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異能力者達の午後  作者: ゆーろ
異能力者達の午前
3/32

復讐者達の午前

0:『復讐者達の午前』


0:登場キャラ


カイ・シグス:男。


エマ・ワトソン:女。


アレジ:男。


シャオ・ラパン:女。


ハゼット・ワーグナー:男。


グローザ:女。


ロゼット・ラインハルト:女。




ラインハルト:(M)1998年。4月3日



0:列車の中



カイ:…ん。寝てたか



ラインハルト:(M)人は火を噴き、空を飛ぶ。超常的な力を持つ新人類、異常体の存在が確認されて久しい現代



カイ:(M)なんだか凄く、長い夢を見ていた気がする。なんだったっけ…



ラインハルト:(M)現代社会は、異能を持つ異常体と、人類に二分された



アレジ:やあ。おはよう



カイ:うおっ。びっくりした、誰だお前



アレジ:僕はアレジ。アレジ・アンドレイだ。よろしく



0:強引に握手する



カイ:あ、ああ。俺はカイ。カイ・シグスだ。こちらこそよろしく頼む



ラインハルト:(M)これは、何処にでもある。ちょっとした喧嘩話だ。



0:―――『復讐者達の午後』――――



アレジ:君もこの列車に乗ってるって事は、あれかな。アーヘンかな



カイ:ああ。その口ぶりだと、君も今期のアーヘン合格者か



アレジ:うん。よかったよ、歳が近そうな人が居て。安心した。君はなんでアーヘンに?



カイ:…。そうだな。語るようなことじゃない。君は?



アレジ:僕?そりゃ金だよ、金。アーヘンを卒業して中央に就職すれば死ぬまで職にも金にも困らないし



カイ:…そうか。どうやら俺と君では考え方が違うらしい



0:席を立つ



アレジ:あ、ちょっと、どこ行くのさ



カイ:悪いが、俺は他人に価値基準を合わせられる程器用じゃない。これ以上はお互い不愉快になるだけだと判断した



アレジ:喋り方堅。そんなお堅いと疲れちゃうよ



カイ:君から見たらそうだろうが、俺はそう思わない



アレジ:かった



グローザ:ここに居たか。



アレジ:また堅いのが



グローザ:私の連れがすまない、行くぞアレジ



アレジ:いや、連れってどっちかというと君…痛い痛い!引っ張るな!あ、じゃあ!またね!カイくんっ



カイ:…やかましいな。なんなんだあいつ



0:『アレジ、グローザOUT。ハゼット、シャオIN』



カイ:(M)初めて会ったそいつの印象は、苦手なタイプだった。人当たりが良くて、煩くて、ちゃらんぽらんで。生ぬるい人生を送ってきたんだろうと



エマ:あ!カイ〜っ。こんなとこに居た。探したよ



カイ:エマ。お前こそどこに行ってたんだ。俺はずっとここで寝てたぞ



エマ:嘘つけ、カイがいきなりどっか行ったんだよ



カイ:そうだったか…?寝ぼけたか



エマ:さあ。にしても中々着かないね。かれこれ四時間は列車に揺られてるけど



カイ:あと数駅だ。我慢しろ



エマ:うーん、相変わらず怖い顔してる



カイ:ほっとけ



エマ:そんなつんけんしちゃって、ほら笑って笑って



カイ:うるさい、触るな



エマ:ぶー。そんな態度だと帰るよっ



カイ:帰りたきゃ帰れ。元は俺一人で行く予定だったんだ



エマ:何言ってんの、カイも帰んの



カイ:…エマ。何度でも言うが、俺は止めないぞ。絶対に。やめないからな



エマ:…そっかぁ。じゃあ、しょうがないから着いてくよ



ラインハルト:(アナウンス音声)次は、終点。アーヘン。アーヘンです



エマ:あーあ。着いちゃった



カイ:やっとだな。行くぞ、エマ



エマ:…うんっ



0:駅



カイ:(M)列車から降りると、色んなやつの顔が見えた。怒りに燃えてるやつ。何気ない旅行気分のやつ。なんらかの使命感をもったやつ



ハゼット:すまない、通るぞ。どきたまへ



カイ:ああ、すまない



シャオ:おーっ、アーヘンだっ。駅広っ



カイ:(M)駅から商店街だの市営通りを真っ直ぐつっきった先にある物々しい建造物。



エマ:わあ〜っ、でっっか



シャオ:いくらかかったんだ…これ建てるのに…ひぃ、ふぅ、みぃ…



カイ:(M)門を潜ると、体格の良い女性が腕を組んで仁王立ちをしていた。そしてその女は、こう言い放った



ラインハルト:ようこそ。中央政府立、アーヘン高等技術専門学院へ。



ハゼット:強かだな、あの女性



シャオ:いかにもな事言うなぁきみ



ラインハルト:全世界の異常体を管理し、殺す。そのための学院だ。今日から君達は二年間、ここで様々な殺す術、脅す術、追う術、異常体を処分する全てを学んでもらう



ラインハルト:端的に言おう。ようこそ、地獄へ



エマ:ひぃ



ハゼット:ほぉ



シャオ:ひぃ



0:『シャオ、ハゼットOUT。アレジ、グローザIN』



カイ:(M)ここは、アーヘン。世に蔓延る異常体を殲滅する為に中央が設立した、中央政府職員育成機関だ



カイ:(M)異常性。それは一切のプロセスも、原因も無しに結果だけを引き出す異能。



カイ:(M)誰もがヒーローになれる。そんな筈が無い



カイ:(M)力を持った人間は、決まって暴虐を振りかざす。



カイ:(M)だから俺は、今。ここに居る。



0:1



アレジ:『復讐者達の午前』



0:第4教室



ラインハルト:改めて、中央政府監察局から派遣された。アーヘン学院教官、ロゼット・ラインハルトだ。覚えて帰っても、覚えずに帰ってもどちらでもいい。好きにしろ



エマ:ひょぉ…



アレジ:どぎつい人だね



カイ:どうしてお前がここに居る



アレジ:同じクラスになったんだから仲良くしようよォ



カイ:話しかけるな



アレジ:カイもどぎついね



カイ:俺は監察局に入って、やらなきゃならん事がある。くれぐれも邪魔だけはしてくれるなよ



アレジ:そんなにお金が欲しい?



カイ:お前と一緒にするな



ラインハルト:そこ。私語を慎め



カイ:…お前のせいで俺まで怒られたじゃないか



アレジ:いいえ。言葉数はカイの方が多かったです



カイ:お前から話しかけてきたんだろ



アレジ:喧嘩両成敗ですーっ



カイ:ガキかお前はっ



ラインハルト:おい。



カイ:なんてなっ!?仲良くしよーぜアンドレイ



アレジ:んだんだっ。仲良くしてますラインハルト教官っ



ラインハルト:よし。仲良くしろよ



カイ:はい



アレジ:はい



ラインハルト:はい。知っていると思うが、重症化した異常性を保有する人間の事を、「異常体」と呼ぶ。これらを管理し、監察するのが我々監察局の仕事だ



エマ:ごくり



カイ:はい



アレジ:…



ラインハルト:そして、お前らにはプロの格闘家に素手で勝てるくらいの基礎体術や、銃の扱いも学んで貰う。クソしんどいけど頑張れ



エマ:嫌だなぁ。しんどいの嫌だなぁ。そう思いわない?グローザ?さん



グローザ:…



エマ:…



ラインハルト:午前中は各施設の案内、午後からは講義に移る。いいな



0:場面転換



ラインハルト:まず。ここが食堂だ。朝9時から21時まではいつでも空いてる



カイ:タンパク質、脂質、糖質、その他諸々。栄養に偏りがないメニュー。素晴らしいな



アレジ:ハンバーガー!肉!ポテト!



エマ:フルーツっ!お菓子っ!デザート!



カイ:エマ。栄養は大事だ



エマ:うるさい



0:場面転換



ラインハルト:ここが学生寮だ、これから二年間。ここが君らの家になる



アレジ:一人部屋だー!



エマ:一人部屋だー!



