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異能力者達の午後  作者: ゆーろ
異能力者達の午前
1/32

解放者達の午後

0:解放者達の午後




『登場キャラ』


アレジ・ロンドン:男。人間



マルボロ・セルベルト:男。異常体



ビットマン・ワイス:男。人間



アストレア・アステル:女。異常体



アンダンテ・S・グローザ:女。異常体



セノ・アキラ:だいたいこいつが悪い





0:『某日。ベネツィア南西。』





セノ:(M)人類の原罪は、林檎を食べたことだという



0:『ロック・ストーン収容施設』



アレジ:やあ、こんばんは。



グローザ:誰だアンタ



セノ:(M)この世は腐っていると彼は言った。



アレジ:はっ!私は当308号室専属看守、アレジ・アンドレイでありますっ



グローザ:悪いが、私はあまり冗談の通じるタチじゃあない。もう一度聞く、アンタは誰だ



アレジ:流石の迫力だね、アンダンテ・S・グローザ



グローザ:ラストチャンスだ。アンドレイ。お前は――



アレジ:僕はアレジ・ロンドン。



セノ:(M)権利に溺れるもの。権威に貪欲なもの。人を蹴落とすもの。目を背けるもの。もしくは、人そのもの。



ビットマン:報告だ。赤い林檎がロック・ストーン収容施設を強襲した。



アストレア:…また、彼ですか。



ビットマン:ああ、またあいつだ。今すぐに執行官を数名派遣する。



0:(アストレアOUT。マルボロIN。)



ビットマン:ロック・ストーン収容施設にて赤い林檎主犯、アレジ・ロンドンの姿を確認した。警戒ステージは5。各員、その拘束、処分に尽力する様。



ビットマン:以上。命令を遵守しろ。



セノ:(M)だから、どうやら彼らは世界にナイフを突きつけたらしい。



マルボロ:お?やっと帰ってきたかよ、アレジ



アレジ:うん。思いのほか頑固だったよ



グローザ:…。



セノ:(M)それは感情であり、人間性であり。或いは



マルボロ:バヘミアン、ドリアード、リベール、んでここ、ロック・ストーンは墜した。次はどこだっけか



アレジ:アーヘンだよ。勿論、次は君も参加だ



グローザ:そうか。好きにしろ



セノ:(M)純粋な悪意



マルボロ:そんじゃあ行くかっ、アレジ



アレジ:うん。



0:『アレジは両手を空に掲げた』



アレジ:さあ。どいつもこいつも有罪だぁっ。



セノ:(M)端的に言うのであれば、それが林檎だった。



0:(グローザOUT。アストレアIN。)



0:―――――解放者達の午後――――――



0:『数ヶ月前。中央政府、監察局』



ビットマン:「異常性」それは一切のプロセスも過程もなしに超常的な力を引き出す能力である。



ビットマン:異常性は全人類がその種を持っているとされ。これが重症化すると先程話した力を意図的に引き起こす事のできる、危険人物となる。



ビットマン:それを、なんと呼ぶか。アレジ・ロンドン。答えを



アレジ:はい。重症化異常性保有体。我々が呼ぶところの、「異常体」となります。



ビットマン:ああ、よろしい。



ビットマン:重症化した異常性は極めて危険だ。各異常体が保有する能力は様々だが、その危険性は警戒ステージによって大きく分類される。ステージ分類を説明しろ



アレジ:はい。異常性警戒ステージは1から5まで。



アレジ:ステージ1、危険性は極めて低い。被害予想は死傷者1〜3人程度。



アレジ:ステージ2、被害予想は死傷者5〜10人程度



アレジ:ステージ3、ここから警戒態勢が変わるものとし、被害予想はひとつの市町村を再起不能にする程度。



アレジ:ステージ4、被害予想は巨大都市、洲など、大規模な経済崩壊程度



アレジ:ステージ5、超警戒態勢の発令。被害予想は1国家の経済崩壊、軍力を再起不能にする程度。以上です



ビットマン:付け加えて言うなら、一般的には公開されないものだが、ステージ6。



ビットマン:大陸全土に及ぶ、戦争規模の被害が想定される程度。これで全てだ



アレジ:はい。失礼しました



ビットマン:まぁいい。で。



ビットマン:異常体を監察し、情報局へ報告をするのが。我々、中央政府監察局員の義務だ。



アレジ:はい。承知しております



ビットマン:よろしい。では監察局、指導講習を終える。五年の研修期間、お疲れ様だった。



ビットマン:これからも十分に疲れてくれ。



ビットマン:来週から、正式に監察官として活動することを認める。



0:『ビットマンはなんかの用紙に判子を押した』



アレジ:ありがとうございます。



ビットマン:よし。中央の為、自己を捨て尽力すること。以上、命令を遵守しろ



アレジ:了解しました、命令を遵守します



0:『一週間後 中央政府監察局 本庁』



セノ:西暦1991年。4月 15日。晴れ



アレジ:(扉をノックする音)



