表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能力者達の午後  作者: ゆーろ
異能力者達の午前
29/32

傍観者達の午後

0:傍観者達の午後





阿久麻:そこはきっと、私達がよく知る場所でもあり、けれども私達が知る由もない場所なんだろう



妹乃:「バシ」



白橋:「なんだ」



妹乃:「バシはさ、その日を、その一年を、その一生を、何度でもやり直せる力があったら、どう思う。」



白橋:「あーーー。ロマンだな」



妹乃:「だろ。バシならなにする」



白橋:「2、3回女子風呂覗いて終わりだな」



妹乃:「は?」



白橋:「そんなもんだろ。過程の話にマジになんのも馬鹿らしいが。んな大層なもんなくたって十分楽しいよ、俺は」



妹乃:「そっか」



白橋:「そーだ」



妹乃:「もし、僕にその力があるって言ったら、どうする」



白橋:「何度でもやり直せる力がか?」



妹乃:「そうだ」



白橋:「あーーー。」



妹乃:「…」



白橋:「てめぇの良いように作った世界を、俺が。グチャグチャにしてやるよ。何度でも、やり直す度に。俺が、だ。」



妹乃:「ほぉ」



白橋:「そんでこう言ってやる。ざまぁみろってな」



妹乃:「――は。本当に、変なやつだな。君は」



阿久麻:セノ アキラは語らない。



阿久麻:それは彼が、過去に後悔をしないからだ。



阿久麻:それが彼の、傍観者たり得る理由だからだ



0:某都市 廃ビルの棄てられた倉庫



カルビス:「よぉ。アキラ」



セノ:「――はぁ。やあ、バシ。いいや、カルビス・ラングナー」



カルビス:「どうだよ。お前が望んだグチャグチャの群像劇だ。観戦チケットは一枚だけ。楽しめてるか」



セノ:「君のせいで、これっぽっちも」



カルビス:「はっはぁ。そりゃ何よりだなぁおい、ざまぁみろ」



セノ:「相変わらず変なやつだ」



カルビス:「お前にゃ言われたくねぇよ」



セノ:「会う度に喧嘩ばかりだね、僕らは」



カルビス:「馴れ馴れしいな、アキラ。やっとだ。お前を、ぶち殺せる。傍観者気取りはここまでだぜ」



セノ:「…は。うん、やっとだ。」



阿久麻:セノ アキラにとって、全ての事象は



阿久麻:面白いか、はたまたそうでないか。ただそれだけである



0:とある高校 教室



0:ルービックキューブで遊ぶセノ



妹乃:「…飽きた。これも面白くないなぁ」



阿久麻:だから私が、彼を語ってみようと思う。



阿久麻:名前。妹乃 明。誕生日は12月4日。年齢、当時17歳。



阿久麻:公立の全日制高校に通う高校二年生。



阿久麻:身長、175センチ。体重、61キログラム。



阿久麻:握力42キロ。100メートル走、10.3秒。得意科目、国語。彼女なし



阿久麻:両親は共働きで年収620万。一人っ子。極々一般的な家庭で育った



阿久麻:小学生の頃の夢はタクシーの運転手。給食のきんぴらごぼうが嫌い



阿久麻:中学に上がり、友人に誘われてバスケットボール部へ入る



阿久麻:彼は、優秀だった。



阿久麻:何をするにも努力を必要としなかった。



阿久麻:彼は、頭が良かった。



阿久麻:中学バスケにおいて、彼は稀代のゲームメーカーと呼ばれるようになった。



阿久麻:そして彼が中学二年生の頃、中学バスケットボール全国大会にて、日本一位の功績を残した。



阿久麻:誰もが思っただろう。「天才」だと



阿久麻:中学三年生、再び日本一位をチームへ導いた後、中学校卒業



阿久麻:卒業式では第一ボタンから第四ボタン全てを盗まれる



阿久麻:高校に上がり、再びバスケットボール部へ入部



阿久麻:しかし、夏のインターハイ。彼は肘に全治半年の故障を負い、完治を前に引退



阿久麻:誰もが彼の引退を惜しんだ。天才は没落した



阿久麻:だが、彼が引退した理由は、そこに無い。引退を引き止めた友人に、彼はこう言った



妹乃:「飽きたからいいんだ」



阿久麻:それが本音なのか、強がりなのかは彼と、恐らく私しか知り得ないだろうが



阿久麻:あえて答えを言うのであれば、本音である。



阿久麻:彼にとって、それらは暇潰しにもならなかった。



0:何処ともしれない場所



セノ:「ちょっと阿久麻さん。なにしてんの」



阿久麻:「おや。セノくん。どうしたんだい急に戻ってくるなんて。びっくりするじゃないか」



セノ:「嘘つけぇ。知ってたんだろ。僕が今、ここで、君が僕の昔話をぺちゃくちゃ喋っていることに対して文句を言いに来ることを」



阿久麻:「ふぅん。それで。戻ってきた理由だが、上手くいかないんだねぇ」



セノ:「ああ、酷いもんだよ。」



阿久麻:「私も見ていたが、ぷっ。土人形の方がマシだねぇ」



セノ:「笑わないでおくれよ。こう見えて失敗続きで途方に暮れていたりするんだ」



阿久麻:「手伝おうか」



セノ:「いいよ、ちょっと愚痴りに来ただけだから」



阿久麻:「本当に私は、君に嫌われているね」



セノ:「うん、嫌いだからね」



阿久麻:「ふは。」



セノ:「その反応も予想出来てるんだろうに、愛想笑いのがよっぽど可愛いよ。」



阿久麻:「君が嫌そうな顔をするのは何度見ても気分が良い。うん、気分が良い」



セノ:「あ、そ。本当に君はつまらないや

セノ:ぼかぁネタバレが嫌いだからね」



阿久麻:「おや、もう行くんだね」



セノ:「君と話してると時間をかける行為の全てが馬鹿馬鹿しく感じるからさ。僕はコツコツと、自分の手で大事に作り上げたいんだよ」



阿久麻:「そうかそうか、行ってらっしゃい」



セノ:「うん、行ってきます。阿久麻さん」



0:場面転換



阿久麻:長々と彼の昔話をしたが、正直バスケットボールの話なんてどうでもいいのさ



阿久麻:そう、彼なら野球であれ、サッカーであれ、何をしたって同程度の成績を収められたであろうから



阿久麻:つまり彼は、サッカーの天才ゲームメーカーであったり、超高校級の野球児であったりもするという訳だ



阿久麻:ああいや。例えば、幾度となく繰り返される因果の先では、という話だよ



阿久麻:



阿久麻:ああ、面白くない顔だ。ふ、ごめんごめん



阿久麻:私の名前は阿久麻 累。阿久麻さんと呼んでおくれ



阿久麻:これから先、途方もない先の因果で、出会うかもしれない、天才科学者の名前だ。



阿久麻:私は未来でこう呼ばれている、ラプラスの悪魔、と



阿久麻:ああ、また面白くない顔だ。ラプラスの悪魔の説明からかな。うん



阿久麻:例えば、ペンの重力、質量と、床までの距離、その正確な数字が分かれば何秒で、どのように、どうやってそのペンが床まで落ちていくかが分かるように、全ての事象は「数字」によって予測できるという簡単な話だ



