中年男性」



セノ:しかし彼女はさっき他言はしないと言った!言ったよね?だって義理堅くて信用に厚い喫茶コクリコのオーナーだもの!



アーモンド:「ええ。来ましたよ。無銭飲食して出ていきました。レッドストリートの方へ行ったんじゃないですかね、恐らく」



セノ:がっでむ!彼女は笑顔でマイケルくんが逃げた方へ指をさした!嘘つき!



アーモンド:「はい、構いませんよ。次は是非、お客様としていらして下さい。」



セノ:そう言う彼女は見えないようにドアの持ち手を消毒している!



アーモンド:「またの御来店を、お待ちしております」



セノ:そして深深と頭を下げて見送った、勿論その間も、扉の持ち手の消毒を怠っていない!酷いや酷いや!



セノ:そして時間は戻り、この街でも特に治安が悪いレッドストリートでの話



男:「あんこら。あんこら。あんん??」



女:「何ジロジロ見てんすか。やんのかこら。こら。あんんんん??」



バニー:「ああなんだてめぇら。見てわかんねぇのか、犬の散歩中だぞこちとら」



男:「関っっ係ねぇよあんんん???」



女:「やっっちまうかんなまじでよォ!」



セノ:不良に絡まれている散歩中の好青年。そう見えるだろうが、全く逆だ



バニー:「ぶっ死ね!!」



男:「痛い!!痛い!腕折れた!」



女:「救急車!救急車呼ぼうね!呼んでね!」



セノ:残念ながらこの街に救急車も病院も無い。



バニー:「あ゛ぁ〜〜右見ても、左見ても、不良、不良、不良、いきなり殴りかかってきてよォ。教育がなってねぇだろうが。あぁ?」



セノ:そう言い放つ青年の周りには無数に横たわる不良達!ああ、因みに倒れている彼らだって異常性を持っている。決して弱いわけじゃない。ただ、彼の場合はこの街でも更に異質でね



