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異能力者達の午後  作者: ゆーろ
異能力者達の午前
2/32

裏切り者達の午後

0:裏切り者達の午後





『登場キャラ』


アインズ・ブローカー:男。異常体


カルビス・ラングナー:男。異常体


ビットマン・ワイス:男。


ペンスタン・レイン:女。異常体


ネロ・アハツェン:女。人間


ロゼット・ラインハルト:女。人間





アインズ:(M)俺の人生の始まりは、マミーの腹から零れ出て、おぎゃあと産声をあげた日だ。



アインズ:逆を返して。俺の人生の終わりは、出会った日だ。



アインズ:くどい様だが、俺の人生の終わりは



カルビス:「アインズ。俺と取引をしろ」



アインズ:(M)こいつと、出会っちまった日だ。



0:場面転換



ネロ:(N)西暦1991年。異常性と呼ばれる超常が人体に発見されて久しい現代は



ネロ:大陸の最高決定機関、中央政府の統括により



ネロ:異常体と、正常体の、完全二分社会が完成していた。



アインズ:「中央政府情報局、アインズ・ブローカー。失礼する」



ビットマン:「おお、アインズか。ここで会うのは久しい…ことも無いな。元気そうで何より」



アインズ:「どうもビットマン監察局長。俺は五体満足だが、局長さんこそ無事で何よりだよ。とくに肝臓」



ビットマン:「耳が痛いが、酒の飲み過ぎでぶっ倒れたのはもう五年も前だ。お前結構しつこいタイプだな、アインズ」



アインズ:「ええ、情報局員でしつこくない奴なんて居ねぇってもんですわ」



ビットマン:「それもそうだ。で、今日も妹に会いに来たのか」



アインズ:「へぇ。居ます?」



ビットマン:「一昨日遠征でシカゴまで飛んで行ったが、今日帰投する予定だ。相変わらず優秀だよ、ペンスタンは」



アインズ:「まあ、俺の妹だからな。あんま危険な任務ばかり寄越してやらないで欲しいですがね」



ビットマン:「優秀な者には厳しい仕事が回される、こればかりは異常体も、人類も変わらんよ」



アインズ:「分かってますよ、ちょいと愚痴っただけですわ。」



ビットマン:「ああ、それも分かってる」



アインズ:「そんじゃペンスタンが戻るまでその辺で時間を潰しときますかね」



ビットマン:「ああ、暇で羨ましいな」



アインズ:「こりゃまた、耳が痛い。ああ、ところでビットマン局長」



ビットマン:「なんだ」



アインズ:「煙草、控えた方がいいと思いますぜ。ちょいと吸いすぎだ」



ビットマン:「お前だって吸うだろう」



アインズ:「酒で肝臓やられてぶっ倒れた翌日からそんなドギツいの吸ってんだ、次は肺がやられますよ」



ビットマン:「あー。そうだな、考慮しておこう」



アインズ:「そんじゃあこれにて」



ビットマン:「ああ、また」



0:場面転換



0:中央政府。執行部、庭園



アインズ:遅ればせながら、真面目な俺が真面目に執り行う、真面目な自己紹介を始めよう



アインズ:俺の名前はアインズ・ブローカー



アインズ:中央政府情報局の管理官だ。役職的には、まぁ中の上くらいか。そう、そこそこいい給料貰ってる



アインズ:ここは情報局が運営し、監察局が指揮する、中央政府情報局「執行部」



ペンスタン:「あれ。お兄ちゃん?」



アインズ:「おお、ペンスタン!会いたかったぞぉちくしょう」



ネロ:「アインズさん、お疲れ様です」



ペンスタン:「来るなら言ってよ、お土産買ってきたのに」



アインズ:(M)見てくれ!この可愛い生き物を!こいつはペンスタン・レイン、血は繋がっちゃ居ねぇが、俺の可愛い可愛い妹だ



ペンスタン:「あ。お兄ちゃん。執行部の庭園は禁煙っていつも言ってるでしょ」



アインズ:「んな事より遠征だったんだろ?怪我ないか?怖い事無かったか?」



ネロ:「アインズさん。それ以上近付くと危険です。右腕消し飛びますよ」



アインズ:「俺だけは大大丈夫なの知ってんだろ。」



ネロ:「念には念を、です。」



アインズ:(M)この硬そうなのは



アインズ:中央政府監察局、ネロ・アハツェン監察官。



アインズ:ペンスタンに付き添って監察。という名目の監視をするのが仕事だ。それなりに恩はあるから嫌いじゃねぇ



ネロ:「ペンスタン、私は局長に報告書提出があるが、どうする」



ペンスタン:「折角来てくれたし、お兄ちゃんと話したいなぁ、だめ?」



アインズ:「だめ?」



ネロ:「…いえ。問題ありません。じゃあペンスタン、また後で」



ペンスタン:「うん、ありがとうネロ」



ネロ:「アインズさん、失礼します」



アインズ:「おう。」



0:場面転換



カルビス:「あ〜、悪ぃ。今、ものすっごく忙しいわ。ホトバシとかに回してくれ、叩き起してな。んじゃあ、頼んだ」



0:ドアをノックする音



ネロ:「中央政府監察局、ネロ・アハツェンです。失礼します」



ビットマン:「ああ、ご苦労。」



ネロ:「イリノイ州シカゴで発生した、11名の異常体の暴動鎮圧、完了した事を報告します」



ビットマン:「ほぼ一日でやってみせるとは。優秀だな、ペンスタンは」



ネロ:「ええ。彼女の「消失」の異常性は、殲滅戦にでは無類の威力を誇ります。が、常時発動系の異常性ですので、警戒ステージ降下には至りませんでした」



ビットマン:「そうか。せめて能力定義がもうちょいマシになればいいんだが、それはそれで執行部の損失でもある、悩ましいところだな」