阿久麻:私は、この世で、はたまたこの世であってこの世でない、また別のこの世で起こり得る全ての「数字」を掌握している、とするのであれば



阿久麻:どういう可能性をも計算して、取り上げる事が可能なのだ



阿久麻:彼も私同様、思考して、試行して、実行する計算式を覚えた。というより私が教えた



阿久麻:さっき話した通り、彼は有り得ないほどの飽き性。だから彼は、楽しそうに世界を渡っている



阿久麻:まあ、その全ても私からすれば漠然と広がる数字の上をなぞっているだけに過ぎないのだが



阿久麻:私と彼の決定的な違いは、彼はあくまで見て、感じて、その演算を、可能性の数字を汲み取る力であるという事



阿久麻:私とって全ての事象。人であったり、岩や水であったり、感情だったりが「数字」であるように



阿久麻:彼にとって全ての事象は、面白いか。はたまたそうでないか、の「経過」なんだろう



阿久麻:だから私は、彼の引き起こす計算式を見ている事にした。



阿久麻:私はこれから少し先の因果で、彼に殺される。それも分かる。



阿久麻:しかしその先で起こる全ての出来事も、私からすれば無数の計算式に過ぎなく、話してしまえば十中八九的中してしまうんだろう



阿久麻:だから敢えて、語らせてもらうよ



阿久麻:恐らくこれは、悪魔であろうとした人間達の、小競り合いだ。



0:再び冒頭。教室でルービックキューブで遊ぶ妹乃



妹乃:「ふぅ、何回やっても飽きるね。これは」



阿久麻:彼にはひとつの目的がある。



阿久麻:それは、とある人間の人格を作り上げる事だ。



阿久麻:しかしその人物は既に死去してしまっている。どの因果の先でも、死んでしまっている。私が言うのだから間違いない



阿久麻:このように、どうやったって覆しようのない数字はどこかに発生している



阿久麻:もちろん、そこの数字を書き換えてしまえばいい話だが



阿久麻:セノくんの力ではそれは不可能だ。幾分彼は非効率が好きらしいから



0:扉が開く音



妹乃:「ああ、やっときた。」



阿久麻:だから彼は、その人物が死去してしまう前に、接触を図ることにした



阿久麻:お菓子を作る時に材料を知らないといけないように、人格を作るのであれば、人を知るのが一番だから



白橋:「お前が妹乃 明だな」



妹乃:「うん。君は?」



白橋:「俺は白橋。二年C組の白橋 律だ」



妹乃:「隣のクラスだね、初めまして。僕に何か用かな」



白橋:「あーーー。」



妹乃:「?」



白橋:「中学バスケで二年連続全国一位をとった天才でぇ、女子にもモテ放題の純忠満帆勝ち組人生。だが、高校に上がるなりインハイで怪我して引退。あーー。そうだな」



セノ:今でも思い出せる。君は、最初あった頃から



0:白橋は妹乃の顔を覗き込む



白橋:「―――ざまぁみろ。」



セノ:変な奴だったね。



阿久麻:それが彼と、その男の初対面。いいや、正確に言えば4783回目の初対面なのだけれど



阿久麻:白橋という男は、どうしたって、妹乃 明とは正反対の男だった



白橋:「俺の事、覚えてねぇだろ」



妹乃:「どこかで会ったかな」



白橋:「俺もやってたんだよ、バスケ。中学の関東大会でお前んとこのチームにボコボコに負けてさぁ。悔しかったぁ。ああ悔しかったよまじで」



妹乃:「だから、ざまぁみろって?」



白橋:「ああ。お前みたいな秀才天才完璧超人が落ちぶれて、俺は心底嬉しい」



妹乃:「ああ、酷いね」



阿久麻:その男は、どこまでも平凡な人間だった。



阿久麻:才覚、成績、背丈、顔立ち、全てが平々凡々。



阿久麻:中央値を辿れば恐らく彼にぶち当たるのではないかと言うくらいには、平均的な男



阿久麻:だからこそ、君は彼に、どうしようもない退屈感を覚えるんだ



妹乃:「それで。君は僕にその嫌味を言いに来ただけなのかい」



阿久麻:ほぉら失望の念を隠せてない



白橋:「そうだ。てめぇみたいなぜーんぶ分かりきってます。私、世界とは別の所にいるので。みたいな顔したやつが大嫌いなんだ俺ぁよ」