バニー:「武器使うな!異常性使うな!卑怯だろうが、拳だよ拳ぃ、男なら自分の体ひとつで勝負しろ!」



セノ:彼は異常性を持ち合わせない、ただの人間だ。これを正常体と言う。テストには出ないよ



バニー:「あ?おいおっさん。酒くせぇぞ。こんな昼間から飲み歩いてんじゃねぇよ。おい」



セノ:彼の名前はバニー・ドレッドパーカー。巷では、「暴君坊」と呼ばている、つまりジャイアンだ



バニー:「金なんて持ってるわけねぇだろ。あぁ分かった。お前あれか、あれだな。カツアゲする気だな。俺にぃ、何にもしてない俺に、カツアゲする気だろ!!?」



セノ:大体予想はつくと思うけど、今バニーが話しているのは無銭飲食、借金持ちのマイケルくんだ。



セノ:そしてこの街で暴君坊と遭遇することは



バニー:「っらぁぁああッッ!!!!」



セノ:再起不能を意味する



バニー:「っあ?おいおいおい、軽いなおっさん、なんでそんな太ってる癖に弱いんだよ、弱いデブはデブだぞ」



セノ:強いデブもデブだけどね。



セノ:バニー・ドレッドパーカーは、異常性を持っていないただの人間だが、常人では考えられない筋肉密度と反射神経、本能的戦闘センスとでも言うのか。つまり



バニー:「二度と来んじゃねぇよばーーーかっ!」



セノ:素の身体能力が化け物じみている



バニー:「あ〜。くそ。毎日毎日、喧嘩喧嘩喧嘩喧嘩、イライラしてきた。」



セノ:ついでに言うのなら



バニー:「セノの野郎ぶっ殺すか」



セノ:「僕はいつでも君に嫌われているね、バニー」



バニー:「お?」



セノ:「やあ」



バニー:「おいおいおいおい」



セノ:「やあやあやあやあ」



バニー:「セノちゃぁん!!なんで生きてんだよォ!おい!」



セノ:「そりゃ、人間ですから。生きたりもするでしょうよ」



バニー:「うるせぇ黙れ!反論すんな!」



セノ:「今のは反論じゃないんだけれど、全くもって暴君だね、君は」



バニー:「連続死ね死ねミサイルパンチ!!!」



セノ:「名前だっsっぶ!!!」



バニー:「ジャストミート!ぶっ死ねぇ!!!!!」



セノ:「うわああああああああああんっ!」



0:セノはどこかへ吹っ飛ぶ



バニー:「おい!!!逃げんな!!!」



セノ:「君がぶん殴ったんじゃないかあああああああああああああ

セノ:「ぁあああああああああああああああああっ!!!」



リットン:「うわっ!!びっくりしたぁ!」



セノ:「ああ、やあ。リットン。元気?」



リットン:「元気なもんか!いきなり吹っ飛んで来たかと思ったら屋根ぶっ壊して!」



セノ:「そりゃあまぁ、不可抗力じゃないかな」



アーモンド:「リットンさん。いらっしゃいますか」



リットン:「ああ、コクリコの。もちろん居るよ、今からセノに損害賠償を求めるからその後で話聞くね」



セノ:「ひん」



アーモンド:「私もリットンさんに損害賠償を求めに来たんです」



リットン:「なんでぇ!?!?」



アーモンド:「リットンさんが寄越した依頼人、私の店の扉を触っていきましてね。本当にちょっとだけ、テリトリーから外れてまして、無効化が間に合わないんです」



リットン:「それ私のせいじゃないよね!?大体君は潔癖症が過ぎるだろう!もうやめちまえよ飲食!」



アーモンド:「ちょ、叫ばないで貰えます!?飛沫が凄いでしょうよ!!」



リットン:「マスクしてるだろお前は!!」



バニー:「セノォオオオオオオオオ!!!」



セノ:「いやぁあああんっ」



リットン:「おーーーい!!暴君坊!!壁を壊すな!!!私の店が潰れる!!いや経済的な意味で無く!」



バニー:「おぉ、リットンじゃねぇか!なんでこんな所にいるんだよ!相変わらず細いな!飯食えよ!」



セノ:「そりゃここリットンの店だし。居るでしょ。居るよね?」



リットン:「ああもう、うるさい!」



アーモンド:「ちょっと、埃が凄いですよ。リットンさんの店」



リットン:「私のせいじゃないだろ!!目ついてんのか!」



デザート:「リットン、邪魔するぞ」



アーモンド:「バラエティの主将さんだ!」



リットン:「デザートの旦那ぁ!?勘弁してくれぇ!!もうツッコミが追いつかない!!役満だ!!」



セノ:「やあデザート、久しぶり」



デザート:「セノか。来てたんだな」



セノ:「うん」



リットン:「よく世間話できるなこの状況でさぁ!!おかしいんだろうねぇ?!頭とかがさぁ!」



アーモンド:「リットンさん、顔が真っ赤ですよ。照れてるんですか」



リットン:「何に!?何に照れるのこの状況で!」



バニー:「俺知ってるぜ、ツンツンしてるけどデレてるやつ、チルズルって言うんだろ」



セノ:「バニー、それを言うならジャルベルだ」



デザート:「なに。ヤルゼテじゃなかったか」



アーモンド:「マルコスだとばかり」



リットン:「多分だけどツンデレだよ!一文字も合ってないよ!!馬鹿!

リットン:あぁぁぁあ、もう、疲れるなぁ……

リットン:お前ら帰れ…」



セノ:ここは自由と喧騒の街、バグテリア法外特区



セノ:心から言おう。僕、セノ・アキラは。



セノ:この街が大好きだ。



0:時間経過 考察屋 リットン



デザート:「相変わらず賑やかだな、あいつらは」



リットン:「人騒がせなだけなんだよ、やっと片付いた。珈琲でも飲むかい」



デザート:「ああ、頂こう」



リットン:「ん。それで。デザートの旦那。あんたが私の所に来るってことは

リットン:あるんだろ、厄介事が」



デザート:「そうだな。お前の嫌いな厄介事だ」



リットン:「金儲けはしたい。でも厄介事は避けたい。旦那が持ってきた案件は、どっちに天秤が傾けてくれるのさ」



デザート:「金だ。言い値で払う。お前は守銭奴だからな、考察屋」



リットン:「話が早くて助かるよ。」



デザート:「とは言うが、もう何の話かは薄々予想が付いているんだろう」



リットン:「まぁね。なんたって明日はクラウンオークションだ

リットン:旦那主催のビッグイベント。この街の住民はこぞって金を流し合う。勿論、私もだ」



デザート:「ああ。その商品がな、行方不明になった」



リットン:「…」



デザート:「500だ。何がなんでも探し出せ」



リットン:「まぁ。いいけど。名前は?」



デザート:「アンダンテ・S・グローザ。」



リットン:「はっはぁ〜ん。辻斬り。やっぱり君のところの試作品だね。逃げ出したってことは失敗作か」



デザート:「いいや、失敗に次ぐ失敗こそがより良い結果に結びつく。

デザート:結果だ。私の全ては結果に帰依きえしている」



リットン:「あ。そ。やってはみるよ、やっては、ね。」



0:場面転換



セノ:バグテリアにて行われる年に一度の大祭り。



セノ:クラウンオークション。



セノ:麻薬、薬物、臓器、非合法な商品なら何でも来いのマーケットだ。モノ好きな金持ちは危険を顧みずこの街へとやってくる。



セノ:僕が今日やって来たのは、これを見に来たからなんだよね



0:場面転換 バラエティ 特設会場



司会:「さあ今年もやってまいりました!クラウンオークション!!

司会:バラエティ主催のこのイベント、何を買い、何を売り、どうやって法に触れるかは貴方と金次第!

司会:御来場の皆様には感謝を!ありがとう金づる!