カイ:自己研鑽にもってこいだ



アレジ:この人こればっかだね



エマ:ね。つまんないよね



カイ:うっさい



0:場面転換



ラインハルト:ここがプール



アレジ:初めて見たー!



エマ:まじか!



カイ:水泳は色々な筋肉が鍛えられる。いい環境だ



0:場面転換



ラインハルト:ここが体育館



カイ:広いし、様々な道具も揃ってる。いい環境だ。



アレジ:もうだめだ、こんな広いところで何をしろってんだ



エマ:今から夏が思いやられる



0:場面転換



ラインハルト:ここはフリースペースだ。好きに使え



アレジ:わーい!



エマ:わーい!



カイ:はしゃぐな



0:場面転換



ラインハルト:次、検査ルームだ。異常性の重症化が無いか、一日一回、定期検査を行う。まず今日の分だ。四人一組で入ってこい



アレジ:あぁ、やっぱりあるのね



グローザ:アレジ



アレジ:分かってるよーん



0:



ラインハルト:次、四名。入れ



カイ:失礼します



エマ:失礼しまーす



アレジ:どうもどうも



ラインハルト:順番に見ていく。まずカイ・シグス、このスキャナーの中に入れ



カイ:はい



ラインハルト:検査を開始する、大きく息を吸え〜



カイ:?…った!いたたたた!痛い!



ラインハルト:痛いよなぁそれ。スキャナーの電気信号を脳が嫌がるらしい。仕方がない、我慢しろ



カイ:頭!われ、る!痛い!



0:



カイ:死ぬかと思った



エマ:大袈裟だよ、カイ



ラインハルト:次。エマ・ワトソン



エマ:はいはーい!



カイ:エマ、泣くなよ



エマ:泣かないよ、誰だと思ってんの、あんま舐め(ないで)



ラインハルト:(被せて)検査を開始する



0:



エマ:えぅ…!うぇ…!えっぐ!えぐい!うぇん…!痛かった!死ぬかと思った…!



カイ:泣くなよ



アレジ:大袈裟だな、二人とも。もしかしてあれかい?痛いのとかあんまり経験してない感じ



ラインハルト:次。



アレジ:あがががががががが!!!痛い!痛い痛い痛い痛い!!死ぬ!!殺される!!



0:



カイ:なんだアイツは



エマ:なさけねー



アレジ:ぐぅ



エマ:グゥの音は出てる



ラインハルト:最後



グローザ:はい



カイ:あの人、グローザ?って言ったか。見た感じすっげぇ無口だが



エマ:ああいうタイプが叫んでんの、めちゃウケるね



アレジ:さぁ叫んでこいマグロ!



ラインハルト:検査を開始する



0:



グローザ:…痛いな



エマ:まぇいぁ!?それだけ!?



アレジ:んなわけあるか!痩せ我慢だろ!ズルだよズルっ



カイ:別にいいだろ



ラインハルト:四名とも異常性に問題無し。退室しろ。次



0:場面転換



ラインハルト:で、最後。ここが屋上だ。大体の施設案内は以上、45分の昼休憩の後は教室にて講義。以上、散れ



アレジ:はーい!



エマ:はーい!



カイ:はい



0:場面転換 喫煙所



アレジ:ふぅー。思ったより広いね、アーヘン



グローザ:そうだな



アレジ:色んな年齢層の人が居てよかったね、喫煙所がある



グローザ:そうだな



アレジ:うーん、つまらん。で。なんで呼び出したの。周りに人は居ないけど、何か話したい事でも?



グローザ:検査結果だが、どうやって乗りきった



アレジ:ああ、僕達今、異常性持ってないよ



グローザ:分かるように説明しろ



アレジ:そのままさ、「転移」させた。他の誰かに。後で戻すけど



グローザ:…そうか



アレジ:しかし煙草って何度吸っても不味いし苦いね、もういらないや



グローザ:なら捨てろ



アレジ:そうしまーす。じゃ、僕は青春を謳歌してくるから、またね



0:アレジは立ち去った



ラインハルト:煙草煙草、っと。先客が居たか…



グローザ:どうも



ラインハルト:ああ、さっきの。グローザ、と言ったか。随分長い時間吸ってるな



グローザ:暇でしたので



ラインハルト:一酸化炭素中毒で死ぬぞ〜、隣いいか



グローザ:ええ、構いませんが



ラインハルト:…



グローザ:…



ラインハルト:(M)いや。きまづ。無言気まづい。やっぱ教職向いてねぇ〜。帰りてぇよぉ〜ネロ〜ワイスさ〜ん



ラインハルト:(M)えぇっと。なにか気の利いた言葉…言葉…



0:二人はほぼ同時に口を開く



ラインハルト:煙草、何吸ってるんだ?



グローザ:今日、いい天気ですね



ラインハルト:…あぁ



グローザ:…



ラインハルト:すまん、なんて?



グローザ:いえ、教官からどうぞ



ラインハルト:ああ、えっとな。私、なんて言ったっけか



0:2



エマ:『復讐者達の午前』



0:場面転換



カイ:(M)それから、始まった。筆舌に尽くし難い地獄の訓練が。それはもう、今でも思い出したくないほど、地獄だった



ラインハルト:校庭20週。二時間以内に走り切れ



エマ:ほげぇぇっ、ひぃいっ



アレジ:ほっ。ほっ。



グローザ:…



エマ:はっっや…!



カイ:アンドレイ、どけ。



アレジ:え。なに?やる?



カイ:違う、遅いからどけと言っている



アレジ:おーやったらぁ!



エマ:ちょ、ペース、はや、すぎ



0:場面転換



ラインハルト:自動式拳銃を扱う為、筋肉は絶対に必要だ!はい筋トレ!なんか全部100回くらい!



エマ:なんか、百回って、なに?馬鹿なんだろうな、?



グローザ:…っ。



アレジ:あれれ?カイちゃん、ペース落ちてない?



カイ:ペース配分を誤ってない内は、お前がムキになっているだけだ。アンドレイ



エマ:もう、いいっ、て、アンタらの、それ



カイ:エマ。お前細すぎるぞ。もっと食え



アレジ:そうだよ、肉ある方がモテるよ



エマ:うっさい…!



0:場面転換



ラインハルト:放課後だ。帰って寝ろ、クソガキども



アレジ:どぎついねぇ。さて。グローザは…煙草か



エマ:しんどーーーーいっ!もう無理!死ぬ!殺される!



カイ:うるさいぞエマ。まだ一ヶ月も経ってないじゃないか



エマ:割に合わないよーっ。しんどいよー、帰りたいよぉ



アレジ:じゃあさ、ぱーっとなんか食べに行かない?



カイ:行くか。俺は帰る



エマ:食べに行こーーよーーーっ



カイ:うるさいって



アレジ:帰って何すんのさ



カイ:予習、復習、筋トレ。飯食って寝る



アレジ:あひぃ



エマ:こーゆー子なの



アレジ:よく友達やってられんね



カイ:ほっとけ。じゃあな



エマ:あ!待ってよ〜



アレジ:また明日ねぇ。さあ、二人きりだエマ。どこか行くかい?



エマ:待ってってば!カイ〜っ



0:『カイ。エマOUT。シャオ、ハゼットIN』



アレジ:……一人、か



0:周りを見渡した



アレジ:……。くぅ〜わぁ〜がた〜



グローザ:何やってるんだお前



0:『間』



アレジ:……なんでいるんだ。こんな所に。ここはどこだ



グローザ:教室だろう



アレジ:ああ。それもそうだ



グローザ:ライターを忘れたんだ。で。なんだ今のは



アレジ:……いいか!?もっかいやるからよく見とけよこら!おいこらこら!くぅぅ〜わぁあああがああ



ハゼット:『復讐者達の午前』



シャオ:いやぁ〜疲れたねぇ、ハゼット



ハゼット:うむ。思っていたよりハード&ハードだ。汗が滴る



シャオ:いい男ってなぁ〜。ねっむぃ



ハゼット:シャオ、君も女性ならば睡眠には気を使うべきだ。睡眠が齎す効力は素晴らしいぞ。肌質改善集中力向上精神安定基礎代謝向上



シャオ:わかったわかった、うるさいなぁ。帰るよ、そんじゃまた明日ね〜



ハゼット:ああ!また来たる朝日が昇るまで!