妹乃:「はは、実際その通りなんだけど。

妹乃:バスケ、好きなんだねぇ。バシは」



白橋:「馴れ馴れしいなお前。」



妹乃:「僕の事はセノと呼んでくれればいいよ」



白橋:「じゃあアキラだ。」



妹乃:「おぉ?」



白橋:「お前が嫌がる全部のことをしてやる。俺は今日からお前をアキラって呼ぶからな」



妹乃:「はぁ、まあ。好きにしたらいいんじゃないかな」



阿久麻:しかしまぁ、その男が平凡だったのは能力面でだけで



阿久麻:その中身はかなり面白い数字だったよ



阿久麻:凡人故に才人を妬み、恨む



妹乃:「ああ、さっきの質問。答えてよ。バシはそんなにバスケが好きなの」



白橋:「は?嫌いだよ、めんどくせぇし疲れるし」



妹乃:「はぁ」



阿久麻:そのくせ、才人に噛み付く



白橋:「それでも俺は結構負けず嫌いだからよぉ。

白橋:お前みたいに「勝って当然通り道です。」みたいな顔されるとやっぱムカつくんだわ」



妹乃:「ああ。それであんなに僕を睨んでたのか」



白橋:「覚えてないんじゃなかったのかよタコスケ」



妹乃:「思い出したってだけの話だよスカタン」



阿久麻:嘘である。セノくんはその男に接触する為に、何度かやり直した後に関東大会に挑んでいる。



阿久麻:やっと念願叶ったねぇ。ほら、少し興味が湧いてきた。そんな顔をする



妹乃:「改めて、僕は妹乃。妹乃 明だ。これから末永く。よろしくね

妹乃:君の文句はもう聞いたし、今日はこの当たりで失礼するよ。」



白橋:「ちょ待てよアキラ」



妹乃:「んだよ」



白橋:「まだ終わってねぇんだよ。俺の要件は」



妹乃:「へぇ。今度こそ殴り合いの喧嘩でもするかい。バシ」



白橋:「事と次第によっちゃ、有り得るな」



妹乃:「聞かせな」



白橋:「夏休み、終わっただろ」



妹乃:「うん。終わった」



白橋:「課題の提出、昨日だったろ」



妹乃:「うん。昨日だった」



白橋:「俺は国語の課題だけまだ出してない。課題の点数が平気点以下なら追試なんだ。」



妹乃:「…ふむ」



白橋:「お前の得意科目は国語なんだと聞いた。」



妹乃:「ああ、苦手じゃない」



白橋:「見せろ」



妹乃:「断るで」



白橋:「なんでや」



妹乃:「僕もやっていない」



白橋:「課題を、か」



妹乃:「課題を、だ」



白橋:「へっ」



妹乃:「はっ」



0:二人は互いの胸ぐらを掴む



白橋:「てめぇふざけんなよ!!!なんの為にクソムカつくお前に頭下げに来たと思ってんだ!!」



妹乃:「あれで頭下げてんならどーーしようもねぇよお前の脳みそはぁ!!」



白橋:「離せって!!シワになるだろ!!」



妹乃:「お前がな!!お前がな!!」



阿久麻:彼は喧嘩をした事がない。彼は、私から見てもいい男では無い



阿久麻:初めて噛み付かれた才人は、嬉しかった



阿久麻:噛み付いた凡人の名前は白橋 律



阿久麻:後の、カルビス・ラングナーである



0:翌日、朝



妹乃:「先生!大変です!「ああ!溺れる!足がつった!溺れる!死ぬ!死んでしまう!」って言ってる人が溺れてます!そこの河川敷で!」



白橋:「先生!下がっててください!」



妹乃:「バシ!?」



白橋:「行くぞアキラ!!」



妹乃:「おうバシ!!」



白橋:「危険なので!!」



妹乃:「真似しないでくださーーーい!!」



0:二人は川に飛び込む



白橋:「ああ!大変だバシ!俺らの課題が入ってるバッグが川の流れに乗って流されていく!」



妹乃:「バカヤロウ!課題より人名第一だろうが!!」



白橋:「おっしゃる通り!!」



妹乃:「持ち上げるぞ!!力入れろよ凡人スカポンタン!!」



白橋:「うっさいガリヒョロスケコマシ!!!」



妹乃:「そぉおい!」



白橋:「まひるっ!」



阿久麻:さあさあ、ここからは全て?私の?予想論に過ぎないのだが?



阿久麻:溺れてる人を助けた二人は先生に「感動したーっ」と褒められる