ビットマン:入りたまえ



アレジ:失礼しますっ。本日より監察局へ配属される事になりましたっ。アレジ・ロンドンです。



ビットマン:ああ、改めまして。知っていると思うが、一応自己紹介はしておこう。



ビットマン:私は中央政府監察局、局長。ビットマン・ワイスだ。今日からよろしく頼む、アンドレイ監察官



アレジ:よろしくお願いしますっ。



ビットマン:そう硬くならなくていい。中央の仕事はまさしく激務だ。畏まってばかりじゃあ早々に参ってしまう



セノ:(M)異常性。そう呼ばれる力が発見されて久しい現代社会。人は火を吹き、空を飛ぶ。まさしく超常の力。



セノ:(M)それを持つ者達は、異常体と呼ばれるようになった。ああ、ヒーローになれると思うだろう?ところがどっこい。



セノ:(M)いつの時代でも、秀でた何かを持つ人種は、迫害されて。隷属されて、虐げられるものなんだよ。



ビットマン:以上で、諸々の説明は終わりだ。君の階級は最下級の六等監察官。



ビットマン:余り気負いし過ぎず励め



アレジ:はいっ。頑張りますっ



ビットマン:気負いするなと言ってるんだが。まぁいい



アレジ:あの



ビットマン:ああ。分かっている。君の監察対象となる異常体は、君の希望通りにはしておいた



アレジ:〜っ。ありがとうございますっ



セノ:(M)中央政府と呼ばれる全世界、全国家の最高決定機関の統治により。この現代社会は、人と、そうでない者。このふたつに別れた。



セノ:(M)ああ。そろそろ僕も行かなきな。それじゃあ、またね



ビットマン:セルベルト執行官。入りたまえ



マルボロ:失礼しますっ。中央政府執行部。マルボロ・セルベルトですっ



アレジ:…!



ビットマン:一応セルベルトの異常性資料も纏めておいたが、私からも軽く説明はしておこう



アレジ:はいっ



ビットマン:マルボロ・セルベルトの異常性警戒ステージは2。内容は一言で言うと加速、だ。



ビットマン:しかし、身体能力強化等の異常性とは異なり、彼自身の筋肉、内臓機器はそれに適応しない。



ビットマン:余り酷使し過ぎると内臓機能の停止。最悪の場合死に至る。扱いには気を付けろ



アレジ:承知しました



ビットマン:異常体の警戒ステージが上がる兆しがあれば直ぐに報告、対処するよう。



ビットマン:それが私達、監察局の人間の義務だ。いいな



アレジ:はい。



ビットマン:よし。前説明はこんなものでいいだろう。アンドレイ。明日から正式に監察官としての仕事に就いてもらう事になるが



ビットマン:先程も言った通り、気負いし過ぎず励め。



ビットマン:以上、命令を遵守しろ。



アレジ:了解しました。命令を遵守します



0:『二人は局長室から出る』



0:『中央政府領。22時。庭園』



アレジ:…



マルボロ:…



アレジ:マルボロ、周りに人は



マルボロ:こんな夜中だ。誰もいねぇよ



アレジ:…は。



マルボロ:久しぶりだなっ。アレジぃっ



アレジ:ああっ。本当に久しぶりだっ。背も伸びたな



マルボロ:そりゃ五年もあれば伸びる



アレジ:そりゃそうだ。執行部での暮らしはどうだ



マルボロ:執行官かぁ。異常体しか居ない部署だからな、異常体差別は無いし悪くねぇよ。飯は美味いし、一人部屋だし、寮には螺旋階段がある



アレジ:お。ってことは、あれ、できるな



マルボロ:階段の下で女子のパンツ眺めるだけのクソみたいな遊びっ。



アレジ:懐かしいなおい!



マルボロ:アレジぃっ!一人じゃ寂しかったんだよっ



アレジ:一人でやるなよ水臭いな!



マルボロ:あーっ、いつまでたってもエロガキだっ。孤児院に居た頃からなーんも変わらんっ



アレジ:ははっ。五年経っても、なんにも。なんにも変わってなくて安心したよ、本当に



マルボロ:…へ。



アレジ:は。お待たせ、マルボロ



マルボロ:いいや。さんきゅな、アレジ



アレジ:さあっ、腹が減った!まずは食堂に案内しろ、セルベルト執行官



マルボロ:おいおい、おれぁ一応先輩だぞぅ?



アレジ:お前は執行官で、俺は監察官だ。分かるか?俺が上司なんだよっ



マルボロ:お前それ本気で言ってんのか?俺ら友達だろ?



アレジ:いいや、親友だ。



マルボロ:よぅし、気分がいいから飯を奢ってやるっ、監察局員の食堂はこっちだっ。付いてこい



アレジ:だから、俺が上司だって言ってんだろ!



0:『場面転換』



0:『情報局。本庁。執行部。』



アストレア:…



0:『アストレアは月を眺めている』



セノ:18手、ビショップxb6。これは悪手だったんだよ、でもね。



セノ:それでも僕は悪手が好きだ



アストレア:…セノですか。こんばんは



セノ:こんばんは、アストレア。ちょっとチェス付き合ってよ



アストレア:折角のお誘いですが、生憎先約がありまして。



セノ:あら残念。僕は月見に負けるのかい?