シャオ:その喋り方なんなの?



ハゼット:普通だが



シャオ:普通じゃないよ、なに?家の習わし?そういう村落の出なの?



ハゼット:父は電子系総社の50代営業、母はファミレスのパートさんだ



シャオ:普通だね



ハゼット:普通だが



シャオ:まあいいや。じゃ、また明日ね



ハゼット:ああ!また来たる朝日がのぼ



0:『シャオ、ハゼットOUT』



ラインハルト:『復讐者達の午前』



0:『カイ、エマIN待機』



0:場面転換 喫煙所



グローザ:…



ラインハルト:今日もいるか



グローザ:すみません



ラインハルト:謝ることじゃないだろ。隣、いいか



グローザ:えぇ。どうぞ



ラインハルト:どーも。この学院は教師含めて、どうやら私達しか喫煙者が居ないらしい。悲しいな



グローザ:最近減ってますからね



ラインハルト:ああ。肩身が狭い限りだ



グローザ:全くです



ラインハルト:講義はどうだ



グローザ:まぁ、それなりに



ラインハルト:は。安牌な返答だな。当ててやろうか



グローザ:何をですか



ラインハルト:お前、友達少ないだろ



グローザ:居ませんね



ラインハルト:ごめん



グローザ:それこそ謝ることじゃないありませんよ。



0:グローザは吸殻を捨てる



グローザ:それでは、お先に失礼します



ラインハルト:ああ。また



グローザ:…



0:『グローザOUT』



エマ:『復讐者達の午前』



ラインハルト:勉学を怠るなら死ね。国立大学卒業レベルの教養は身に付けてもらう



0:『シャオIN』



エマ:勉強なら私の十八番っす!



カイ:エマ、そこ間違えてるぞ



エマ:…アレジはっ!どこかわかんないとこない!?



アレジ:ああ、うん。えっと。あ!ここ分かんないや〜!誰か教えてくんねぇかなぁ!



エマ:私が教えようか!



アレジ:わぁ〜頼れる〜!



カイ:エマ、そこ間違えてるって



エマ:うるさい!もう構わないで!私はアレジの世話を見るので必死なの!



カイ:『復讐者達の午前』



0:場面転換



ラインハルト:体術テストだ。異常体も元は人間、ただの人間に殴り合いで制せない内は話にもならない。男女など関係無い。私はそういうのが一番嫌いだ。



ラインハルト:よって、男女混合のトーナメント戦を行う。死ぬ気でかかれ〜。はい第一試合〜



シャオ:あ!確か、カイくんだっけ?



カイ:そういう君は、シャオと言ったな。宜しく頼む



シャオ:こちらこそ!!お手柔らかにっ。頼んますっ。まじでっ



カイ:それは出来ない相談だ



シャオ:え。



ラインハルト:初めっ。



カイ:これは訓練だからな。



0:カイはシャオを普通に殴った



シャオ:はぉぶっ!殴った!女の子殴った!



ラインハルト:おーほほ、嫌いじゃない嫌いじゃない



カイ:恨むなよ。訓練だからな



シャオ:これしか言わないこのひとっ、こわい!



0:外野



アレジ:あれまじ?大人気ないとかそういうレベルじゃないでしょーよ



エマ:まあ…良くも悪くも男女平等主義だから…カイは…



アレジ:ろくでもねぇ…



0:時間経過



シャオ:あぁぶっへっほっ



ラインハルト:はーいそこまで。勝者カイ・シグス



カイ:よし。



アレジ:よしじゃねーよばかやろーっ



エマ:カイ〜、謝りなよ〜



アレジ:謝れ謝れ〜



カイ:うるさい野次だな。シャオ、訓練とは言え悪かった。立てるか



シャオ:だでまぜんっっ。



0:『シャオOUT。ハゼットIN』



エマ:泣いてるし



アレジ:カイってなんか、残念だなぁ



エマ:まあ、バカ真っ直ぐな事しか取り柄ないからね



アレジ:…ふむ。難儀だね



エマ:うん、行ってきまーす



カイ:次、エマだろ



ラインハルト:次。ハゼット。エマ。前に



アレジ:頑張れエマ〜っ。流石にカイほどの傍若無人野郎じゃないと期待しよ〜



エマ:はいはーいっ



カイ:誰が傍若無人だ



アレジ:君だよ



ハゼット:おや。たしか君は…。入学の際すれ違った麗し寄りの美女



エマ:寄りってなに、寄りって



アレジ:ていうかカイは心配じゃないの?



カイ:なにがだ



アレジ:エマは幼馴染なんでしょ?どうすんのさ、もしあのハゼットとかいうやつが君みたいなやべぇドメスティック野郎だったら



カイ:誰がドメスティック野郎だ



アレジ:君だって



ラインハルト:初めっ。



ハゼット:なに。安心して欲しい。私は先程のブ男の様な男に相応しくない真似はしない。優しく、撫でる様にいなそう。



ハゼット:して、初撃も勿論君からだ。男から先に手を出すのはベッドの上のみでよいのだから



カイ:幼馴染だから、心配してないんだ



アレジ:?



エマ:じゃあー遠慮なくっ



ハゼット:さあ!来たまえ猫パンチっ



カイ:あいつ、俺より強いから



アレジ:は?



0:時間経過



ハゼット:はぁ…はぁ…。



エマ:ね、ねぇ。もうやめようよ。いつまで私のターンなの?反撃しないならもう降参してって



ハゼット:ならんよ。男だからな。降参はしない。目の前に勝負から背を向けはしない。そして、女性には手をあげない。



ハゼット:それが私の流儀だ。



アレジ:ぼこぼこじゃん…顔。すごいよあれ。原型ない



カイ:あいつ、体力ないし筋肉ないけど、喧嘩だけはマジで強いんだ。怖いだろ



アレジ:うん。怖い。手段をね、選んでないよね。



エマ:ラインハルト教官〜



ラインハルト:ぷぷぷ。汲んでやったらどうだ、ぷぷ



エマ:はーい



ハゼット:さあ、来た、まえ、子猫パン――



エマ:どっせい!!



ハゼット:はごべぇっ



0:『ハゼットOUT。グローザIN』



ラインハルト:あっひゃひゃっ!勝者エマ・ワトソン〜っ!あひひひ!



アレジ:笑い方悪魔か



エマ:いえーーいっ



アレジ:おつかれぇ。末恐ろしいね。君には優しくしようと思ったよ



エマ:どゆ意味



カイ:次お前だろアンドレイ。早く行け、しっしっ



アレジ:邪険にしちゃって〜。



ラインハルト:次。グローザ、アレジ。前に



アレジ:やあ〜グローザ、素手でやり合うのは初めてかな



グローザ:素手以外でも初めてだ。



アレジ:さあ、かも〜ん



ラインハルト:初めっ。



カイ:そういやグローザも運動が得意なイメージないな



エマ:確かにそうだね、でもほら。運動神経と喧嘩の強さは比例しないから



カイ:お前が言うと説得力が違うな…



アレジ:よっと、案外喧嘩慣れしてないもんだねぇっ



グローザ:ああ。した事がないからな



アレジ:そーです、かいっ



0:馬乗りになった



グローザ:…。降参する



ラインハルト:…そこまで。勝者アレジ・ロンドン



エマ:でたね〜グローザの諦め癖



カイ:あいつのああいうところ嫌いだ



エマ:そゆこと言わない



アレジ:いやぁ〜ただいまただいまっ。圧勝だったよ。



カイ:グローザが諦めたからな



アレジ:うっさいよ。素直に褒めなさいよ



エマ:ほら。次は二人でしょ。行っといれ〜



アレジ:連戦きっちぃ



ラインハルト:次。アレジ・ロンドン。カイ・シグス。前に



アレジ:よっこらせ。



カイ:はぁ。お前に勝ったら次はエマか。気が引けるな



アレジ:なーに勝った気でいんのさ



カイ:うるさい、死体蹴りまで覚悟しとけよ、アンドレイ



アレジ:お手柔らかに頼むよ、カイ



ラインハルト:初めっ。



カイ:うぉぉおおおっ



アレジ:そぉおおらっ



0:二人は拳を一発ずつ顔に受けた



0:『カイ、アレジOUT。シャオ、ハゼットIN』



エマ:(M)それからなんやかんなあって、私が優勝して模擬戦は終わった。



ラインハルト:『復讐者達の午前』



エマ:結局どっちが勝ったが気になる?