司会:それでは、バラエティのオーナーであり今日の主催。デザート・D・クラウン様より一言!」



デザート:「ありがとう金づる!」



司会:「ありがとうございます!あまり長引かせても皆様が退屈してしまうかと思います故、早速。」



セノ:「いやぁ。客が多いね。」



リットン:「セノ、やっぱり来てたのか」



セノ:「そりゃあ。ね。君は何用?」



リットン:「金稼ぎだよ、いつも通りね」



セノ:「あら安心」



リットン:「君の近くに居ると本当にろくな事がない、厄が移る前にお暇するよ」



セノ:「つれないねぇ、リットン」



リットン:「仕事だ。それじゃまたね、セノ」



セノ:「うん。また」



司会:「以上で、オークションの説明を終了します。それでは一品目の出品!」



セノ:「彼女へのちょっかいは…また後でにしておこう」



司会:「一つ目の出品は320年前没落した王家、アダム王のへその緒!」



セノ:「はは。ウケる。買っとこうかな。中央から出るでしょ、領収書」



司会:「はい400!450!せり上がって居ます!」



セノ:「600〜!」



司会:「600!開始早々にして高騰が止まらない!」



セノ:「買うつもりないけど、この冷やかしが楽しいんだ」



司会:「さぁ次!600の次は?居ませんか?」



セノ:「ん?」



司会:「居ません!600!600万で落札です!落札者の方はステージまで!」



セノ:「おい!!君らもっと頑張れよ!!」



0:場面転換 会場裏



リットン:昨日から一晩中脳みそフル回転で考えている。考えている、が



リットン:おかしい。有力な候補が何一つ出てこない。



リットン:情報は全部揃ってるのに聞き込みも全部ハズレ、そもそもの話、バラエティからどうやって逃げ延びたんだって話だ



0:回想



デザート:「期限?」



リットン:「うん。流石に今日中には無理だ、明日のいつまで、とか」



デザート:「…ああ。アンの出品時間丁度。それまででいい。いや、それがいい」



リットン:「分かった。期待せず待ってておくれ」



デザート:「分かった、珈琲ご馳走様。クソまずかったよ」



リットン:「二度と来んな!」



0:回想終了



リットン:辻斬りの出品時間までは…。あと三時間も無いな。



リットン:そろそろ昼休憩に入るし、何とか少しだけでも情報を整理したい



リットン:頭を回せ、稼ぎ時だ



0:場面転換



司会:「落札!250での落札です!」



セノ:「ひ〜。金持ちが沢山いること。」



司会:「以上で午前の部を終了します、これから一時間、昼食のお時間となります。

司会:会場二階がレストランコーナーとなっておりますのでそちらでお昼の一時をお楽しみ下さい」



セノ:「昼飯昼飯〜、こんな街でちゃんとした飯が食えるのもまた珍しい」



デザート:「セノ、やはり来てたか」



セノ:「こりゃ主催殿。今からご飯行くけど、折角だ、一緒に行かないかい?」



デザート:「ああ。構わない」



0:廊下を歩く二人



セノ:「見渡す限りの人、人、人。よくこれだけの集客を毎年やってられるね」



デザート:「まあ、長年の人脈と言うものだろう。どいつもこいつも金と時間を持て余した暇人ばかりだがな」



セノ:「君は、そうじゃないと?」



デザート:「いいや。私も時間は吐いて捨てる程ある。」



セノ:「そっかそっか、何百年と生きてるんだもん。そりゃそうだ」



デザート:「中央はその情報すら掴んでるのか。まさか先生が話したわけもあるまい」



セノ:「いいや、僕の勝手な推理だよ、当たってて何より」



デザート:「ああ、やはり殺しておいた方がいいかな、お前は」



セノ:「冗談やめてよ、僕と君の中だろう」



デザート:「どの仲だ」



0:二人、レストランルームへ到着する



セノ:「ここかぁ、いい匂いだ」



アーモンド:「あ。セノさん、デザートさんも、いらっしゃいませ」



セノ:「やあ、アーモンド。今日はここに店を構えているのかい」



デザート:「私から依頼した。コクリコの珈琲は美味いからな」



アーモンド:「ども」



セノ:「確かに。ここなら自分の店じゃないから潔癖も幾分マシだろう」



アーモンド:「はい!ほんと!はい!」



デザート:「どうだろう、アーモンドも一緒に昼食を済まさないか」



アーモンド:「すみません、もう少し仕事が残ってるので」



デザート:「そうか。」



セノ:「ほぉら、二人きりだよ、デザート」



デザート:「気持ち悪。」



セノ:「ひん」



0:場面転換 会場内



リットン:アンダンテ・S・グローザ



リットン:女性。20歳。



リットン:喫煙癖あり。



リットン:好きな食べ物、特になし。嫌いな食べ物、特になし



リットン:静かな場所を好み、人が多く騒がしい場所を避ける。失踪したのは三日前。



リットン:…やっぱり何度考えても辿り着きそうなのはイーストからブルーストリートの間。



リットン:昨日は半日かけて隅々まで探したが、影も形もなし。吸殻も見当たらない



リットン:バグテリアから出たか?



リットン:…無いな。外壁を超えればすぐに周辺諸国の関所になってる。



リットン:バラエティの後ろ盾も無しに無事に出る方法は、彼女の場合まず無い



リットン:やっぱいちばん引っかかるのは、これだな



リットン:デザートハウス出身の「人口異常体」である事



リットン:能力は二つ。思考解読と、思考解体。



リットン:ここ三日のうちにバグテリア内で失踪したのは93人。失踪自体は別にこの街では珍しい事でもないが、平均から見ても異様に多い。



リットン:失踪者が途絶えているのは、ブルーストリート



リットン:ここがどうにも、引っかかってしょうがない。



0:場面転換 レストランコーナー



セノ:「その昔。異常性とは人に宿るものではなかった。という話がある」



デザート:「今でこそ人の奥底に眠る根源として扱われている異常性だけれど、450年前の文献では、物や土地。空間に宿るものだった

デザート:という資料が幾つも見つかっているな」



セノ:「うん、ここでひとつ面白い文献があったんだよ」



0:セノは紙切れをテーブルに置く



デザート:「…ふむ」



セノ:「異常性と人体の関係と、その定義論」



デザート:「興味深いな」



セノ:「現代の常識として、人体に眠る異常性の種が重症化すると、異常体になる。

セノ:これが定説になっているけれど」



デザート:「この文献を見るに。異常性は完全に人体とは分離された存在であり、人が人に名前を付ける様に

デザート:異常性が人に宿っている。という事になるな」



セノ:「そう。面白いよね、研究家としてはテンション上がるんじゃない?」



デザート:「ああ、面白いとも」



セノ:「君の意見ではどうなのさ、デザート」



デザート:「この文献に多いに賛同する。

デザート:被検体への過度なストレスを与える実験は何度も行った。が、結果的に異常性が重症化した人物は極々僅か。トイレに向かおうとして発症したやつもいれば

デザート:寝ようと床についたときに発症したものもいる

デザート:あれらは余りに偶発的で、外的な要因で発現する物だろう」



セノ:「じゃあ逃げ出したっていう被検体。グローザだっけ?彼女はどうやって作ったのさ」



デザート:「耳が早いな」



セノ:「結構有名だよ。辻斬りだ。ってね。今回のオークションの目玉だったんだろう?

