復讐者達の終末
0:『復讐者達の終末』
0:登場キャラ
カイ・シグス:男。
エマ・ワトソン:女。
アレジ・ロンドン:男。
シャオ・ラパン:女。
ハゼット・ワーグナー:男。
アンダンテ・S・グローザ:女。
ロゼット・ラインハルト:女。
マルボロ・セルベルト:男。
ウィンストン・アーリオール:男。
メビウス・ワーグナー:女。
キャスター・ゴルバッド:女。
オリバー・カーネンハーツ:女。
アストレア・アステル:女。
:
0:『カイ。エマ。アレジ。グローザ。マルボロ。』
:
テレビ音声:ーーー速報です。アメリカ、ニューヨークにて行方不明の通報が相次いでおります。
テレビ音声:その数は凡そ3200件を超えており、中央政府、並びにニューヨーク市警は総力を上げての捜索、原因の究明を行っております。
テレビ音声:続いて速報です。たった今、フランス、パリ。アルゼンチン、パラグライにて。同様の通報が―――
:
カイ:(M)異常性。それは一切のプロセスも、原因も無しに結果だけを引き出す異能の力
カイ:(M)誰もがヒーローになれる。そんな筈が無い
アレジ:ーーー僕はアレジ・ロンドン。
アレジ:中央解放戦線。赤い林檎の主犯だ
カイ:(M)力を持った人間は、決まって暴虐を振りかざす
カイ:(M)どんな正義があってかなくてか、人の生を踏みにじる
アレジ:今回の解放作戦は。中央を潰す為の足がかりとして。
アレジ:中央職員育成機関を潰すこと。即ち
カイ:(M)そんな奴がこの世に居るから。そんな奴が溢れてるから。
アレジ:今から。ここ。アーヘン高等学院を
0:アレジは手を空に掲げた
アレジ:―――襲撃する。
カイ:(M)だから俺は今。ここに居る
0:
アレジ:以上。アレジ・ロンドンからでした
エマ:……なにを。言ってるのか分かんない。冗談にしても笑えない。面白くない。それ
アレジ:冗談じゃあないからね。決して
エマ:……。本当にやめて。本当に笑えない
アレジ:別に笑ってくれなくて構わない。
エマ:勘弁して。友達だからで済ませられる範疇を超えてる。明日からどう接すればいいのさ。
アレジ:あーんちっちっちっ、残念ながら慎ましくも微笑ましい明日の学院生活は来ないんだなぁこれが
カイ:…
エマ:っ・・・、カイも黙ってないでアレジをなんとかしてよ。
カイ:・・・アレジ、お前さ、頭打ったんだよ。教官との模擬戦の時か?
アレジ:はあ。
カイ:あぁそれかあれだな、腹が減ったんだな。ったくどうすんだよこんな時間じゃ売店も出店もやってない。抜け出してコンビニでも行くか?
アレジ:SCRAMBLE。
カイ:なぁおい、話聞けよ。アレジ。
マルボロ:へぇー。ここがアーヘンか。結構綺麗だな
エマ:・・・!?
アレジ:やあ!マルボロっ
マルボロ:おお。久しぶりだっ、アレジ!
カイ:…は?
マルボロ:ったく。随分と待たせやがって
アレジ:ごめんごめん。準備期間も設けての半年ちょいだったろう?けどまぁ、うん。楽しかったよ、学院生活
マルボロ:嫉妬しちまうなぁおい
アレジ:嘘つけ
マルボロ:ばれてら
カイ:待て
アレジ:ほら。無駄話してる暇はないんだ。やるべき事を、やろう。状況は?
カイ:待てって
マルボロ:おうよっ。中央はニューヨークだのの大量失踪事件でてんやわんやっ。ここの状況を知って駆け付けるまで最短でも3時間はかかるなっ
アレジ:僥倖だ。三時間もあれば大概は終わるでしょ。それじゃはじめますかっ
カイ:待てって言ってるだろっ!!
マルボロ:おろ。
アレジ:残念待てない。僕には僕のやるべきことがある。君にだってあるように、僕にも、そりゃあ。ある
カイ:アレジィっ!!
アレジ:SCRAMBLE
0:
エマ:ぇ・・・なに、これ・・・
カイ:(N)俺たちの目に映ったのは学院に放たれた大量の人間。いや、異常体だ
マルボロ:急拵えにしては随分な量を集めたと思う。メビウスが頑張ってたぞー
アレジ:偉いねー。後でお菓子あげちゃお
カイ:(N)そして異常体どもは一斉に学院生徒達に襲いかかっていく
アレジ:さぁてと、僕らも行くとしようか、マルボロ
マルボロ:おうっ。行こうぜ。アレジ
カイ:待てって・・・言ってんだろ・・・!
0:銃口を向ける
マルボロ:っとぉ…。危ねぇな
アレジ:なに?なんだいその銃口は。僕を撃つ気かい?
カイ:説明しろ、アレジ。お前が赤い林檎?その主犯?ありゃなんだ?あの見るからにやべぇ群衆は。その男は誰だ?学院生徒じゃねぇだろ。
アレジ:質問が多いなぁ、一個に搾ってくれよ
カイ:説明しろっ!!
0:発砲、避けた
アレジ:っと。危ないなぁ。駄目だよ。友達にこんなことしたら
カイ:いいから説明しろ。でなきゃ・・・・・次は当てる、当てちまうぞ。
エマ:カイっ!早まらないでっ
マルボロ:おいおい、随分と熱くなってんな
アレジ:撃つのかい。いいよ。撃ちたければ撃てばいい。君の目標だ。君がここに来た意味だ。君がここに居る、意義だ
カイ:アレジ……!!
アレジ:…
カイ:俺達は…友達…か
アレジ:―――。
0:アレジは笑った
エマ:(N)肯定でも、否定でもない。
エマ:たった一瞬、アレジの放ったその笑いは、どこまでも乾いていて。細まった瞼から除く瞳は、果てしなく真っ黒だった。
カイ:…何が
マルボロ:アレジ、そろそろ
アレジ:うん。
カイ:何がおかしいんだよっ!!
アレジ:また後でね。2人とも
カイ:待てよ、アレジぃっ!
マルボロ:ばぁーい
アレジ:SCRAMBLE。
0:アレジとメビウスは場所を移す
0:『アレジ。マルボロOUT。アスカ、ラインハルトIN』
0:場面転換。喫煙所
グローザ:(M)音がする。花火の音ではない。何かをこじ開けるような音。足音がする。数十人という数の足音。始まった
グローザ:(M)どうしようもない。仕方がない。私の人生にあるのは。いつも、これだ。
グローザ:…
ラインハルト:なんだこれは。何が起こっている…っ!
アスカ:もしもしっ!ラインハルト!
ラインハルト:ああ、アスカ。私も今連絡しようと思ったところだ。タイミングいいな
アスカ:冗談言ってる場合か
ラインハルト:まったくだ。前代未聞だぞ
アスカ:ああ。目測49体の異常体が、アーヘンを襲撃している
ラインハルト:見間違いじゃなかったか。くそ。監察局へ連絡は!