グローザ:ならないな



エマ:っすよねぇ



0:場面転換、喫煙所



グローザ:…



ラインハルト:よ、お疲れさん



グローザ:お疲れ様です



ラインハルト:いやあ、盛り上がったなぁ、模擬戦



グローザ:そうですね



ラインハルト:思ってないだろ



グローザ:思ってますよ



ラインハルト:はぁ〜、イマイチ読めんなぁ、お前は



グローザ:ええ、よく言われます。やりづらいと



ラインハルト:そこまでは言ってないだろやりづらいな…



グローザ:言ってるじゃないですか



ラインハルト:そんな事よりグローザ



グローザ:はい?



ラインハルト:お前、手を抜いたな



グローザ:模擬戦で、という事ですか



ラインハルト:そーだよやりづらいなぁっ!お前あれ普通に減点だぞっ



グローザ:そうですか。それは、困ります



ラインハルト:赤点だよ赤点っ。不真面目じゃないんだけどなぁ、どーもこう、やる気というか、精力というか、こぉ〜モヮっとしてるよな、お前



グローザ:分かりません



ラインハルト:ったく、今度補習あるから、忘れんなよ



グローザ:私だけですか?



ラインハルト:お前とハゼットだ。



グローザ:分かりました。



0:煙草を吸い終えた



グローザ:それじゃあ、お先に失礼します



ラインハルト:おう



グローザ:…



ラインハルト:あ!忘れてた。グローザ



グローザ:?なんですか?



ラインハルト:またなっ



グローザ:…はい。



0:グローザ退室



ラインハルト:…やっぱ似てるなぁ



グローザ:『復讐者達の午前』



0:『グローザOUT。カイIN』



0:場面転換



ハゼット:…。



シャオ:まあ、そう落ち込みなさんな、銃さえあればあんた負け無しなんだから



ハゼット:言い訳などするつもりもない。というかなぜ知っている



シャオ:ふつーに銃撃テストで見てたし



ハゼット:はっ。目線を引き付けてしまうというのも罪だな。それに君こそ無事か、シャオ。随分とぼこぼこにされていたが



シャオ:あんたほどじゃないけどね



ハゼット:やめ



シャオ:やっぱり、私は紳士的な人がタイプだなぁって、思ったかなぁ



ハゼット:な、ななな、なななななっ



シャオ:なに



ハゼット:なんでもないっっ



シャオ:は?きもいんですけど



ハゼット:女子わっっかんねぇっ!



シャオ:うるさっ



ハゼット:『復讐者達の午前』



0:『ハゼット、シャオOUT



0:アレジ、アスカIN』



カイ:(M)学院での生活も、いよいよ3ヶ月目に突入した。俺達もある程度には体力がついてきた。そしていよいよ。いよいよ、だ。この日が来た



ラインハルト:と。いうわけで。今日からお前らにようやっと指導を始められる



アレジ:なにをですか



ラインハルト:人の手で、異常体を殺す方法だ



カイ:…!



エマ:人の手で…!?



アレジ:へぇ



ラインハルト:従来、これは三等監察官以上の職員に限り指導されるものだが、昨今、中央政府職員の殉死率を鑑みた結果。



ラインハルト:情報局、カルラコット・ブランシュ局長が、アーヘン学院生に指導を執り行う様指示した、自衛のためにもな



ラインハルト:今から二年間に渡り指導するのは「対異常体執行術」。文字通り、異常体を殺すための術だ



アレジ:なるほど、どおりで知らないわけだ



エマ:なんの話し?



アレジ:いいや、なんでも



ラインハルト:…と、まぁ。色々教えたい所だが、私はどうも感覚派でな。お前らに伝わるように説明するのがひじょーーーに難しいと判断した。ので、彼にお願いした。アスカぁ、入っといれ〜



アスカ:もう少しマシな入場予告ないのか。



ラインハルト:無いね。ほら、自己紹介



カイ:(M)身長は、190程あるか。体格も良い。恵まれてんな



エマ:(M)わあ〜、背筋良〜



アスカ:中央政府監察局から派遣された。準一等監察官、ユノランページ・アスカだ。宜しく頼む



ラインハルト:私の同期だ。同期のくせに私より弱い



アスカ:お前が馬鹿力なだけなんだよ。



0:ニーブラされる



アスカ:ごふっ、あっ。ごふっ、やめっ



ラインハルト:これからしばらく、執行術についての講義はアスカがする。実技は私が担当する。ちゃんと言うこと聞けよー



カイ:はい!



アレジ:はい!



エマ:はい!



カイ:(M)これだ。これを待っていた。ただの、なんの力もない俺が、異常体に対抗する手段。俺はこれを学びに来た。



0:場面転換



アスカ:異常体が持つ異常性の種類は様々で、発動条件、有効距離、持続時間等もそれぞれだ。ある種、性格や個性にも似たものだと捉えていい



カイ:(わかりやすいな。)



アレジ:…ふごっ



エマ:こらアレジ、寝るな



アスカ:執行術において一番重要なのは、カイ・シグス。なんだと思う



カイ:えっ。あー、えっと。筋力、ですか



エマ:でたよ脳筋



アスカ:まあ、間違ってはいないさ。勿論、一定水準以上の筋力は大前提だからな。次の資料を見てくれ



アレジ:ふごっ。あれ、どこまで進んだ



エマ:次のページめくって



カイ:…ホトバシ、カンラ?



アスカ:その人が、現在中央政府職員で、最も執行術の扱いに長けた人物で、ステージ4相当の異常体と同レベルの戦闘技術を持つ。俺やラインハルトの上司でもある



アスカ:そして、ホトバシさんが言うに、執行術に置いて最も重要なのは



アスカ:決断力だ。



カイ:決断力



エマ:迷ったら終わりってことですか



アスカ:そう。異常体との命のやり取りはコンマ数秒判断が遅れたら終わりだ。例えば、そうだな。炎を司る異常体が居るとして、現場にある情報をまず探る。視覚情報だ。



アレジ:あーあー、難しい話始まった



アスカ:現場で燃えているのは何か?木材や紙等であれば、着火対象は我々が認知する火そのもので、発熱温度は推定100℃前後。



アスカ:鉄や銅が溶けているようなら推定温度は1500℃から3000℃。温度調節はどれほどまで可能なのか。



アスカ:はたまた、既にある炎の温度を上げ下げする事が出来るのか、何も無い所から炎を発火させる事ができるのか。若しくは、その異常体そのものが炎で出来ているのか



アスカ:仮に発火型だとして、一度に排出できる熱量はどれほどか。発動条件は何か。身体の、若しくは空間の何処から発火するのか。



アスカ:次の異常性発動までのクールタイムは何秒か。異常性の事だけでもこれだけの考察余地がある



エマ:あーーあーあーぁぁ



アレジ:ひぇぁぁぇ



カイ:馬鹿みたいな顔するな



アスカ:これを、瞬時に観察する。瞬時に判断する。瞬時に決断する。これが執行術の基盤だ。



アレジ:恐ろしい…



エマ:それな…



アスカ:そこが分かれば、次は肉弾戦における情報だ。まず相手の推定視力。脚力。判断力。精神状態。



カイ:(M)まずい。思っていたより、ずっと、まずい。これ。頭がパンクする



アスカ:と。いうわけで今日の講義はここまでだ。各自、予習復習を怠るなよ



0:『アスカOUT。グローザIN』



カイ:お…。おお…



エマ:カイ、理解しようとしてパンクしてる



アレジ:ロックグラスに一升瓶注ぎ込んだらそら溢れるでしょ



カイ:おぉ…お前らは分かったのか!あれ全部!