アストレア:はい。今日もとても明るい月が出ている。良い晩です



セノ:つい五時間前まで遠征任務でウクライナに居たって聞いたけど。夜更かしだなんて余裕だね?無傷だし。更に今回の執行対象はステージ4の異常体が23人。



セノ:いやぁ、さっすが中央最強と呼ばれる異常体なだけある。異名負けとは無縁だね。



0:『セノはチェスの駒を投げ捨てた』



セノ:中央政府 執行部。アストレア・アステル監督武官さん



アストレア:持ち上げてくれますね、セノ。嫌味に聞こえますよ



セノ:嫌味かもしれないだろ?警戒ステージは最高ランクの6。1900年続いた人類史の中、世界でたった三体しか確認されていない超危険生物。ああ、本当に世界を相手どれる化け物だ



セノ:かっこいいねぇ、かっこいいけれど、これはもう、人間では無いよねぇ。



アストレア:相変わらず人を煽るのがお好きですね。貴方は



セノ:ああ、気を悪くさせちゃったなら謝るよ。ごめんごめん



アストレア:いえ。異常体への差別視は現代では当然の事ですので。心にも無い謝罪は結構です



セノ:怒ってんじゃん。そんなことはどうでもよくて。ねぇねぇアストレア、あの二人。どう思う?



アストレア:…。どう、とは?



セノ:黒髪の背筋良い方の子ね、今日から監察局に入ることになったらしいんだ。



アストレア:それが何か



セノ:気に入っちゃった。でも僕は人を見る目は無いらしくてね。だから数百年生きてる君に聞いてみる事にした。君はどう思う?



アストレア:…何故あなたがそれを知っているのかは、聞いても無駄。なのでしょうね



セノ:その上で、お答えは



アストレア:……。はい。若く、勇ましく、強く在ろうとする。とても真っ直ぐな方々に思えますよ。それ故に脆い部分もありそうですが。いいえ、それでもやはり。良い目です



セノ:うぅん。やっぱり君もそう思う?だよねぇ、本当に良い芽だ



アストレア:…三日、です



セノ:?



アストレア:三日、満月が続きました。こういう時は近い内に、何かしら良くない事が起こる。ただの経験則に過ぎませんが、数百年という時間が立証してくれたジンクスです。



アストレア:つまり、ええ。私は感じているんですよ。嫌な予感、というものを



セノ:ふぅん?ああ、もしかして僕、なんか疑われてる?



アストレア:中央政府情報局 セノ・アキラ特務監査。



アストレア:私は、貴方が嫌いではありませんが。世界で一番、貴方を信用していません



セノ:…だったらここで殺すかい?非力な人間である僕を、異常体である君が、殺してみたりするのかい?



セノ:ああ、それもまた面白いかもしれない。監督武官の権限で庇えるといいね



アストレア:笑えませんね。内輪揉めをしたくて言っている訳ではありません。ですが、もしもその時が来て、貴方がそこに居たのならば。



アストレア:私は貴方を裁く準備が出来ている。そう言っているんですよ



セノ:釘刺されちゃった。まるで正義の味方だね



アストレア:…。私は、人は何かに依存する生き物と考えます。金銭、性的欲求、人、現象、景色、記憶、環境。その依存を味方と言い換えるのならば。それは間違っていません



0:『アストレアは冷たい瞳でセノを見つめた』



アストレア:その場合セノは、何の味方になるのでしょう



セノ:面白い方の味方だよ。決まってるじゃない



アストレア:そうですか。やはり貴方の根底は、娯楽を知ったばかりの幼児と同じのようだ。悪意の無い悪行ほど、度し難いものはない



セノ:はあやだやだ。君と話すと裸体をジロジロと見られてる気分になる。



セノ:というわけで僕はこの辺りでお暇するよ。ばぁ〜い



アストレア:…。



0:『窓の外の二人を眺めるセノ』



セノ:はぁ〜。うん、やっぱり、ねぇ?良い芽だよねぇ。



アレジ:…?(視線を感じる)



マルボロ:どうした?アレジ。早く行こーぜ



アレジ:おうっ



0:『セノはチェスの駒を踏みつけた』



セノ:はは、はははっ。は、はっはっ。いいな、いいないいな。ああ、ほんっとうに、楽しみだっ。



セノ:いやぁ、あぁうん、難儀だねぇ



0:『場面転換』



0:『重要会議室』



ビットマン:アレジ・ロンドン四等監察官。1991年。4月分 監察報告書より



ビットマン:監察対象との関係性は、同じ孤児院出身ということもあり非常に良好。



ビットマン:任務受託数12件。内、未達成 8件。加速の異常性は監察対象の体の安全に関わる為、短時間、瞬間的な使用に限られる。結果、威力を調整する事が困難であり、拘束任務ではミスが目立つ



0:『執行部寮 螺旋階段の下』



アレジ:うーん。



マルボロ:うーーーん。



アレジ:まずい



マルボロ:まずいな



アレジ:また怒られちった



マルボロ:すまへん



アレジ:お前の異常性、どうすっかね



マルボロ:んな。でもよ。あれ使うと死ぬほど頭いてぇんだよ。



アレジ:お前の任務終わりの顔色みたら分かる。正直カワウソ



マルボロ:カワウソな



アレジ:カワウソじゃん。



0:『凝視』



アレジ:白だ。



マルボロ:え?グレーじゃん



アレジ:は?目腐ってのかお前



マルボロ:あ?おれぁ何年この螺旋階段の下で布っキレ眺めてきたと思ってんだ。五年だぞっ。五年!



アレジ:声でけぇよばかっ!!



アストレア:(白色の女)きゃーーっ!覗きよっ!