ネロ:「ええ。それでは詳細報告に移らせて頂きます」



0:場面転換



ペンスタン:「それでね!すっっごい身長の高い異常体が居たんだ

ペンスタン:「俺の異常性は常時発動だぜ」って脅しかけて来たくせに、本当かなり大爆笑」



アインズ:…



ペンスタン:「そしたら隣に居た女の人が銃を取り出して、私に向かって撃ってきたんだぁ。」



アインズ:(M)あ〜〜〜〜〜



ペンスタン:「だから私はそこでこう言ってやったの。「お前はもう死んでいる」ってさ」



アインズ:(M)可愛い〜〜〜〜〜〜〜〜〜。



アインズ:ゲボ出るくらい可愛いな、喋る時なんか身振り手振りで、ああ可愛いにぇ〜〜



ネロ:「結果的に、拘束が一名。残りの十名は現場処分となりました」



ビットマン:「了解した。最後に、ペンスタン・レインの異常性、この内容に変わりは無かったか」



ペンスタン:「そこでケバブって言うのを初めて食べたんだ。美味しかったなぁ、今度連れてったげる」



アインズ:(M)優しい奴で、虫一匹殺せないし、道端に咲いてる雑草を綺麗だ綺麗だと五分近くしゃがみこんで眺めるような



ネロ:「はい、ペンスタン・レインの異常性

ネロ:「半径1m16cm圏内に侵入した

ネロ:彼女自身が「敵と認識した全て」の消失」



ネロ:これの変化は確認出来ませんでした」



アインズ:(M)有り体に言うと、いい奴なんだがな



ネロ:「以上で、本日の監察報告を終わります」



アインズ:(M)どうにも俺の妹は、ちょっとだけ、臆病らしい



0:



ペンスタン:「お兄ちゃん、聞いてる?」



アインズ:「ああ。聞いてる」



ペンスタン:「それでね、シカゴには人力馬車があって」



ネロ:「ペンスタン、待たせたな」



ペンスタン:「ネロ、おかえり」



ネロ:「ああ。アインズさんとは有意義な時間を過ごせたか」



ペンスタン:「うん、当然」



アインズ:「これからまた任務か」



ネロ:「いえ。遠征後ですので今日はフリーです」



アインズ:「そうか。あんまペンスタンに無理ばっかさせんなよ」



ネロ:「出来る限りは、配慮します」



カルビス:「よお相棒、ここに居たか」



ペンスタン:「あれ、カルビスだ」



カルビス:「よおペンスタン、久しぶりだな」



アインズ:「なんでお前がここに居る」



カルビス:「はっはぁ。お前を探しに来たんだよ、サボり魔」



アインズ:「お前さんにゃ言われたくねぇな」



ネロ:「カルビスさん、お疲れ様です。本日は情報局からのお客人が多いですね」



カルビス:「あー。ネロ、そりゃサボるなって嫌味だよな。そうだ、もっと言ってやれ」



ペンスタン:「カルビスもアインズも、もっと真面目に働いて」



アインズ:「すまん」



カルビス:「そんじゃ、アインズは貰ってくぜ。またな、お二人さん」



ペンスタン:「またね、カルビス、お兄ちゃんも!」



アインズ:「ああ、またなペンスタン。ほんと、またな!」



カルビス:「はっはぁ。相変わらずシスコンこじらせてんなぁ」



アインズ:「ハハァ。そりゃもう、まるで自分のように愛情を注ぎ込んでるよ」



アインズ:(M)俺の自己紹介を語る上で外せねぇのは三つ。俺の事、妹の事、そんで、このクソッタレ。俺の親愛なる相棒の事だ。



アインズ:俺がこいつに出会っちまったのは四年前。俺が監察から情報局に異動したばっかの時だった



カルビス:「よお、見ない顔だな。」



アインズ:(M)あの日、喫煙所に行っちまった自分を殴りたい。



カルビス:「俺はカルビス・ラングナー。アンタは?」



アインズ:(M)恐らく上司だろうと思い、真面目に敬語を使って名乗ってやった。だのに!



カルビス:「あぁ?今日から情報局に来たのかよ、なら大差ねぇな。俺もここに来たのは半年前だ」



アインズ:(M)ガッデム、ほぼ同期。まぁ俺が中央職員になったのは?妹の為で?それ以外の交友関係ほぼ無かったし?つまり有難い話ではある



カルビス:「よおアインズ、ちょっとこの仕事手伝って欲しいんだけどよ」



アインズ:「おう、いいぞ」



カルビス:「わり、この案件。お前にしか任せられねぇんだ。一緒にやろうぜ」



アインズ:「おう…わかった」



カルビス:「なあ、俺とお前の仲だろ?いいじゃねぇか、サボり魔。仕事してくれよ。俺の」



アインズ:(M)違った。ただの押し付け役として仲良くされてただけだった。



アインズ:つっても情報局ってのは案外暇だ。だから別にいいんだ。暇だからね。別に。いいもん。



カルビス:「相棒、一服行こうぜ」



アインズ:(M)そしていつの間にか、しれっと、俺を「相棒」と呼ぶようになってた。



カルビス:「アインズ。確かに俺はお前に仕事を押し付ける。だがな、俺は他人から仕事を押し付けられるのが大っ嫌いなんだ。二度と言わないでくれ」



アインズ:(M)そんでこいつは多分、あれだ。ゴミなんだ。つってもなんやかんやであいつの仕事を引き受けちまう。それには当然理由もある。よく聞くだろ、仕事に熱中した方が嫌な事忘れられるってやつ



カルビス:「相棒、お前妹居るんだな」



アインズ:「あ?なんで知ってんだお前」



カルビス:「そりゃまあ、情報局だし。更には収容施設に入ってるらしいじゃなぁい」



アインズ:(M)プライバシーの欠片もねぇ。俺の最も知られたくない秘密、第三位をサラっと喫煙所で言いやがった。こいつまじで、いつも大切な事はサラっと言う。そういう所が絶妙に気に食わん