セノ:バラエティ社製、人口異常体。ってね」



デザート:「構わん。それでいいのだ

デザート:その種明かしは、言わなくても分かっていそうなものだがな」



セノ:「ふん。じゃあ仮に、異常性とは、概念だ。現象だ。それらの結果の一端を借りるのが、異常体。

セノ:昔の言い伝えでは、それらは物や土地。そういった意志を持たない存在への依存度が高かった。

セノ:土地が人を作り、物が人を変えるように

セノ:つまり、アンダンテ・S・グローザ

セノ:彼女は、人間では無い。どうかな」



デザート:「ああ、86点」



セノ:「刻むねぇ」



0:場面転換



リットン:「…」



アーモンド:「あ」



リットン:「おや?コクリコの、どうしてここに居るんだい?」



アーモンド:「デザートさんから出張料理人として雇われてます、リットンさんは?」



リットン:「私もデザートの旦那からの仕事だ。

リットン:人探しだよ、途方に暮れるね」



アーモンド:「随分お疲れみたいですね」



リットン:「あー。そう見える?」



アーモンド:「丁度私も区切りがついたところですし、お昼にしませんか?」



リットン:「いいね、アンタの珈琲が飲みたい」



アーモンド:「でしたらこんな汚い倉庫じゃなくレストランへ」



リットン:「珈琲メーカーもある、豆も倉庫に腐るほどある、あんな人の多いところじゃなくてここでいいだろ」



アーモンド:「ちっ。分かりました」



リットン:「今舌打ちしたな!?」



アーモンド:「だって汚いんですもんこの倉庫!!」



リットン:「うるさいうるさい!私は喉が渇いてるんだ!はーやーく!はやくいれろ!珈琲!」



0:場面転換



デザート:「アンダンテ…。アン、と呼んでいるが、彼女は人間だよ。いや、人間だったよ」



セノ:「ほう?」



デザート:「極限までに自我のない個体を探していた。自尊心、持論、人が生きているうちに必ず身につけて行く人を人たらしめる「拘り」という物が一切ない



デザート:それがアンだった」



セノ:「自我の無い人間は物と変わらないって?酷いや酷いや!

