復讐者達の午後
0:『復讐者達の午前』
0:登場キャラ
カイ・シグス:男。
エマ・ワトソン:女。
アレジ:男。
シャオ・ラパン:女。
ハゼット・ワーグナー:男。
グローザ:女。
ロゼット・ラインハルト:女。
バウンディ・バルバドーサ:男。
ポルジッコ・レオン:男。
ザックス・シェアザード:女。
0:『復讐者達の午後』
0:『ラインハルト、バウンディ、ザックス、ポルジッコ、カイIN』
0:ロシア北西部。バグテリア法外特区
バウンディ:(M)俺の名前はバウンディ・バルバドーサ。ニュージーランドの貧民街に産まれた俺の人生は、本当にクソッタレたものだった。強盗。殺人。強姦。賄賂。その全てに翻弄された人生だった
0:バラエティ本社ビル。地下21階。
0:デザートハウス
バウンディ:(M)俺は思った。全て克服しなければ。飢えるような空腹にも、裂けるような痛みにも、死にたくなるような憂鬱も、克服しなければならないと思った。だから俺は―――
0:縦幅4m程のガラス瓶が割れた
バウンディ:―――っぷあっ…!!はぁ…っ。はぁっ…。おえっ、おえええっ。
バウンディ:(M)頭が痛い。体が重い。周りに転がってるのはなんだ。ガラス片?水浸しだ。くせぇなこの水。消毒液?わっかんねぇ。意識が朦朧としてる。酸欠みてぇな状態だ。ああ、とりあえず、頭が痛い。
ザックス:予定より早いな。
ポルジッコ:誤差三日前後と記載してあったろ。予定通りだ。生産管理もザルで務まるわけじゃない
バウンディ:(M)誰だこいつら、長身の仏頂面と、マスクをつけた金髪の女。どっちもバーテンみたいな格好してやがる。だせぇ。
ポルジッコ:起きろ、バウンディ。
ザックス:いつまで寝ぼけてるつもりだ。出社時間だぞ
バウンディ:出、社…?
バウンディ:(M)舌が回らねぇ。いったいどんだけこのガラス瓶の中で寝てたんだ俺は。そんでこのふたり、どっかで見た気がする。どこだっけなぁ
ポルジッコ:社訓を読め。
ザックス:社訓を読め。
バウンディ:(M)なんだこいつら。何言ってるか分からない。社訓ってなんだ。
ポルジッコ:社訓を読め。
ザックス:社訓を読め。
バウンディ:(M)ああ、思い出してきた。こいつら、俺を拾ったマフィアの…
ポルジッコ:社訓を読め。
ザックス:社訓を読め。
バウンディ:(M)そんで、俺、このカプセルに入れられて…いや、入ったのか。どっちだ。わっかんねぇ。
ザックス:おい。
バウンディ:?
0:ザックスはバウンディの頭を掴んだ
ザックス:社訓を―――
0:その頭を地面に叩きつける
ザックス:読めっつってんだよぉーーっ!
バウンディ:ぶごっっっ
0:何度も叩きつける。ザックスは止まらない
ザックス:てめぇっ!は!そん!な!こと!も!出来ねぇのか!こら!この愚図!
バウンディ:ちょっ、やめ、死、ぬ
ザックス:発声器官がありゃ猿にもできる!!つまり、よぉ!その辺で鼻水垂らしてるガキにだって出来る、事がァっ!お前にぃっ!できないっ!どーーすんだよっ!お前に費やした経費っ、てめぇに返せんのかっ。
0:ザックスはバウンディの顔を持ち上げ見つめる
バウンディ:……っ!
ザックス:てめぇが汚ぇ汗水流して働いた一生分の給料でも足りねぇし、臓器全部売っぱらったって10ルーブル握りしめて焼肉行くようなもんなんだよ。分かったらさっさと社訓読めよ、おいこら。
バウンディ:がほっ…。おえっ、。
ザックス:まだ読まねぇのか、このタコ――――
ポルジッコ:待て待てザックス
ザックス:ああー?
ポルジッコ:そいつ死ぬぞ。
ザックス:読まねぇからなぁ、社訓
ポルジッコ:単純に、知らないんじゃないのか
ザックス:社訓をぉ?
ポルジッコ:俺たちだって入社当日は知らなかった。そいつも知らない。存外当然の事だろう。そして何よりそいつが死ぬ。
バウンディ:おえっぁ…
ザックス:…確かにそうだ。すまなかった、許して欲しい
バウンディ:(M)な、な、なんだこのイカレた女はぁっ!?情緒どーなってんだよ、顔の骨、生きてんのかこれっ。歯、何本折れたんだよっ、くそっ。ちゃんと飯食えんだろうなっ
ポルジッコ:まだ記憶が混濁してるんだろう。初期不良みたいなものだ。
ザックス:推定ステージは2前後か。彼女のようにはいかないな
ポルジッコ:あれはロックスミス兄弟に次ぐ社長が認めた最高傑作だぞ、そうポンポンとは出てこない
バウンディ:(M)何を言ってるんだ、こいつらは
ポルジッコ:あー、置いてっちまったな。一応、初めましてと名乗っておく。
0:煙草に火をつけた
ポルジッコ:ここはバラエティ社、異常体生産施設、デザート・ハウス。俺はここの生産管理を任されている。ポルジッコ・レオンだ。
ザックス:あー、今の粗相を再び謝る。すまかった。私はザックス・シェアザード。品質管理課だ。
バウンディ:(M)ああ、完全に思い出した。こいつら、あれだ。
ザックス:1998年。11月21日。午後3時12分。生産管理から、バウンディ・バルバドーサの引渡しを確認。以降、最終工程に移る
バウンディ:(M)異常体って、奴らだ。
ザックス:威力実験地域はイタリア。フィレツェだ―――
0:『ザックス、バウンディ、ポルジッコOUT
0:エマ、シャオ、アレジIN』
0:――一ヶ月前
カイ:(M)1998年。10月10日。アーヘン高等学院、第124期生は、皆不出来だが、出来た生徒などいてたまるか。と、ラインハルト教官は笑っていた
カイ:(M)皆、それぞれの出来ること、やれる事、目標を掲げ尽力している
カイ:(M)10月11日。基礎訓練。持久走、座学
エマ:だいぶ慣れてきたよ〜20キロ。凄い?私、凄くない?
アレジ:うんうん。すごい凄い、凄く偉い
カイ:どけ。アンドレイ
アレジ:なに。今日もやんの?好きだねぇカイも
カイ:邪魔だからどけと言ってるんだ、チンたら走るならもっと脇の方を走れよ
アレジ:ははぁ〜ん、泣きべそかかせてやらぁ!
カイ:やれるもんならやってみろっ!
エマ:あの二人は変わらないなぁ。仲良しだ
シャオ:私には脳筋トリオにしか見えませーん
エマ:なんで私まで含まれてるの!?冤罪じゃん!
シャオ:だいたい一緒だよ
ラインハルト:(M)度重なる訓練に、泣きべそかいて、汗水垂らして、嫌な顔百個浮かべながらも、訓練を全うしている
カイ:(M)10月16日。基礎訓練。座学。対人戦訓練
シャオ:いけーっ!エマ〜!
エマ:どっっっせい!
アレジ:あっぶなっ!
エマ:あれー、絶対決まると思ったのにこれ
アレジ:いや決まってたよ、よかったね僕がチビで
エマ:ああ、身長差ないから上手くハマらなかったのか
カイ:エマ〜、さっさと終わらせろ〜
アレジ:うっさい野次っ
0:『エマOUT。ハゼットIN』
カイ:(M)10月26日。期末テスト。交渉の為の国語力、土地勘を理解する世界史。異常体の生態、発動条件に元ずく推理論。物理学を元にした予測演算等。
カイ:(M)死ぬほど難しかった
アレジ:おお、グローザには勝った。セーフっ
ハゼット:ふむ。12位か。悪くは無いな
シャオ:ひゅ〜っ。二位〜っ!ギリ悔し〜!