カルビス:「ステージ5の異常体だろ?超危険人物だ。こりゃ中々出して貰えんわな」



アインズ:(M)するとそいつはまだ半分も吸ってねぇ煙草をポイと投げ捨てる、勿体ない。そんでこう言い放った



カルビス:「出してやろうか。お前の妹」



アインズ:「…ハハァ。あのなぁ、カルビス。俺は確かにジョークは好きだが、お前さんとはギャグセンスが合わねぇな」



カルビス:「大丈夫、ジョークじゃねぇからな。勿論、収容施設から出た後は執行部に配属されるだろうが。あそこの暮らしよりは、まともな生活だと思うぜ」



アインズ:「仮に、もし本当に収容施設から出せたとして。執行部に入っ異常体がどうなるか知ってるよな」



カルビス:「ああ、野良の異常体を殺して回って、いずれ自分より格上のバグ野郎に遭遇して」



アインズ:「異常体をバグ呼びしてんじゃねぇよ。差別用語だ。いや、ブラックジョークは嫌いじゃない。が、笑う奴がいねぇならそれはジョークとは言わん」



カルビス:「はっはぁ。地雷だったか。悪い

カルビス:まぁそうな、端的に言えば。執行部に配属された異常体は八割、殉死する」



アインズ:「それを、俺の妹にするって言ったんだぜ。今、てめぇは」



カルビス:「自分だけ異常体であることを隠して生きてたお前は人の事どうこう言えねぇよ」



アインズ:「…今のは、どういう意味だ」



カルビス:「ああ。お前が正常体を偽った、

カルビス:重症化異常性保有体ってことを、俺は知ってるって事だ」



アインズ:(M)こいつは、俺の知られたくない秘密、第二位も、サラッと言いやがった。



アインズ:その言葉を聞いて、半分近くしか吸ってない煙草を、落としちまった



カルビス:「はっはぁ、図星だな?」



アインズ:「……そうか。バレてんのか」



カルビス:「いーや。ただのカマかけだ」



アインズ:「…どうしてそんな下らんカマをかけようと思った」



カルビス:「ああ、俺もバグだからな。お前もそうだったら嬉しいなって」



アインズ:(M)何度でも言うが



アインズ:カルビス・ラングナーという男は。肝心な事、大事な事を、サラッと言うクソ野郎だ



0:場面転換



0:ロック・ストーン収容施設



ビットマン:「収容番号、10042。ペンスタン・レイン」



ペンスタン:「なに。もう今日の検査は終わったでしょ。」



ビットマン:「ああ、施設の職員じゃない。俺はビットマン・ワイス、中央政府監察局、局長だ」



ペンスタン:「わかんない。偉い人なの」



ビットマン:「まぁ、そうだな。お前をここから出してやるくらいの権限はある」



ペンスタン:「…!」



ビットマン:「来週から、ここを出て、情報局の執行部へ来てもらう事になった。」



ペンスタン:「執行部…。そう、私は、来週から人殺しになるのね」



ビットマン:「残念だがお前らはもう人間じゃない。罪悪感を覚える必要は無いし、この話は決定事項だ。お前に拒否権はない」



ペンスタン:「…やっぱり貴方達、嫌い。」



0:場面転換



0:六日後、中央 執行部



ネロ:「中央政府監察局、ネロ・アハツェン、失礼します。」



ビットマン:「ご苦労。お前、監察官をやって何年になった。階級は。」



ネロ:「今年で6年になります。階級は一等監察官です」



ビットマン:「よーしよし。十分だな。今日からお前には専属の監察対象を与える」



ネロ:「随分急ですね」



ビットマン:「急に決まったことだからな。入れ」



ペンスタン:「…」



ネロ:「彼女は…。まさか、ペンスタン・レインですか?」



ビットマン:「知ってたか。」



ネロ:「知っているも何も、彼女の拘束は私と、局長も担当したんです。忘れる筈もありません」



ビットマン:「ああ〜。そうだったな。六年前だから、お前がまだ新米の頃か」



ネロ:「はい。まだ局長が喫煙を始める前です」



ビットマン:「あれ。お前煙草嫌いだったか?」



ネロ:「…それより。彼女を収容施設から出すのは危険にも程があるかと」



ビットマン:「確かにステージ5以上の異常体は中央でも数える程しか居ない。お前の言いたい事もわかる」



ネロ:「彼女の異常性は効果範囲こそ広くないものの、能力面での脅威だけで考えれば、最高警戒ステージの6にも近い、こんな化け物が」



ペンスタン:「化け物って言わないで」



ネロ:「…局長、考え直して下さい。六年前の事を考えても、精神的に安定しているとは思えません」



アインズ:「…まじで、釈放されてんじゃねぇか。」



ペンスタン:「おにいちゃん…?」



ビットマン:「誰だ、名乗ってから入室するのが礼儀だろう」



アインズ:「大変失礼しました。自分はアインズ・ブローカー、中央政府情報局の職員です」



ネロ:「なぜ情報局の職員が執行部にいるのでしょうか。」



ビットマン:「執行部の監察は我々の仕事だが、運営自体は情報局に権限がある。別に構わんだろう

ビットマン:それで何の用だ。」



アインズ:「ペンスタン・レインは、俺の妹です」



ペンスタン:「やっぱりお兄ちゃんだ。どうしてここにいるの…」



アインズ:「まずは。久しぶり、ペンスタン」



ビットマン:「姓は違うようだが?」



アインズ:「血は繋がっていません。」



ネロ:「私は知っています、局長はお忘れかもしれませんが、彼はペンスタン・レインの異常性が重症化した際、放心状態で発見され保護された人物です」



ビットマン:「んー。ああ。あの時の」



アインズ:「…ペンスタン」



ペンスタン:「な、に。お兄ちゃん…」



アインズ:「お前は、執行部に入れば沢山の人間を殺す事になる」



ペンスタン:「うん、知ってる。」



アインズ:「それでも、施設の生活よりはまともな環境を与えられる。殺害という労働で、ほんの少しだけ、人間らしい生活を送れる権限が与えられる。」



ペンスタン:「うん」



アインズ:「お前に人間らしい生活を送って欲しい気持ちはある。が、正直俺はもうお前に人殺しなんてして欲しくない」



ビットマン:「ブローカー。これは決定事項だ。覆ることは無い」