セノ:でもそのアンちゃんは逃げ出したよね?これは自我じゃないの?」



デザート:「いいや。私が放ったのだよ。」



セノ:「…へぇ、こりゃまた、面白い」



デザート:「奴に宿った異常性は思考を読む力、思考を解く力

デザート:だがそれらは常時発動系として宿ってしまったが故に、すぐに壊れた」



セノ:「能力範囲は?」



デザート:「北方大陸全土に及ぶだろう」



セノ:「こりゃ凄い」



デザート:「動かなくなったアンに私は命令した、自身の思考を切れ。と」



セノ:「思考を解く。の方の能力だね?それって一回使うとどうなるの?廃人?」



デザート:「にもなる。だが上手く調整したんだろうな。命令に従うデク人形程度に収まってくれたよ」



セノ:「読めてきたよ。君が辻斬りを生み出して、考察屋に高額の依頼をして、今日というオークションを迎えた意味が

セノ:これも、実験、だね」



デザート:「そうだ。結果さえ得られればいい。何を捨てても、何を蔑ろにしようと、結果が全てだ。全てを払拭し、成功の二文字へと導いてくれる」



セノ:「面白いね」



0:場面転換



アーモンド:「辻斬り、ですか」



リットン:「コクリコ嬢も聞いたことくらいあるだろ。今話した通りそれは人の脳回路を切る。発動圏内は殆ど無制限。余りにも凶悪だよ」



アーモンド:「読む。と言うだけでもゾッとしますが、切る。まで来ると化け物ですね」



リットン:「そう。そこまで派手な異常体が影も形もなしに姿を消せるわけがないんだよ。私はこれが不思議でしょうがない」



アーモンド:「ふむ。確かに不思議ですね。そもそも、デザートさんがそんな取りこぼしをするとも考えられない」



リットン:「そこだよ。何百通りと考えたけれど、確証のある思考には辿り着かなかった」



アーモンド:「…居ない。」



リットン:「ん?」



アーモンド:「バグテリアには辻斬りは居ない。私はそう考えます」



リットン:「勿論私も考えたさ。まず不可能だろうけどね。周りは武装した軍人がうようよしてるし、中央からの執行部職員だって直ぐに派遣される

リットン:この街は大陸一危険だが、異常体にとっては大陸一安全な場所だ」



アーモンド:「私はリットンさんほど賢くないので上手く言えないのですが

アーモンド:辻斬りとしてのアンダンテ・S・グローザは、既にこの街に居ない。

アーモンド:と、言えばいいのでしょうか」



リットン:「…」



アーモンド:「ああ!えっと、その、難しいですね!「私なら」そう考えるなってだけで」



リットン:辻斬り。失踪から三日。オークション。バラエティ。セノ。



アーモンド:「ただ、そうとしか考えられないというか、いや、その」



リットン:最後の失踪者。バグテリア。デザートハウス。人口異常体。



アーモンド:「あの、リットンさん?聞いてます??」



リットン:ブルーストリート。思考解読。思考解体。



リットン:辻斬りとしては、存在しない



アーモンド:「ああ、潜ってます?」



リットン:「ーーーーっぷぁ!!けほっ!おぇっ」



アーモンド:「きったな!おかえりなさい!」



リットン:「きたない…?あーーー。うん、ありがとう、全部、分かった、「考察」したよ、やり切った」



アーモンド:「本当ですか!」



リットン:「ああ、デザートの旦那が言っていた意味も、その目的も、ぜーーんぶ分かった。してやられたね」



アーモンド:「答え合わせは無しですか!もしかしたら私のお陰で分かったんじゃあ」



リットン:「ああ、「君」が「君」だったお陰だ



リットン:答え合わせはすぐに出来る、その時にね」



アーモンド:「?分かりました!」



リットン:「さあ、そろそろ午後の部だ。私は行くよ」



アーモンド:「あ!私も午後からは見に行くつもりだったんです、是非一緒に!」



リットン:「もちろん。あ、コクリコ嬢」



アーモンド:「なんですか?」



リットン:「マスク、似合ってないよ」



アーモンド:「酷い!」



0:「アーモンド、リットン、バニーOUT

0:ヴルカーン、ドミニク、エンディオIN」



0:場面転換 オークション会場



セノ:うーーーん。午後の部だ。問題の時間だ。答え合わせの時間だ。難儀だ。の。前に



デザート:「さて。」



セノ:「おや。どこに行くのかな。主催殿」



デザート:「抜かせ。お前の仕業だろう。ナンバーズを寄越したのは」



セノ:「バレてんじゃん」



デザート:「まあ。構わんよ。お前にもお前の目的がある。望むべき結果がある。そうだろう」



セノ:「うーん。まあ?」



デザート:「だったならば何も言うまい。何も言わず。打ち砕く。だろう」



セノ:「また、悪手だね」



デザート:「いいんだよ。悪手で」



0:デザートは通信機を手に取った



デザート:「ドミニク。仕事の時間だ。中央からナンバーズ。リカルディオかヴルカーンのどちらか、または。どっちもだろう。目的は、本出品の回収。だと予想するが」



デザート:「殺しても構わんが。お前らじゃあ不可能だろう。適当に相手して帰ってもらえ」



0:「デザートOUT。ヴルカーンIN」



0:場面転換



ドミニク:「YES。BOSS」



エンディオ:「なに。行くの」



ドミニク:「ああ。出勤だ」



エンディオ:「ええ。会場のガード空けていいの。よくないよ。きっと、よくない。俺は怒られたくないよ」



ドミニク:「社長命令だぞ。誰に怒られるって言うんだ。というか、お前は働きたくないだけだ。きっとそうだ」



エンディオ:「そうだよぉ。働きたく、ないんだよ。面倒くさい」



ドミニク:「だろうと思った。お前一人で行け。って言いたいけど、俺もついて行くから」



エンディオ:「えーーー。でも、さぁ。やっぱり会場を空けるのは…。違くない?」



ドミニク:「ザックスとポルジッコも居る。後は、超凶悪な用心棒も社長が雇ってるんだ。何の心配もない」



エンディオ:「あー。論破だ。行かなきゃ行けない。なぜなら、俺が、今。論破されたから。やだやだ、マウントトークっての?」



ドミニク:「駄々こねてる場合か。行くぞ、エンディオ。出勤時間だ」



エンディオ:「はあーー。了解だ、ドミニク」



0:場面転換



0:バグテリア郊外



リカルディオ:「やっぱり何度来ても臭いな。この街は」



ヴルカーン:「臭いなんて気になるか」



リカルディオ:「気になるな。俺は臭いのは嫌いだ。大嫌いだ」



ヴルカーン:「だったら鼻をつまめばいい。」



リカルディオ:「ヴルカーン。お前は少し情緒を手に入れてみたらどうだ」



ヴルカーン:「リカルディオ。任務中だ。」



リカルディオ:「というか、オリバーは何をしてるんだ。あいつも来いよ」



ヴルカーン:「ナンバーズが全員出払って執行部が回るようなら世話もない。別件だ」



リカルディオ:「ゴミの掃き溜めに俺達ふたりだけだなんて。花がないだろう。花が」



ヴルカーン:「言ってる間に来たじゃないか。お目当てじゃ無い方の、人口異常体が」



ドミニク:「あれ。二人いんじゃん」



エンディオ:「まじだ。うわだる。聞いてないよ。聞いてない。社長からはどっちかだって言ってたのに」



ドミニク:「どっちも来てるかもしれない。そう言ってた。社長は間違えない」



リカルディオ:「ロックスミス兄弟か。初めて見るな。そっちのでかいのが兄貴か」



ドミニク:「俺が兄だ」



リカルディオ:「そうか。ちっちゃいな」



ドミニク:「エンディオ。殺していいよ」



エンディオ:「勘弁してくださーい」



ヴルカーン:「御託はいい。」



0:走った



ドミニク:(M)早いな。ナンバーズ、体術訓練まで受けてるのか。まあ、どうでもいい



ドミニク:「―――行け。」



エンディオ:「ああもう」



ドミニク:「エンディオ…ッ!」



エンディオ:「面倒くさいなぁっ…!」