ハゼット:上々じゃないか
カイ:アンドレイ。お前何位だ。何点だ
アレジ:え。総合213点。25位だけど
カイ:勝った
シャオ:カイ〜、アレジに勉強で勝とうとするなんて大人気ないぞ〜
ハゼット:友として言おう、競う相手を見誤るな
カイ:確かに。蟹にじゃんけんで勝って喜んでるようなもんだしなぁ
アレジ:どーゆー意味だよ
シャオ:さて!期末テスト終わったし!明日休日〜!
ハゼット:ああ、来たな。この時がっ!さあシャオ!今日こそ私と行こう!んんデートに!
シャオ:とりあえず教室戻ろ〜
ハゼット:ああ!立ち話も乙だからな!
0:『シャオ、ハゼットOUT。
0:エマIN、グローザIN待機』
カイ:乙なんじゃないか。何を言ってるんだあいつは
アレジ:いやぁ、ハゼットもご執心だ。女なら誰でも良さそうに見せかけて一途なんだもんなぁ
カイ:どういう事だ
アレジ:カイはさぁ、もうちょっとさぁ
カイ:あ?なんだ
アレジ:えーーーっ。自覚ないの!?
カイ:なにがだよ
アレジ:えー。
エマ:なんかね。こう、もっと
アレジ:ブワっとしようよ
エマ:いーや、キュゥンっだね
カイ:俺にも分かる言葉で話してくれ
アレジ:こーりゃだめだ唐変木、苦労するねエマ
エマ:どーゆー意味だ
アレジ:ぷっ。そのままの意味ですケド。ぷっ
エマ:おいっ!
アレジ:いたたたっ!はい!暴力!訴訟!民事訴訟!
カイ:なんだそれ
ラインハルト:(M)九月十日。アーヘン生徒諸君は二度目の実戦任務に赴いた。ステージ1の異常体が五体。結果は―――
カイ:エマ!そっち行ったぞ!
エマ:はいはいさ〜っ。
アレジ:うーん。本日も晴天なり
カイ:呑気か。3.2.1でかかるぞ
エマ:りょーかい
アレジ:あいよ
カイ:3.2…1!
エマ:(M)陽動の、銃撃っ!
グローザ:掛かったぞ、アレジ。カイ
アレジ:合点承知っ
カイ:合わせろよアンドレイ!
アレジ:誰に向かってもの言ってんのさ!
カイ:ぉおおおおお!
アレジ:そぉおおおれぇっ!
ラインハルト:(M)11月13日。拘束数五体。完全達成
ラインハルト:(M)二度目の実戦任務成績は、一位がアレジ。二位がカイと、凸凹コンビがワンツーを飾った。そして――
0:教室
ラインハルト:イタリア。フィレツェ歴史地区。次の任務地だ。
エマ:またですかーーーっ
カイ:よし。
エマ:何が嬉しいの?
アレジ:…。
ラインハルト:今回はそんなに大変じゃない。はずだ。
カイ:きつい方がありがたいです
エマ:ほんっっとお願いします、そういう事言わないでください、カイさん酢酸塩酸
ラインハルト:残念だが中央が決めた難易度の任務しか受注できない。そしてこれが三度目の実戦任務で、今年最後の実戦任務でもある。
カイ:それで、任務内容は
ラインハルト:未登録の異常体が確認された。そのステージ調査に赴いて欲しい
カイ:ステージ調査、は初めですね
ラインハルト:ああ。本来ステージ調査は情報局の仕事だが。稀に手隙の監察官が担当する事もあるが
ラインハルト:そう難しいことでは無い。遠目から対象の異常性を監察。報告する
エマ:見るだけで理解しろって事ですか!?
ラインハルト:執行術と同じだ。相手の異常性を観察して考察する。
ラインハルト:慣れてきたら一体五分で終わる。後は情報局に報告して、執行部配属の異常体が派遣されるまで現場待機。が基本だが
エマ:だが…
ラインハルト:勿論お前らはまだ異常体を殺す方法は知っていても、飼い慣らす術をしらない
カイ:そうか。そこは確か二年目のカリキュラムだったか
ラインハルト:基本的に執行部の異常体は人間と友好的にしたい奴らばかりだが、稀に中央から逃げ出せるタイミングを測ってるやつもまあいる
カイ:やっぱり居るんですね。そういうのは
ラインハルト:ああ。収容後、執行部に配属されたてのやつとか特にな。だから君達に依頼するのは、ステージ調査まで。
エマ:おお!確かに楽だ!
ラインハルト:なにがあっても交戦するな。ステージ1の異常体は。ぶっちゃけその辺のナイフ持った殺人犯と同程度だが
ラインハルト:ステージ2以降は、ちゃんと強い。ちゃんと怖い。ちゃんと異常性を利用して、ちゃんと人を殺せる
カイ:…
エマ:ひぃぃ
ラインハルト:ので。今回はアスカが近辺で待機する。何かあればすぐに連絡を入れるように
カイ:はい
エマ:お、お願いしままま…
ラインハルト:よし。この実戦任務が終われば、年末。長期休みがある。つまりこれが今年最後の実地演習だ
エマ:まじっすか!
ラインハルト:大まじだ。しかも年末休みの前はちょっとした学院祭みたいなのもある
エマ:まじですか!?
ラインハルト:学院祭と言えば聞こえが良すぎるが、ちょっとした出店なんかもやる。他にも出し物したいやつら居れば好きにしろ
カイ:そんなことしてる暇ないのに
エマ:あるだろ脳筋暇人!
ラインハルト:ほらほら。浮かれるの早い。まずはやるべき事をやる。イタリアのフィレツェまではここから四時間。朝の5時にアーヘン駅集合だ
エマ:ひゃぁぁ
カイ:はい
ラインハルト:よし。じゃあ今年最後の任務。頑張れよ!
カイ:頑張ります!
エマ:頑張りまーーーすっ!
アレジ:…
エマ:んん。アレジ、ほれ。頑張りまーすって。ほれ。年末休みだよ。お祭りだよ。ほれほれ
アレジ:うん。嬉しいね
エマ:なになに。なんかあった?
アレジ:まぁーちょっと。思い入れのある場所でさ
エマ:フィレンツェなんたら?
アレジ:そうそう。別に故郷ってわけじゃないけど
カイ:そういえばアンドレイの出身ってどこなんだ
ラインハルト:確か孤児院じゃなかったか
アレジ:はい。孤児院ですよ。ふつーの
カイ:意外だな。ぬくぬくと温室育ちだと思っていた
アレジ:失礼だな
エマ:孤児院時代の友達とかいるの?
アレジ:もちろん。たった一人。僕の大事な親友だ
エマ:へぇ。その子はアーヘンには来なかったんだ
アレジ:うん。そいつ異常体だから
カイ:…!
エマ:へぇ!?