セノ:(たぶん女)あーん嫌になっちゃう!いやぁーんっ。



アレジ:逃げるぞマルボロ!!



マルボロ:おうアレジ!!



0:―――――――――――――――



ビットマン:同上、5月分。監察報告書より



ビットマン:任務受託数24件 内、未達成数6件。



ビットマン:前月と比べると監察対象の動きはよくなっている。異常性のデメリットである短期的発動を踏まえた遠投、プロテクトを付けての蹴り等で克服中。



0:『トルコ南東部。ベルメール通り。』



セノ:(犯罪者)はあっ、はぁっ。ひぃっ!ひぃいいっ。勘弁だっ。勘弁だ勘弁だぁっ。逃げるぞ俺はっ。勘弁なんだよぉおっ



アレジ:そっち行ったぞ!!マルボロ!



マルボロ:分かってる、AXXELLアクセルっ!(蹴り)



セノ:(犯罪者)まひるっ。



0:『犯罪者は気を失った』



アレジ:げっ、今!音!えぐかったぞ!?死んでないだろうな!



マルボロ:多分生きてる!多分な!



アレジ:ふざけんなっ、異常体と言えど人間だっ!よーく考えよーっ!命は大事だろっ!



マルボロ:んな事言うの中央じゃお前くらいだよ変人っ!



アレジ:悪いかよ!



マルボロ:いーや、流石親友だ!



0:――――――――――――――――



ビットマン:同上、六月分。監察報告書より



ビットマン:任務受託数31件。内 未達成13件。余裕が出てきた為、任務受託数を増やしたが、監察対象の体力がそれに追い付かず、逆に未達成の任務報告が増える。



0:『メキシコ。イダルゴ州にて』



マルボロ:はぁ、はぁ、おぇっ、おぇぇっ



アレジ:おい!マルボロ!おまえもっと頑張れるだろっ!なっ。ふぁいとっ!ないすふぁいとセルベルトっ!言いづら!



マルボロ:うっさい、くそ、!なんでそこはスパルタなんだっ



アレジ:ふぁいとーーっ。マルボローーーっ!



マルボロ:うるさいっつってんの!!



0:―――――――――――――――――



ビットマン:同上、七月分。監察報告書より



ビットマン:任務受託数13件。内、未達成0件。ステージ1の異常体であれば、難無く拘束する事ができるようになった。来月は受託数を増やしつつ、様子を見る。



アレジ:「ごくごくごく、たはーーっ、うめぇぇっ!」



マルボロ:「だぁぁーーーっ、やったったぞおらぁ!」



アレジ:「うまい!酒!うまい!!」



マルボロ:「お前ゲロ弱なんだからまじでやめとけ」



アレジ:「来月はぁ!受託数1000件!がんばろぅ!」



マルボロ:「よーっしゃやったらぁおい!」



ビットマン:同上、八月。監察報告書より。



ビットマン:依頼受託数22件。内、未達成数2件。



ビットマン:監察対象、マルボロ・セルベルトと同ステージであるステージ2の異常体を拘束する事に成功。



0:螺旋階段の下 寝そべる二人



アレジ:「やったな、マルボロ」



マルボロ:「ああ、最高の気分だ。アレジ」



アレジ:「白だ。」



マルボロ:「白だな」



アレジ:「んんんん。」



マルボロ:「んんんん。」



アレジ:「よっしゃぁぁああああっ!」



マルボロ:「おらぁぁああああっ!」



アストレア:(白色の女)「きゃーーっ!覗きよっ!」



セノ:(ブス)「信じらんないっ!信じらないっ!」



アレジ:「逃げるぞマルボロ!!」



マルボロ:「どこまでも付いてくぞアレジっ!」



ビットマン:同上、九月分。監察報告書より



ビットマン:任務受託数24件。未達成0件。内、ステージ1の異常体拘束任務、16件。ステージ2の異常体拘束任務、8件。



ビットマン:マルボロ・セルベルトのデメリットであった能力発動時間や体力は殆ど解決したと言ってもいい。



0:中央政府。監察局。重要会議室



ビットマン:「アレジ・ロンドンとの連携があってこそだ。と。私は思う。どうだろうか。そろそろステージ3の任務を委託するかどうか」



アストレア:「マルボロ・セルベルトのステージが2である以上、どうかと」



ビットマン:「自身より上位ステージの異常体と交戦する執行官なんて山ほどいるが…。難しいな。監督武官としての意見を聞かせてくれ」



アストレア:「経験が足りません、マルボロ・セルベルトは五年間、実戦任務へ赴いてはいませんでした。僅か五ヶ月でここまで成ったのは素晴らしい事ですが、そう急くことは無いのではないかと」



0:セノが入室する



セノ:「優しいなぁ。君達は」



アストレア:「ノックくらいしたらどうでしょうか、セノ・アキラ監査。これは執行部と、監察局の問題です。情報局が出る幕ではない」



セノ:「おいおい、ぼかぁ中央政府情報局の特務監査だよ?そうそう、中央の内外含む全ての監査役だ。執行部の問題だって監察局の問題だって、中央職員の全ての問題は僕の問題だよ」