アインズ:「申し訳ないが、少し黙ってて頂きたい」



ネロ:「っ。いくら情報局員だからといって、局長にその発言は」



ビットマン:「いいんだ、ネロ、構わない。」



ネロ:「…分かりました」



アインズ:「ペンスタン。お前は、どうしたい。お前がどれを選択しても、兄ちゃんはお前を責めないぞ」



0:少しの沈黙



ペンスタン:「お兄ちゃんは、中央政府で働いてる人なんだよね」



アインズ:「ああ。今まで会えなかったから、話せずじまいですまない」



ペンスタン:「私も、執行部に入ったら、中央政府で働いてる人になるの」



アインズ:「…」



ビットマン:「権限では天と地ほどの差があるが、一応名目は中央政府職員だな」



ペンスタン:「…やる。」



ネロ:「…。」



ペンスタン:「私、やります。お兄ちゃんと一緒に、働きたい」



アインズ:「…ペンスタン、俺はお前とは違う場所で働いてる。ずっと一緒にはいてやれない」



ペンスタン:「私はね、お兄ちゃんに恨まれてると思ってた。」



アインズ:「そんなわけねぇだろ」



ペンスタン:「だって、私、殺したんだもん。私を引き取ってくれた、お兄ちゃんの、お母さんを」



アインズ:「…」



ペンスタン:「それでもお兄ちゃんが、まだ私のお兄ちゃんで居てくれるなら、私は少しでもお兄ちゃんの力になりたい。だから、やります」



ネロ:「本気で言っているのか」



ペンスタン:「本気です。私、あなた達の事、大嫌いだけど。お兄ちゃんの為なら、死んでもいい」



アインズ:「ネロ・アハツェン監察官、でしたよね。」



ネロ:「…なんでしょう」



アインズ:「どうか俺の妹を

アインズ:面倒見て貰えないでしょうか」



ビットマン:「…さあネロ。どうする」



ネロ:「…分かりましたよ、やります。」



アインズ:「ありがとうございます!」



ネロ:「情報局員が、一監察官に敬語はよしてください」



アインズ:「あ〜…分かった、本当に、ありがとう。」



ネロ:「いえ。」



ビットマン:「では、本日付でペンスタン・レインの監察を任せる。警戒ステージは5。最大限、危険性に配慮し、監察を行え。以上、命令を遵守しろ」



ネロ:「了解しました。命令を遵守します」



0:場面転換



0:喫煙所



アインズ:「なあ、相棒」



カルビス:「おお。とうとう俺を相棒と認識したか」



アインズ:「お前には、借りが出来ちまったからな」



カルビス:「今まで散々仕事を押し付けた詫びだと思いな」



アインズ:「お釣りが返ってくるさ。ありがとな」



カルビス:「いいってことよ」



アインズ:「ああ、そういやビットマン局長を説得したカラクリはどうなんだよ」



カルビス:「ああ、そりゃ嘘だ。初めから決まってたんだよ、ペンスタンの釈放は」



アインズ:「お前さんは…。ありがとうを返せ」



カルビス:「やだね、一度もらったもんは返さねぇ主義だ。お前の異常性と同じだよ」



アインズ:「なんだ、それも知ってんのか」



カルビス:「ああ。ステージにしちゃ4前後か。いや、汎用性を考えたら5かそれ以上。

カルビス:ありとあらゆる物を閉じ込めて、奪う事も、壊す事も出来る「箱」。それがお前の異常性だ。違うか」



アインズ:「どこまで調べあげてんだか」



カルビス:「ひとつアドバイスだ、お前はもう少し否定を覚えな」



アインズ:「…今のがカマかけか?冗談だろ?」



カルビス:「俺の発言は八割冗談、二割が嘘だ」



アインズ:「全部嘘じゃねぇか。…まさかとは思うが、お前が異常体だって言うのも、嘘か?」



カルビス:「ああ。嘘だ」



アインズ:(M)これが、俺の親愛なる相棒。カルビス・ラングナーっていうクソッタレだ。



アインズ:何を考えているか分からねぇが、良い方のクソッタレだと、思っている



0:場面転換



ネロ:「中央政府監察局、ネロ・アハツェン。失礼します」



ビットマン:「ご苦労、今日は、なんだ、少しばかり重たい話でな」



ネロ:「…なんでしょう?」



ビットマン:「ペンスタン・レインの、執行処分が決定した」



ネロ:「……はい?」



ビットマン:「理由は警戒ステージ降下の予兆が見られなく、異常性も発症時と変わらず凶悪な点から。私の独断だが、これは決定事項だ。このままではお前の身が危ないと判断した」



ネロ:「ちょっと待ってください、ペンスタンは…。勿論、彼女の異常性は類を見ない威力ですが、彼女自身に危険性は無いと」



ビットマン:「ここまでの監察報告を考慮した結果だ。ペンスタンの執行成績は非常に優秀。」



ネロ:「でしたら」



ビットマン:「だがその殆どが、殺害、または再起不能の致命傷に追い込んだ後の、拘束。

ビットマン:これが何を意味するか、分かるか」



ネロ:「…納得できません、そんな結果…

ネロ:アインズさんに、顔向け出来ません」



ビットマン:「私達は個人の感情で動いていい存在にない。変に情が沸けば、不幸な目にあうのは正常体。つまりは我々だ」



ネロ:「…」



ビットマン:「しかし彼女の処分は困難を極める。奴が害を成すと認識した瞬間、対象に凶器は到達しない。加えて強い被害妄想から一人で居る時は常時発動している。これも分かるな」



ネロ:「理解は、できます」



ビットマン:「だから、お前にしか任せられない。報告では、自身が身に付ける衣服や、近しい人間から渡された物、与えられる食事等には異常性の効果が見られない」



ネロ:「私に、ペンスタンを殺せと、そう言っているのですか」



ビットマン:「そうだ」



ネロ:「あまりにも、酷だ…。人名軽視も甚だしい…!」



ビットマン:「あれらは世界のバグだ。人では無いし、人命と数える程、貴重な存在では無い」



ネロ:「私には、出来ません」



ビットマン:「君がやらないのば、アインズにやってもらう他ない」



ネロ:「…え」



ビットマン:「当然だろう、ペンスタンが心を許しているのはたった二人だ。お前と、アインズ。お前ですら、直接触れれば消し飛ぶ。と来れば、彼女の頭を撫でてやれるのはアインズだけだ」