アスカ:件の同時多発失踪事件で殆どの執行部が手隙じゃない。情報局も手が回ってない…!
ラインハルト:あー、もう使えないなぁっ。アスカっ!
アスカ:ああっ。まずは生徒の安全を最優先に動く
ラインハルト:くそくそ。くそっ!めんどくさいなっ。私も向かう!
アスカ:ああ。執行部が来るまでなんとか持ち堪えるしかない
ラインハルト:…死ぬなよ。アスカ
アスカ:…はっ。珍しく弱気か。明日の授業の準備もある。さっさと終わらせるぞ
ラインハルト:了解だ。
0:通信終了
0:『アスカOUT。シャオIN』
ラインハルト:グローザっ。お前もさっさと離れろ
グローザ:…
ラインハルト:…っ?グローザ!聞いているのか!ここから離れろっ。死にたいのかっ!教官命令だっ!
グローザ:…分かりました。
ラインハルト:…ちっ。数が多いな、生徒との乱戦状態・・・無闇に発砲は――
グローザ:教官。
ラインハルト:なんだ!
グローザ:また
ラインハルト:―――。
ラインハルト:あぁ。また。
0:ラインハルトは校庭に向かって走った
0:『ラインハルトOUT。ハゼットIN』
グローザ:作戦開始の合図は四発花火が上がってから・・・アレジが買い付けた花火は全部で五発。
0:グローザはゆっくり煙草を吸い終えた
グローザ:まだ花火、終わってないじゃないか
0:『グローザOUT』
0:場面転換、屋上
0:呆然と空を見るカイ
カイ:…
エマ:…カイ。
カイ:…
エマ:…私は。アレジを追う。きっと何か、事情がある。
カイ:…
0:エマは立ち上がった
エマ:カイは、どうするの
カイ:…はは…。
エマ:カイ…?
カイ:ははは、馬鹿だなぁエマ、何をそんな深刻そうな顔してるんだよ。信じてるのか?またあいつのいつもの冗談だよ。どうせ。
エマ:…っ。カイ…!
カイ:きっと、きっと学生寮に戻ったらあいつが俺の部屋に勝手に入ってて、ピザでも頼んで寛いでて、それで俺が怒って
エマ:じゃあの謎の男とか、この有様はどう説明するの。レクリエーションじゃあ済まされないっ
カイ:レクリエーションなんだよ、あいつならそのくらいやってのけそうだ。派手なのが好きで、周りを驚かせたりするのが好きで
エマ:「カイ聞いて、それは」
カイ:(話を聞かない)ラインハルト教官に説教されては俺たちに泣きついてくる、でもいざって時は誰よりも頼れるやつで、俺たちの、俺の、友達だ
エマ:カイ
カイ:花火だってまだ最後一発残ってたはずだ、まだ上がってないって事はきっと俺が導火線をちゃんと焼けてなかったんだろ。
カイ:本当に俺は昔から一人じゃ何もできない。それでもあいつとなら、お前達とならなんだってできた。やってきた。これからも
エマ:カイっ!!
0:エマはカイの頬を叩く
カイ:……痛い。
エマ:現実を…!受け止めてよっ!あの光景が見えないのっ!ここから見ればわかるっ!嫌でもっ。今学院を襲ってるのは、間違いなく異常体!
カイ:うるさい
エマ:私達だけじゃない、タチアナにリック、アンナに、ハゼットも。シャオも!アスカ教官、グローザ、ラインハルト教官だってあの中にいるの!
カイ:うるさいって
エマ:止めなきゃいけない、私達はもうあの時ただ燃えていく家や家族を眺める事しか出来なかった無能のクソガキじゃない!
カイ:うるさいなぁ!黙っててくれよ!
エマ:……
カイ:俺は信じない、行くなら一人で行けよ。
エマ:……そう。分かった
0:エマは屋上のドアを開く
エマ:私だって、信じたいに決まってんじゃん
0:『エマOUT』
カイ:・・・・・・・・・ぁ・・・・・・明日の授業の課題、まだ終わってないや
0:『キャスター、メビウスIN』
0:校庭
シャオ:何が起こってんだこれっ
ハゼット:まったくだ…!せっかくの花火が台無しだっ
シャオ:とりあえずラインハルト教官に連絡を――
ハゼット:いいや、きっと教官陣も対応に追われてる。手をかけさせるのはまずい
シャオ:じゃあさっさと避難しようっ!?
ハゼット:ならんよ。
シャオ:は?
ハゼット:あの声が、聞こえるだろう。既に何名か。死んでいる
シャオ:…っ。だからっ!私達も逃げるんだって!
ハゼット:ならんよっ。シャオ…っ!
シャオ:…
ハゼット:私がここにいる理由は…!そういう暴虐を防ぐ為だ…!それは断じてならんのだっ、シャオ
シャオ:…この。ばか
キャスター:へぇ。かぁーっくいい
シャオ:…!
ハゼット:…君だな。麗しい見た目にそぐわない、下衆は…!
キャスター:あらあら。随分とまあ、色男
シャオ:ハゼットぉっ!
ハゼット:なんだ。
シャオ:あいつの相手すんなっ!特定執行対象だっ
ハゼット:なるほど。つまるところ。ステージ3以上、か。
キャスター:有名人になるのって気分いい物ね。そ。私、キャスター・ゴルバッド。ステージ3の異常体でーす
ハゼット:参ったな。実に、参った
シャオ:参ったからさっさと逃げるよっ、まじで、命がいくつあっても足りないって!
メビウス:キャスター。ここに居たんすか!
キャスター:ああ。ずっと、ここに居たよ
ハゼット:は…?
メビウス:お…?
ハゼット:は、はははっ。はははっ!なんだなんだ、これは、僥倖。
メビウス:あらあらー。久しぶりっす。
キャスター:なあに。知り合い?
メビウス:はい。弟っす
シャオ:…っ!
ハゼット:行きたまえ。シャオ
シャオ:…は?
ハゼット:これは。私の果たすべき宿題だ。こんな所で会えるだなんて夢にも思わなかったよ。姉上
メビウス:そっすねー。なんか雰囲気変わった?
ハゼット:シャオ!!!逃げたまえ!!
シャオ:…!また、また私だけ除け者かよ…!
ハゼット:丁度いいじゃないか。ここであれを殺せば。私は中央に入らずに住む。どうだ、アーヘン卒業後は、雑用係としてでも雇ってくれ
シャオ:何言ってんだこんな状況で!
キャスター:邪魔しない方がいい?
メビウス:別にいッスよー。
ハゼット:姉上。なぜ斯様なことに加担している
メビウス:え?
ハゼット:これではまるで、テロリストではないかっ
メビウス:…はあああ?ちょっと待ってよ。アレジさんの指示でやってるんすよこれ。あの人がテロリストなんて低俗なものの訳なくないっすか
ハゼット:は…?
シャオ:…。
メビウス:そもそもさぁ、姉上だの私だの。なんだその口調。きめーんだよ
ハゼット:待て。
メビウス:なに
ハゼット:今。アレジ、と。そう言ったか
メビウス:言ったけど〜。それが何か?