白橋:「そんなことありませんっ」



妹乃:「人と人とが助け合って人ですっ」



白橋:「つまり人として当然のことをした迄ですっ」



妹乃:「しかぁしっ」



白橋:「課題の入っているバッグが流されてしまいましたっ」



妹乃:「完璧に全ての課題が終わっていたバッグが流されてしまいましたっ」



白橋:「しかぁっしっ」



妹乃:「言い訳はしませんっ」



白橋:「どうぞ然るべき罰をっ」



妹乃:「与えてくださいっ」



阿久麻:やはり先生は「感動したーっ」と言い、二人の課題免除をしようとする



阿久麻:が、この二人がそんな優良な人間なわけが無い。そういう数字だ



0:以降、小声



妹乃:「やったなバシ」



白橋:「やったぜアキラ。」



妹乃:「先生が来るまで水の中で溺れ続けてくれた君の友人には感謝しないとな。僕は友達がいない」



白橋:「案ずるんじゃねぇ。毎日溺れたくて仕方の無い男だ」



阿久麻:そこで現れるんだ。モブが。まぁ仮に知人Aとして。その人物が彼らのバッグを持って。更にはこう言うだろう



阿久麻:「遅刻してすみませんっ。ですが僕の友人達のカバンが流されたものだから泳いで取りに行ってましたっ。君たちの勇気ある行動にっ。か、感動したーっ。」と、二人のバッグを携えて。ほら、言った



白橋:「…」



妹乃:「…」



阿久麻:そして先生は当然、喜びつつ、バックを受け取り課題をチェックしようとする



阿久麻:だから二人は立ち上がるんだ



白橋:「行くぞアキラ!!」



妹乃:「おうバシ!!」



白橋:「危険なので!!」



妹乃:「真似しないでくださーーーい!!」



阿久麻:そして二人は窓から学校を抜け出し逃走した。



阿久麻:彼とその男は、そんなくだらない関係になる。だろうね、間違いなく



0:冒頭へ戻る



0:某都市 とある廃ビルの棄てられた倉庫



セノ:「……」



カルビス:「なんだなんだ、今日はやけに口数がすくねぇじゃねぇか」



セノ:「いいや。少し昔を思い出してただけだよ」



カルビス:「懐古するタチだったとは驚きだ。」



セノ:「カルビス。僕はこう見えて結構懐古者だ。バシなら知ってるだろ」



カルビス:「呼び方が安定しねぇな。俺はカルビスだ。カルビス・ラングナーだよ。白橋 律はもう死んだ。殺さたれからな。」



セノ:「水瀬ちゃんに?」



カルビス:「いいや、アキラ。てめぇにだな」



セノ:「やっぱり悪態をつく。変わらないね」



カルビス:「さっきから馴れ馴れしいっつってんだよ。俺とお前が仲良かった見てぇな物言いだが、そんな試しはなかったろ。一秒たりとも」



セノ:「――うん。ないね。これっぽっちも」



阿久麻:水瀬みなせ さき。この二人の関係を語るに置いて避けては通れない人物だ



阿久麻:彼女は白橋 律くんの幼馴染であり、白橋 律くんの親友でもあり



阿久麻:白橋 律くんを殺した、張本人でもあり



阿久麻:妹乃 明という男が、世界をまるまる作り直す原因になった。それが水瀬 咲という人間だ



阿久麻:…っと、計算していると、そろそろまた帰くる時間だ。何億回目かのおかえりだね



セノ:「ただいま、阿久麻さん」



阿久麻:「ああ。再びおかえり。どうだった」



セノ:「聞かずとも分かるだろ。順調だ。面白い変なやつだよ、白橋 律」



阿久麻:「ああ、きっと君とウマがあうだろうね。奇跡的に」



セノ:「どうして現場も見ていないのに分かるんだ。いくら僕でも君の頭の中はいつまで経っても理解できそうにない。はっきり言うよ?キモイっす」



阿久麻:「私はラプラスの悪魔と呼ばれた科学者だと再三言ったぞ。それこそ途方もない回数言った。」



セノ:「はいはい」



阿久麻:「君が今何を思っているか、当てようか」



セノ:「結構です。ネタバレは嫌いだし、何度でもやれば。きっと、変わるかもしれないだろう。この回答も分かっていたんだろうに」



阿久麻:「ああ。そう思うなら、そうしてみればいい」



セノ:「…。」



0:



阿久麻:君は、白橋 律くんに情が湧いた。



阿久麻:恐らく君の人生史上、初めての経験だろう。



阿久麻:何かに理由をつけてその感情を素直に吐露するのは、次に帰ってきた時だ



阿久麻:君は、白橋 律くんが死なない場所を見つけに行った



0:とある日 雨。



セノ:「…」



白橋:「……」



阿久麻:彼は、その男の亡骸を見つめている。呆然と



0:とある日 晴れ



セノ:「…。」



白橋:「……」



阿久麻:君がどれだけの手を施そうと、水瀬 咲は彼を殺した。



阿久麻:水瀬 咲を殺してみても、何らかの要因によって、必ず白橋 律は死んだ。



セノ:何度繰り返したか、既に忘れてしまった。僕らしくないな



セノ:あーあー。また死んでる。



セノ:違うよ、バシ。僕が君を必死になって助けようとしてるのは、君の人格の再現を行う為だ。



セノ:ああ、また死んだ。どうしてかな。何をしても、どこをどう弄っても、上手くいかない



セノ:次。次。次。次。次。



セノ:ああ、これが。行き詰まった、ってやつか



阿久麻:「…おかえり、セノくん」



セノ:「教えろ。阿久麻さん。」



阿久麻:「無駄だよ。1452回言ったが、世の中には決して変わらない数字というものがある

阿久麻:世界そのものを作り替えても、同じ数字に行き着く絶対法則性を持った計算式がある」



セノ:「次に僕が何を言うかも分かってるだろ」



阿久麻:「断るよ。私は君の作る世界に関与しないと言ったはずだし、君がそれを望んだんだろう。最も、今は違うようだけど」



セノ:「阿久麻さん、頼む。」



阿久麻:「敢えて、君の口から聞こうか。どうして白橋 律くんを助けたいんだ」



セノ:「…」



阿久麻:「君は傍観者なんだろう。だったら駄目じゃないか

阿久麻:彼らはメインキャストで、私たちは裏方。いいや、観客だ。私に至っては内容を知っている舞台がテレビニュースで再演されると知って「ほぇ〜」と茶をすするくらいの事でしかない。誰が死のうと、誰が生きようと、関与はしない。興味が無いからね」