ラインハルト:なるほど、その友人は中央にいるのか
アレジ:いいえ。居ません。野良の異常体です。それでもやっぱり、僕の親友なんです
ラインハルト:ほお。どうやら思ったよりちゃんとした理由でアーヘンに来ているらしい、が。この辺りにしておこう。プライバシーは大事だ。
ラインハルト:アスカに資料送り付けるから私は先に帰る。お前らもさっさと帰れよー。
エマ:お疲れ様でーす
カイ:お疲れ様です
アレジ:さて。じゃあ僕もそろそろ
カイ:アンドレイ
アレジ:ん。なぁに
カイ:…。いいや。また明日な
アレジ:うん、また明日
0:場面転換
0:喫煙所
グローザ:…。
ラインハルト:お疲れ様
グローザ:お疲れ様です
ラインハルト:来月で最後だぞぉ、実戦任務
グローザ:はい。聞きました
ラインハルト:少しは気張れよ
グローザ:手を抜いているつもりはありませんが…
ラインハルト:諦め癖の話だよ
グローザ:…どうも性分の様でして
ラインハルト:責めているわけではない、が。成績も日を追う毎にカイやアレジに抜かされて、今では上位6位圏外だ。勿体ないじゃないか
グローザ:今の自分に出来る最良を尽くしています
ラインハルト:最善では無いな
グローザ:…
ラインハルト:もう一度言うが、責めてるわけじゃない。試しにやってみたらどうだ。
ラインハルト:今の自分に出来る、精一杯を
グローザ:……泥臭いこと言いますね、教官は
ラインハルト:私は泥臭いのが好きだ
グローザ:私には、不向きかと
ラインハルト:やる前から何言ってんだ、気が向いたらやってみろって
グローザ:…それは、教官命令でしょうか
ラインハルト:ぷっ
グローザ:なんで笑うんですか
ラインハルト:ぷはっ、話、聞いてたかぁ??気が向いたらやってみろって話してんの、お前がそうしたいと思った時に、試しにどーだって事だよ
グローザ:…。はい。
ラインハルト:ったく、本当に変だなお前は
0:場面転換
0:『グローザOUT。シャオIN』
0:学生寮裏。
アレジ:…やあ。もしもし、マルボロ。うん。久しぶり。ああ、こっちは元気だよ。一丁前に青春時代取り返しにかかってる。楽しいさ
アレジ:おまえの方はどうだ。…。あー、最近入った彼ね。面白いでしょ。好きなんだなぁ僕。ああいうの。…。はは。ごめんごめん
アレジ:ん?いや別に。なんもないよ。ああ、そうそう。次の実戦任務ね、フィレンツェなんだ。懐かしいね
アレジ:…。で?あとどのくらいかかる?半年ぃ!?随分とまあ、仕事の遅い事で
アレジ:いいや。構わないよ、ゆっくりでいい。うん、ゆっくりで
カイ:アンドレイか?
アレジ:っと、ごめん。じゃ、また後で
カイ:何してるんだお前
アレジ:別に。友達と電話
カイ:そうか
アレジ:カイこそなんでこんな所にいるの?
カイ:ランニングだ
アレジ:相変わらずシビアだねぇ
カイ:努力はみのるぞ。お前はさっさと休め
アレジ:え。なんで急に。優しい。落としにかかってる?
カイ:顔色がよくない。空元気だろ。すぐわかる
アレジ:…。思ったより鋭いね。カイ
カイ:そいつはどうも。それじゃ、俺はランニングに戻る
0:カイ立ち去る
アレジ:…。
カイ:さて、残り、半周か
アレジ:ほっ。ほっ。
カイ:アンドレイ?
アレジ:どいてよ、カイ
カイ:…。なんだお前。やるか?
アレジ:はっ、ムキになっちゃって
カイ:どっちがだ
アレジ:カイがですけども〜っ。はいよーいどんっ
カイ:おい待てアンドレイ!ずるだろ!
0:場面転換
0:『カイ、アレジOUT。ポルジッコ、ハゼットIN』
0:半月後
エマ:(M)1998年。11月21日。晴れ。今年最後の実戦任務が始まった。一番最初に対象を見つけ出したのは、シャオ・ラパン
シャオ:ほーーん。なるほど。なるほどなるほど。
シャオ:(M)身長は180前後。かなーーり筋肉質で、髪色はワインレッド。やっぱ派手だな髪色。異常体は過度な精神的ストレスが加わった時に発症するんだっけか
シャオ:(M)染色体にも異常を来たしてるってことかねぇ
ハゼット:集中してるな、シャオ
シャオ:うん。楽しい
ハゼット:君は異常体への見識が深いものな。そう言えばと聞くが。君はなぜアーヘンに?
シャオ:んー。私ね、学者になりたいんだよ
ハゼット:ほぉ。中央職員じゃなくて、か。これまた何故
シャオ:私の兄貴がね。異常体なんだよ
ハゼット:…それは。なんと言うか
シャオ:いいよいいよ、気ぃ使わなくて。別に。どこにでもある話じゃんね
ハゼット:それで、君の兄上は今どこに
シャオ:中央の収容所に入ってる
ハゼット:執行部には入らなかったのか
シャオ:うん。兄貴、根っからの社会不適合者だからさ。執行部に入って中央の為に同じだ異常体を殺して回るくらいなら、収容所のクソ臭い飯食ってる方がいいって
ハゼット:…は。なんと言うか。見上げた人だ
シャオ:ニート属性なだけだよ。でも、私の兄貴に違いはないから
ハゼット:では尚更中央に行かなくてよかったのか。兄上に会いたいだろう
シャオ:…ううん。私は学者になってさ。異常体の研究がしたい。異常性抑止弾って知ってる?
ハゼット:ああ、中央が開発した、名前の通り着弾した異常体の異常性を抑止する弾丸の事だろう。画期的な発明だと思うが、効果時間は長くないとも聞く。量産も出来ていないと聞くな
シャオ:うん。私はいつか、あれの完成品を作ってみせる。大量生産してみせる。その辺の薬局で、ワンコインで買えるくらい
ハゼット:…なるほど。君の夢は、異常性を、治せるものにすることか
シャオ:うん。異常性が人に害を与えてしまうなら、私の作った薬で制御する。害がないなら、異常性なんて。
0:シャオは笑った
シャオ:間違いなく、ただの個性だと思うんだ
ハゼット:――――。
シャオ:さ。調査しよ。ハゼット
ハゼット:(M)ああ。私は。なんて素晴らしい友に囲まれたのか。夢があり、思いやりがあり、過去があり、はたまた友がある。
ハゼット:(M)ここに来てよかった。シャオ・ラパン。たった今。確信したよ
ハゼット:(M)私は、友として。君に惚れた
シャオ:ハゼットー。なにぽけーっとしてんの。仕事しろー
ハゼット:ああ。すまない。どれ、私にもスコープを貸してくれまいか
シャオ:いいけど。ってちょい。近い近い
ハゼット:…シャオ。君は、立派な学者になれる。私が保証するよ
シャオ:…。だーれにもの言ってんの。私だよ。なってみせるさ
ハゼット:ああ。そういう所が――――
ポルジッコ:なんだなんだ。なんだお前ら。学生か?
0:悪寒
ハゼット:――――…っ!
ポルジッコ:なんでウチの試作品眺めてるんだ
ハゼット:(M)なんだ。誰だこの長身の仏頂面は。ただ、分かる。度重なる実戦任務で経験を得た。後ろの彼は「人ではない」
ポルジッコ:悪いが工場見学は許可してないんだ。執行部じゃないなら帰れ
0:ハゼットは銃を手に取ろうとする
ハゼット:……っ。
0:シャオは手を取り、小声で話した
シャオ:ハゼット。敵意を向けるな。幸いにあいつは私達に帰れって言った。きっと目的は私たちの殺害じゃない。
ハゼット:あ、ああ…
シャオ:まだあいつが異常体かどうかも分からないけど。とりあえず教官と合流した方がいい。向こうから手を出さないって事は、向こうも敵対を望んでない筈だ
ポルジッコ:おい。聞こえているか。
シャオ:は、はいぃ〜っ!ごめんなさい!すみませんっ、街の噂であの人が異常体かも〜って聞いてて。ね?
ハゼット:あ、ああ!そうなのだ!
シャオ:それでちょっと、好奇心がくすぐられて、えへへ。すぐ帰りますねっ。ほら帰ろ〜
ハゼット:あ、ああ!そうなのだ!
ポルジッコ:待て待て
シャオ:…。なんですか?