ハゼット:貴様らの頭は、アレジ・アンドレイだ。とでも言うのか
メビウス:冗談きつぅー。あの人は、アレジ・ロンドン。中央解放戦線。赤い林檎の、リーダーですけどもー
ハゼット:…
メビウス:つーか、ずっと一緒に居たっしょ。何言ってんのおまえ
キャスター:無理もないでしょ。私達赤い林檎に関する記憶はまるまる転移されてる。言われてやっと。「あーそういえば」って感じじゃない?
シャオ:そんな事が、可能なのか
キャスター:まあ。アレジくんなら容易じゃないかな。概念を含む全ての現象が彼の対象内だもの。もちろん、記憶だって
シャオ:(M)…なんで。こんな事に気付かなかったんだろう。という程の。納得感だった。有名人の名前が出てこないくらいの。そんな違和感。私達はずっと、異常体と日々を過ごしてきた…?
ハゼット:笑い話も甚だしい…っ!!
メビウス:うるさ
ハゼット:あの男は。アレジ・アンドレイだ…っ!私の友はそんな男ではない…!
メビウス:げんじつとーひじゃん。だっせー
ハゼット:どうとでも抜かせばいいっ。私は、私の信じた友を信じる…!
キャスター:ひゃあ。本当に色男
ハゼット:御託はいい。君らを殺して、アレジに直接問う。それで全て解決する
シャオ:ハゼット!やめろ!戦うな!
ハゼット:シャオ。私は。今。最高潮に。ブチ切れている
メビウス:ほぉー。ほぉー。向かってくる
ハゼット:友を愚弄され。私の愛した日常を壊し。何より、人を殺した。なあ。メビウス。お前はここに来て。何人殺した
メビウス:覚えてない
0:『メビウスOUT。アスカIN』
ハゼット:下衆が…っ!
シャオ:ハゼットぉっ…!
キャスター:じゃあ私はこっちの子もらおっかな
0:『キャスターOUT。ウィンストンIN』
シャオ:…っ。
ハゼット:シャオ!逃げたまえ!教官陣と合流しろっ!先の実地遠征とは訳が違うっ!
シャオ:……嫌だね
ハゼット:シャオ…っ!意地を張ってる場合かっ!
シャオ:意地の張り時、見誤るな。だよ。もう私は逃げない。私だって、戦える…!
ハゼット:……。だったならば。必ず生きよう。それしか、望むべくもない
シャオ:とーぜん。この中で誰より死にたくねーですよ、私は
0:場面転換
0:第3教室
アスカ:(M)校舎内生徒は、全員死んでいる。息がない。各部が内出血のように腫れている。酷いな。鼻血、吐血。嘔吐。脱糞。逆流。いいや、反転の異常性か。なるはど。大体目星は、ついたな
ウィンストン:あれぇー。
アスカ:ステージ4。ウィンストン・アーリオール。
ウィンストン:まだ居たんですね。人
アスカ:また厄介なのが出てきたものだ、よくもまあ。人の生徒に手を出してくれた…っ!
ウィンストン:怒って…ますね?怒ってますね?これはね?
アスカ:中央政府監察局、準一等監察官。ユノランページ・アスカ。ただ今より執行処分を開始する
ウィンストン:いい男ですねー。身長も高い。顔もいい。生徒思いで何より強そう
アスカ:(M)有効範囲は、死体の状態を見る限り直線上に縦13mほど。自分に近い順から能力反映に至るって所か
ウィンストン:うおっ!しかも足まで早い!小学校の頃モテましたでしょー?
アスカ:(M)至極単純
0:机を蹴りあげた
ウィンストン:お?
アスカ:(M)死角から、叩く…!
ウィンストン:ぼへっ…!
アスカ:(M)一発で仕留める。外すな。頭。頭ならどこでもいい。
ウィンストン:銃はいけませんよ。凶器ですから
アスカ:――っ!
ウィンストン:reversal
0:アスカの右腕は弾け飛んだ
アスカ:づぅっ…!
ウィンストン:はーいまず片腕ー
アスカ:(M)内側から破裂するように右腕が吹き飛んだ。反転。血管に空気が大量に入り込んだか。確定だ、な…!
ウィンストン:おーおー。まだ突っ込んでくる。いいですねー。いい男、ですね!
0:殴った
アスカ:ごぶふっ…!
ウィンストン:ダ、ダ、ダメですよー。いけません。貴方みたいな色男、嫉妬ぉ。してしまうじゃあないですか。Ah、shit。
アスカ:クールタイム中の自衛も抜かりないか…っ。ステージ4。伊達じゃない
ウィンストン:まだ立つー。まず止血しましょうよ、出血多量で死にますよ
アスカ:死に時を選んでられる状況じゃないから、な…!
0:殴る
ウィンストン:ごほっ…!
アスカ:ぉおおっ!
0:蹴る
ウィンストン:あはんっ!
アスカ:(M)クールタイムが分からない。距離を、とる…!
ウィンストン:…痛いですよ
アスカ:ああ。俺も痛い。
ウィンストン:うーん。本当に。色男だ
0:場面転換
0:『ウィンストン、アスカOUT。キャスター、メビウスIN』
シャオ:はあ…。はあ…。
ハゼット:…ごぼっ…。
シャオ:(M)何が起こったか、分からない。頭が、回らない。左足が溶けた。右手は痺れて動かない。なにがどうなってる
ハゼット:…こ、の…っ。
シャオ:(M)異常性を監察するだとか。そんな状況じゃない。ハゼットが
0:ハゼット、激しい吐血
シャオ:(M)死んじゃう…!
メビウス:よっっわー。なんだよ。弱いんじゃん。大口叩くからもうちょい頑張るのかと思ったら、さぁ
キャスター:よく粘った方かと思うけれど。
メビウス:負けてりゃ意味無いすよー
ハゼット:……。すまない、シャオ
シャオ:…なんの謝罪だよ。それ
ハゼット:逃げたまえ
シャオ:また、それかよ…!逃げるべきは君だろ!出血で死ぬぞ!
ハゼット:死なない。私は。
シャオ:死ぬよ!お前は!
ハゼット:先の実地遠征では。君のおかげで私は生き残った。君を信頼している。ここで二人望みのない戦いをするより、も…っ!
0:発砲
キャスター:magnet
メビウス:あぶなー。手癖わる
ハゼット:あの時のように。私を、助けてくれ。シャオ
シャオ:…っ。
メビウス:待ってらんないっすねー
ハゼット:頼んだ。シャオ・ラパン
シャオ:……っ。くそ。くそ、くそっ!くそぉおおっ!
キャスター:いやいや、逃がさないでしょ
ハゼット:待ちたまえ
0:『シャオOUT。ラインハルトIN』
0:発砲。息絶えだえのハゼット
キャスター:…もう。手癖、本当に悪い
ハゼット:行かせまいよ。一歩たりとも。近づかせはせん
メビウス:そんなボロきれみたいな体でなにすんの。限界っしょ
ハゼット:…ナイスガッツ。というやつだ
キャスター:わかんないわァ。意味が。どいて。
0:蹴る
ハゼット:ごふっ…!なら、んよ。
メビウス:おー。りんちりんちっ
ハゼット:ごぶふっ…!がはっ…。
キャスター:なんか。可愛い。加虐心っての?