セノ:「御託はいいから、さっさと助けろよ。」



阿久麻:「…君を?」



セノ:「ああ、そうだ!僕が行き詰まった!!だから、バシじゃない!僕を助けろ!」



阿久麻:「自分で見に行くのが君の趣味なんだろう。だったら行けばいいじゃないか。何十何百何千何万何億と繰り返せばいい。」



セノ:「頼む。阿久麻さん。僕を助けてくれ」



阿久麻:「いいや、断るよ。」



セノ:「…」



阿久麻:「私は、悪魔だからね」



セノ:「…。何としてでも、バシは次作る世界に連れていく

セノ:だから、ああ。分かった。分かってる。今の僕は、傍観者じゃなくていいや

セノ:じゃあね。阿久麻さん」



阿久麻:行ってしまった。いいや、行くのは分かっていた。私がここで彼を助けたところで、何も変わらない。



阿久麻:君と、彼だけは。幾度かの結果の収束が行われた計算式にたどり着く



阿久麻:けれども君は文字通り、何億という回数を繰り返す。結果的には、少し疲れてしまう



阿久麻:それはそうだ。君も、人間だからね



0:とある日 曇り



妹乃:「バシ」



白橋:「…は。なんだ」



阿久麻:白橋くんの腹は裂けている。内臓まで行き届いた刃物は、彼がもう助からない事を示している



阿久麻:それでも、と。君は2回目の、同じ質問をする



妹乃:「バシはさ、その日を、その一年を、その一生を、何度でもやり直せる力があったら、どう思う。」



白橋:「あーーー。ロマンだな」



妹乃:「だろ。バシならなにする」



白橋:「2、3回女子風呂覗いて終わりだな」



妹乃:「は?」



白橋:「そんなもんだろ。過程の話にマジになんのも馬鹿らしいが。んな大層なもんなくたって十分楽しいよ、俺は」



妹乃:「そっか」



白橋:「そーだ」



阿久麻:聞くのはまだ二回目だが、きっと何度聴いても同じ事を言うだろうと。彼らしい、と。君は少し笑う



阿久麻:それでも、それでも尚。



妹乃:「もし、僕にその力があるって言ったら、どうする」



白橋:「何度でもやり直せる力がか?」



妹乃:「そうだ」



白橋:「あーーー。」



妹乃:「…」



白橋:「てめぇの良いように作った世界を、俺が。グチャグチャにしてやるよ。何度でも、やり直す度に。俺が、だ。」



妹乃:「ほぉ」



白橋:「そんでこう言ってやる。ざまぁみろってな」



妹乃:「――は。本当に、変なやつだな。君は」



阿久麻:死ぬ間際まで、その男は、彼に悪態をついた。



阿久麻:痛みはある。恐怖もある。それ以上に、その男が強がりだっただけだ



阿久麻:だから君は



白橋:「っ…。ああーあ。くそ、つまんねぇ」



妹乃:「……」



白橋:「じゃあな、アキラ」



妹乃:「……バシ。一度だけしか聞かないぞ」



白橋:「…」



妹乃:「助けてくれ、って。言え」



白橋:「…は。なあ、あきらぁ」



妹乃:「なんだよ、バシ」



白橋:「ざまぁみろ」



阿久麻:白橋くんが、セノくんの何を見てそう言ったのか。それは、言うのはやめておくよ



阿久麻:こうして君は、後悔を捨てる



妹乃:「……あーあ。

妹乃:

セノ:面白くない」



阿久麻:さて。



セノ:「阿久麻さん」



阿久麻:「やあ、セノくん」



セノ:「取り掛かるよ。」



阿久麻:「世界の再構築を、だね。白橋くんは良かったのかい」



セノ:「もう彼とは熟年老夫婦顔負けの時間を一緒に過ごした。人格の再構成くらい訳ないよ」



阿久麻:「…ふむ。君と過した記憶は、引き継がないつもりなんだね」



セノ:「鬱陶しいな。それを聞いたら僕が嫌な顔をする。分かってんだろ」



阿久麻:「まぁね」



セノ:「…」



阿久麻:「たまには聞かせておくれよ。君の本音を」



セノ:「言わなくても分かってるのに?嫌だね。そして嫌いだね、やっぱり僕は、君が心底嫌いだ」



阿久麻:「は。私は好きだよ、君のそういう所」



0:某都市



カルビス:「ぉおおらっ!」



セノ:「っーー!」



阿久麻:君は、そのまま行ってしまうんだ。



阿久麻:記憶を引き継がない、白橋 律こと、新世界におけるカルビス・ラングナーを連れて



セノ:「は、は。素手じゃあもう敵いそうに無いね、バシ!」



カルビス:「敵った試しがあったかよ、クソアキラァ!」



阿久麻:セノくんは実行をしない。やり直さない。



阿久麻:現状、とても面白いことになっているから。少し弄って



カルビス:「定義収束」



セノ:「っ?」



カルビス:「―――完全反転」



セノ:「は――――。」



阿久麻:それは文字通り、完全なる反転。



阿久麻:思考、行動、電気信号、血流、五感、物理運動、酸素運動、ありとあらゆる体内で起こる現象全てへの反転。



カルビス:「turning from;side to side」



セノ:「あぁ、れ、ああれれ、ああれ」



カルビス:「良かったよ、どの時間軸の俺も、この時までこれをお前に悟らせなかったんだなぁ」



阿久麻:それぞれの現象に集中して反転を行うその男の演算速度は凄まじいものだろう、恐らくは私にも匹敵し得るものだね



カルビス:「ごふっ」



阿久麻:故に、その男がその現象をセノくんに与え続けられるのは僅か1.6秒。



セノ:「ぉえぇ、?あ、ん、ば」



阿久麻:この現象、その最も悪辣な点は。この反転は永久に反転し続ける事にあるだろう



阿久麻:ひとつそうだと思えば反転し、そうでは無くなり、またそれが反転しさらに反転しては反転する



阿久麻:思考が完結せず、行動にも至らず、体内はずばり仮死状態



阿久麻:そんな永久の反復に、人の自我は0.5秒ともたない



阿久麻:1.6秒。なまじ頭が回るセノくんの思考が反転し続けるその時間。体感にして、62年8ヶ月と19日18時間32.49秒分。



阿久麻:情報が完結するより前にゴールからスタートへと。スタートからゴールへの反転を繰り返すそれは、体感時間、その情報量8452乗の反復時間



阿久麻:即ち、無量大数であり、無限にも感じる時間が脳裏を巡る



セノ:「ーーーっはぁ!!おぇっ、がっ。」



阿久麻:1.6秒が経った瞬間、セノくんはやり直す事を選択するだろう。それほどの恐怖を感じるだろう



カルビス:「定義反転」



阿久麻:対する白橋くんの追撃。そのクールタイムは0.85秒。発動までのラグ0.99秒。



カルビス:「因果収束ッ!!」



阿久麻:合わせて1.84秒のディレイタイム



セノ:「おえっ、はぁ、あァっ!」



阿久麻:セノくんの実行までの時間は0.18秒。しかし仮死状態から戻った彼の脳が正常に動くまでの時間、1.79秒。



セノ:「く、そがァ!!」



阿久麻:総じて、1.97秒。



カルビス:「reversalリバーサル!!」



セノ:「実行―――っ。ぉあ」



阿久麻:ほらね。言っただろう。ラプラスの悪魔は、間違えないって



カルビス:「…なん、とか、間に合ったなぁ、くそ。頭割れる」



セノ:「…は?おい、ふざ、けんな!!実行するって!!言ってんだろ!!」



阿久麻:次に彼はこう言う



カルビス:「ざまぁみろ」



阿久麻:と。彼が隠し持つカードはふたつ



阿久麻:完全反転。これが本命に見せ掛けたブラフ。セノくんを動揺させて即座に実行演算をさせない為の錯乱だろう



阿久麻:因果収束。彼が引き起こす全ての結果を収束させるもの。反転演算に掛けられた反転式。それはラプラスのみを無力化する為だけの手段。



阿久麻:彼が何をしようとも、何を行動しようとも、その結果はひとつの結果に収束する



阿久麻:即ち、多岐に別れる実行計算の強制的な収束。1+1であろうが、12×64であろうが、42÷11であろうが。計算式のそれらを度外視に解答を0にする



阿久麻:つまり、セノ アキラという男が、どこで、何を選択し、それを実行しようが



阿久麻:その経過は、今現在の結果に収束する



阿久麻:白橋くんは、自身の演算式を犠牲にして、セノ アキラに磔を行うだろう



阿久麻:まさしく、キリストも泣く有様になるだろうね



セノ:「…はぁ。おえっ。あ、あぁ、やられたぁ、ね。」



カルビス:「ああ。してやったり、パーフェクトゲームだ、完封負けだなぁ、あきらァ」



セノ:「…はは。それは、うん。は。は。

セノ:ははははははっ!凄いなぁ、これは。想像の斜め下って感じだ!」



カルビス:「こんな時でも笑顔を絶やさねぇその徹底ぶりにゃ心底うんざりするが。俺が勝てたのも「それ」のお陰だ、感謝するぜ」



セノ:「それ。って?」



カルビス:「徹底して、一分一秒欠かさず。観客だったからだよ、お前が。」



セノ:「あぁ〜…」



カルビス:「お前が俺の計画に気付いた上で放置する事も、この状況になるまで「作り直さない」事も、お前が観客で居てくれたから起こった事だ。



カルビス:だから、礼を言わなきゃな」



セノ:「うん、うん。確かにそうだ。僕が本気で君を殺したり、君の計画を壊そうとすればそれこそ君に勝ち目は無かった。けれど、僕は今、こうして追い詰められている」



カルビス:「俺は今から、てめぇの脳天をぶち抜くつもりだが。どんな気分だ」



セノ:「うーん。そうだね。

セノ:面白いなぁ。と、思うよ」



阿久麻:セノ・アキラにとって、全ての事象に対する選択肢は二つしかない



リリス:面白いか、そうでないか。



カルビス:「お前が死後の世界とか信じる質かよ」



セノ:「それを明かされていないから、面白いんだろ。」



阿久麻:彼は笑った。これと言った執着も、悪意も、善意も無い。彼特有で、どこにでもある、大衆映画を見ている時に零すような、ふとした薄ら笑いを



セノ:「ほら。やらないのかい」



阿久麻:しかし「それ」は



カルビス:「あぁ、じゃあな」



阿久麻:頭に突きつけられた拳銃を前に、消えるだろう



セノ:―――あれ



阿久麻:彼は、目の前の男に手のひらを向ける。「ちょっと待ってくれ」と言わんばかりに



カルビス:「は?」



セノ:「…」



阿久麻:セノ・アキラは、生まれてから一度も、自分が死ぬことを想像したことが無い。例えるなら、友人と将棋やチェスをやっている時、自らの命を脅かされる事など考える事も無いように。彼にとって人生とは、その程度の物であったし、その自覚が彼にはあった