ポルジッコ:お前ら。その制服。アーヘンだな。監察官の卵
シャオ:―――…。
ポルジッコ:うちの試作品を見てたのはなぜだ。最近のアーヘン生徒は現地で任務までやってんのか、いいや。察するステージ調査か
シャオ:(M)まずい。こいつ、馬鹿じゃない。ていうか、頭がいい
ポルジッコ:お前らをこのまま解放したら教官陣。即ち現役の監察官が出張ってくるわけだ
ハゼット:どうするシャオ。彼奴、なかなかに頭が切れる
シャオ:今考えてる
ポルジッコ:バウンディの報告ならいざ知れず。俺の報告はまずい。今回はそういう仕事じゃない
シャオ:(M)なんだ。こいつの目的はなんだ。あの赤髪の仲間か。仕事って言ったか?試作品とも言ってた。意味がわからない
ポルジッコ:ああ。そうだな。結論が出た
シャオ:(M)考えろ考えろ。どうすれば一旦この場から離れられる。どうする。
ポルジッコ:この場で殺そう
ハゼット:――シャオぉおっ!!
シャオ:…っ!
ハゼット:私が時間を稼ぐ。君は逃げろ。全生徒に連絡を回して撤退だ!
ポルジッコ:ほぉ
シャオ:な、何言ってるんだハゼット!
ハゼット:言葉のままだ!行きたまえ!
シャオ:(M)どうする。どうすればいい。そもそもこんなの任務内容に無かったじゃないか、イレギュラーだ…っ!
ハゼット:シャオ。利口な君のことだ。私も、君も。生き残るには。そうするのが一番の手だと。理解しているだろう
シャオ:…
ポルジッコ:付き合ってられるか。
ハゼット:づぅあ…っ!
0:閃光弾を投げた
ポルジッコ:うぉ…。
ポルジッコ:(M)閃光弾。最近の学生はこんなのまで持ち歩いているのか
ハゼット:こう言った方がいいだろうか
シャオ:…
ハゼット:私を助ける為に!さっさと行きたまえ!シャオ!!
シャオ:…っ。分かった…!
ポルジッコ:小洒落た真似するなぁ。糞ガキ
ハゼット:はっ。名乗ろうか。私はハゼット・ワーグナー。覚えておけ
ポルジッコ:ああ。もうそろそろ忘れる名前だ
ハゼット:きたまえ。猫、パンチ…っ!
0:『ポルジッコ、ハゼットOUT。
0:アスカ、バウンディIN』
エマ:(M)ハゼット・ワーグナー。シャオ・ラパンは、現地にて報告にない異常体。
エマ:(M)執行指定。ステージ4の異常体。ポルジッコ・レオンと遭遇した
エマ:(M)ハゼットの手によりシャオはその場を撤退した
0:場面転換
シャオ:はぁ…っ。はぁ…っ!繋がれ、はやく、はやくっ!
アスカ:もしもし。どうしたシャオ
シャオ:教官っ!よかった…!
アスカ:…何があった。簡潔に
シャオ:報告にない異常体と思わしき人物と遭遇しましたっ。
アスカ:現場にいたのは
シャオ:私と、ハゼットです…!
アスカ:ハゼットはどうした。君は今どこにいる
シャオ:多分、ビオランテ付近ですっ。無我夢中で走ってるので正確な位置は分かりませんっ。ハゼットはっ、私を逃がす為に交戦中です…!
アスカ:…っ。今すぐ向かう!全生徒に連絡を回せ!任務続行は不可能と判断する。手隙の生徒から撤退指示を
シャオ:分かりました…!
0:通信終了
アスカ:…厄介な事になった。くそ。
0:アスカは誰かに電話した
ラインハルト:は〜い。ラインハルトです
アスカ:ラインハルト!良かった、サボってなくて、今どこに――
ラインハルト:ただいま電話に出ることができませーん。御用の方はピーッて私が言ったら要件をお願いしまー
アスカ:くそっ!サボってんのか!何してんだアイツ!
ラインハルト:ぴーっ
アスカ:ラインハルト!今どこにいるか知らんが!イレギュラーが発生した!手が空いたら市街地まで来い!
0:携帯をしまう
アスカ:ここからビオランテまでは…8km。7分ってとこか…。くそっ。
0:場面転換
シャオ:はぁ…!はぁ…けほっ。けほっ。どこ、まで、走った…
エマ:あれ。シャオじゃん。どしたのそんな汗ビショで
シャオ:エマ…!ちょうど良かった、今アスカ教官から指示があって、イレギュラーが発生したから、もう帰っていいって
エマ:えっ。やったー!帰れるの?
シャオ:…うん
エマ:帰ったら連休だ!お祭りもある!
シャオ:……うん
エマ:…。なんかあった?
シャオ:……ハゼットが。私を逃がす為に。今、そのイレギュラーと。交戦してる
エマ:え。
シャオ:私。なんの力にも。なれない。エマ、どうしよう。ハゼットのやつ、死んじゃうかもしんない
エマ:…。
シャオ:私がまともに戦えないから、ハゼットだって対人戦苦手なのに。どうしよう。私のせいでハゼット死んだら、どうしよう
エマ:大丈夫。シャオ。大丈夫
シャオ:…なにが、大丈夫なのか。わかんない
エマ:ハゼットは強いよ。私、知ってるもん。あいつ殴っても殴っても倒れない。気持ち悪いくらい
シャオ:…
エマ:タフだから大丈夫だって言ってるんじゃないよ。ハゼットだから、大丈夫だって言ってるの。
エマ:ここで私が死んだら、シャオが自分を責めてしまう。だなんて言うに決まってる
エマ:あいつ。殺しても死なない。ハゼットを信じようよ
シャオ:……うん。
エマ:よし。それで、そのイレギュラーはどこに居るの?
シャオ:ビオランテの北区
エマ:りょーかい
シャオ:エマ?どこ行くの
エマ:?ハゼット助けに行く
シャオ:な、何言ってるのさ。言っただろ!撤退指示だってば!
エマ:しょーがないじゃん。私だって帰りたいけど。私は、皆一緒に、帰りたい
シャオ:…。本当に、かっこいいなぁ。あんたらは
バウンディ:おいおいおい。お前らあれだろ。さっきからずーーっと俺を監視してた。なあ。クソガキ共
シャオ:―――っ
エマ:…タイミング悪。
シャオ:(M)この赤髪。今回の監察対象。なんで、こんな時に…!
バウンディ:しかも二人とも女じゃねぇか。こいつぁラッキーだ。やりやすい
0:エマは近付いた
エマ:悪いけど。私は今急いでる。貴方に構ってる時間が無い
シャオ:ちょ、エマ!?
バウンディ:あー?なんだお前。こら。なんつー生意気な目してんだよ
エマ:だから―――
0:エマはバウンディを蹴りつけた
バウンディ:ぶごぉほっ!?
エマ:貴方に暴力を振るうけど、許してね
シャオ:か、かっけーーー!エマさん!まじで、かっけぇっす!
エマ:とんでもない。えへへ
バウンディ:――SHOCK
0:二人は壁に激突する
エマ:ごほっ…!
シャオ:ぶぁっ…!
バウンディ:なーーにやってくれてるんだよ。女のくせに。ああいや、女だからか。いいね。女ってのはふつー弱いもんな。でも強かった。痛かった
バウンディ:いいじゃないの。克服してるって感じでよ
シャオ:ってぇ…。くそ…!
エマ:ああ、もう。めんどくさいな…!
シャオ:(M)今のは。異常性か。トリガーワードから察するに、衝撃?曖昧だな。感覚的にはバランスボールに撥ねられたって感じだったけど
バウンディ:さて。やろうぜ。続き。俺もお前ら殺すと評価が上がるんだ。克服しろよ、俺を
シャオ:…。エマ、アスカ教官には…
エマ:連絡しない。ハゼットの所に早く行って欲しいもん
シャオ:わかる。ラインハルト教官に連絡するよ
エマ:じゃあ、ちょっと頑張りますか。
シャオ:うん。頑張ろう
バウンディ:頑張ってくれやぁ…!なあ、克服だよなぁ…!
0:『バウンディ、シャオ、エマOUT
0:カイ、アレジIN』
0:場面転換
アスカ:(M)エマ・ワトソン。並びにシャオ・ラパンは、本作戦監察対象であるバウンディ・バルバドーサと接触。
アスカ:(M)対象ステージは2。そのまま戦闘に至った。
アスカ:(M)場面は移り、同時間。フィレツェ市街。西区。地下水路。全力疾走している二人
0:『アスカOUT。ポルジッコ、ハゼットIN』
アレジ:おーーーーっ!