ネロ:「…それは…」



ビットマン:「いつも通り、同行中に後ろから弾丸を放つだけでいい。彼女がお前を敵と認識する前に、殺せ。」



ネロ:「…拒否すれば、アインズさんが彼女を執行する。これに変更は無いんですね」



ビットマン:「決定事項だ」



ネロ:「…私が駄々をこねれば、困った顔をして決定を覆してくれる。六年前とは、随分変わりましたね。局長

ネロ:…やります。アインズさんには、任せられない」



ビットマン:「これより、ペンスタン・レイン執行処分の任を与える。内容は今言った通り、以上、ネロ・アハツェン監察官。

ビットマン:命令を遵守しろ」



ネロ:「…了解、しました。命令を遵守します」



0:場面転換



アインズ:「…ったく、カルビスの奴。いつまでほっつき歩いてんだ。お前の仕事が溜まってんぞー。と、噂をすれば、だな

アインズ:もしもし?カルビス、お前いつまで」



カルビス:「アインズ。」



アインズ:「…どうした」



カルビス:「十二分前、監察局から申請書が受理された」



アインズ:「なんの、申請書だ」



カルビス:「ペンスタン・レインの、執行処分について」



アインズ:(M)あーあーあー。やめて欲しいなぁ、本当に。情緒が揺れ動くのは、苦手だ。



0:場面転換 執行部



ビットマン:「茶でも飲むか。それともテレビでも見るか、アインズ」



アインズ:「遠慮しますわ。そんなテンションじゃないんすよ、局長」



ビットマン:「予想はつく。抗議だな?ペンスタン・レイン執行処分の」



アインズ:「概ねはカルビスから聞きやしたが、そうっすね。不思議な感情だ。お前さんみてぇな奴にも分かりやすく言うのなら、俺は今

アインズ:ぶちギレてる。」



ビットマン:「怖いな。凶器を持つ人間の目だ。銃やナイフ、或いは異常性。そう言った凶器を持った人間の目だな」



アインズ:「言葉遊びに付き合ってる時間は無ねぇの分かんだろ。」



ビットマン:「悪いが決定事項だ。どれだけ時間を費やしても、結果は揺るがない」



アインズ:「情報局の権限を行使する。執行部はウチの運営だろうよ」



ビットマン:「それは不可能だ。執行部所属の異常体を監察し、管理し、その危険性を決定するのが監察局の義務であり、権限だ。

ビットマン:こと異常体処分において、お前一人の権限では何も動かない。」



アインズ:(M)あー、なるほど



アインズ:「世の中クソだな」



0:場面転換



0:『ペンスタンOUT。ラインハルトIN』



ネロ:(M)ビットマン・ワイスは、私の直属の上司だった



ネロ:本日より監察局へ配属されました。ネロ・アハツェンです



ラインハルト:同じく、ロゼット・ラインハルトです



ビットマン:私はビットマン・ワイス。一等監察官だ。一応、これから君達の上官を務める。私もまだまだ未熟な所ばかりだが、宜しく頼む



ネロ:(M)彼は真面目な人だった。時間管理に厳しく、煙草は吸わない。誰よりも早く職場に来て、誰よりも遅く帰宅する。



ラインハルト:お先に失礼します



ビットマン:ああ、お疲れ様。気をつけて帰れよ



ネロ:ワイス監察官はまだ残るんですか?



ビットマン:これだけ終わらせたら帰るさ、気にせず帰っていい



ラインハルト:じゃーお先に失礼しまーす



ネロ:私も、残ります



ラインハルト:あーあーもう。



ビットマン:明日も早い。もう帰るんだ。たった483枚だ。一枚十秒で終わらせればいい。



ネロ:だったら三人でやれば2時間で終わります



ラインハルト:ちょ



ネロ:な。ラインハルト



ビットマン:帰っていい、定時に帰るのも仕事だ



ラインハルト:…。はあ。中央って深夜手当つくんすよね?



ネロ:つかないだろう



ラインハルト:まじで!?



ビットマン:…。



ラインハルト:で。何からやればいい



ネロ:書類は私とワイス監察官でやる。お前はただ無心でこれに判子を押してればいい



ラインハルト:こんなもん機械にやらせろよ…



ビットマン:ふ。安心しろ。ちゃんと深夜手当はつく。



ネロ:…はい!



ラインハルト:うーしっ。頑張りますかぁっ



ネロ:(M)そのしわ寄せの様に、たまの休日には飲酒を好んでいた。普段真面目な分、酒癖が悪く。よく連れ回されていた



ビットマン:だからぁ。俺だって頑張ってんのにさぁ。しょうがないじゃないかぁ、人手が足りないんだよぉ



ネロ:ワイス監察官、飲み過ぎです



ビットマン:ああ?うるせぇなぁ、というかネロぉ、お前もう俺と仕事して何ヶ月だぁ



ネロ:半年です



ビットマン:だったらもう名前呼びでいいんだよぉ、それくらいの交友関係があったっていいだろうがぁ



ネロ:(M)彼は酒を飲んだ翌日のことは覚えていない。後日、名前呼びしたら驚かれた。が、笑って許容してくれた。



ラインハルト:いやぁ、今日でお別れだと思うも寂しいなぁ。ネロ



ネロ:ああ。まさかお前が教職につくとは



ラインハルト:私が一番驚いてるよ



ネロ:アーヘンだったか。まあ、お前ならどこでもやって行けるよ、ラインハルト



ラインハルト:もうちょっと感傷に浸れよ、鉄仮面。可愛くない、誰に似たんだ。ああ、ワイスさんだな



ネロ:お前はホトバシさんとは似ても似つかないな



ラインハルト:人種がちげーのよあの人とは



ネロ:寂しいくせに



ラインハルト:寂しいよぉ〜んっ



ネロ:ふ、辛くなったらいつでも本庁に帰ってこいよ。私も、ビットマン監察官も待ってる



ラインハルト:待て待て待て



ネロ:なんだ



ラインハルト:いやいや(笑)いつからお前あの鉄仮面のこと名前で呼ぶようになったんだよ〜って!春かよっ。っつってな!



ネロ:…。



ラインハルト:…まじで?



ネロ:(M)私は、彼を心から。尊敬している。



ビットマン:ネロ監察官。言った筈だぞ、対象は即刻処分だ



ネロ:…しかし、相手はもう武装を解除しています



ビットマン:異常体は常に凶器を持っている。私達がやらないと、こいつが他の誰かを殺すかもしれない。命令を遵守しろ



ネロ:…出来ません。無抵抗の人間を殺すなんて…天国の母に顔向けが、出来ません



ビットマン:…。はぁ。分かった、対象は拘束後、収容施設に移送する。命令を遵守しろ



ネロ:…!はい、命令を遵守します!