アレジ:わかるわけ



エマ:ないよねぇ



カイ:だよなぁ



カイ:『復讐者たちの午前』



0:学生寮



0:場面転換



ラインハルト:さあ!前回の講義を活かして、私と実技訓練だっ。今回は私が異常体だと思って挑め、君達の武装は手持ちのモデルガン。その弾を私に一発でも入れられたら合格だ



アレジ:ばかめっ!蜂の巣だよっ!



エマ:ぐへへへへっ!



カイ:いけすかんが、最善手を尽くすのみだっ



ラインハルト:お前らなぁ。



0:弾を全て避けた



ラインハルト:アスカの授業で何聞いてたんだよ



アレジ:え。はや―――



0:殴りつけられる



アレジ:ぶごっ



ラインハルト:言っただろう。私を異常体だと思えと。あいつらは常に自分が攻撃されるビジョンを想像している。異常体からすりゃ四方八方から銃で撃たれるとなんてな



0:カイをほおり投げた



カイ:うぉっ…!?



ラインハルト:夕暮れに雨に降られた程度のアクシデントに過ぎないんだよ



0:エマは壁に叩きつけられた



エマ:ぎゃふんっ



ラインハルト:ホトバシさんには遠く及ばないが、私もこう見えて一等監察官だ。今お前らの目の前には、ステージ3の異常体がいると思え



0:グローザは殴るが、防がれる



グローザ:怖いですね、教官



ラインハルト:やっぱり模擬戦の時は手を抜いてたな、グローザ



グローザ:そんな事より教官、喫煙所に財布忘れてましたよ



ラインハルト:はぁ!??



0:ラインハルトに弾が直撃



グローザ:私の勝ちですね



ラインハルト:…



エマ:えええ。グローザ、あんなおちゃめな事すんのぉ



アレジ:いいぞマグローっ!よくやった!



カイ:アンドレイ、その呼び方いい加減やめろ失礼だぞ



ラインハルト:…



エマ:教官が静かだ…



アレジ:怒ってね…?



カイ:まじで…?やばくないか…?



グローザ:あの、教官。不意打ちは、反則でしたか



ラインハルト:いや!いやいやいやっ!ぜっったい職員室置いてきたって!忘れてない!ていうか忘れてたらその場で言えよお前が先に出てったんだからさぁっ



グローザ:あの…



ラインハルト:私は!現金派!なんだ!よ!貯金の四割財布に入れてんだよっ!



アレジ:えっぐ



グローザ:あの、教官



ラインハルト:なんだよ!!!



グローザ:冗談、です



ラインハルト:……なんなんだよ!!!



0:『グローザ、カイOUT。シャオ、ハゼットIN』



エマ:ラインハルト教官ってさ



アレジ:多分、馬鹿だよね



エマ:まあなにはともあれクリアだよ!クリア!



アレジ:よくやったグローザ!まぐろ!



エマ:『復讐者達の午前』



0:場面転換



エマ:(M)月に一度の休日。やっとやってきた。この地獄の空間で、やっとこさ解放の時間が!!



ハゼット:やあ!シャオ



シャオ:なんだよハゼット



ハゼット:この休日、何をしているのか問うている!



アレジ:今初めて問うたでしょうよ



エマ:こら〜ヤジ入れるな〜



シャオ:特に予定ないけど



ハゼット:ならば!私と行くまいか!んんデートに!



アレジ:おおおおっ!



エマ:おおおおっ!



ハゼット:既にとってある。予約を。んんレストランのなっ。



アレジ:おおおおおっ!



エマ:おおおおおっ!



ハゼット:朝の9時半に合流し、ランチを食べ、その後水族館にでも行こう!魚を肴にフィッシュフライでも食べよう!そして夜は海の見えるホテルでディナーをしようっ!



アレジ:食ってばっかだけどいいぞハゼットおお!



エマ:門限ガン無視だけどそこがいいよハゼットおおっ!



ハゼット:さあ!シャオ!この週末を私にくれないかっ!



アレジ:いけーっ!



エマ:いったれーっ!



0:『思案』



シャオ:うーん。面倒臭いからパス



ハゼット:…。



シャオ:じゃあみんなーまた来週ー



0:『シャオOUT。カイIN』



エマ:ま、またねー。



アレジ:また来週〜



ハゼット:あ、ああ。行ってしまった。ゆかれるか。ゆかれてしまわれるか



アレジ:えげつねー



エマ:えげつね〜



アレジ:なんで断るんだ。シャオのやつ。一人でなにするってんだ



カイ:筋トレと自習だろ。週末を自己研鑽に積むのは良いことだ



アレジ:誰もが誰も君みたいな脳筋だと思うなよタコっ



ハゼット:…。



エマ:ほらカイ、ハゼット落ち込んでるから。なんか顔がほら、ちょんちょんぺんっ。で書けそうなくらいすっきりしてるから



アレジ:慰めてあげなって



カイ:なんで俺なんだ



アレジ:いいからいいから



カイ:おい、押すな。



ハゼット:カイ…シグス…



カイ:あー。なんだ。まあ、予約とったんだろう。なら他の誰かと行けよ。例えば、ほら。友達とか



ハゼット:友…か。ああ、こんな優しい慰めの言葉を投げかけてくれる男子を友と呼ばずしてなんと呼ぼう



カイ:ああ



ハゼット:はっきり言って、模擬戦の時は君を軽蔑していた。だが、今はっきりとわかった。君もまた、ある種の紳士だ。認めようとも、そして認めてくれたまえ。



ハゼット:君は、私の友だ



カイ:ああ



0:『握手』



ハゼット:ぐわしっ。さあ、カイ!私と行こう!朝の9時半に合流し、ランチを食べ、その後水族館に――



カイ:俺は自習と筋トレがある。そんなに暇じゃないんだ。他の誰かを誘ってくれ



アレジ:ぁぁぁ…



エマ:ぃぃぃ…



ハゼット:…うむ。自己研鑽に勤しむ友の姿も、また美しい。また来週、さらに輝いた君の姿を楽しみにしているよ



カイ:ああ、頑張るよ



ハゼット:さらばだっ。アレジっ、エマっ、君たちもっ、また来週っ、ひっぐっ、さらに輝いてっ、うぇっ、会おぉっ!



0:『ハゼットOUT。グローザIN』



0:ハゼット退室



エマ:泣いてたよね



アレジ:泣いてたね



エマ:さて。カイ!カイカイカイカイ!ちんちんカイカイ!



カイ:人の名前で遊ぶな



エマ:映画見に行こぅ



カイ:悪い、自習と筋トレだ



エマ:はいはい変わらずですか。アレジはど?



アレジ:うん。いいよ



エマ:ひー!やっぱノリの良い男はいいよね、そういう所、ほんとカイより勝ってる、圧勝!



アレジ:えへへ



カイ:俺も行く



エマ:いいよ、脳筋休日するんでしょ



カイ:俺も行く



アレジ:可愛い奴め



エマ:グローザはどうする?



グローザ:私はいい



エマ:なんでさなんでさ、なんでやねん!まさかデート!?



アレジ:そんな相手いるわけないじゃん、グローザだよ?マグロだよ?



カイ:普通に用事があるだけだろ



グローザ:じゃあデートだ



アレジ:ぇぇぇぇ、、



カイ:ぇぇぇ、、



0:喫煙所



ラインハルト:それで、断ったわけか



グローザ:はい



ラインハルト:少しは交友関係に興味を持てよお前は



グローザ:人と話すのは苦手なんですよ。昔から



ラインハルト:ああ、っぽいな。何だったらこの休日、私とデートするか



グローザ:女同士で、ですか



ラインハルト:女同士で、だ



グローザ:教官ほどデートという言葉が似合わない人は初めて見ました



ラインハルト:どういう意味だ



グローザ:髪の毛ボサボサ、服装乱れ過ぎ、唇も荒れているしクマも酷い、寝てませんね



ラインハルト:…



グローザ:加えて言うなら睡眠不足で目の充血も酷いです。折角美人なんですから



ラインハルト:ぷっ



グローザ:…なんですか



ラインハルト:ぷはっ!いや、はは。悪い、その。なんだ、グローザ、お前、お母さんみたいだってよく言われないか



グローザ:…いえ。まったく



ラインハルト:そうか。それもそれでいい。ひとつ、お前を知れたな。こういうのが教官冥利に尽きる瞬間だ



グローザ:はあ…?