カイ:あああああっ!
アレジ:ちくしょぉおおっ!どこだここーーっ!
カイ:はぁっ、はぁっ。アンドレイ!お前がこっちだって言ったんだぞ!
アレジ:久しぶりに来たから迷っちまったんだよっ!しょーがないだろ!
カイ:ふざけるなっ!どうなってるんだお前の土地勘はっ!どう考えても地下水路じゃないかここ!
アレジ:うっさいやい!勝手に着いてきたのはカイだろ!
カイ:たまたま行先が同じだっただけだ!
アレジ:行先一緒でなんでこんな所までご一緒してんだよ!
カイ:言い訳がましいぞ!
アレジ:君がねぇ!?
カイ:まあ待て。一度冷静になろう。馬鹿みたいに走るのはやめて
アレジ:うん。そうだね
0:『思案』
カイ:そもそも地下水路なら、まず上に登るべきなんじゃないか…?
アレジ:…っ!
0:『気付き』
アレジ:君は天才だ、初めて君に感服したよ、カイ
カイ:ああ。存分に見習ってくれ。
アレジ:カイ!お誂え向きにハシゴがある!
カイ:…っ!でかしたアンドレイ!見直したぞ!
アレジ:ああ、存分に惚れ直してくれ
カイ:待て。電話だ
アレジ:エマ?
カイ:いいや。ラインハルト教官だ。はい、カイ・シグスです
ラインハルト:お前ら今どこにいるっ!
カイ:え。なんですか急に
ラインハルト:簡潔に答えろ!どこに、誰と、何人でいる!
カイ:…。アンドレイと二人で。恐らくフィレンツェ西区の地下水路に居ます
ラインハルト:なぜ地下居るのかは分からんが、私よりは近いなっ。今すぐビオランテ方面に迎え!私も今向かってる、急げ!
カイ:エマのいる場所ですね。何かありましたか
ラインハルト:監察対象の異常体とエマ達が遭遇している!私も今向かってる、お前らもさっさと行け!
カイ:…!了解しましたっ
アレジ:なになに。なんの話
カイ:アンドレイ、今すぐ向かうぞ
アレジ:どこにさ
カイ:友達を、助けに行く
0:場面転換
0:『カイ、アレジOUT。エマ、アスカIN』
0:ビオランテ北区
ハゼット:(M)おぞましい。
ポルジッコ:ほぉお。随分と、タフネス
ハゼット:(M)勝てるわけもない。能力は、凡そ電気系。可視化できる程度の電圧を自在に発生させる
ポルジッコ:だが、まあ。逃げ回ってばっかりじゃしょうがないな
ハゼット:(M)既に何度か受けた。致死量の電圧だ。動けているのが不思議な程、体の損傷は酷い。手足が痺れている。目眩と吐き気も酷い
ポルジッコ:だがまあ、すまんな。お前の隠れんぼに付き合う暇はない
ハゼット:(M)ああ、このまま隠れていよう。そうでなくても意識を保つのでようやくだ。出ていっても、一分と立たぬ内に殺される
ハゼット:(M)私の人生において、死をここまで身近に感じたことは無い。ただただ率直な、恐怖しかない
ポルジッコ:ああ、さっきの女を追わなきゃならんから、なぁ。
ハゼット:―――…。
ハゼット:(M)不可能。無駄。無謀。分かりきっている。私も、死にたくはないからな。シャオはどの程度まで逃げたか。ある程度は時間を稼げるだろう
ハゼット:(M)ああ、もう十分じゃないか。学生の身でありながらよくやったよ。私は
ポルジッコ:…まあ、こう言ったら。出てくるだろうとは思ったよ
ハゼット:…はぁ…はぁ。ごほっ…
ポルジッコ:かっこいいな。お前は。ただ、馬鹿だな
ハゼット:好きな、ように。言えば、いい。私は。ね。目の前の勝負から、逃げないんだ。
0:銃を構えた
ハゼット:私が。男だから
ポルジッコ:ああ、つくづく。縁遠い情緒だ
ハゼット:(M)ハッタリだ。残り段数は一発もない。なんの意味もない、構え。それでもこの男が、ほんの僅か。私を警戒すればいい
ハゼット:(M)コンマ数秒。シャオの元へ向かうまでの時間を、伸ばせれば、上々。
ハゼット:(M)中央に入る前に死ぬ事になるとは、思わなんだ。が、それでこそ。美しく儚い。人の生だ
アスカ:(M)対異常体執行術。無手勝流編。その14。異常体がトリガーワードを言い切る前に
ポルジッコ:――VOL(ボル
アスカ:―――叩く
0:蹴りつけた
ポルジッコ:うぉっ…!
ハゼット:…アス、カ教官…
アスカ:よく一人で耐えた。君のそういう所が、俺は好きだよ。あとは任せてくれ
ハゼット:…ふ、は。貴方こそ。私が女性なら、惚れていた、ところ、だ…
0:『ハゼットOUT。シャオIN』
アスカ:……よくも虐めてくれたものだ。俺の生徒を
ポルジッコ:痺れるな。ビリッと来るじゃないか。ユノランページ・アスカ
アスカ:随分と物知りじゃないか。ポルジッコ・レオン
ポルジッコ:知っているのか。それはそうか
アスカ:これでも長いこと中央に居るものでな。バラエティ幹部の名前を聞かない日はない。頭を悩まされてるよ、君たちには
ポルジッコ:いいじゃないか。お互い様だ
アスカ:…さて、困ったな
アスカ:全く勝てる気がしない
ポルジッコ:ご立派な登場だったじゃないか
アスカ:生徒の前では格好をつけたいものでね
ポルジッコ:その気持ちは分からんでもない
0:場面転換
0:『アスカ、ポルジッコOUT。
0:バウンディ、アレジIN』
シャオ:(M)監察対象。バウンディ・バルバドーサ。ステージは、推定2。異常性は衝撃
エマ:はぁ…っ。はぁ…。くそっ…!
シャオ:(M)威力はほぼ皆無だが、非常に強い反発性を持ち、それで硬い地面や壁に叩きつけられる。当たりどころが悪ければ死ぬ
シャオ:(M)有効範囲は5m程度。5m以内であれば銃弾など、速度を持った物でも反発させることが可能
バウンディ:ほれ。異常性考察クラブ。もう終わったか?もう終わりか?
シャオ:……っ。
エマ:こ、のぉ…!
バウンディ:おっと。もうヘロヘロじゃねぇか。克服しろよ、疲れもなぁ!
エマ:ごふっ…!
シャオ:…くそ。
エマ:シャオ…逃げて。私、ひとりで。なんとか
バウンディ:無理だろーーーっ。いやいや無理無理無理ーーーっ。実現可能な範囲で物言え、よっ!
エマ:ごぼっ…!
シャオ:やめろっ!!
バウンディ:ああ、いい顔になったじゃない。そっちの女
シャオ:…
バウンディ:さあ。どうする。こっちの馬鹿力はもうまともに動けない。多分脳震盪だろうな。お前はどうする。何が出来る。最善を尽くせよ。克服しろよ。俺を
シャオ:はは。はははは。
バウンディ:は?
シャオ:はははははっ。いやはや、随分なご高説をどうもっ。後学の為になったよぉ、ありがとう。おじさん
バウンディ:…なんだ。頭打っておかしくなったか
シャオ:悔しいながら、もう私が戦う必要はなくなったんだ
バウンディ:あぁ?