アストレア:「監査役の責務は組織全体を通しての監査です。一個人への過干渉は―――」



セノ:「監査課から通達だよ。アレジ・ロンドン監察官。並びにマルボロ・セルベルト執行官への任務難度を引き上げろ

セノ:依怙贔屓はよくない、他の執行部の異常体は毎日毎日血を血で洗う日々を送っているのに、報告書に目を通す限り

セノ:彼らは執行任務、即ち殺すべき場面でも拘束の処理に落ち着いている。低ステージと言えど異常体は人間じゃない。

セノ:ひとつ念じれば人の命を奪う、彼ら自身が凶器である限り、生きてるだけで善良な市民は日々怯えなければならないんだ」



アストレア:「だからといって」



セノ:「アストレア・アステル監督武官。立場を弁えなよ

セノ:僕は情報局の監査課。僕らがNOと言ったらNOだ。それがアレジくん個人ならまだしも、異常体であるマルボロくんにまで贔屓が及んでいるのは看過しない

セノ:ビットマン局長だって分かってるだろう?」



ビットマン:「…ああ。」



セノ:「随分丸くなったね。それとも老い先短い病人は少しでも若人に未来を与えたいとでも言うつもりかい」



アストレア:「ビットマン局長…?貴方、病症を患われていたのですか」



ビットマン:「…」



セノ:「ビットマン。君の最後の仕事だと思って頑張りなよ。君は中央政府監察局の頭。私情に流されていい立場に無い。

セノ:それにこのままアレジくんが異常体を「捨てる命」だと認識しないまま昇進でもしてみなよ。



セノ:周りからは不満の声、当の本人は…。きっとその先で見る、異常体の死体に耐えられない」



ビットマン:「分かっている。」



セノ:「だったらやるべき事をやりなよ、ほら。中央の決まり文句。命令を遵守しろってね」



ビットマン:「ああ、よく回る舌だ。」



アストレア:「セノ。貴方は一体何を企んでいるのですか」



セノ:「企む?冗談きついね。僕は僕の仕事をしてるだけだ。君が、アレジくん達を庇っているようにしか感じないよ

セノ:ああ、それとも。そんなに僕が怖い?」



アストレア:「えぇ。前言った通りです。」



セノ:「それこそ冗談。君はステージ6の異常体。マルボロくんやオリバー、リカルディオ達とも訳が違う。

セノ:ひとつ念じれば国ひとつ落とせる。そういう存在がただの人間一人にビビりすぎだ。

セノ:それじゃあビットマン。ちゃんとしなよ。」



ビットマン:「…分かっていると言ってる。」



セノ:「うん。それじゃあ、頑張ってね。」



0:セノ 退室



アストレア:「…ビットマン局長」



ビットマン:「アレジ・ロンドン監察官へ渡す任務難易度を上げる。

ビットマン:次行う任務は、ステージ3の執行処分。」



アストレア:「ビットマン!」



ビットマン:「アステル監督武官。これ以上は過干渉というものだ。君の権限で、私が決めた一監察官へ与える任務難度の変更権は無い。私は私の仕事をする

ビットマン:ああ、はっきり言って図星だったよ。局長になり、良い後輩に囲まれ。新しい芽を摘むまいと私情に流された。

ビットマン:だが。単純な話、社会は甘くない。彼らがこれから、より悲惨な現実の荒波に耐えられるよう、私が憎まれ役になる他ない

ビットマン:それが、監察局長としての責務なのだから」



アストレア:「…狡いですね。そう言われては、私は何も言えないじゃないですか」



ビットマン:「すまない、アステル監督武官。

ビットマン:私は。命令を、遵守する」



アストレア:「…はい。でしたら私も、私の矜恃を全うします」



0:場面転換 部屋の外



セノ:「あーあー。少し口を出しすぎたかな。いや、アストレアは鋭いからなぁ。でもほら。こうでもしないとアレジくんはこのままぬるま湯ポカポカ中央生活だ。

セノ:そんなのはほら、つまらないじゃない?さぁて、見物だね」



0:場面転換



0:局長室



アレジ:「ステージ、3を…?」



マルボロ:「…」



ビットマン:「ああ。今までの報告書を読み、任務難度の底上げを判断した。それに加えて、本日行う任務において、拘束後収容は認めない。執行処分だ。」



アレジ:「それはつまり、マルボロに人を殺せ。って事ですか」



ビットマン:「そうだ」



アレジ:「何故ですか。拘束で済むのなら、それがいいに決まっているじゃないですか。わざわざ殺す理由なんて」



ビットマン:「年間約18000人。」



アレジ:「…はい?」



ビットマン:「この数字が、何を意味するか。分かるか」



アレジ:「いえ、わかりません」



ビットマン:「拘束され、収容された異常体が、収容所から脱走しようと試みる。その際に政府職員。即ち非力な人間が殺された数。、それが18000という数字だ。」



アレジ:「…」



ビットマン:「アレジ・ロンドン監察官。君は優秀だが、君が救おうとしているその命は。他でも無い、我々を殺す命なんだ。」



アレジ:「だから、殺すべきだ、と」



ビットマン:「そしてそれは、執行部の異常体も同じだ」



アレジ:「――は?」



ビットマン:「執行官が監察官を殺して、脱走。そんな事例は今上げた数の倍にも昇る。

ビットマン:あれらは人間では無い。そこに居るマルボロ・セルベルトもそうだ。」



アレジ:「ちょっと待ってくださいよ、マルボロはそんな奴じゃない」