ラインハルト:で。どーする。本当にデート行くか?私も独り身だし中央に帰る予定もない、暇だぞ



グローザ:結構です



ラインハルト:は。だと思ったよ、じゃあ私はこれで失礼する、グローザ。また



グローザ:はい、また



0:場面転換



カイ:(M)講義内容にも慣れてきた、慣れというのは怖いもんで、時間の加速を感じさせる。あっという間に二ヶ月、三ヶ月、四ヶ月と過ぎ去った



エマ:はぁ、、はぁ、、!初めて、二時間、二十週、完走出来た…!



カイ:偉いぞ



アレジ:偉い偉い!



グローザ:…



アレジ:ほら、グローザからも何か言ってやりなって



グローザ:ああ、凄いな?



エマ:そりゃあ、どう、も…



カイ:エマ!?



アレジ:教官!エマが死にました!



ラインハルト:マジか、ウケるな



カイ:(M)俺にはここに来た目的がある。それ以外は、どうでもいい。所詮は研鑽の場所だ。同じ志を持っていたとしても、死ぬ時は一人だから



ラインハルト:さあ来い、ひよっこ!



カイ:行くぞエマ!



エマ:うんっ



ラインハルト:後方支援がエマ。前衛の牽制がカイ。ああ、悪くないな



カイ:今だ!アンドレイ!



アレジ:はいよーっ



ラインハルト:だろうと思ったよ!



0:アレジ、着き倒される



アレジ:まひるっ



カイ:なにやってるアンドレイ!タイミングが遅い!



アレジ:カイが「今だっ」って言った時に飛びかかりましたーっ



カイ:今だって言った前お前鼻ほじってただろ!



アレジ:なんでバレてんだよちくしょう!



ラインハルト:こーらこら、喧嘩するな



0:二人を殴りつける



アレジ:ごぶっ



カイ:ごほっ



ラインハルト:異常体の前で喧嘩なんざしてたら即刻首なしだぞぉ



エマ:ばん。



0:『着弾』



ラインハルト:あ。



アレジ:あ。



カイ:あ。



エマ:…あ。いや、ごめんなさい。なんか、今かなって



ラインハルト:…ふはっ、ああいや、私の不注意だな。よし。今日の執行術訓練もクリアでいい



アレジ:ら、らっきぃ〜…



カイ:(M)友情を小馬鹿にしているわけではない。けど、それ以外に目を向けてるほど、俺は暇じゃない



ラインハルト:お。来たか



グローザ:教官。今日は早いですね



ラインハルト:ん。ああ、さぼりってやつだ



グローザ:いいんですか、それ



ラインハルト:ばか。サボりだぞ。ダメに決まってる。けどほら、たまには息抜かんとやってられん



グローザ:オヤジ臭いですよ



ラインハルト:はは、よく言われる



グローザ:…



ラインハルト:しかしお前って、笑わんよなぁ



グローザ:そうですか?



ラインハルト:ああ。かれこれ半年喫煙所仲間やってるのに、一回も笑ってるところ見たことない



グローザ:別に居心地が悪いわけじゃないんですけどね



ラインハルト:んだお前、可愛いなっ。このっ



グローザ:やめてください



カイ:(M)いつからだろう。ここの生活が、日々を過ごす日常になっていき。ここの人間が、俺の周りの日常になったのは



0:『グローザOUT。シャオ、ハゼットIN』



アレジ:カイ〜。学食いこーぜぃ



カイ:ああ。



アレジ:あれ?エマは?



カイ:用事があるんだと



アレジ:じゃあ今日は二人きりだね



カイ:やめろ気持ち悪い



アレジ:んだとこんにゃろ!



カイ:いってぇな何すんだおまえっ!



アレジ:ってぇ!へへ、ああ、何食う?



カイ:なんでもいい



アレジ:そっか



カイ:(M)どうでもいい。切り離せる物だ。



シャオ:はぁ〜、やっっっと休みだぁ。



ハゼット:んんんシャオ!!



シャオ:あー、ハゼット。おつかれぇ



ハゼット:今月こそゆこう!花の園に!



アレジ:トイレみたいに言うね



シャオ:ごめん、今月は予定あるんだよねー



ハゼット:ガッデム!



シャオ:じゃあ皆〜、また来週ぅ



0:『シャオOUT。エマIN』



アレジ:あ、うーん、またねー



カイ:自己研鑽、偉いな



アレジ:違うって。絶対違うから



ハゼット:およよ



0:アレジはハゼットの方に手を置いた



アレジ:ハゼット。ナイスガッツだと思う



ハゼット:アレジ…!いや、友…!



0:エマも手を置いた



エマ:ハゼットのめげない所、結構すきだよ



ハゼット:エマ…!いいや、友…!!



0:カイも手を置いた



カイ:でもいい加減しつこいと思うぞ



アレジ:カイ!!



エマ:カイ!!



カイ:(M)こんなもの。いつでも、切り離せる物のはずなんだ。



0:『ハゼットOUT。グローザIN』



エマ:さぁて。カイ、カイカイカイカイ!ちんちんカイカイ!



カイ:それやめろ



エマ:次の休み、遊園地行こぅ



アレジ:おっ!いいね



エマ:はいアレジ貰い!カイ?



カイ:ああ、いいぞ。



エマ:っしゃおら。グローザは?



グローザ:遠慮する



アレジ:あら。デート?



グローザ:ああ。デートだ



カイ:(M)いつからだろうか。こいつらの事を、友人と言っても差し支えない存在と認識しだしたのは



グローザ:…



ラインハルト:おっ。やっぱり居るな



グローザ:ええ。今日は遅かったですね



ラインハルト:監察局の方の仕事が溜まっててな。サボりきれん。教官職なんだから免除してもらいたいもんだ



グローザ:心中お察しします



ラインハルト:ああ、そういえばエマから泣きつかれたぞ



グローザ:何をですか?



エマ:(回想)聞いてください!!グローザが全然遊びの誘いに乗ってこないんです!ノリ悪いんです!あいつ絶対友達少ない!



ラインハルト:ってな



グローザ:ああ、チクられましたか



ラインハルト:たまには遊びに行ったらどうだ。まだそう落ち着く歳でもないだろう



グローザ:はしゃぐ歳でもありませんよ。それに、ここに居た方が落ち着きますから



ラインハルト:本当に可愛いやつだな、お前



グローザ:騒がしい場所と、人の多い場所が苦手なだけです



ラインハルト:可愛くないな、お前



グローザ:教官に似たのかと



ラインハルト:やっぱ可愛いなぁお前!



グローザ:ベタベタしないでください、火当たりますよ



ラインハルト:あっっつ!



グローザ:だから言ったじゃないですか



ラインハルト:ああ、逆体罰だな、可愛くない。昔の友人によく似てる



グローザ:昔の?