シャオ:今、執行部のナンバーズこっちに向かってる。暴れすぎたんだよ、君ら
バウンディ:…
シャオ:勿論呼んだのはもっと前。移動手段に長けた異常体なら、あと数分で到着する。私を殺してもいいけど、私を殺す時間すら惜しいだろ
バウンディ:なるほど、なぁ。そういう克服か
シャオ:ブラフだと思うかい?なら信じて私を殺す手間を増やすといい。締めなよ、私と自分の首を
バウンディ:流石の俺でもそんな嘘にひっかかるほど馬鹿じゃない。それでも、お前なりに頑張って克服したんだな
0:頭を撫でた
シャオ:(M)バレてる。でもしょうがない。口でしか私は、こいつに勝てない
バウンディ:でも、なぁっ!
シャオ:ごほっ…!
エマ:シャオ!!
バウンディ:俺なぁ、そういう克服が一番嫌いなんだ。お前を否定してるわけじゃないが、俺の価値基準の中でお前は最低クラスのゴミ屑だ
エマ:やめろお前ぇ!
バウンディ:っと。ゆっくりしとけよ、なぁっ!
エマ:ごぇっ…!
シャオ:(M)こうなる事もわかっていた。直ぐには殺さない。時間をかけて、自論を私に暴力という形でクドクドと語りながら投げつけてくる。これでいい。この間に。誰でもいい
バウンディ:ゴミ屑だから、なぁっ!
シャオ:おえっ…!
シャオ:(M)意識が途切れるまで、耐えろ。誰でもいい。誰か、来てくれれば
バウンディ:克服しろよ、なあ!別の!何か!なんでもいい!
シャオ:(M)誰、か…っ。
0:『シャオOUT。カイIN』
エマ:シャオぉおっ!
バウンディ:…おい。何寝てんだ。こら。起きろよ。やってみろよぉ!口八丁じゃなくて、もっと!もっ――
アレジ:あの〜すみません
エマ:…!
バウンディ:あ?なんだお前
アレジ:ちょっと道聞きたくって
バウンディ:…。お前この状況見て言ってんのか?イカれてんだろ。おい
アレジ:すすすすみません、この辺りに来るのは初めてで、これが普通なのかなって。それであの、この地図のここなんですけど
バウンディ:ったく。どこだよ
アレジ:ここ。ここ。ここここんな典型的な罠にかかってんじゃないよすかたん!!!
0:殴った
バウンディ:ぼふぉあっ
アレジ:行くよ!カイ!
カイ:命令するな!
バウンディ:なんだなんだぁ!こいつらのツレかぁ!
カイ:(M)対異常体執行術、無手勝流編。その12
アレジ:(M)対象がトリガーワードを必要とする場合、常時発動系ではない
カイ:(M)触れても問題ない異常性の場合っ
アレジ:(M)なにがあっても先手を譲らない!
カイ:すなわち急所を叩く…っ!
0:避けた
バウンディ:ごぼぉっ!
カイ:(M)顎!
バウンディ:ごぶぅえっ!
アレジ:(M)みぞおち!
バウンディ:おほごっぉっ!
カイ:(M)人中!
バウンディ:ぶふっぁ…!
アレジ:(M)大腿部!
バウンディ:あぎぃっ…
アレジ:(M)股間!
カイ:(M)股間!
バウンディ:げほぼぇっ……!
エマ:…カイ!アレジ!
カイ:エマ、情報を
エマ:あ、うん…!対象の異常性は『衝撃』。ゴムみたいな性質を持つ。有効範囲は半径5m前後。クールタイムは約12秒
アレジ:おっけー。被害は
エマ:私達以外の現場チームは数人やられてるっぽい、命に別状はないけど、脳震盪っぽくて、迅速な処置をしたい
0:アレジは肩に手を置いた
アレジ:なーに言ってんの。君らが一番重症だっつの
0:カイも手を置いた
カイ:よく耐えた、エマ。シャオも。あとは
カイ:俺達に任せろ
アレジ:僕達に任せな
エマ:…うん、任せた
0:二人は気絶した
0:『エマOUT。ザックスIN』
バウンディ:…っかはっ。くそっ。なんだ。なんなんだてめぇら…っ。
アレジ:さーて。ステージ2だってさ。カイ
カイ:ああ。らしいな
アレジ:正直きつそうだけど。僕らの大事な友達がやられちゃった
カイ:ああ。やられっぱなしってのは。あれだじゃないか。アンドレイ
アレジ:そうだね。カイ。
アレジ:頭にくるってやつだ
バウンディ:このっ…!クソボケ共がぁ…っ!
カイ:一瞬でカタをつけるぞ!
アレジ:了解っ!
バウンディ:(M)銃を構えてる!容赦なく撃ってくる気だ!さっきの女どもとは比べもんにならねぇ厄介!自分の身の回りに張る…!
アレジ:まず、一発!
バウンディ:SHOCK!
アレジ:うおっ!?本当に弾が吹っ飛んでった!
カイ:今から12秒だ!一気に叩く!
アレジ:はいはいさー!
バウンディ:ちっ。来いよクソガキぃ!
カイ:ワン!
バウンディ:うぉっ…!
アレジ:ツー!
バウンディ:っと、危ねぇな
カイ:スリー!
バウンディ:…っ!
アレジ:フィニッシュ!!
バウンディ:がぶごっ…!
カイ:一発だ!まず、口を塞ぐ!
アレジ:次に頸動脈!
バウンディ:ぁぉおお…っ。は、な。せや
カイ:顎を上に!落としにかかる!
バウンディ:ぉぉああぁぁああっ!
アレジ:ぉおおおおおおっ!
カイ:どぉおおりゃあああっ!
バウンディ:…かっ…かふっ…
0:バウンディは気を失った
0:『バウンディOUT。ポルジッコIN』
アレジ:…はぁ…はぁ…っし。
カイ:はぁ、はぁ。おう。
アレジ:おっしゃあああああ!
カイ:おらぁああああっ!
アレジ:やったな!カイ!
カイ:ああ、悪くない!
アレジ:見たかっ!これが僕とカイの友情の力だってんでぃ!
カイ:なんかやめろっ。恥ずかしい
ザックス:ああ。確かに。悪くないな
アレジ:―――。
カイ:あ?
ザックス:もしもし。ポルジッコか。報告だ。威力実験の続行は不可能と判断した。これより回収に移る。
カイ:なんだ。また新手か
アレジ:ありゃあ…まずいね
ザックス:ああ。たかだか学生にやられた。社長に面目がたたない
ザックス:…ただの学生で社長が喜ぶかは知らないが、こちらも二名、被検体として持ち帰ろう。ああ、それじゃあ
ザックス:…と、言うわけだ。申し訳ないが、バウンディとセットで持ち帰らせてもらう
カイ:どういう意味だ、アンドレイ
アレジ:あれはちょっと、レベルが違う。今の僕らでどうこうしようって相手じゃない
カイ:そんなにヤバいやつなのか
ザックス:社命を遵守する
アレジ:(M)まずい。どうする。どうやって切り抜ける。本当に、まずい…!
ザックス:flambe
アレジ:カイ!下がって!
カイ:うぉっ!?あっちぃ!炎か!?
アレジ:(M)使うか…!?こんな所で!死ぬよりマシか、くそっ!
ザックス:初見殺しとは行かないか。構わない。何度でも、リトライだ
アレジ:逃げよう!カイ!
カイ:ダメだ!後ろでエマとシャオが寝てる!俺たちが逃げたらあいつらがどうなるか分かったもんじゃない!
アレジ:んな事言ったって!しょうがないだろ!
カイ:どうにかする…!「俺が」…!
アレジ:―――。
ザックス:一気に焼き切る…っ!
アレジ:カイっ!!
0:アレジはカイを押し飛ばした
カイ:っ…!?アンドレイ、お前なにやってんだ…!
ザックス:Bruler
アレジ:うごっ…!ぁぁあああっ!!
0:アレジの右腕は焼き切れた
カイ:アンドレイっ!!!
アレジ:ぁあぁっ!くそっ!腕がっ!
ザックス:随分と献身的な友情じゃないか。片腕ならくれてやるって具合か
アレジ:痛い!熱い!ちくしょうっ、何やってんだ僕はっ!
カイ:アンドレイ!腕!みせろ!くそ、俺なんかの為に…!