ビットマン:「君が監察対象とするのはこいつだけだとでも言うつもりか。ただでさえ異常体の人口は増えている、当然、経験を積むごとに君の監察対象も増やす。

ビットマン:マルボロ・セルベルトだって、いつかは死ぬ。戦闘のさなか、殉死する。」



アレジ:「その奴隷みたいな言い方やめてください。マルボロは人間だ」



ビットマン:「異常体は人を殺す。歩く生物兵器であり、人を殺させない為に、異常体に死んで貰うしかない」



アレジ:「あんたらがそんな考えだから、犯罪を繰り返す異常体が増えるんじゃないですか。第一マルボロは誰も殺してないっ。それなのに、そんな危険な任務――」



ビットマン:「我々は監察局の人間だ。異常体の監察、管理が規則であり仕事だ。違うか」



アレジ:「…研修期間にて習った限りでは、おっしゃる通りです」



ビットマン:「だったら無いだろう、「異常体の安全を優先する」なんて規則は。仕事に私情を挟むんじゃない。」



アレジ:「は、しに、ならない…」



ビットマン:「なんだ。」



アレジ:「話にならないっつってんですよ!」



マルボロ:(遮って)「アレジ!」



ビットマン:「…」



マルボロ:「局長、やります。やらせて下さい」



アレジ:「マルボロ…」



マルボロ:「いいんだ、俺達ならやって行ける。絶対に」



ビットマン:「…アレジ・ロンドン監察官。以降はステージ3の執行任務を引き受けて貰う。以上、命令を遵守しろ」



アレジ:「…了解しました、命令を、遵守します」





セノ:1991年。11月。アレジ・ロンドン監察官、監察報告書より。



セノ:アメリカ、シカゴ東北部にて、ステージ3の異常体を一体確認、その執行を開始。



アレジ:「はぁ…!はぁ…っ!」



セノ:マルボロ・セルベルトは、戦闘開始直後、敵勢力の攻撃にて頭部を強打、加えて内臓系への甚大な損傷を受ける



マルボロ:(数度の咳、吐血)



セノ:アレジ・アンドレイ監察官にも攻撃が行われそうになった直後



アストレア:「LANCEランス



セノ:「偶然」駆け付けた、執行部監督武官、アストレア・アステルにより、対象の執行を確認



アストレア:「大丈夫ですか、お二人方」



セノ:「ここから先は文字が潰れて読めないけれど…多分、こう書いてる」



アレジ:不条理だ



セノ:「あぁ。そろそろだね」



0:13時。局長室



アレジ:「…以上で、報告を終わります」



ビットマン:「ああ、重症だな。明日に備えて十分に休息を取るように」



アレジ:「何を言ってるんですか…?」



ビットマン:「何がだ」



アレジ:「マルボロは、必死に戦って、俺を逃がそうとしてくれました。異常性を酷使したせいで内臓系へのダメージも、脳の損傷も酷い。これを見て、まだ俺達にこの難易度の任務を回す気ですか」



ビットマン:「口が過ぎるぞ。無理にでもやらせるのが我々の仕事で、無理にでもやるのが異常体の仕事だ。分かったら今日は休め」



アレジ:「…腐ってる」



ビットマン:「何か言ったか?」



アレジ:「いいえ。失礼します」



0:アレジ、退室



ビットマン:「…はぁ。大人になるというのは、しんどいものだな。」



0:場面転換



マルボロ:アレジの声が聞こえる。俺を、庇おうとしてる。異常体相手に、ただの人間が。



マルボロ:やめとけって。お前どこまで馬鹿なんだよ。死ぬから、やめろ。おい、話聞けって



0:中央政府執行部。医務室



マルボロ:「アレジぃっ!」



アストレア:「目が覚めましたか、良かった」



マルボロ:「…あんたは、さっき助けてくれた、いっつ!」



アストレア:「傷口が塞がりきっていません、まだ動かない方が良い」



マルボロ:「だな。俺はマルボロ・セルベルト、あんたの名前を聞いても?」



アストレア:「私はアストレア・アステル。執行部の監督武官を務めています」



マルボロ:「監督武官…ていうとうちのトップじゃねぇか!?いっ…。すみません、顔を見たのも初めてだったもんで、とんだ失礼を」



アストレア:「構いません、縦社会はあまり好きではないので」



マルボロ:「はは、執行部のトップが言ってると思うと、何とも言えない発言ですね」



アストレア:「所詮は執行部の中だけでの話です。私のことはさて置き、一先ずは命があってよかった」



マルボロ:「本当に、さっきは助けて貰って、ありがとうございます」



アストレア:「いえ。あなた方執行部職員を守るのが、私の務めですので。」



マルボロ:「それで、わざわざ看病まで?」



アストレア:「も、ありますが。貴方とアレジ・ロンドン監察官の話を、少し聞きたくて」



マルボロ:「あー、勿論いくらでも!まず俺とあいつは同じ孤児院の出身で、好きな食べ物は甘い物全般。好みの下着は白。で、俺の大事な友人です」



アストレア:「良い事です。こんな組織で、友人がいると言うのは」



マルボロ:「えぇ。本当に、有難いことっす」



アストレア:「彼は、何故中央へ来たのですか」



マルボロ:「…五年前ですかね、俺に異常性が発症して、すぐに執行部職員が来たんです。その時あいつ」



0:回想。五年前



アレジ:「こいつは、マルボロは悪いやつじゃない。だから殺さないで下さい、お願いします!