ラインハルト:ああ。お前に似て、眉ひとつ動かさない鉄仮面で、生真面目な割にどこか一歩引いた様なやつだったよ。お前よりも頑固だったけど



グローザ:監察局の人、でしょうか



ラインハルト:そーだよ。可愛げの欠片もない。でもそーゆとこが逆に可愛い。良い奴だったよ。ほんと



グローザ:そうですか。しかしこう忙しいと暫く会えてないでしょう。中央までは距離もかなりある



ラインハルト:あーいや、もう死んでんだよ。そいつ



グローザ:…そうですか



ラインハルト:なんてことはないさ、その辺の任務でな。その頃には私はアーヘンに居たからな。死に目に立ち会う所か、最後の一言も交わせないまま逝きやがったよ



ラインハルト:劇的な死なんてなんない。現実は小説より奇なりって言うが、ありゃ嘘だと思ってるね



グローザ:…だから、教官は。よく「また」と、声をかけるんですか



ラインハルト:ん。あー、そういえば、そうだな。癖みたいなもんかもしれん。口約束だが、安心するだろ



グローザ:そんなもんですか



ラインハルト:そんなもんだ。



グローザ:…そうですか。それでは、私は先に



ラインハルト:ああ、お疲れさん



グローザ:教官



ラインハルト:なんだ



グローザ:…また。



ラインハルト:…はっ、可愛い奴め。またな



カイ:(M)蝉がうるさい、日が地面を照らしつける八月。こうして、俺達は夏を迎えた



アレジ:『復讐者達の午前』



ラインハルト:暑いな。非常に。暑い。そして、ようやっと、実戦任務にお前らを投下する。これもアツい



カイ:(M)やっと、来た。



ラインハルト:勿論、お前らみたいなぺーぺーのひよっこが向かったところで、犬死するのが関の山だろう。相手は異常体だ。何度かやった私との模擬戦とは訳が違う



カイ:(M)この時を、一年待った



ラインハルト:相手は、自身が生き抜く為にあらゆる手段を選ぶ。殺すことは勿論、脅し、騙し、隠れては逃げ延びる



ラインハルト:最優先事項は、お前らの安全だ。次に、異常体の拘束。執行許可は降ろさない



アレジ:随分と甘くなっちゃってまぁ



ラインハルト:身の危険を感じたらすぐに退くこと。私とアスカもすぐ側で待機するし、お前らの安全を最優先に動くが、それでもやはり命の保証はしてやれない



カイ:(M)異常性。それは一切のプロセスも、原因も無しに結果だけを引き出す異能。



ラインハルト:家に帰って飲むコーヒーより、喫煙所で煙草を吸う事よりも。死の方が近くにある。ここは、そういう世界だ



カイ:(M)誰もがヒーローになれる。そんな筈が無い



ラインハルト:再三言う。お前らはまだまだひよっこクソ雑魚のミソッカスだ



カイ:(M)力を持った人間は、決まって暴虐を振りかざす。



ラインハルト:だからここで、約束してくれ



カイ:(M)だから俺は、今。ここに居る。



ラインハルト:全員。必ず無事で戻ること。以上、命令を遵守しろ



0:全員、口を合わせる



カイ:はい



アレジ:はーい



エマ:はい



グローザ:はい



ラインハルト:…よし。家に帰るまでが遠足だ、気張って行くぞ!



0:『グローザ、エマ、アレジOUT。ハゼット、アスカ、シャオIN』



カイ:(M)そして始まった、初めての実戦任務。地域はウクライナ北西の小さな街



カイ(M)対象はステージ1が三体。対する生徒数は38人。ラインハルト教官とアスカ教官を含めたら、40対3だ。



カイ:(M)俺は、人間は。異常体に勝てる。



アスカ:…どう思う、ラインハルト



ラインハルト:何がだ



アスカ:あいつら、誰一人欠けることなく帰ってくると思うか



ラインハルト:はっ。心配性だな、アスカは



アスカ:それが俺達の仕事だろう



ラインハルト:なにも問題ないよ。私が生きて帰れ、と。そう命令して、あいつらはそれに「はい」と返した。



ラインハルト:不出来な生徒ばかりだからな。出来ないことに自信満々に頷くほど、出来た奴らじゃない



アスカ:そりゃまあ、信頼の厚いことだ



ラインハルト:バカお前、私たちがあいつら信じなくて誰が信じる



アスカ:はっ、ああ。それもそうだな



ラインハルト:さあ。行こう。監察だ



0:場面転換



ラインハルト:(M)1998年。8月1日。第一回目、アーヘン高等技術研修学院、実戦任務より。成績上位6名を報告



ハゼット:ふはっ、来るがいい!こっちに!そうだ、こっちに来い!



アスカ:(M)第6位。ハゼット・ワーグナー



ハゼット:ああ、そうだ。そのままこっちに来たまえ、優しくハグしてやるとも



ラインハルト:(M)体術でこそ他に劣るが、冷静且つ迅速な対応と、思い切りのいい判断能力を併せ持つ。何より彼の最も優れた点は



ハゼット:風向き、角度、距離。うむ、ここが一番―――



ラインハルト:(M)的確な射撃精度



ハゼット:――美しい…っ!



0:『ハゼットOUT。エマIN』



アスカ:(M)ステージ1の異常体の左足首を狙撃。対象の機動力を奪った。



シャオ:ちょ、ちょちょちょ、ちょっとたんまぁ!



アスカ:(M)第5位。シャオ・ラパン



シャオ:たんまだって、へ、へへへ。降参しま〜す



アスカ:(M)体術はハゼットに次いで成績が悪い。が、ハゼットと同様に、冷静さを常に持ち、臨機応変に起点の利いた行動を取る。彼女の強みは、自分が弱い事をこの上なく理解している点だ



シャオ:なーんちゃって。こっち行き止まりだよ〜ん



ラインハルト:(M)自分を囮に使い、入り組んだ貧民街の路地に誘い込む。



シャオ:さぁ〜みんなっ!あとやっちゃって!怖いから!はよ!はよ!!



0:『シャオOUT。アレジIN』



アスカ:(M)その後、シャオの指示した場所に待機した狙撃班の手によりステージ1の異常体の拘束に成功



エマ:さぁ〜、もう逃げられないぞぉ



アスカ:(M)第4位。エマ・ワトソン



エマ:そぉーれそれそれっ!



アスカ:(M)模擬戦でも見せた戦闘センスで、誰より早く執行術を自らの物にした。半年以上に渡る訓練で、基礎体力もつき、今後更なる成績向上の余地がある



エマ:足から血が出て可哀想だから、この程度にしといてあげる



ラインハルト:(M)だが、爪の甘い部分があり、ほんの少しの油断が今後命取りになる可能性もある



カイ:エマ!伏せろっ!!



アスカ:(M)第3位。カイ・シグス



0:『エマOUT。グローザIN』



カイ:ぉおおおおっ!!



アスカ:(M)体術、学力共に平凡な成績ながら、持ち前のフィジカルと根性論で約半日で合計11km程ウクライナ市街を走り回った



カイ:このまま落とす!誰でもいい!拘束用の手錠と麻酔持ってこい!聞いてんのか!さっさとしろ!



アスカ:(M)落ち着いている内は周りがよく見えていて、指示も的確。情緒の安定性が今後の課題と思える



アレジ:ほーらカイ、ここをこうするんだよ。



ラインハルト:(M)第2位。アレジ・アンドレイ



アレジ:頸動脈を抑える。呼吸器官を圧迫して、顎を上に



ラインハルト:(M)本任務でこそ目立った活躍はなかったが、執行術における潜在センスはエマ・ワトソンに次いで高い。



アレジ:異常体はワードトリガーっていう発動詠唱が必要なケースが殆どだからまずは猿轡。思考能力を落とすために酸素を奪う



アレジ:死なない程度にショックを与える出血もアリだ。考える脳もなきゃ異常性は発動しないからね



ラインハルト:(M)優秀な執行術の使い手は、異常体の思考になりきる事に優れた人物である。特等監察官、ホトバシ・カンラの言葉の通り、彼は異常体の嫌がる所をよく理解している



アレジ:優しく運んであげなよー



ラインハルト:(M)本任務中では一切の感情の落差を見せず冷静にたち振舞った。彼の入学以前のデータはまるで無いが、余程の修羅場を潜った様に思える



グローザ:…まずいな。



ラインハルト:(M)首席。グローザ・リーベルト



グローザ:ここはどこだ



ラインハルト:(M)本任務中、唯一単独行動をし、その場でステージ1の異常体と遭遇



グローザ:…。ああ、成程。あんたか



ラインハルト:(M)彼女の底は未だ知れないが、ひとつ言えるのは



0:グローザは異常体を制圧している



グローザ:…暴れないでくれ。煙草の煙が目に入る



ラインハルト:(M)この学院の中で、最も身体能力、並びに命令実行能力に長けている。本任務の最優先事項、自身の身の安全と共に異常体の拘束。そのままを達成した



アレジ:おーい、グローザ、そんなとこでなにやってんの。ってとっ捕まえてるし。それ指示にあった異常体?