ネロ:(M)私は彼を、心から尊敬していた



0:六年後



ネロ:(M)ラインハルトが本庁を離れて、一年が過ぎた



ビットマン:っ…。ふぅ、焼きが回ったな



ネロ:笑い事じゃないですよ、アレジ・ロンドンの件から激務続きだったんですから



ビットマン:そんな顔するな



ネロ:こんな顔、させないでください



ビットマン:ああ、情けない限りだ



ネロ:(M)過労、ストレス性胃腸炎、栄養失調等、そこに普段の飲酒が重なり、彼は長期予定の入院となってしまった。



ネロ:ラインハルトも心配していました。再来月、本庁戻るそうですよ



ビットマン:ごほっ、ごほっ。そうかぁ。随分と久しいな。元気にしてるのか



ネロ:はい。不慣れながらも頑張っているようで、最近やっと慣れてきた、と。



ビットマン:そんなところ悪いなぁ。カルラコットにも随分と迷惑をかけてる



ネロ:情報局長だって、貴方の為なら嫌な顔ひとつしないと思いますよ。たった一人の同期なんでしょう



ビットマン:ああ。本当に、つくづく周りにめぐまれたな



カルビス:失礼します、中央政府監察局、カルビス・ラングナーです



ネロ:カルビスさん?お疲れ様です



ビットマン:…驚いたな、君が見舞いに来てくれるなんて



カルビス:一応、お世話になってますから



ビットマン:相変わらず、口の減らない。



カルビス:こいつぁ失敬、痩せましたね。



ビットマン:ああ、妻に褒めて貰えそうだよ



ネロ:つまっ



カルビス:安心しろよ、とっくに亡くなってる



ネロ:何を安心しろって言うんですか!縁起でもない!



ビットマン:構わない、こんな職業だ。人の死ぬのには慣れてる



カルビス:らしいわ。ネロ、局長と二人で話したいんだ。席外してくれ



ネロ:…はい。もう時間も遅いのでお暇します。また明日、伺います



ビットマン:ああ。ありがとう



ネロ:いえ。ではお二人共、失礼します



0:ネロ 退室



カルビス:懐かれてますなぁ。局長



ビットマン:そう見えるか、良い部下に恵まれたな、私は



カルビス:その分、思い残す事も多いでしょう



ビットマン:…凄いな、君にはバレているか。昔から、変に鋭いからな



カルビス:ただのカマかけですよ。



ビットマン:…これは、一本取られたな



カルビス:アレジ・ロンドンの件は、堪えたみたいですね



ビットマン:…ああ。再認識したよ。間違いを犯すのは、いつだって人だ。



カルビス:そりゃあ、異常体の事ですか



ビットマン:彼らだって。人に違いない



カルビス:…流石。死にかけは言う事がちげぇわ



ネロ:(M)局長はひた隠しにしていたが、彼は肝臓癌も併発し、もう長くない。と聞かされたのは、それから半年も後だった。



ビットマン:言ってなかったか



ネロ:言ってないですよ!あの翌日にはケロッと退院したものですから…



ビットマン:あー。すまんな



ネロ:(M)それからの彼は、様子がおかしかった。勤務時間のバラつき、喫煙癖、決定事項を覆さない執着とも取れる態度。



ネロ:そして私は、その決定事項に従い、ペンスタンを殺そうとしている



ペンスタン:ネロ?どうかしたの



ネロ:…いや。何でもない



ペンスタン:そっか。何か悩みがあるなら言ってよ



ネロ:…悩んでいる、か。そうだな。私はきっと今、悩んでいる



ペンスタン:お兄ちゃんも言ってたよ。ネロは相談とか出来ないタイプだって



ネロ:…そうだな。誰に似たのか



ペンスタン:なんならお兄ちゃんと話す?



ネロ:(M)こんなのは。間違っている。彼らしくない。



ペンスタン:あれ。お兄ちゃんに繋がらない。電源切ってる



ネロ:(M)ここ数年、全ての行動に違和感を覚える



ペンスタン:カルビスと一緒なのかな



ネロ:(M)カルビス。私より一年先に監察局へ入り、怒涛の勢いで一等監察官へと昇格、その後情報局へと異動した男



ネロ:(M)思えば、彼は交友関係こそ広いものの、その私生活は誰も知りえない



ネロ:(M)何より、どこで飯食ってるのか、いつ出勤していつ帰ってるのか分からないなど、謎が多い。よく分からん人だ



ペンスタン:ありゃ、カルビスも出ないや。二人して何してるんだろ



ネロ:(M)五年前の局長への見舞いは、局長ですら驚いていた。そのくらい、薄っぺらな人間だと言う事は政府職員の間でもよく聞く話だ



ペンスタン:ネロ?また難しい顔して、どうかしたの



ネロ:(M)もし。もし仮に、あの日。カルビスと局長に何かがあって、局長に心変わりがあったのなら。ここ数年での変化も…



ネロ:(M)いや。これは執着だ。懐古だ。希望的予測だ。都合のいい、妄想だ



ペンスタン:ねえ。聞いてる?



ネロ:すまないペンスタン、少し席を外す



ペンスタン:え。今からご飯食べに行くって言ってたのに!私、休みなんて全然ないんだよ!



ネロ:埋め合わせは必ずする。ペンスタン、これは私の我儘だ。頼む



ペンスタン。ぶー。いいけど



ネロ:(M)私は醜いな。酷く、醜い。



0:長廊下を走る



ネロ:(M)中央政府。監察局本庁。14階。エレベーターから降りて、長廊下を一度右に曲がれば、局長室がある



ビットマン:ネロ、早く帰れ、定時だぞ



ネロ:(M)柄にもなく廊下を走っている。30メートルもない廊下を、走っている



ビットマン:君達の様な部下は、私には勿体ないな



ネロ:(M)思い返すのは、やっぱりあの日々だ。きっとなにか。食い違いがある



ビットマン:どうしてそんなに真面目なのか。かぁ…。そうだな。



ネロ:(M)あの人は、そんな人じゃない…!



0:局長室



ビットマン:…この際言おうか



アインズ:これ以上、何を?



ビットマン:ペンスタン・レインは我々が何もしなくとも、死ぬ



アインズ:(M)絶句。情報を理解できない絶句。こんな重要な事をサラッと言うことへの、絶句。



ビットマン:彼女は異常性を強制的に重症化する、危険物を服用した。それによる副作用は様々だ。精神崩壊、身体的不全。



アインズ:(M)情報局員でも知らん事を、ペラペラと、喋りだした。サラッと



ビットマン:或いは、寿命の制限



アインズ:それはどういう冗談だ



ビットマン:冗談じゃない



アインズ:それが事実だとして、いずれ死ぬペンスタンを、なぜ処分する必要があった。何も辻褄があってねぇよ、嘘が下手だな。てめぇは



ビットマン:辻褄は合う。この状況を作ること。可能であれば、お前が異常性を使って、ネロを殺す事を期待した



ネロ:…は?