ハゼット:おえっ…。げほっ…!
キャスター:じゃ。私先行くよーん
メビウス:私も私もー
0:ハゼットは足にしがみついた
ハゼット:行かせん…と…!言ったぞ…!私は…ぁっ!
メビウス:うっざ。なんでそんな頑張っちゃってんの。キモイんですけど
ハゼット:好きなように言え…っ!惚れた女一人守れず、何が男だ…っ!!
メビウス:じゃあ守れてないじゃん。尚更だっさ
キャスター:えげつな
ハゼット:はぁ…。はぁ…。げほっ…
メビウス:私はね。弱い男と、ダサい男が嫌いなんすよ。だから、アレジさんは好きで。あんたが嫌い
0:メビウスはハゼットの首に手を当てた
メビウス:Solution
ハゼット:ごふっ……っ
メビウス:ばいばーい
ハゼット:(M)嗚呼。首元から。皮膚が。筋肉が。骨が。溶解していく。意識が遠のく。シャオは。逃げられただろうか。ラインハルト教官か。アスカ教官か。
ハゼット:(M)どちらでもいい。誰でもいい。シャオさえ生きていれば。それで、いい。
ハゼット:(M)思い返すのは。何気ない日々。体力訓練。体術訓練。座学。様々な学びを得た。
ハゼット:(M)目を覚ませば、学生寮のベッドの上で、カーテンから差し込む光が朝を私に認識させてくれる。
ハゼット:(M)……そういえば。あの時―――
0:『ハゼットOUT。アスカIN』
メビウス:さあ。行こっか。キャスター
キャスター:えげつないね。弟なんでしょ?
メビウス:アレジさんの邪魔するなら敵っしょ
ラインハルト:…。
キャスター:おや。
メビウス:もー。次、誰
ラインハルト:そこに転がってるのは。ハゼットの頭だな
キャスター:…
ラインハルト:答えろよ。バグ野郎
メビウス:そーだよ。首チョンパ
ラインハルト:……そうか。よく。分かった
キャスター:メビウス。先に行っていいよ。あれの相手は私がする
メビウス:え?なんでっすか
キャスター:あれは。ちゃんと強い
ラインハルト:やっぱり。劇的な死って。ないんだなぁ
メビウス:よくわかんないけど。頼んだっすわ!
ラインハルト:なあ。そう思わないか。そこの
メビウス:え。はっっや――
0:蹴り付けられる
メビウス:げぼぉっ…!いっったぁい…!なんすかその蹴りぃ…!
キャスター:やっぱりロゼット・ラインハルトじゃない。驚いた
ラインハルト:私の名前を呼ぶな
キャスター:怒ってるぅー。メビウスー。早く行きな
メビウス:くっ、そっ…!このクソアマ…っ!
ラインハルト:…。
メビウス:(M)死ぬほどきれてんじゃん。こわ。逃げまひょ
メビウス:じゃ、じゃあ頼んだっすーっ!
0:『メビウスOUT。アレジIN』
キャスター:薄情ぉ
ラインハルト:どうして初めから気づけなかったのか。単純なことだったな。ワイスさんが言っていたのはこれか。よく分かった
キャスター:何ブツブツ言ってんの
ラインハルト:うるせぇな。私がブチギレてるって話だよ
ラインハルト:赤い林檎ぉ…っ!
キャスター:あーらら。怖い
0:場面転換
0:『キャスターOUT。エマIN』
0:第4教室
アスカ:(M)あれから。どれだけ時間が経った。分からない。目も見えない。骨も何本折れたか分からない。今俺がどこを歩いてるかも、分からない。あいつはどこに行った。ここは、どこだ
アスカ:…ごほっ…!ごほ。
アレジ:こんばんは。アスカ教官
アスカ:…その。声。アレジ・アンドレイだな。
アレジ:いいえ。アレジ・ロンドンです
アスカ:…は。はは。こんな状態じゃあ、銃も構えられない。お前が今、どんな表情をしているかも。分からない。
アレジ:僕は、笑ってますよ
アスカ:お前らしい。と言えば。らしいな。
アレジ:何か言い残すことは?
アスカ:……。地獄に落ちろ
0:手を向けた
アレジ:SCRAMBLE
0:アスカの首は落ちた
0:『アスカOUT。シャオIN』
アレジ:あ…。
アレジ:っけなーーーーい!あっけない!いやいや!もうちょっと粘りなよっ。準一等監察官ならさぁ!ちゃんとしようよっ。人間様なんだからっ。中央様なんだからっ。君もそう思わない?
エマ:…。
アレジ:ねえ。エマ
エマ:…アレジ
アレジ:なんだい
エマ:…あんた。自分が何をしてるか。分かってんの
アレジ:分かってるよ。あの時も言ったろ。僕と、君達の行く先は違う
エマ:…っ。私は。アレジのこと。友達だと思ってた。いいや、今でも。まだ、思ってる
アレジ:僕もだ。君達は僕の大切な友人だもの
エマ:だったら。もう、こんなこと辞めて
アレジ:それはできない。僕には僕の目標がある。それを手伝うと軽々しく言った君達にも責任がある
エマ:…それは。知らなかったから
アレジ:そう。知らなかったんだよ。君たちが追ってる異常体が、僕だって。それでも言ってくれた。僕の夢を手伝うって
アレジ:でも。カイは僕に銃口を向けたろ。正直、ショックだったなぁ。
エマ:どの口が言ってんの…!
アレジ:ね。僕もそう思う。それでもショックだったんだ。だってほら。友達は別。じゃあ、なかったんだろうか
エマ:……
アレジ:だからさ。エマ。勿論、カイも。
エマ:なに
アレジ:僕と一緒に来ないか
エマ:……
アレジ:…
エマ:違う。違うよ、アレジ
0:エマは銃口を向けた
エマ:一緒に来るのは。あなた。
アレジ:…
エマ:アレジが私たちを騙して。こんな事をして。アスカ教官を。色んな人を、殺した。当然許せない。許すべきことじゃない。
アレジ:そうだね
エマ:このまま捕まっても極刑はま逃れない。然るべき罰がある
アレジ:そうだね
エマ:それでも。私は。貴方を許したい。アレジ
アレジ:…
エマ:世界の誰が貴方を許さなくても。私は。きっと、カイだって。アレジを見捨てない。友達だもん
アレジ:だったら君が僕とこい
エマ:命令しないでっ。私はっ…!貴方をここで殺してでもっ。アレジ・アンドレイを取り戻す…!
アレジ:僕はアレジ・ロンドンだ。君達が二年かけて学ぶはずだった殺すべき、君達の敵。ステージ5の、異常体だ
エマ:あなたはそれで幸せなの…!
アレジ:バカ言うなよ。僕の居場所は、最初からこっちだ
エマ:じゃあ。…じゃあ、アレジ…!