0:ヴルカーンは組み敷かれる



ヴルカーン:「っ…!なるほど、並じゃない。並じゃあ無いな。ステージ5」



エンディオ:「あんたらだってステージ5だ。見上げられる謂れはないな」



リカルディオ:「FREEZEフリーズ



エンディオ:うおっ。



リカルディオ:「派手に動くのはお勧めしない。氷細工が内側から壊れるのは勿体ないからな」



ドミニク:(M)エンディオの左半身が凍った。表面が凍ったのか。発言的には筋肉、内部から連投されたの方が近いのか



エンディオ:「ちょっとドミニクーっ」



ドミニク:「今考えてる。もう少し涼んでろ」



リカルディオ:「いつまで寝転がってるんだ、起きろよ。ヴル」



ヴルカーン:「うるさい。真面目にしている。仕事を」



エンディオ:「ちょいちょいちょい!ドミニク!はよ!死ぬって俺!」



ドミニク:(M)発動までのラグタイムは僅か0.3秒程度。能力自体に驚異性はさほどかんじないが。リカルディオ・アッシュホード。練度が違う



リカルディオ:「どうする。殺すか」



ヴルカーン:「ああ。殺してしまおう。特定執行対象だ」



ドミニク:(M)内部凍傷は洒落にならない損傷だ。効果範囲も恐らくは。え〜!そんな馬鹿な〜!ってくらいあるんだろどーせ



エンディオ:「ドミニクっっ!」



ドミニク:(M)そんで加えて



エンディオ:「ちょっとまじで!話聞いて――――」



ヴルカーン:「Schneidenシュナイデン



エンディオ:「んの…。お?」



ドミニク:「うおっ。」



エンディオ:(M)あれ。視界が二つに。割れてる。ああすごい。これあれだ。両断って。やつかぁ



0:ドミニクは真っ二つ



ドミニク:(M)刃物。にしちゃあ切れ味とか、そういう次元じゃあないな。切断。空間の断絶。いずれにしろ



ヴルカーン:「ルカ。あと一人は生け捕りだ」



リカルディオ:「わかってる」



0:ドミニクは空を見上げた



ドミニク:(M)どーー見ても。雲。ズレてるもんな。あれ。エンディオ死んだし



リカルディオ:「チビ。お前に聞きたい事がある。それ以上過干渉はしない。」



ドミニク:「強すぎんだよ。ナンバーズこら」



ヴルカーン:「お前は質問にだけ答えろ。ドミニク・ロックスミス」



ドミニク:「なにを」



ヴルカーン:「本オークションに出品されているアンダンテ・S・グローザ。その異常性詳細だ」



ドミニク:「社外秘だが」



0:蹴る



リカルディオ:「ヴルは言ったぞ」



ドミニク:「ごほっ」



リカルディオ:「お前は、質問だけ。答えろ。」



ドミニク:「…来い。」



ヴルカーン:(M)黒い粒子。のっぽの方からか。ステージ5にしちゃあ弱すぎると思ったが。なるほど



ドミニク:「エンディオっ!」



エンディオ:「っっはぁ…!勘弁してくれドミニク!あんなの勝てるわけないだろっ」



ドミニク:「何度でも。リトライだ」



ヴルカーン:(M)あのノッポの方。不死身か



エンディオ:「あ、の、さぁ!!いつもいつもそーやってドミニクは俺を使うけどっ。リトライすんのは俺っ。その度死ぬのも俺っ。ちゃんと痛いし怖いからっ」



ドミニク:「今の社命は適当に相手して帰ってもらうことだ。斬っても凍らしても死なない男と半日もやりあってたら飽きてかえるだろ」



エンディオ:「半日死ねってのかよっ!おい!」



ヴルカーン:Schneidenシュナイデン



リカルディオ:BREEZEフリーズ



エンディオ:「おごっ…!」



0:『エンディオOUT。デザートIN』



ドミニク:「……。出オチ即殺って。容赦ないね。あんたら」



ヴルカーン:「最も有効打を打つ。当然だ」



ドミニク:「全くもう。嫌になる」



リカルディオ:「口を割ると思うか、あの黒髪」



ヴルカーン:「割らせる。そういう命令だ」



リカルディオ:「ああ。そうだった。」



ドミニク:「嫌で、嫌で、嫌になる。それでも。何度でも。何度でも」



ヴルカーン:「ルカ。殺すぞ」



リカルディオ:「どっちもか」



ドミニク:「リトライだ…っ!」



ヴルカーン:「あの黒髪だ」



リカルディオ:「了解した。」



ドミニク:「――来い。エンディオ…っ!」



ヴルカーン:「執行処分を」



リカルディオ:「開始する…ッ!」



デザート:「そこまで。」



ドミニク:「――――っ。」



リカルディオ:「はあ。最重要執行対象」



ヴルカーン:「…出たか。バラエティ首領。」



デザート:「私は誰も攻撃しない。お前達も、誰も攻撃するな」



ヴルカーン:「ステージ6。デザート・D・クラウン…!」



デザート:「これは誓約だ。誰も。私との契約に逆らうな。」



ドミニク:「お疲れ様です。社長」



デザート:「ああ。ご苦労。持ち場に戻って構わない」



ドミニク:「承知しました。お先に失礼いたします」



0:『ドミニクOUT。バニーIN』



デザート:「…さて。」



リカルディオ:「まさかとは思うが。こんな所で大将首、取れるのか。俺達は」



ヴルカーン:「僥倖だな。非常に、都合の悪い」



リカルディオ:(M)異常性が発動しない。自分の攻撃意識が剥奪されている。まずいな



0:デザートは手を叩いた



デザート:「ひとつ。提案だ」



ヴルカーン:「聞くだけ聞く」



デザート:「帰ってくれないか」



リカルディオ:「生憎。手ぶらで帰れるほど。ナンバーズは甘やかされてない」



デザート:「だから提案だ。これではただの要求だろう。」



0:デザートは紙を数冊渡した



ヴルカーン:「なんだ。この書類は」



デザート:「アンダンテ・D・グローザ。その異常性の詳細書類だ。ここに虚偽はない。と、約束しよう」



リカルディオ:「何を考えてる。自ら手の内を晒すか普通」



デザート:「構わない。それで。構わない。これ以上の問答はしない。これ以上詮索すれば。この場でお前達を殺す。確実に」



リカルディオ:「…ヴル」



ヴルカーン:「撤退だ。本作戦にデザート・D・クラウンの執行処分は予定にない」



リカルディオ:「了解だ。帰投する」



デザート:「ああ、最後に。アストレアに、宜しく。ナンバーズ執行官」



ヴルカーン:「気が向いたらな。」



0:『ヴルカーン、リカルディオOUT。リットン、グローザIN』



0:デザートは階段を降りている



デザート:(M)より深く。寄り縋る。災い独り歩かずは、研ぎ澄まして、飲み下す。



デザート:「…ああ。今宵の月は。満ちるだろうか。なあ。アストレア」



0:場面転換



0:オークション会場



司会:「皆様!お昼の一時は楽しく過ごせましたでしょうか!

司会:答えは聞きません!それでは午後の部を開始致します!」



セノ:「お。やっと帰ってきたねー。おかえり」



デザート:「ああ。」



セノ:「聞いたよ。グローザの設計図渡したらしいね」



デザート:「ああ。」



セノ:「よかったのかい?」



デザート:「問題ない。何も。あれを見たあいつが。少し。ほんの少し。私に戦けばいい。それだけで私はある程度満たされる」



セノ:「その。あいつってのは。アストレア?」



デザート:「さあ。どうだろうな。ほら、席に」



セノ:「おー。午前に増して人が増えているねぇ」



デザート:「目玉商品があるからな。」



セノ:「あー。例の」



アーモンド:「人が多い、臭い、汚い」



リットン:「もう帰れば?」



アーモンド:「あ!セノさん、デザートさんも!」



デザート:「おお。丁度、来たな」



リットン:「…旦那、ちょっといいかい」



デザート:「追いついたか?お前の考察は」



リットン:「舐めんな、ばーか」



デザート:「ふは。それでいい。成功すれば金は追って払おう」



リットン:「わんわん」



司会:「今回の目玉商品!!バラエティ社からの出品です!