ビットマン:ああ。予想よりほんの少し、早いな。ネロ



ネロ:…今、なんと



ビットマン:悪いが、動かないでくれ



0:ネロへ発砲する



ネロ:っ……ごほっ。



ビットマン:あーあー。勿体ねぇなぁ。廊下さえ走らなきゃ、あと数十秒。長生きできたぜ



ネロ:(M)撃たれた。左鎖骨下動脈。確実に。致命傷を狙った一発だ。



ネロ:(M)分かる。異常体を殺す訓練を積んだ。何年も積んだ。私達人類よりも超常的、且つ超人的な新人類を殺す為の訓練。その最中習った。



ネロ:(M)ここを撃たれれば、人は死ぬ。そう、知っている。再認識した。



ネロ:(M)あの銃口は、私を殺すつもりで向けられた。



ネロ:(M)この弾丸は、私が死ぬ様に貫いた。



0:ネロは地に伏せた



アインズ:―――おいおいおいおい局長さん。何してんだてめぇは!



ビットマン:今なら抵抗出来ない。ネロの寿命を「箱」で閉じ込めちまえよ



アインズ:は



ビットマン:カルビス・ラングナーは情報局監査役である



アインズ:あ?なんで今カルビスの名前が出てきやがる



ビットマン:知っての通り、監査役の業務は中央の中でも少し異質だ。情報局、監察局職員の内部監査。全国の異常体の外部監査。そして、研究部。監察局の報告書を元にした異常体の監査」



アインズ:待て待て待て



ビットマン:ペンスタン・レインの検査結果はステージ5。推定余命は、今日。いつ死ぬか分からん状況にある



ネロ:局長…さっきから何を…!



ビットマン:もうどっちを選ぶかなんて明白だろ。相棒



アインズ:―――。



ネロ:局、長、貴方は、あの日。カルビス・ラングナーと、何か、話した、そし、て。何か、心変わりがあった。私はそう、予想しました



ビットマン:そりゃ希望的予測だろ



ネロ:…はい。



ビットマン:ネロ、ひとつアドバイスだ。お前はもう少し



カルビス:否定を覚えな



アインズ:…てめぇ



ネロ:カルビスさん…?局長は、どこに



カルビス:あー。分かってねぇんだな



ビットマン:俺は情報局、特務監査役。カルビス・ラングナーであり



カルビス:監察局局長、ビットマン・ワイスでもある



ビットマン:つーか、本物のビットマン・ワイスは既に肝臓癌で死去してる



カルビス:このビットマンは偽装。フェイク、嘘。つまり俺は



ビットマン:重症化異常性保有体



カルビス:能力は「虚偽」



ビットマン:あらゆる嘘を



カルビス:最も真実に近い形で



ビットマン:可能な限り



カルビス:再現することができる



ネロ:(M)血が止まらない。おそらく私は気絶した後、殺されるだろう。薄れゆく意識の中で、私は、安堵していた



アインズ:ネロ、止血を



ネロ:どの道、無駄でしょう、それより、私の予想とは、違う、斜め下、の、結果だった、な



カルビス:そうだろうな



ネロ:……ああ。…でも…良かった。



0:回想。五年前



ビットマン:どうしてそんなに真面目なのか。かぁ…。そうだな。いやぁ。ネロ。君から私がどう見えているか分からないが。私は清く正しく在りたいとは思ったことは無いよ。こんな職業だしな



ビットマン:ただ、間違いがないように、精一杯を尽くしてみているだけだ。いやなに、何も特別なことは無い



0:彼は少し笑った



ビットマン:君たちと同じだな



0:回想終了



ネロ:……ビットマン・ワイス。



ネロ:貴方の元で働けて。本当に、本当に。光栄でした



カルビス:…こりゃ返答しねぇのが礼儀かな



アインズ:カルビス。今までのは、全部てめぇの仕業だったってわけか



カルビス:そうだ



アインズ:全部知ってて、俺に近づいたのか



カルビス:そうだ



アインズ:馬鹿にすんのも大概にしとけよてめぇ!



カルビス:怖い顔だなぁ。相棒



アインズ:二度と俺をそう呼ぶな、殺すぞ



カルビス:なんで怒る。結果的にお前は助かるし、妹も助かる



アインズ:てめぇは何を考えてやがる



カルビス:嫌いなんだァ。全部が。人も、国も、組織も、全部全部、ぶっ壊れてくんねぇかなーって思うくらい。嫌いなんだ



アインズ:説明になってねぇだろうが。俺達にこんな茶番をさせてなんの得がある



カルビス:お前を、本当の意味で相棒にする為だ



アインズ:あ?



カルビス:アインズ。俺と取引をしろ



アインズ:…この期に及んで、取引だ?



カルビス:お前のメリットは二つもある。ひとつ、お前をこれまで通り、政府職員として生ぬるい生活を送らせてやる。ふたつ、ペンスタンの延命に力を貸してやる



アインズ:断れば、どうする



カルビス:お前の異常性検査をやり過ごしたロジックは簡単だった。検査時、自分の異常性を「箱」で取り出す事。これをチクる



アインズ:なるほどな。この状況は、俺を後に引けない状況に落とし込む為か



カルビス:まだあるぜぇ。この場でお前を拘束する。これだとペンスタンは余命で死ぬ



アインズ:クソ野郎が。俺がこの場でてめぇを殺したらどうする



カルビス:不可能だよ。俺の前に「もしかしたら」はねぇんだ、アインズ



アインズ:もしかしたら。は、ここでお前を殺しちまえば果たされる。お前の寿命をペンスタンにぶち込む。これで全部解決だ



カルビス:はっはぁっ!やるかよぉアインズ・ブローカーっ!



アインズ:動くなよ三下



カルビス:お?



アインズ:BOXボックス



0:箱の中に閉じ込められる



カルビス:あーはぁ〜。っぱそゆこと、強固な箱だァ。材質はぁ?アルミ?鉄?ポリエステルかぁ??



アインズ:どうだろうなぁ。適正な検査を受けた試しはねぇがぁ。服にゃならねぇと思うぜぇ



カルビス:ああ、そういやひとつ言ってなかった事がある



アインズ:ああ?



カルビス:俺の虚偽の異常性は俺自身じゃなく、他人。現象にも作用する。俺の前で全ての異常性は嘘、気の所為で処理できる程度のものなんだわ



アインズ:…。はったりかましてる暇があるだなんて羨ましいなおい。定義転換



カルビス:虚偽。



アインズ:『取籠』



0:箱の中にカルビスの姿はない



アインズ:あ?どこに行きやがった…!