アレジ:はぁ!?君の為じゃないよ調子乗んなっ!僕の目の前で友達が死ぬのが嫌なんだ!死ぬならどっか適当な場所で死んでくれ!
カイ:…っ。すまん。アンドレイ。お前は逃げろ
アレジ:…っ!あの、さぁ!話聞いてた!?
カイ:ああ。すぐに腕を処置した方がいい
アレジ:君じゃあ勝てない!犬死だ!
カイ:犬死でもなんでもいい。俺だってお前の為に逃がしてやるわけじゃない。ただ、俺が、ああいう利己的なやつが嫌いなんだ
カイ:異常体ってのはどうも利己的だ。決まって暴虐を振りかざす。こうやってな。だから俺は今、ここに居る
アレジ:そりゃご立派だけど!命あってこその信念だろ!
カイ:命を賭けない信念なんてない。もう一度言う。アンドレイ。二人を連れて逃げろ
アレジ:この、頑固もんがっ…!
ザックス:さあーどうする
カイ:(M)クールタイムは、短い。近付けもしない。…知ったこと、かっ!
アレジ:カイ!待て!
カイ:うおおおおおっ!
アレジ:カイっっ!
ザックス:(M)特攻。馬鹿丸出しだ。筋肉が焼き切れる温度だぞ
アレジ:戻れ!くそ!この――
ザックス:flambe
アレジ:――SCRAMBLE…っ!
カイ:――おっ。はぁ!?
ザックス:…っ!
0:カイはアレジの後ろにいる
カイ:…なんだこれ。なんで俺はお前より後ろにいる
アレジ:…さあ。なんかのバグじゃないかな
ザックス:なるほど。お前、異常体か
カイ:――…!
アレジ:…
ザックス:面白い紛れ方してるじゃないか。アーヘンに侵入する異常体なんざ聞いたことも無い
カイ:アンドレイ。それは、本当か
アレジ:…
カイ:本当かと聞いているっ!!
アレジ:…後で、話すよ。ちゃんと
カイ:…。
アレジ:僕を信じて欲しい
カイ:…後で、って。言ったからな
アレジ:…。うん。約束だ。ちゃんと話す
ザックス:…面白いことが知れたな。いい。そっちの黒髪。お前だけ持って帰る。
アレジ:…いいさ。そっちがその気なら、こっちだってその気でやる。
アレジ:僕は、君より強いよ
ザックス:はたまた面白い、やってみろ…!
カイ:俺のことも忘れるなよ…!
ザックス:ごはっ…!こ、の…。なにしやがるてめぇ…!
カイ:はっ、はは!見ろアンドレイ!こいつらだって殴られりゃ痛いんだ!
ザックス:監察官でもない、ただの学生が、ただの人間が調子付いたこと言ってんじゃねぇぞ!
ラインハルト:そーーだ。人間様なめんなよって話だ。
アレジ:…っ!この横暴な口調…!
カイ:ラインハルト教官…!
ラインハルト:どんな識別基準だ。
ザックス:…ああ。ホトバシんとこの愛弟子かぁ…。こりゃまたビッグネームだなぁ、ロゼット・ラインハルトぉ…!
ラインハルト:お前にビッグと言われるほど轟くか。私の名前。そりゃまあ、私結構優秀だしな。どうだ、一丁やりあっとくか。
ラインハルト:ザックス・シェアザード
アレジ:遅いですよ、教官…!
ラインハルト:悪い悪い、ってお前その腕。やべぇぞ。治るか?
カイ:治ります!縁起でもないこと言わないでくださいっ
アレジ:…らしいです
ラインハルト:ふは。ああ、よくたったふたりで頑張った、褒めてやる!満点だ!
アレジ:内申点、付けといてくださいね
カイ:がめついな
ラインハルト:ああ。当然だ
ザックス:やる気満々って顔じゃねーーかっ。なーにぃ、変わんねぇよ。着火剤が増えただけだっつーのっ!
アレジ:キャラ変わってない…?
カイ:激情するタイプとああなるタイプなんじゃないか
ラインハルト:よく見とけよ。ふたりとも
カイ:…
ザックス:なーに見せてくれるんだよ。おい。こら
0:手袋をはめ直す
ラインハルト:人間が、異常体を殺す方法
カイ:…!
ザックス:はっ、はははははっ!まーた大きく出たなぁ!いいぜ、やってみろやぁ!
ラインハルト:――っ!
ザックス:(M)お。はや―――
ラインハルト:っっらぁ!
ザックス:ごほぇっ…!
カイ:なんだあれ。人間か
アレジ:いや。多分違う
ラインハルト:言ってみろ。口を開くよりも先に、お前の歯を折る。舌をちぎる。その後、脊髄を砕く。それで人は死ぬ
ザックス:なるほど、こいつぁ、厄介!ははははははっ!いいじゃねぇの!滾る滾る!熱いなぁ!おい!
0:着信
ザックス:…ああ!?なんだ!おい、なんだよ!ポル!今いい所なんだよ!
ポルジッコ:あー。熱くなってんな。熱くなってるところすまんが、撤退指示だ
ザックス:撤退だぁ!?冗談じゃねぇ!この3人全員持って帰る!そう決めた!
ポルジッコ:社命だ。遵守しろ
ザックス:…。分かった。社命を遵守する
ポルジッコ:ああ。じゃあな
ザックス:ああ。また
ラインハルト:はにゃ
ザックス:……撤退指示だ。私は帰る
ラインハルト:…よく分からんが。そいつは助かるな。私もお前とこれ以上やりたくない。応援じゃなくて安心したよ
ザックス:まあ、バウンディはこの有様だが、そこそこの報告書は書けそうだ。助かったよ、これで一応は仕事になった
ラインハルト:ああ、お互い苦労するな
ザックス:では、お先に失礼する。君たちも、比例を詫びる。すまなかった
0:『ザックスOUT。グローザIN』
ラインハルト:情緒どーなってんだ…ふぅ。
カイ:教官!逃がしていいんですか!
ラインハルト:いいんだよ。ステージ3だぞ?普通に考えて執行部の仕事だ。人間様の出る幕じゃねぇのよ
カイ:いや、でも。人間が異常体を殺す方法って
ラインハルト:ばかお前。虚勢だよ。ステージ3クラスの異常体とサシ、しかも初見でやり合って勝てるわけないだろ。だが、何かしようと言う時はお前も言ってみるといい
ラインハルト:存外、自分の言葉が一番背筋を伸ばしてくれるもんだ
カイ:かっこわる
ラインハルト:聞こえてんだよ
アレジ:ひゃ〜。なんか、疲れたぁぁっす
ラインハルト:なにはともあれっ。全員生きてて何よりだっ。それだけで任務は達成したも同然だしっ。大金星だぞお前ら〜っ!
カイ:ちょ、痛いです!くっつかないでください!
アレジ:カイって童貞?
カイ:なんでそうなる!
ラインハルト:ふは。まずは二人と、アレジ。お前の治療だ、が。動けるか
カイ:当然です
アレジ:いいえ。カイは重症です。もう動けません
カイ:動けるが。お前の方が重症だが。どう見ても
アレジ:無理しなさんなって。ほれほれ
カイ:いっっってぇなやめろおまえそれ!
ラインハルト:どっちも元気だな。よーーし、じゃあちゃちゃってやって、帰るぞ!
カイ:…。はい!
アレジ:はーいっ!
ラインハルト:(M)……しかし。なにがあって撤退指示なんだ。意味がわからない
ラインハルト:(M)アスカの所で何があった。後で聞くしかないが
アレジ:?なにしてんのー、カイ。行くよ
カイ:…ああ。行こう、アレジ
アレジ:…え?いまアレジって
カイ:言ってない
アレジ:いや言ったやん!言っただろ!