0:涙ぐんだ
エマ:貴方は。私たちとここで過ごした日々が、全部嘘だったって、そう言うの…!本当は裏で殺す命だって、そう思って過ごしてきたの…!?
アレジ:君たちを殺したくないっ。これは本当だっ。だから僕と来いって言ってるんだよ!
エマ:そんなの友達じゃない!脅迫じゃん!隷属だなんてごめんだよ。そうなるくらいなら。私は、アレジ・アンドレイの友達として。
0:構えた
エマ:死を。選ぶ
アレジ:…難儀。だね
エマ:カイは。ここに来て、笑顔が増えた。嬉しかったぁ。アレジ。あんたが居たから。きっと、カイはこの先。なにがあっても大丈夫だって。そう、言ってた…!
アレジ:…君は言ったよ。死を選ぶって。
エマ:私はアレジを信じてるっ!きっと、まだ…!迷ってるんでしょ…!?後ろめたいって…!思ってんだろっ!アレジ!!
アレジ:(M)黒くて。湿気が漂ってて。ただただ重い。そんな何かに。頭が埋め尽くされる感覚だ。あの時も。こうだった
エマ:だから私が、やめさせる!貴方にもう、誰も殺させない!ここで止めてみせるっ!
アレジ:(M)後に引けない。行く先は闇。辿ってきた道も分からない。だから。ただひたすらに。ひたむきに。前へ
エマ:信じる…!信じてるっ!私は…!私達は、最後まで貴方を信じてみせる…!貴方はもう、誰も殺さない!私たちの友達は、そんな奴じゃない…!
アレジ:(M)邪魔だ。障害だ。僕の行く先を防ぐな。そっちを照らすな
エマ:そうでしょ…っ!!カイぃ…っ!
0:立ち尽くすカイ
カイ:……は…?
アレジ:…やあ。カイ
カイ:待て。アレジ。
エマ:…もう一度言うよ。私は、貴方を信じ―――
カイ:アレジっ!!!やめろぉおっ!
アレジ:―――SCRAMBLE。
0:エマの首が落ちた
0:『エマOUT』
カイ:……ああ。
アレジ:……は。
カイ:あああっ…
アレジ:はははっ。
カイ:あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!
アレジ:ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!
カイ:……ア…。
アレジ:…はぁ。ご覧よ。カイ。学院生徒、並びに職員はほぼ全滅。ひとつ同じ屋根で飯を食ったやつも。模擬戦でボコボコしたやつも。勉強教えてくれたやつも
アレジ:みんな。死んだ
カイ:……。
マルボロ:派手にやってんなぁ。おい
アレジ:やあ。マルボロ。首尾は?
マルボロ:ナンバーズが向かってるんだとよ
アレジ:やっと重い腰があがったね。
マルボロ:さっさとトンズラしちまおう。
アレジ:ああ。その通りだ、ね。
マルボロ:…そこのそいつは、いいのか?
アレジ:……。
カイ:―――。
アレジ:……うん。もう、いい。
マルボロ:そーかい。そんじゃ行こう。粗方目的は達成したろ。グローザが働いてなくて参ってんだ
アレジ:だろうね。クビだなありゃ
カイ:…っ…。
0:カイは銃口をアレジに向けた
アレジ:また。銃口を僕に向けるのかい。
カイ:…
マルボロ:おいアレジ、構ってる場合かよ
アレジ:…。
0:アレジはカイに歩み寄った
マルボロ:おーい、アレジ
アレジ:カイ。僕が憎い?
カイ:…
アレジ:君は今。端的に言うと。きっと怒っている。僕を殺したいほどに。君は僕と同じだ。
カイ:…殺す。
アレジ:きっと。その引き金を引く。僕のコメカミに向けて。弾丸を放つ。結果を暴力に委ねる。君も、僕と同じだ
カイ:…殺す、殺す殺す殺す殺す殺すっ
マルボロ:おいっ!アレジ!何してんだお前!
アレジ:君が、僕とどう違う?教えてくれよ。カイ
カイ:あああああああああああああっ!!
マルボロ:アレジぃっ!!
0:発砲
0:『ウィンストンIN』
アレジ:(M)頭蓋骨が、割れた。一発。たった一発の弾丸が、眉間を貫いた。
アレジ:(M)ーーー少しだけ、感謝したい。
アレジ:(M)引き金を引いてくれた事を
アレジ:(M)――少しだけ。嬉しかった。
アレジ:(M)引き金を、引いてくれた事が
0:場面転換
0:『アレジOUT。オリバーIN』
0:校門前
シャオ:はあ…っ。はあ…!誰かっ…!誰か居ないのか…っ!誰でもいい…!
0:走っている
シャオ:誰かぁああっ!生き残ってるのは…!誰でもいい…っ!誰か居ないのか…!
シャオ:(M)走っても。走っても。走っても走っても。走っても。走っても。走っても。周りに見えるのは、死体だらけだ
ウィンストン:待ってくださいよー。
シャオ:(M)後ろには、異常体。追いつかれたら。死ぬ。殺される。私よりも、ハゼットが危ない。
ウィンストン:ねー。聞いてます?
シャオ:誰かあああっ。誰でもいい、誰でもいいんですっ!誰かっ!居ませんか…っ!
シャオ:(M)ハゼットとの連絡がつかない。ラインハルト教官とも。アスカ教官とも。カイも、エマも、誰とも。連絡が、つかない
シャオ:(M)誰でもいい。誰か…
シャオ:…たすけて…ください…っ
オリバー:ああっ。助けようとも。
シャオ:…え
ウィンストン:おや。
オリバー:よく、生き残った。偉いぞ君は
シャオ:(M)身長、170センチそこそこ。
オリバー:遅れてすまない。ニューヨークの一件はリカルディオに任せてきた
シャオ:(M)黒いロングベストを身にまとった女。馬鹿でも知ってる
オリバー:君は茶でもシバいて。待っていろ
シャオ:(M)ステージ5以上にのみ許された称号。中央政府執行部。ナンバーズ執行官。
オリバー:オリバー・カーネンハーツ。只今より。アーヘン開放作戦に合流する。
シャオ:(M)中央の、最高戦力の一人だ
ウィンストン:おー。これは。ナンバーズの
オリバー:む。君は!あれだな!赤い林檎の!
ウィンストン:えー。ウィンストン・アーリオールと言いますー。どうぞよしなに
オリバー:そうか。アレジ・ロンドンに加えてステージ4まで出張っているのか。本当に。よく生き残った
シャオ:あ…
オリバー:あとは。私たちに任せろ
ウィンストン:やる気満々ですね。えー、参りました。ナンバーズが来ている上に。あの人も、来ていますね?アストレア・アステル
オリバー:いやなに。君一人。私ひとりで事足りるとも
ウィンストン:ほー。舐められている
オリバー:いいや。違う。私が上だと。そう言っている
0:場面転換
0:『シャオ、オリバー、ウィンストンOUT
0:ラインハルト、キャスター、アレジIN』
0:第4教室
マルボロ:はあ!?もう着いたのかよナンバーズっ!早すぎんだろっ。誰が来てる?オリバー?誰だっけ。あのー、すぐ茶しばくやつか
マルボロ:わぁーった。どの道アーヘンは再起不能だろ。さっさと引き上げろ。死ぬぞお前。こっちも早急に終わらせるっ。
0:カイは座り込んでいる
マルボロ:…さぁて。どうしたもんかね
0:場面転換
0:校庭
キャスター:死んじゃうっ…!死んじゃう死んじゃう死んじゃうわぁ…!