カルビス:信じたなぁ、アインズ。一瞬でもぉっ!



0:殴る



アインズ:ぶふっ、ああっ、なるほどなぁっ。嘘もバレなきゃ真実ってかぁ!



カルビス:肉弾戦だが、負ける気しかしねぇなぁおい!



アインズ:初めっから俺はっ



0:殴る



カルビス:ぶへっ



アインズ:お前が気に入らんかったよっ



0:蹴る



カルビス:いっづっっ



アインズ:毎度仕事押し付けてきやがってっ



0:殴るが、防ぐ



カルビス:っと、合意の元だろうがっ



0:蹴るが足を取られる



アインズ:やり口がヤクザのそれだぜ、カルビス・ラングナーっ!!



0:そのまま背負い投げる、床に激突する



カルビス:ぼごぇっ



アインズ:元監察官でも実戦経験は少ないらしい、穴だらけだは



カルビス:ったく、異常体なら、異常性使えよ…!



0:雰囲気が変わる



カルビス:虚偽…!



アインズ:次はなんだぁ、おいっ!



0:蹴り飛ばすが、防ぐ



ビットマン:やっぱりダメだなぁ、俺は殴り合いの喧嘩は苦手だ



アインズ:変装したからって、何が変わったってんだよ。BOXボックス…!



ビットマン:遅せぇよウスノロぉ



0:蹴りつける



アインズ:ぶごっ、あぁ!?



ビットマン:俺の虚偽は変装じゃねぇ、偽装で、偽証だ。成り代わるんだよ。中央政府監察局長、ビットマン・ワイス。最終階級は準特等監察官。ホトバシ・カンラに並ぶ実力者だ



アインズ:だからって何が…



0:殴りつける



アインズ:ぐぉっ



ビットマン:君は、全盛期の私を知っている



アインズ:っこの馬鹿力…!



ビットマン:イメージとはそういうものだ。君がイメージする私が、強く、優秀であればあるほど、偽証の信憑性は高まる。虚偽と真実の境がなくなる。分かるか



0:蹴りつけた後、拘束した



アインズ:うぉっっ。



ビットマン:お前の前にいるのは。私、中央政府監察局長。ビットマン・ワイスだ。



アインズ:…降参だ。あんたにゃ勝てねぇよ。局長



ビットマン:じゃあ、取引の続きと行こうぜ。



アインズ:…これは取引じゃなく、脅迫って言うんだぜ。カルビス



カルビス:はっはぁ。調子出てきたな。さあ。どうする?相棒。決定権はお前に委ねる



アインズ:ねぇも同然だろうが



アインズ:…俺は何をすればいい



カルビス:俺と一緒に、全部ぶっ壊そう



0:場面転換



アインズ:(M)間違いなく俺は、正しくない事をしている。が、そんな事はどうでもいい



アインズ:俺は自分の保身に重ねて、妹の安全を選んだ。ただ、それだけのクズ野郎だ。こんな兄ちゃんで、ごめんな



アインズ:――BOXボックス



ペンスタン:「…あれ。もう、夕方だ」



アインズ:「おはよう。ペンスタン、よく寝てたな」



ペンスタン:「お兄ちゃん、来てたんだ」



アインズ:「ああ」



ペンスタン:「そうだ、ネロ見てない?私とご飯食べるって言ってたのにどっか行っちゃって」



アインズ:「…ああ。ネロは」



ネロ:「ペンスタン、待たせてすまない」



ペンスタン:「あ。もう、本当にどこ行ってたの」



アインズ:「…ペンスタン。あのな」



ペンスタン:「?なに、お兄ちゃん」



ネロ:「私の口から言わせてくれ。」



アインズ:「…どの口だよ。クソ野郎」



ネロ:「私は、君の担当監察官を降りる事になった」



ペンスタン:「……え?」



ネロ:「だがステージ4より上の異常体には最低一人の監察官がつく規則になっている」



ペンスタン:「ちょっと待ってよ」



ネロ:「だからこれからは、別の人物が君の担当監察官になる」



ペンスタン:「待ってってば。」



ネロ:「…すまない、ペンスタン。局長命令なんだ、私の権限ではどうしようもない」



ペンスタン:「やだ。ネロがいい」



ネロ:「私は、私情に流されていい立場に無い。許してくれ」



ペンスタン:「…どうして。なんで?」



ネロ:「説明する必要は無い」



ペンスタン:「意味わかんないって!」



ネロ:「これは決定事項だ。お前がどれだけ駄々を捏ねても、結果は揺るがない」



ペンスタン:「…やっぱり貴方達は、嫌い」



0:場面転換



0:何処ともしれない場所



アインズ:「…」



ネロ:「怒ってるかぁ、相棒」



アインズ:「ハハァ。当然、ブチギレてる」



ネロ:「はっはぁ。嫌われるのは慣れてるよ」



アインズ:「いつまでその姿でいるつもりだ、うぜぇからやめろ」



カルビス:「ああ、わりぃ」



アインズ:「で。ネロの処分はどうするんだ。一人三役は厳しいだろ」



カルビス:「三日後、適当な任務で死んだ事にするさ。もういらない」



アインズ:「…そうか。」



カルビス:「あー。ペンスタンも暫くの延命は出来たしぃ?ばっちりだな?」



アインズ:「ひとつ聞かせろ」



カルビス:「おう。いいぜ、相棒」



アインズ:「お前にとって、人生が始まった瞬間と、終わった瞬間はいつだ」



カルビス:「まだ終わってねぇぞ」



アインズ:「いいや、お前は終わってる。そういう顔だ」



カルビス:「そうか。お前と同じだな」



アインズ:「その嘘にゃもう乗らねぇよ」



カルビス:「やるじゃなァい」



アインズ:(M)中央政府情報局カルビス・ラングナー。



アインズ:こいつが吐く嘘は本当に気に食わねぇ



カルビス:「俺にとって人生の始まりはぁ。そりゃあ」



アインズ:(M)こいつは俺に嘘を吐き



カルビス:「マミーの腹の中から溢れ出てオギャった瞬間だ」



アインズ:(M)組織に嘘を吐き



カルビス:「んで、俺にとって終わった瞬間はぁ。そうだな」



アインズ:(M)何より気に食わねぇのが



カルビス:「ああ。煙草が切れてる。ってことは今だ。」



アインズ:(M)自分が嘘を吐いていると、そう、嘘をつきやがった事だ




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