司会:それではデザート様!壇上へどうぞ!」



デザート:「ああ」



セノ:「お待ちかねだ」



アーモンド:「目玉商品!わくわくします!」



リットン:「まったくだよ」



デザート:「あー。あー。やあやあ諸君。まずは、ここまで楽しんで頂けただろうか」



セノ:「かえれー!」



デザート:「結構。今回私が出品するのは

デザート:我がバラエティ社が運営する研究施設。「デザートハウス」からだ



デザート:内容は、「人口異常体」。



デザート:人間性は無く、ただただ道具として機能する生物兵器



デザート:一家に一台、どうでしょう」



リットン:「掃除機みたいに言うね」



アーモンド:「人口異常体!凄いですね、デザートハウスの噂は聞いてましたが、そこまで進んでたなんて」



セノ:この街は、大陸地図からも消された腐りきった街だ。



デザート:「ただ。その威力、ここで見せた所でやれヤラセだのインチキだの言われ兼ねない」



セノ:この街には法律の一切が通用しない。力ある者、賢い者、汚い人間が、頂点に立つ。余りにも分かりやすい街



デザート:「だから、三日間に渡り実証実験をした。諸君のような愚図でもよーーく分かるように、だ」



セノ:自由と、喧騒の街



デザート:「辻斬りグローザ。それが私の出品する、人口異常体の名前だ」



セノ:それがバグテリア法外特区



デザート:「そして、自立型の殺戮兵器である事も立証された。

デザート:なぜなら」



セノ:心から言おう



デザート:「私は、辻斬りグローザが今、何処で、何人の人間を殺しているか知り得ていない

デザート:この私が、だ。」



セノ:僕、セノ・アキラは



デザート:「その捜索を依頼した。バグテリアの顔。考察屋たるリットン・アンクスに」



セノ:この街を、愛している



デザート:「リットン!答えを、聞こうか」



リットン:「…うん」



デザート:「辻斬りグローザは、どれほどの驚異を、結果として残した」



セノ:だってほら



リットン:「辻斬りグローザの能力は

リットン:思考を読み。思考を切る能力。

リットン:他人の思考を全て覗き、再現する事が出来れば。それは即ち、その人間に成り代わることも可能ではないか。と、思いませんか」



セノ:最高に面白いじゃない



リットン:「今から私は、会場内の全員に思考を讓渡します

リットン:もし、デザート殿の言う通り、グローザという人物が自立型の殺戮兵器だとするのなら

リットン:私が送った外的思考を、無意識的に自身から切り離す筈です」



セノ:「ーーあは」



リットン:「私の手元には、白いハンカチがあります。このハンカチの色は、何色でしょうか」



0:一瞬の静寂



アーモンド:「?白じゃないんですか?」



デザート:「…ふは。やはりお前か」



リットン:「…」



セノ:「リットンの思考では、そのハンカチは「赤」だと伝えらている。僕は、ね」



デザート:「ああ。私もだ」



アーモンド:「…?」



リットン:「アーモンド・コクリコは。28時間と13分前、ブルーストリートの喫茶コクリコにて殺害され

リットン:その後、辻斬りはデザートによる命令に従い

リットン:アーモンド・コクリコを演じた」



デザート:「それがお前だ。アンダンテ・S・グローザ。

デザート:命令は完了した。コスプレは終わりだ、アン」



セノ:「ははっ」



0:グローザはウィッグとマスクを外す



グローザ:「YES.BOSS」



セノ:「はははははっ!凄い凄い!素晴らしい売り込みだ!この街ならではだね!」



デザート:「それでは、アンダンテ・S・グローザのオークションを開始する」



リットン:その一言を皮切りに、何億という値段が何度も耳を通り過ぎる



リットン:高騰に高騰を重ね



デザート:「230億。次は居ないか」



リットン:まったく、命より大事な金を捨てるように、お金様をなんだと思ってやがる。



デザート:「居ないのなら、250億にて」



リットン:その瞬間、隣の男が口角をひん曲げて立ち上がった。そう、こいつがこの街に来る時はろくな事がない



セノ:「どうもどうも!バグテリア法外特区の皆さん!