ラインハルト:ごほっ…!
キャスター:貴方がぁっ…!
ラインハルト:(M)磁力を操る異常性。僅かでも磁力を持つものなら自在に扱える代物。その気になれば鉄塔丸ごと叩きつけられるってか。冗談じゃない
キャスター:確かに貴方は強いけれど。困りもの。私の方が強かった
ラインハルト:…言ったろ…ブス…!
キャスター:あら。私こう見えて、結構モテるのだけれど
ラインハルト:(M)アスカとの連絡がつかない。誰が生き残ってるのかまるでわからん。どーなってやがる
キャスター:magnet
0:キャスターの腕に鉄くずが集まる
ラインハルト:ったく、割に合わない…!
0:着信音
キャスター:…はぁい。もしもし。なに。うん。うん。…あー、分かった。じゃあ撤退する。
ラインハルト:…なんだ。お前も、撤退か。電話に助けられる事が多いな
キャスター:お前もってなに。ナンバーズとアストレアが来たんだって。これじゃお手上げだから、帰ることにした
ラインハルト:さっさと行け、ドブス
キャスター:被害者面しないで。私も結構殴られたのよ。貴方に。骨、繋がるかしら
ラインハルト:だったらもっと、しんどそうにして欲しいもんだな
キャスター:ポーカーフェイスはモテる女の基本なのだけれど。それじゃあ、さよなら。ロゼット・ラインハルト
0:『キャスターOUT。グローザIN』
ラインハルト:…ああ。くそ。
ラインハルト:(M)体中が痛い。頭も痛い。ダルい。疲れた
ラインハルト:……。煙草が、吸いたい
0:場面転換
0:第4教室
カイ:……。
マルボロ:あー。お前、なんてったっけ。名前
カイ:…。
マルボロ:だんまり。まあいいけど。
0:マルボロはしゃがんだ
マルボロ:あんがとな。
カイ:……は?
マルボロ:数ヶ月、うちのアレジが世話になったんだろ。お陰様で楽しそうにしてやがったよ。作戦決行ゆっくりでいいって言うくらいにゃ
カイ:…何言ってんだ…あんた
マルボロ:何となくだが。お前とアレジはよく似てる気がする。そーゆー匂いだ。ただ真っ直ぐで。馬鹿で、友達思いで。そんでお前。負けず嫌いだろ
カイ:(M)何を言ってるのか、理解できない。したくもない
マルボロ:俺じゃなくて、お前なら。なにか違ったのかもしんねぇな
カイ:(M)もういいじゃないか。アレジは、エマを殺した。アレジは、俺が殺した。ただそれだけだ。それ以上はもう、何も無い
マルボロ:ほれ。アレジ。いつまで寝てんだ。さっさと行かねーといよいよ袋のネズミだぞ
アレジ:…す。く、らん。ぶる
カイ:……は?
マルボロ:改めて。俺はマルボロ・セルベルト
カイ:(M)もう何もかも、どうでもいい。
アレジ:ぁぁ…っ。
カイ:(M)ただ分かるのは。散らばった血液や脳汁が、アレジの体に巻き戻っていく事実だけだ
アレジ:あああああっ…。っと
カイ:(M)なんだ。元気じゃないか
アレジ:ふう。スッキリした
マルボロ:言ってる場合かっ。いよいよやべぇって!全員回収は無理だっ。幹部だけでも引き連れっぞ
アレジ:うん。そうしよっか
カイ:…待て。
アレジ:なんだい
カイ:殺しただろ。お前は。俺が…!なんで生きてんだお前…っ!
アレジ:ひどいな。僕達、友達だろ?
カイ:この…っ!
0:銃を構えた
マルボロ:―――AXXELLっ!
カイ:ごほっ…!
0:カイはその場に倒れる
マルボロ:わりぃな。恨むなよ
0:激しく嗚咽する
カイ:ぉぇ。…ま、て。
アレジ:…
カイ:…まて…!
アレジ:カイ・シグス。
カイ:―――。
アレジ:もし、もしも。その時が来たら
0:アレジは少し笑っていた
アレジ:お前が「僕」を、解放してくれよ
カイ:…アレ、ジ…!
マルボロ:…行くか?
アレジ:ああ。僕はグローザを回収しに行くよ。マルボロはその他を頼む
マルボロ:了解だ
カイ:アレジぃ…!!
アレジ:……。またね。カイ
0:アレジは空に手を向けた
アレジ:SCRAMBLE
カイ:ーーーっぅ…!
カイ:ァアアレジィィーーーーーーーーッ!!
0:『マルボロOUT。アストレアIN』
アレジ:(M)俺は馬鹿だから、前に進むしかない。後戻りができない
アレジ:(M)この一本道を、歩いている。
アレジ:(M)ただひたすらに、ひたむきに、前へ
0:場面転換
0:アーヘン近郊。数多の亡骸を見つめている
アストレア:(M)アーヘン学院生徒。職員。どれも息はない。
アストレア:到着が遅れ、申し訳ありません。どうか、魂だけでも。神のみもとに
アストレア:……。オリバー。はい。アストレアです。はい。たった今到着しました。はい。それでは、後ほど
アストレア:報告。中央政府執行部、総監督武官。アストレア・アステル。
アストレア:只今より。アーヘン開放作戦に合流します。
0:場面転換
0:喫煙所
ラインハルト:…はぁ…っ。はぁ…。
ラインハルト:(M)何度も。何度も何度も。何度も通った。喫煙所。中央からアーヘンに来てからこれ五年。
ラインハルト:(M)嫌という程見慣れた道は。今、生徒の死体で埋め尽くされている。見慣れた道に、見慣れぬ物。
ラインハルト:(M)そこの角を曲がると。いつもの。喫煙所が、ある
グローザ:…
アレジ:っと、やあグローザ。また煙草かい?飽きないねぇ
グローザ:…ほっとけ
アレジ:まったく。君が全然仕事してくれないから要らないところでヒヤヒヤしたよ。まぁその分良い約束も出来たけどね
グローザ:そうか。
アレジ:ほら行くよグローザ。ナンバーズに、アストレアまで来てる。学院生徒職員は粗方他の皆が始末してくれたし、さっさとお暇してもぬけの殻にしよ
グローザ:…いや、そうもいかないみたいだ
ラインハルト:……は?
アレジ:…あらあら
ラインハルト:…グローザ。今のは。どういう意味だ
アレジ:ちぇっ。キャスターの奴、チキったな?