アレジ:俺の命でどうにかなるなら俺を殺して下さい。だから、マルボロは、逃がしてやってくれませんか…!」



0:回想終了



マルボロ:「そう言って地面にあたま擦り付けて、そんで執行部の人らも、俺が抵抗しないなら拘束後、収容施設に移送するって形で引き下がってくれました」



アストレア:「善い、友人ですね」



マルボロ:「ええほんと、俺なんかにゃ勿体ないくらい。そんであいつ、その時の事が相当気に食わなかったのか」



アレジ:(五年前)「絶対に、中央に入って、お前を守ってやるからな、待ってろよ!馬鹿野郎!」



マルボロ:「って、泣きながら。まぁ俺も貰い泣きしたんですが」



アストレア:「…なるほど、それで監察局に」



マルボロ:「はい。本当に、良い奴です」



アストレア:「やはり勇しく、真っ直ぐな方ですね。危うい程に」



マルボロ:「はは。その通りっすね。善い奴すぎて、馬鹿なんですよ」



0:執行部 人気の無い庭園



アレジ:「…」



セノ:「やあ」



アレジ:「…誰だあんた。執行部職員か」



セノ:「いいや、僕はセノ・アキラ。中央政府情報局の、特務監査っていう役職についてる人間だ」



アレジ:「情報局の…!すみません、知らなかった事と言え、失礼な発言を

アレジ:自分はアレジ・ロンドン」



セノ:(遮って)「知ってるよ、しがない四等監察官だろう。加えて今日の執行任務で大失敗して凹んでることも知ってる」



アレジ:「…報告書を読まれたんですね」



セノ:「うん。監査だからね。中央で起こった全ての事は把握してないと」



アレジ:「そうですか。」



セノ:「切羽詰まった。という顔だね。

セノ:確かにそうだ、これからはずっと今日みたいな死闘の日々だし。任務難度の低下は基本的には無い。

セノ:マルボロくんが死ぬまで、このままだよ。最もこの調子じゃ一週間後には…ねぇ?

セノ:そりゃ焦りもするさ。可哀想だなぁ、と思っているよ」



アレジ:「同情でしょうか。有難いですが、今の俺にそれをするのは、惨めでしかない」



セノ:「まさか。監査役がそんなに暇に思えるかい?中央の全ての事柄を監査しなきゃいけないのに」



アレジ:「でしたらなんでしょうか」



セノ:「君、中央から逃げようとしてるだろ」



アレジ:「…」



セノ:「図星かい。図星だろうね。うん。君ならそうなると思った。君が中央に来たのはマルボロくんの為だもの。

セノ:当の本人が死んでしまうんじゃあ元も子もない」



アレジ:「だったらどうしますか。俺を、告発しますか」



セノ:「怖い目だ。今ここで僕を殺してもいいと、君は本気で思ってしまっている」



アレジ:「…」



セノ:「…はは。告発なんてしないよ。僕は君の、力になりに来た」



アレジ:「俺の、力に?」



セノ:「もしも、中央から逃げたとしよう。そうしたら何が待っていると思う」



アレジ:「中央からの追っ手です」



セノ:「正解。ステージ5クラスのナンバーズが向かっちゃあ君とマルボロくんじゃとてもじゃないが対処出来っこない。

セノ:それは今日の任務でよく分かったろ。ステージがひとつ違うだけで、異常体はこんなにも格差がついてしまう。

セノ:それを埋められるのは経験だったり技術だ。それでも君達にはまだそれがない。

セノ:なのにビットマンと来たら、こんな未来ある若者にっ。酷いやつだねっ。信じらんないっ。最低だっ、あの亭主関白っ」



アレジ:「…」



セノ:「じゃあ、どうしようね?人間じゃかないっこない超常に立ち向かう為には、どうしようね?