グローザ:そうだ。どこに行っていたんだお前



アレジ:ごめんごめん、あのままじゃカイが異常体殺しそうだったから



グローザ:そうか。こいつの後始末は任せる



アレジ:えー。じゃあ僕の手柄にしちゃうよぉん



グローザ:好きにしろ



0:『アレジ、カイOUT。ビットマン、カルラコットIN』



アスカ:(M)だが、イマイチ積極性に欠け、その後も他の生徒とは合流をしない等、協調性にも欠けているのが傷。



アスカ:(M)以上、1998年。8月1日。第一回目、アーヘン高等技術研修学院、実戦任務より



0:中央政府本庁



アスカ:報告を終わります。



アスカ:ビットマン・ワイス監察局長。



アスカ:並びにカルラコット・ブランシュ情報局長。



アスカ:何か不明な点があれば



ビットマン:ああ。ご苦労



カルラコット:うんうん、ありがとう、ロゼット、ユノ



ラインハルト:とんでもない



ビットマン:しかしまあ、随分と豊作じゃないか



カルラコット:そうだねぇそうだとも。ビットマンはどの子気に入った?



ビットマン:俺は断然グローザだなぁ。是非ほしい



カルラコット:おやまあ。やる気ない子好きだったっけ



ビットマン:こういうのはアツくなった時が一番光るんだ。嫌いじゃないな。お前は?



カルラコット:んー、私は。カイ・シグス、この子が欲しい



ビットマン:ただの筋肉バカじゃないか



カルラコット:こういう真っ直ぐな子が好きなの



ビットマン:わからんねぇ、もっとこう、スマートに行きてぇもんだ



カルラコット:いつからそんな合理主義気取るようになったんだい、ビットマン



ビットマン:元からだとも



カルラコット:あぁそう。合理的なら肝臓なんざ壊さないで欲しいものだね



ビットマン:いつまで根に持ってんだ



カルラコット:大変だったんだぞぅ。あの時は



ビットマン:あー、悪かった悪かった



カルラコット:謝罪が軽ぅい。まあ、他ならぬ君の為だから今更掘り返したりはしないさ



ビットマン:掘り返したろうが。たった今



ラインハルト:あの



カルラコット:それで。気付いてるのか知らないけど、君が推しているグローザ。と、二位のアレジ・アンドレイ。これなに?



ビットマン:何がだ



カルラコット:はい猿芝居ぃ〜。赤い林檎主犯のアレジ・ロンドン。四年前ロック・ストーンから脱走したアンダンテ・S・グローザ



カルラコット:姓は違うにしても、出来すぎじゃあないだろうかぁ



ビットマン:勿論真っ先に確認した。俺自らな。実際面談もしたとも。顔も声も身長体重もまるで別人だった



カルラコット:でもさぁ、無いよねぇ。履歴に。顔写真



ビットマン:だから俺が直接確認したんだ。それに、俺以外にもいるだろう。その二人に会っている人間が。なあ?ラインハルト、アスカ



アスカ:…(ラインハルトをこずく)



ラインハルト:はい?



カルラコット:はい?じゃないよ。はい?じゃあ。この二人は、件の二人と同一人物じゃあないんだよねって聞いてんのさ



ラインハルト:…なんの話をしているか分かりかねますが、二人は私が知る限り、おふたりの目に悪い意味で留まる様な輩ではありません



ビットマン:直接指導している彼らもそう言ってる。そして、他の誰でもない俺もそう言った。



カルラコット:…



ビットマン:俺が、信用出来ないか。カルラコット



カルラコット:……冗談。



カルラコット:君ほど信頼を置いている人間は、私の中には二人と存在しないよ



ビットマン:ああ、よかった。ラインハルト、アスカ。報告ご苦労。不明な点も特に無いそうだ。そのまま指導を続けろ。以上、命令を遵守しろ



アスカ:了解しました



ラインハルト:命令を遵守します



0:通信終了



0:『アスカOUT。アレジIN』



ビットマン:さあ。俺はそろそろ監察局に戻るぞ



カルラコット:ああうん。折角ならお茶でも一緒して行けばいいのに。ナンバーズの彼らもそろそろ帰投するよ。久しぶりに会いたいだろう?



ビットマン:遠慮しておこう、俺はこう見えて多忙なもんでな



カルラコット:ああそう。付き合いの悪いこと



ビットマン:また今度な。そんじゃあ



カルラコット:ねえ。ビットマン



ビットマン:なんだ



カルラコット:君ほど信頼を置いている人間は。私の中に。二人と存在しないよ



0:『少しの沈黙』



ビットマン:さっきも聞いたよ。どーもな



0:ビットマン退室



カルラコット:…ああ。そうだとも。二人と、存在しないんだよ。ビットマン



アレジ:『復讐者達の午前』



0:『ビットマン、カルラコットOUT



0:カイ、エマIN』



アレジ:(M)背景。友人へ。僕は随分と、久しぶりに。何も気にせず日常を過ごしている。



アレジ:(M)ここでの生活は地獄だ。訓練は厳しいし、学びたくも無いことを学んでいる。



アレジ:(M)いい所といえば、飯が美味いところと、一人部屋なとこだ



アレジ:(M)あと強いてあげるなら、螺旋階段がないところも憂鬱のひとつの要因だ。あと、どのくらいだろうか。



アレジ:(M)なるべく早めに、来て欲しい。以上



ラインハルト:お。グローザじゃないか、おはよう



グローザ:おはようございます



ラインハルト:おうおう。廊下走ってなくて偉いが遅刻ギリギリだぞ。私もだが



グローザ:…



ラインハルト:…喫煙所と教室以外で会うのは、なんか新鮮だな。なんつーか、ちょっと気まずさすらある



グローザ:そうですね



ラインハルト:お前もそんな気持ちになるのか



グローザ:いえ。あんまり



ラインハルト:なんなんだ



グローザ:なんなんでしょう



ラインハルト:いやぁ、しかし。暑いなぁ



グローザ:暑い。ええ、はい。暑いですね



ラインハルト:なんだその反応は



グローザ:いえ。なにも



ラインハルト:なんだよ



グローザ:なにもないです



ラインハルト:なんなんだよ、へいへい



グローザ:くっつかないで下さい、暑いです



ラインハルト:暑いんじゃないか



グローザ:確かに、暑い。かもしれません



ラインハルト:お前がそう思ったら、そうなんだよ。暑いんだ。夏だからな



グローザ:夏、ですね



ラインハルト:ああ。本当に――



0:教室



アレジ:暑い。暑い暑い暑い。あつーーーいっ!



エマ:溶けるぅ〜でろんでろんにっ溶けっ溶けるぅ〜!



カイ:気合いが足りないぞお前ら



アレジ:あのさぁ。誰もが誰も君みたいな真っ直ぐ馬鹿マッスルで生きられるわけじゃないのよ



エマ:そーだよ、暑いものは暑いんだよ



カイ:うるさい。



アレジ:ひそひそ。カイ、機嫌悪くない?



エマ:ひそひそ。成績でアレジに負けたのかなーーーーーり根に持ってたよ



アレジ:ひそひそ。なにそれ。かわいいー



エマ:ひそ。かわいいよねー



カイ:聞こえてんだよこら



ラインハルト:ほらお前ら、席に着け



アレジ:ついてまーす。このまま机と同化するくらいにー



エマ:溶けちゃいますけどもー



ラインハルト:うるさいうるさい、私も暑い。我慢しろ



カイ:(M)まだ蝉の声がうるさい、八月の半ば。



アレジ:(M)日差しが照り返して、教室は蒸し暑い。



ラインハルト:ほら講義始めるぞ、暑いからさっさと終わらせる。そんで私は寝る



アレジ:二日酔いじゃないですか



ラインハルト:うるさい、ノート開け



エマ:はーい



カイ:(M)アーヘン卒業まで。残り一年と、四ヶ月。



アレジ:あ。教科書忘れた。カイ〜!見せてくれぃ!



カイ:くっつくな



アレジ:痛い痛い!



ラインハルト:お前らなぁ、講義始めるっつってんだろ!



アレジ:(M)アーヘン襲撃まで。残り四ヶ月と十二日。


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