セノ:「僕は、死ぬのか」



カルビス:「ああ。そうだ」



阿久麻:しかし彼は自分が盤上に置かれていた事実を、その時になってようやく理解する



セノ:「…君が僕を見逃さない事は数万回に及ぶ試行で理解している。じゃあ、僕はこのまま死ぬのを受け入れるしかないのかい」



カルビス:「そうだ」



セノ:「…嫌だ」



カルビス:「…」



セノ:「嫌だ、僕は、うん、その。なんて言うか、多分、きっと、怖い」



阿久麻:彼の身体は、震える



カルビス:「俺は嘘吐きだからさぁ。嘘ついてる奴ってのは見りゃ分かる。」



セノ:「本当だよ!本当に、怖いんだ!」



カルビス:「ああ。信じるよ」



セノ:「なら…!」



カルビス:「駄目だ、ここで死ね。」



阿久麻:その言葉を聞いた瞬間に、彼の身体は無意識的に動いていた。後ずさりをしている。腰を抜かしながら、目の前の死から、這い蹲って距離をとる



セノ:「…っ!」



阿久麻:そしてそのまま、逃げ出す筈だ。



カルビス:「…」



阿久麻:完全敗北。彼はその男に、完膚なきまでの敗北を期す。



阿久麻:その男は、満身創痍の身体を引き摺って、彼を追う。いいや、殺す為じゃない。



阿久麻:恐らくは…。いいや、やめておこう



カルビス:「…っ。」



0:少し離れた路地



セノ:「…はぁ…はぁ…。っ…はぁ…っ。はぁ………。くそ…っ。」



阿久麻:セノ・アキラは自らの死を覚悟していない。それを覚悟してまで達成すべき何かを持っていない。



リン:つまり、死ぬ理由が無い。或いは、死ぬ事を全くもって面白く感じていない。



セノ:「はぁ…っ――…。「試行」…!「実行」!「試行」…!……うっ…あ。「実行」ォ…っ。」



阿久麻:自分が思いつく限りの存命処置を繰り返すが、それらは尽く彼の望む結果を与えない。様々な思考、感情が湧き上がる。が、最後に残るのは至って単純な結論だろう



セノ:「――――死にたくない……っ。」



阿久麻:砕かれた肋骨を抑え、折れた足を引き摺り、壁伝いに市街地を歩く彼の姿は、ほんの数分前とは程遠く、まるで人間のようだと



リン:「そう私は感じたよ。」



セノ:「…ぐ…ぁ……。はぁ…。はぁ…。…っ!」



阿久麻:君の頭には今誰が浮かんでいるのだろうか。



セノ:「バシ、バシは、いや違う、デザート、は、どこだ、あれ、これも違う、リットン?バニーでもいい、誰でも、誰でもいい!!」



阿久麻:それは旧友であったり、悪友であったり、天敵であったりするんだろうが。最後に思い浮かぶのは、きっと



セノ:「助けてくれ!!僕を、助けてくれよぉ!」



阿久麻:君の大嫌いな人だろうね



セノ:「……。…阿久麻さん……。どこ、に。居るんだ…なあ…」



阿久麻:それがもし、仮に。いいや十中八九私であるから。私は君にこう言いたい



0:セノは立ち上がる力も無く路地の隅で横たわっている



セノ:「……どうせ見てるんだろ…。助けておくれよ、阿久麻さん。…ッ!

セノ:

セノ:ーーーーっ。

セノ:僕、を、僕を助けろ…!僕はどうすればいい!?教えてくれ、いつも、みたいに、計算して、分かるんだろ、どう、すれ、ば、いいか……

セノ:…もう、いい……

セノ:………」



阿久麻:「相変わらず馬鹿だなぁ、君は」



セノ:「……ぁ……」



阿久麻:「本当に。馬鹿だ」



セノ:「………………………ぼ…く……は…ど……す……ば………い……だ…」



阿久麻:「もう何を言っているのか分からないよ。聞き取れない」



セノ:「……。……………。」



阿久麻:「分かってる。計算しろって言いたいんだろう。」



セノ:「…………。」



阿久麻:「君の最後の言葉くらい聞き届けてあげるには十分な間柄だ」



セノ:「………。」



阿久麻:「でも、やめとく」



セノ:「……。」



阿久麻:「私は、悪魔だからね」



0:



セノ:「――――――」



0:



カルビス:「……。」



阿久麻:その男は、彼の死体を見て何を思うのだろう



阿久麻:いいや、わかりきっている事だ。



カルビス:「くそつまんねぇ。本当に、ああ。もう。

カルビス:―――疲れちまった」



阿久麻:カルビス ラングナーは語らない。



阿久麻:それは彼が、過去に未練を残し続けているから



阿久麻:白橋 律は振り返らない。



阿久麻:それは彼が、今に未練を残したくないから



阿久麻:それが彼の…



カルビス:「じゃあな。アキラ」



阿久麻:これ以上の推測は、野暮だろう。



阿久麻:



阿久麻:全ては私の頭の中で行われる天文学的な確立演算でしかない。



阿久麻:しかし、私の予測は外れない。その上で、私は君を救わないし、君を助けない



阿久麻:



阿久麻:少し、ゆっくり解きすぎた



阿久麻:そぉら。そろそろ帰ってくる。



セノ:「やあ、ただいま。阿久麻さん」



阿久麻:「おかえり。セノくん」



セノ:「…。はは、何を「観て」いたんだい?」



阿久麻:「私は口を開けないよ。君はネタバレが嫌いだし、ここで私が何を言おうが君は嫌な顔をする。だから答えは

阿久麻:終わりまでを、見ていたんだ」



セノ:「…」



阿久麻:「考えているね。私が言う終わりの定義を」



セノ:「いいや、構わない」



阿久麻:そう。君は構わない。そして3秒後。2歩あるいて、君は振り返りざまにこう言うんだ



セノ:「自分で見に行くし、それが僕の義務ってやつだ。だってほら」



阿久麻:ああ、セノくん。もう一度、言葉を重ねるよ



阿久麻:私は、君を救わないし、助けない



阿久麻:それはね。



セノ:「僕は傍観者だから」



阿久麻:私が傍観者だから。



阿久麻:私が今、何を思っているか。君でも分かるだろう。セノくん



阿久麻:そう。酷く、眠たくなる程、憂鬱になる程に



阿久麻:退屈しているんだよ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