セノ:僕は、中央政府情報局。特務監査役、セノ・アキラという者です」



リットン:身分を証明する手帳をヒラヒラと片手に揺らして意気揚々としゃしゃり出る



セノ:「ここまで全ての商品、やり取りを見てきました。言うまでなく、全て違法。違法。違法。

セノ:ですが彼女、辻斬りだけは話が違う」



グローザ:「…」



セノ:「人工的な重症化異常性保有体。これは貴重なサンプルです、ので。彼女は、中央政府が引き取らせて頂きます」



リットン:「馬鹿か君は」



セノ:「馬鹿なもんか。反抗するって言うなら、この場で、全員を検挙する」



デザート:「ああ。やはり場をかき乱すのが好きだな、お前は」



セノ:「と。言うわけでマイクを借りるよ、デザート」



バニー:「ちょっと待った」



セノ:「へ?」



リットン:「暴君坊!?」



バニー:「やっぱ出やがったな。デザートの野郎もたまにゃ頭が回るじゃねぇの」



セノ:「んー。どうしてバニーがここに?」



デザート:「ボディガードとして雇っておいた。日雇いのバイトだよ、最凶の、な」



セノ:「これはまた。面白い」



バニー:「やっちまっていいんだよなぁ?おい、デザート」



デザート:「構わん。殺せ」



バニー:「そう来りゃ話は早いなァおい!」



リットン:「ちょ、マジで暴れるのかよ!」



デザート:「グローザ!私だけは守れ!他は死んでもいい!」



グローザ:「はい。」



リットン:「ひっでぇあいつ!」



セノ:「こ、こうさーーーんっ!!」



バニー:「…あ?」



セノ:「降参降参、悪かったよ、まさかバニーが出張ってくるとは思わなかった。僕、苦手なんだよ。君が」



バニー:「はぁ??」



デザート:「つまり、どうする?」



セノ:「うーーん。そうだなぁ」



リットン:「…あはっ。280億。」



セノ:「そう、だね。じゃあ、食らえ国家公務員パワー!」



バニー:「おい。待て待て待て待て。殺しちゃダメなのかこいつ」



デザート:「そうだな、今は、客だからな」



セノ:「500億。」



リットン:本当に、どいつもこいつも。金をなんだと思ってやがる



デザート:「…ああ。それでいい。

デザート:アンダンテ・S・グローザを、500億で落札する」



セノ:「後は、好きにしても?」



デザート:「ああ。構わん。」



バニー:「…は??なんだよ!!殺せねぇのかよ!!おい!!死ね!!セノ!!」



セノ:「やだねー!べろべろびー!ほら、行くよグローザ」



グローザ:「はい」



バニー:「二度と来んじゃねぇボケェ!」



リットン:「…はぁ。これで良かったのかい、旦那」



デザート:「良い。アンの威力実験は十分。バグテリア住民への威圧も済んだ。ついでに、資金も得た。

デザート:これ以上ない、結果だろう」



リットン:「…本当に。究極的結果主義者だね」



デザート:「そうだな。私の全ては、結果に帰依している。」



0:場面転換 バグテリア郊外



セノ:「…さて。今から君を収容施設に移送するけれど。」



グローザ:「…」



セノ:「無口が過ぎるねぇ、喋れないの?」



グローザ:「そういう命令は、受けていない」



セノ:「僕が新しい雇い主だ。僕の命令、聞いてよ」



グローザ:「命令なら」



セノ:「これから面白い事が君のまわりで立て続けに起こる。君はその歯車として頑張って」



グローザ:「それは、どういう意図だ」



セノ:「僕の思考を覗けばいいじゃない」



グローザ:「私の思考解読は小説の黙読と同じだ。そう簡単に全てを覗き見出来るわけじゃあない。それに、見せる気も無さそうだ」



セノ:「あぁそう?ならいいけれど。目的は無事達成できたし。次は、うん、あの子かな」



グローザ:「…」



セノ:「…なに?」



グローザ:「…いいや。なんと言うか。

グローザ:可哀想な奴だな。お前は」



セノ:「…。あ〜。分かった、君。嫌な奴だな?」



グローザ:「お前がそう思うなら、そうなんだろうな」



0:場面転換



バニー:「セノォオオオオオ!!!ひさしぶりだな!死ね!」



セノ:「ひゃーっ!こうさん!まいったぁ!」



リットン:「うげ」



セノ:「あーリットン!いいところに!助けておくれ!」



リットン:「嫌だよ!来るな!近付くな!!!」



バニー:「あ!?リットンじゃねぇか!セノ庇うのか!?わかった!じゃあてめぇも殺す!!」



リットン:「ほら見ろ!!重機関車連れて歩くなよ!」



セノ:「いやぁごめんねぇ、それにしもリットン、君。見た目にそぐわず足速いね」



リットン:「逃げ足だけはね!!いや、普通に暴君坊には追いつかれるけどね!」



バニー:「待てやボケェ!待たないと殺す!!止まったら殺してやる!!」



セノ:「どのみち死ぬじゃなぁ〜いっ!」



リットン:「あーもう!めんどくさいなぁ!」



セノ:こんなに騒がしいけれど、彼らはこの間の一件を忘れたわけでは無い。



デザート:「おお。何してるんだお前ら」



リットン:「デザートの旦那ァ!なんで君はいつもそう堂々としてられるんだ!この状況で!!!」



セノ:つまり、これが彼らにとっての日常というやつだ



デザート:「息が激しいな。事後か?」



リットン:「うっさいよ!!」



セノ:なんやかんやあれ、どうあれこうあれ、この街は今日も面白い。だから僕はこの街が好きだ



セノ:何度でも、何度でも言おう



セノ:僕、セノ・アキラは、この街を愛している。



セノ:1995年。10月。本日も、バグテリアは晴天なり



0:『デザートOUT。アレジIN』



0:壁を治すリットン



リットン:「そういや。聞いたかい。」



バニー:「あ?なにをだ」



リットン:「なんで喧嘩腰なんだ。辻斬りのあれだよ。あれ」



バニー:「どれだよ」



リットン:「君はつくづく新聞読まないねぇ。」



バニー:「あんな細々したの読めるか」



セノ:人類の原罪は。林檎を食べたことだと言う



リットン:「辻斬りの行く先は、ロック・ストーン監獄らしい」



セノ:この世は腐っていると。そう、彼は言った



アレジ:「やあ。こんばんは」



グローザ:「…誰だあんた」



セノ:権利に溺れるもの。権威に貪欲なもの。人を蹴落とすもの。目を背けるもの。



アレジ:「はっ!私は当308号室専属看守、アレジ・アンドレイでありますっ」



グローザ:「悪いが、私はあまり冗談の通じるタチじゃあない。もう一度聞く、アンタは誰だ」



セノ:若しくは。人。そのもの。



アレジ:「流石の迫力だね、アンダンテ・S・グローザ」



グローザ:「ラストチャンスだ。アンドレイ。お前は――

アレジ:僕はアレジ・ロンドン。

セノ:だから。どうやら彼らは、世界にナイフを突き立てたらしい

リットン:「赤い林檎が辻斬りを引き取った。」



バニー:「それってぇと。やべぇのか」



リットン:「さあ。特区外の事は知ったこっちゃ無いでしょ」



セノ:曰く。それは感情であり、人間性であり



グローザ:「…」



アレジ:「この世界の、解放者っす!」



セノ:純粋な悪意



リットン:「ドリアード。バヘミアン、リベールに続いて、ロック・ストーン。お次は、アーヘンか。動くよ。ここから。金も、人も、中央も、異常体も、バグテリアだって」



バニー:「あ?何ブツブツ言ってんだお前は」



リットン:「はは。稼ぎ時だ。って、話だよ」



セノ:端的に言うのであれば。それが、林檎だった。




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