カイ:言ってない
ラインハルト:ほらー。働けおまえらー
0:『カイOUT。ハゼットIN』
0:20分前
ポルジッコ:…はあ。こいつは随分と、予想外の来客じゃないか。グローザ
グローザ:久しいな。ポルジッコ
ポルジッコ:ああ。本当に久しぶりだ。なぜアーヘン高等学院の制服を着ている。コスプレか
グローザ:違う
ポルジッコ:冗談だよ。相変わらずやりづれぇな
グローザ:私は今、別の命令を受けている。もう雇い主はお前たちじゃない
ポルジッコ:まあ、出荷されたからな。で。なんだよ。まさかご挨拶周りってわけじゃないだろ
グローザ:単刀直入に。身を引け。イタリアから出ろ
ポルジッコ:こっちも仕事だ。断る
グローザ:私は私の命令を全うしている。もし仮に、お前たちが。私に与えられた命令の障害になるならば。この場で殺すことも辞さない
ポルジッコ:そんなことを言っても迫力の欠片もない。やっぱりお前は、何も無いなぁ。グローザ
グローザ:好きなように言えばいい
ポルジッコ:だったらこの場でお前を殺して、向こうの奴らも殺して、そのままアーヘンのヤツら全員殺す。社長は喜ぶんじゃないか
グローザ:そうか。なら私達の利害は一致している。イタリアから出ろ。ザックスも下がらせろ
ポルジッコ:命令するなよ。される側が
グローザ:違うな、ポルジッコ。
グローザ:―――これは警告だ。
ポルジッコ:……。分かったよ。帰る帰る。ザックスにもそう連絡を入れておく。これでいいな
グローザ:ああ。
ポルジッコ:まあ、なにはともあれまだ生きてて良かった。最高傑作がそう簡単にくたばってもらっちゃあバラエティ社の面目丸潰れだ
グローザ:さっさと行け
ポルジッコ:分かってる。じゃあな、グローザ。いやあ
ポルジッコ:赤い林檎
グローザ:…
0:『ポルジッコOUT。シャオIN』
0:煙草に火をつけた
グローザ:(M)……。戦ってもいないし、説き伏せたわけでもない。だが、柄でもない事をした。これが今の私の、精一杯みたいです。教官
0:『グローザOUT』
アレジ:『復讐者達の午後』
0:病室
ラインハルト:(M)11月21日。実地遠征。負傷者、12名。死傷者、0名。
ラインハルト:(M)ひよっこの割に、上々な成績を残した
0:『アスカIN』
シャオ:ハゼッドぉおおっ!無事でよがっだああ!おえっ、おうっ!あぁえっ
ハゼット:おお。なんとも、幸せだが、ああ、これは死ぬ。死ぬやつだ。見えるぞ、あの世が
アレジ:よかったねぇ。ハゼット
ハゼット:ああ。だが、これは、死ねるな
シャオ:おおおおおおっ、よがっだぁぁぁあああああっ
ハゼット:おおおおおっ!!
アレジ:ちょちょちょシャオ!せっかく生き残ったのに!死ぬって!
シャオ:アレジもその腕何ぃいいいいっ!
アレジ:ちょっ、こっち来んな!
0:『シャオ、ハゼットOUT』
アスカ:まったく。どう足掻いても賑やかだな
ラインハルト:ああ。でもまあ、お前も無事でかったよ
アスカ:ああ。てっきりあの場で死ぬかと思った
ラインハルト:頼むから縁起でもないこと言わないでくれ
アスカ:はっ。確かに。縁起でもないな
ラインハルト:…本当に。無事でよかった
アスカ:なに?なんて?
ラインハルト:うるさい
アスカ:いっでぇっ!お前なぁ!こっちも結構な重症だぞ!
ラインハルト:うっさい!
0:『カイ、エマIN』
アスカ:(M)負傷者こそ多いものの、誰一人として死人を出さなかった。この意味は絶大だ。人生で最も重要なことは、死なないこと。それより上はない
0:『アスカOUT。グローザIN』
アレジ:…
カイ:よお。アンドレイ
アレジ:やあ、カイ
エマ:お邪魔しま〜。大丈夫?腕
アレジ:うん。多分完治しないってさ
カイ:……。
アレジ:別に怒ってないよ。僕が自分で選んだことだ
カイ:ああ。
アレジ:…
エマ:で、でもさ!まずは命があってよかったよね!
カイ:アンドレイ。俺はまだ、お前に言ってなかったな
アレジ:なにを
カイ:俺がアーヘンに来た理由
アレジ:うん。聞いてなかった
カイ:……お前の話を聞く前に。俺達の話からするべきだと思った。…いや、話したいと、思った
アレジ:うん
カイ:いいか?エマ
エマ:もちろん。カイがいいなら
カイ:…俺は、とある異常体組織を潰す為に。ここに来たんだ
アレジ:…へぇ。君がそう決めたんなら、いつか、本当にそうしてしまうんだろうね。君はそういう男だ
カイ:…
アレジ:それで。その異常体組織って?
カイ:中央解放戦線。『赤い林檎』。
アレジ:――――。
カイ:俺と、エマの故郷を奪った。クソ野郎どもだ
0:アレジは少し笑った
アレジ:「ああ。よく、解った。」
カイ:(M)アーヘン卒業まで。あと一年と五日
0:場面転換
0:喫煙所
ラインハルト:…おお。グローザ、今日は遅かったな
グローザ:お疲れ様です。教官
ラインハルト:お疲れ様だが、お前。三日前の実戦任務なにしてた。あれから喫煙所にも暫く顔を出さないし。バックれたかと思ったぞ
グローザ:……いいえ。私用です
ラインハルト:任務中にか
グローザ:はい
ラインハルト:かぁ〜っ。バックれじゃないか。赤点だぞ、赤点
グローザ:自分は、不出来な生徒ですので
ラインハルト:…。ああいや。冗談だ。いや冗談じゃないが。お前は仕事を放棄してほっつき歩く様な奴じゃない。分かってる
グローザ:…
ラインハルト:なんかあったんだろ。深くは聞かんよ。単位はくれてやらんが
グローザ:教官。自分は
ラインハルト:…なんだ?
グローザ:…自分は。命令を聞く為だけに産まれてきました。その為に、特技がありました。人の心を、理解する特技が
ラインハルト:…おう
グローザ:私の中での全ての価値基準は、私でした。私が皆の思考が読めるから、他の皆も同じだと
ラインハルト:おう
グローザ:でも、違いました。だから、私は諦めました。苦悩も、努力も、報われない。理解されないものであることを。理解しました
ラインハルト:…
グローザ:命令に必要ないことは、切り落として来た。それが、私なんです。
グローザ:教官。私は、酷く。薄情な人間なんですよ。きっと三日前も、その辺で煙草を吸っていました
ラインハルト:どーーーでもいい
グローザ:…
ラインハルト:お前の過去なんか知るか。今もってない特技なんざもっと知らん。私はな、今。こうやってここで話してる。グローザ・リーベルトという人間が。好きだ
グローザ:…そう、ですか
ラインハルト:不出来なのは、お前だけじゃない。アレジも、カイも、エマ、シャオ、ハゼット。もちろん、私も。皆不出来だ
ラインハルト:だから、私は人が好きだ。お前が好きだ。完璧な人間ほど、可愛くない奴はいない
グローザ:…はい。
ラインハルト:私は、過去に友人を失った。上司は人が変わった様に冷徹になった。時間は全てを変えて、全てを終わらせて、全てを解決する
ラインハルト:やまない雨はないし。降らない雨もない。お前の諦めも、いつか終わる。
ラインハルト:だから、今を楽しもう。一緒に
グローザ:…それは。命令、でしょうか
ラインハルト:ばか。頼みだよ
グローザ:……は。前向きに、検討します
ラインハルト:…え?今笑った?
グローザ:いいえ
ラインハルト:いやいや!今完全に笑ったろ!
グローザ:笑ってません
ラインハルト:笑ったし
グローザ:笑ってません
0:『間』
ラインハルト:笑っし
グローザ:笑ってません
0:
アレジ:(M)アーヘン襲撃まで。あと6日。