グローザ:…教官も、一本。ですか
ラインハルト:グローザ!答えろ!今の会話はどういう事だ!それに学院関係者が全員死んだって、そりゃどういう
アレジ:その言葉のままだよラインハルト教官。
ラインハルト:お前が私を教官と呼ぶな。反吐が出る
アレジ:あら悲しい。まぁいいや。残念ながら君は学院生徒を誰一人として守れなかった。グローザ含む。僕ら赤い林檎が全員殺したから
グローザ:…
ラインハルト:…グローザ…っ。お前なぁ…っ!
グローザ:…これはお説教、ですかね。教官
アレジ:ほら、さっさと殺して逃げるよ。あぁ、それとも。僕がやろうか?
グローザ:すっこんでろ。私がやる
アレジ:あ、そう。でも彼女、この短時間である程度動ける程度にゃ体力戻ってる。相変わらず化け物じみた体力馬鹿だ
グローザ:問題ない。…アレジ、こんな時にすまないんだが
アレジ:おお。珍しい。なんだい?
グローザ:残ってる花火、打っておいてくれないか。花火が終わるまでは待ってくれとメビウスには伝えたんだが聞いてくれなくてな
アレジ:なんで一個余ってるって知ってるんだ・・・まぁ。いいけど。君も案外ロマンティストなんだね。でも悪いけど急ぎなんだ。僕らだけでも先に脱出用のヘリに逃げ込むよ
グローザ:構わない。問題なく事は済ます。
アレジ:はあ。わかったよ。そんじゃあね教官。
ラインハルト:ここで逃がすのは不本意の極みだが、今の私じゃ二人とも仕留めきれる自信もないからな。さっさと失せろ
アレジ:随分と色んな人から嫌われたものだ。悲しいね
アレジ:SCRAMBLE
0:アレジは姿を消す
ラインハルト:…さてグローザ。さっきあの馬鹿が言った通り、多少なりとも私の体力は戻っている。私の体力の無尽蔵さを知らんわけじゃないだろ
グローザ:はい。
ラインハルト:もう敬語など要らんだろうに。まぁいい。お前の異常性についても理解した。辻斬り。他人の思考を、解読し、解体する
グローザ:…
ラインハルト:能力バレした状態で私とやり合うのは、如何せんふりだと思うが
グローザ:ええ。私も。そう思います
ラインハルト:もう。使えるんだろう。異常性
グローザ:…はい
ラインハルト:……。お前は。お前だけは。誰も殺してないんだろう
グローザ:…
ラインハルト:私の権限で庇ってやる。お前は。誰も殺さなかった。だから、この場で降りてくれ
グローザ:貴方は。本当に優しい。貴方は。本気で。本当に。そう思ってしまっている
ラインハルト:…ああ。本心だとも。だから。言うことを聞け
グローザ:…断ります
ラインハルト:教官命令でも、か
グローザ:自分は、不出来な生徒ですので。
ラインハルト:そうか
グローザ:最後くらい格好、つけときます?
ラインハルト:…はは、まぁ。いいだろう。付き合ってやる
グローザ:…アーヘン高等学院所属。
グローザ:――いえ。
グローザ:赤い林檎が一柱。
グローザ:アンダンテ・S・グローザ。
グローザ:卒業式を兼ねて、胸を貸して頂きます」
ラインハルト:言い直すな、寂しいやつめ。
ラインハルト:アーヘン高等学院教官、兼、一等監察官。ロゼット・ラインハルト。
ラインハルト:不出来な生徒への説教として、地獄の卒業試験を執り行う。殺す気で行く。死ぬ気でかかれよ。
グローザ:はは・・・。どの道、死ぬんじゃないですか
ラインハルト:はは、今度は全力で頼むよ。
ラインハルト:それじゃあ、行くぞ。グローザ
グローザ:…はい。ラインハルト教官
0:場面転換 打ち上げ場
アレジ:よっ…と。うん。バーナーの残りがあってよかった。
アレジ:…長い。長い。一日だったな。
0:場面転換 校舎
カイ:・・・・・・エマ・・・
0:場面転換 喫煙所
ラインハルト:おぉおおっ!
グローザ:っ・・・!
ラインハルト:そらそらどうした!尽くしてみろっ!最善を!尽くしてみろっ!精一杯を…!
グローザ:えぇ・・・そうですね・・・!
グローザ:Modechange
ラインハルト:それがお前の…。いいや、もはや何も言うまい…!
グローザ:ーーー「espada」(エスパーダ)
ラインハルト:・・・っ・・・!
グローザ:「・・・」
0:場面転換 打ち上げ場
アレジ:そぉれ、僕ら赤い林檎の作戦成功を祝っての花火だ。存分に浸れよ。
アレジ:SCRAMBLE!
0:場面転換 校舎
カイ:・・・・・・ぇ・・・花火・・・・・・?
0:場面転換 アーヘン高等学院入口
カイ:(N)「・・・全てを失っても・・・それでも尚・・・」
アストレア:…あれは。花火、というものでしたか。あまりにも。似つかわしくない。
0:場面転換 喫煙所
カイ:(N)「そこから見えた花火は」
ラインハルト:・・・はは・・・・・・やっと・・・・・・全力で・・・・・・向き合ったな・・・・・・
グローザ:・・・
ラインハルト:・・・・・・ははは・・・合格だ、グローザ
カイ:(N)涙が出そうな程、綺麗だった。
0:場面転換 打ち上げ場
0:『ラインハルトOUT。マルボロIN』
アレジ:うんうん。いい花火だ。
アストレア:確かに、良い花火ですね、アレジ・ロンドン。
アレジ:げげっ!アストレア〜!もう来たのかい?勘弁してよ
アストレア:アレジ・ロンドン。貴方はどうして
アレジ:あぁ〜説教なら聞きたくないね
アストレア:答えなさい!
アレジ:…
アストレア:貴方は5年前とはまるで変わってしまった。あの時、貴方を裁けなんだ私にも非がある。やはり雛には、険しすぎた。
アストレア:貴方は。一体。何を思って。どこを目ざしているのですか
アレジ:行先なんて知らないよ。ただ…
0:アストレアはアレジの瞳に寒気を感じる
アレジ:愚かしい程に真っ直ぐな奴ってだけ。らしい
アストレア:・・・アレジ・ロンドン・・・
アレジ:さて、詮索はこの辺りにしてくれ。じゃあね
アストレア:・・・
アレジ:・・・逃がしません、は、無いのかい?
アストレア:貴方は、誰ですか
アレジ:は?なにさ急に
アレジ:僕はアレジ・アンドレーーーーー
アストレア:・・・
アレジ:・・・ぁ
アストレア:貴方はアレジ・ロンドン。
アストレア:元4等監察官。現在はテログループ赤い林檎の主犯として中央から追われている。貴方は――――
アレジ:黙れよ、アストレア・アステル
0:アレジは笑っていない
アレジ:それ以上言ったら、「俺」は怒ってしまうかもしれない
アストレア:…
アレジ:またねアストレア。二度と会いたくないよ
アレジ:SCRAMBLE
0:アレジは姿を消す
アストレア:…やはり貴方は、どう足掻いても。人間ですよ。アレジ・ロンドン。
0:場面転換。屋上
マルボロ:おー。アレジ、戻ったか!お前とグローザ以外もう飛ばしたぞっ
アレジ:そうか。待たせてすまない
マルボロ:あれ。グローザは
アレジ:残るらしい
マルボロ:…そっか。お前がそれでいいなら、俺はなんも言わねーよ。ほれ、乗った乗った
アレジ:ああ
マルボロ:……。なんかこうしてると、中央抜け出した時のこと思い出すな
アレジ:そうだな。
マルボロ:…腹、減ったな。
アレジ:そうだな。
マルボロ:なんか食って帰るか?
アレジ:そうだな。
マルボロ:…
0:マルボロはアレジの頬を両手で叩く
アレジ:…っ。なにするんだマルボロ
マルボロ:アレジ。俺はお前の友達だ。親友だ
マルボロ:お前がどんだけ道逸れても、お前が決めたことなら。死ぬまで着いてってやる。
マルボロ:あん時も言った。自分で決めたんなら。
マルボロ:―――ちゃんと笑え。
アレジ:…………ああ。
0:頬を触る
アレジ:僕は。そんな顔してたか
アレジ:ごめんね、ちょっと調子悪かったかも
マルボロ:おう。気にすんな
アレジ:さて。帰ろう、マルボロ
マルボロ:おう。で。グローザは、本当によかったのか
アレジ:いいんじゃないかな。生き残れればラッキー、って所だろうけど。
0:アレジは遠のくアーヘン高等学校を見つめた
アレジ:・・・・・・羨ましい。
0:『アレジ、マルボロOUT。
0:ラインハルト、オリバーIN』
0:場面転換。喫煙所
0:グローザは動かなくなったラインハルトを眺めている
グローザ:・・・・・・やっぱり。一度目の実戦任務の時から。気付いてたんじゃないですか・・・私が異常性を隠し持っていた事・・・
グローザ:その上で僅差での勝利・・・ははは。
グローザ:・・・これじゃあ、赤点ですね
0:アストレアが現れる
アストレア:っ・・・これは・・・
グローザ:(M)・・・アメリカのスラム街で生まれて、昔からぶっきらぼうだった私は友達と言うものとは無縁だった。
グローザ:(M)スラム街の連中にとって私みたいな気弱で抵抗もしない奴は格好の的で、私は様々な屈辱に遭ってきた。
グローザ:(M)親も死に、生き場所が無く、学もない私が行き着いたのはマフィアグループくらいだった。
グローザ:(M)そこでの日々は、より酷いものだった。私はそこで。異常体と呼ばれる存在になった
グローザ:(M)そして私は「辻斬り」として中央に引き渡された。
グローザ:(M)監獄の中で。とある日「彼ら」が現れた。
グローザ:(M)私の事はただの戦闘員程度にしか考えて無かっただろうが、静かな日々では無くなった。
グローザ:(M)そして。ここに来て貴方と出会った
ラインハルト:(回想)お前も煙草か、グローザ
グローザ:(M)私を本当に人として向き合って見てくれたのは貴方が初めてだったのかもしれない。
ラインハルト:(回想)馬鹿お前。頼みだよ
グローザ:(M)私に。命令ではなく。頼み事をしてきたのは。貴方が、初めだった
ラインハルト:(回想)ふは。何なら文化祭当日、私と二人きりで過ごすか?
グローザ:(M)ある人は言った。私には、人間性というものの一切が欠落していると
ラインハルト:(M)だから。今を楽しもう。一緒に
グローザ:(M)もし仮に。私がそうならば。今、どうしてこんなにも。
ラインハルト:(回想)・・・綺麗だな。花火。
グローザ:「・・・えぇ。とても。綺麗ですよ。花火も。貴方も。」
0:アストレアが口を開く
アストレア:アンダンテ・S・グローザですね。
グローザ:アストレア・アステル。執行部、監督武官・・・。もう来たのか。
グローザ:いや、逆にここまで待ってくれたのか。
アストレア:…ラインハルトからの報告では。貴方はテロ行為に一切加担していない。との事でした
アストレア:ですが。貴方は一度収容施設脱走しており、赤い林檎構成員として中央からは即刻処分が降りている
アストレア:…貴方は。衝動を持って行動していない。殺そうと思って。殺していない。
アストレア:なぜそんな方が、こんな事をしているのか、私は不可解で仕方がない
グローザ:何故・・・か・・・。そうだな・・・
アストレア:・・・
アストレア:(M)花火の最後の音が響いた。
アストレア:その音で、きっと彼女の言葉は「二人」にしか聞こえない程度の音量までかき消された。
グローザ:「ーーーーそれが・・・私がこの世界にナイフを突き立てた理由だ。」
アストレア:・・・そうですか。
0:グローザは煙草を加えた
グローザ:――ああ。ちょうど、残り二本か
アストレア:…特定執行対象。ステージ4。アンダンテ・S・グローザ
0:グローザは煙草に火をつけた
グローザ:いつか。一本。タバコ寄越す約束。していましたよね。教官。
アストレア:貴方を、中央政府の名の元。執行対象とします。
グローザ:(M)ふと。風が吹いて。煙草の煙が目に入った。
アストレア:どうか。安らかに
グローザ:「―――痛かった。」
0:場面転換
0:二時間後
カイ:(M)なぁ聞けよアレジ。俺は。さぁ・・・お前が赤い林檎だって自白した時。本当はもうそれが、嘘じゃなくて、それで全部なんだっ、て分かってたんだよ
カイ:(M)お前の目を見たらそれが嘘だって思えるわけもない。そのくらいお前の目は真っ黒で、奥が見えない。ひたすらな黒だった。
カイ:(M)・・・でもさぁ、情けない話・・・。迷ったんだ。俺は。自分が今まで心から憎んできた相手がお前だって分かってしまった時に
カイ:(M)俺はお前を・・・許しちまいそうになった。
カイ:(M)でも今は・・・怒りと悲しみしかない。
カイ:(M)――あれから。どれほど。時間が経っただろう。
オリバー:アっさん!こっちだ!
アストレア:もし、そこの方。
カイ:…。貴方は。
アストレア:…!息がありますか、良かった。
カイ:…アレジは。アレジ・ロンドンは、どうなった…
アストレア:…すみません。私の力不足ながら。取り逃しました
オリバー:君のせいじゃないだろう。
アストレア:…いいえ。私の責任です。どうか許してください
カイ:そうか…。まだ生きてんのか。あいつ
オリバー:…
カイ:―――よかった。
アストレア:…え?
カイ:あいつは。俺の手で必ず。殺すと決めたんだ
カイ:――だから、生きててくれて良かった。
オリバー:(N)アストレアが見たカイの瞳には曇りひとつなかった。歪んでいるようで、とても真っ直ぐだった。それは純粋な
カイ:…アレジ・ロンドン。お前は死んだ方がいいよ。お前みたいなやつがいるから、俺は今。ここに居るんだろ。なあ
カイ:だからさぁ。
オリバー:(N)純粋な、殺意。
カイ:「どうか。俺の腕の中で。死んでくれ」
アストレア:……。貴方の、名前を聞かせて頂いても
カイ:……。俺は。カイ
0:
カイ:――カイ・シグスだ。
0:『復讐者達の終末』