セノ:答えは簡単。君も異常体になっちゃえ」



アレジ:「……は?」



セノ:「従来、異常性を発症するのは先天性と後天性のふたつ。だけれど、ほんのひと握り。人為性の異常性保有体が居る。」



アレジ:「何を、言ってるんですか」



セノ:「君はさぁ、林檎って食べたこと、ある?」



アレジ:「林檎…?」



セノ:「そう。赤い赤い、林檎だ。」



0:医務室



アストレア:「あなた方を初めて見た時。危うさを感じる青年達だ、と。そう思いました」



マルボロ:「ほぇ」



アストレア:「中央は、いえ。今この世界は。不条理に包まれています。

アストレア:勿論、力ある者と、無い者でここまでの統治がなっているのは、中央の存在あってこそですが

アストレア:私には幾分、あなた方のような勇ましく若い青年達には。この世界は窮屈過ぎるように感じる」



マルボロ:「あぁ…。まぁ、確かに…」



アストレア:「異常体の世界人口は増え過ぎた。その結果、収容施設の空きも不十分。

アストレア:地域そのものもを異常体に支配されてしまった国すらある。

アストレア:現代社会は、まさしく激動の時代に移りつつあります

アストレア:激動にのまれる人種が圧倒的に多い中、激動を起こす側の人間も確かに居る。

アストレア:そう言った人間の目は、何百年経っても変わらないものなんです」



マルボロ:「それが、俺達だってことですか?」



アストレア:「はい。昔、私は私の目の届く範疇で、あらゆる天秤であると誓いました。

アストレア:人らしく在ろうとする事を咎めたくはない。

アストレア:ですが、それが世の歯車を揺るがしかねないのであれば。私はそれを悪とします」



0:庭園



セノ:「曰く、中央はその存在をひた隠しにしていた。意図的に、故意的に、人為的に。

セノ:異常性を発症させる果実。」



0:医務室



マルボロ:「あぁ〜。わかった。」



アストレア:「何がでしょう」



マルボロ:「俺ら今、釘刺されてるんですね」



アストレア:「そういう事になりますね。」



0:アストレアは冷たい瞳でマルボロを見つめた



アストレア:「その上で、お答えを」



0:庭園



セノ:「赫い林檎の存在は中央でもほんのひと握りしか知っている人間は居ない。

セノ:だから、君は特別だ。アレジくん」



0:医務室



マルボロ:「だったら意味ないっすよ。あいつが何かとんでもねぇことしでかしても、俺はあいつに死ぬまでついて行く。

マルボロ:世界の誰に憎まれても、俺だけはあいつの味方だ」



アストレア:「仮定の話に本気になるのも大人気ないというものですが。今の発言は中央統治反逆未遂にも繋がります。

アストレア:ですので、もしもその時がきた場合は

アストレア:私はあなた方を殺しますよ」



マルボロ:「――っ。も、ももっ。勿論。受けてたったらァおい!」



アストレア:「…。」



0:庭園



セノ:「どうか安心して欲しい。林檎を食べた異常体は決まって高ステージだ。

セノ:お望み通り、僕からも、ナンバーズからも、アストレアからも逃げられる。かも、しれない。

セノ:もっとわかりやすく言うなら、マルボロくんを。守ってあげられる、かも、しれない」



0:医務室



アストレア:「…震えながらも、友人の為に強く在ろうとする。

アストレア:やはりアレジ・ロンドンは良い友人を持った。少し、羨ましくも感じます」



マルボロ:「そりゃ俺だって一緒だっ。俺も良いダチ持ったよ!!」



アストレア:「そうですね。仮定の話に付き合って頂き、ありがとうございました。」



マルボロ:「いいえっっ、こちらこそあじゃとごじゃしゃたっっ」



0:庭園



セノ:「決めるのは君だ。アレジくん。僕じゃない。マルボロくんでも、アストレアでも、中央でも、ビットマンでもない。

セノ:君が決めるんだ。アレジ・ロンドン」



アストレア:あれは雛だ。未だ雨の厳しさを知らない。雨に打たれて尚そう在れればと。願うばかりです。



0:



セノ:「最後にもう一度言うよ。決めるのは君だ。アレジ・ロンドン」



アストレア:あとは狐、ですね



アレジ:「ちょっと待ってください。そんなの聞いた事」



セノ:「あるはずないよ、さっきも言ったが、これはこの世でもほんの僅かしか知りえない。僕と、あと数人。そしてアレジ・ロンドン。君だけ」



アレジ:「…何で、そんなことを俺に。」



セノ:「君だから良いと思った

セノ:君が今、力不足を痛感しているから。君一人の力じゃあどうしようも無いから。

セノ:人には人の、限界があるから」



アレジ:「…それを食って、異常体になれって。そう言いたいんですか」



セノ:「そう言ってるだろうさっきから」



アレジ:「そんな事は許されません」



セノ:「許す許さないの話じゃないでしょうよ。このままじゃマルボロくんは死体安置所にまっしぐらだ。

セノ:へぁっ!?まさか見殺しにするの?!」



アレジ:「っ!見殺しとかそういう事じゃないでしょう!俺が異常体になった所で何が変わるってんですか!」



セノ:「少なくとも力は得る!赫い林檎を食べた異常体はステージ5に届く強力な異常性を手に入れるんだ、ステージ5だよ?

セノ:中央の執行部でも数える程しかいないっ、ナンバーズに匹敵するっ。

セノ:つまり君は理不尽に、対抗する不条理を得る!」



アレジ:「俺が執行部に入ったって変わらない!!マルボロは守れない!」



セノ:「どうしてそこまで中央に拘るのさ」



アレジ:「……はい?」



セノ:「法の中でしか生きられないのが人なら、法の外でしか生きられないのが異常体だ。

セノ:最も、これはあくまでも提案のひとつだけれど

セノ:この世界はおかしいと気づける君だから、こういう話をしている。

セノ:おかしい事はおかしいと、そう言える君だからだ」



0:セノはアレジの手を握る



セノ:「君には意思がある。

セノ:手に持ったナイフは、身を守る為にあるんじゃない。突き付けて、脅して、切る。その為にあるんだ」



アレジ:「…」



セノ:「勿論、林檎のリスキーは凄まじい。様々な拒否反応が出るだろう。

セノ:それを踏まえてマルボロくんを守る為に、中央を敵に回すことは怖い?」



アレジ:「…セノさんには、居ますか。どんなつまらない話でも、つまらないって一蹴して笑ってくれるやつが」



セノ:「いいや、いないねぇ」



アレジ:「だったら、俺が困ってる時、必ず何も言わないで手を取ってくれるやつ、いますか。

アレジ:そのあと笑って茶化して、飯誘ってくれるやつ。いますか」



セノ:「いいや、いない」



アレジ:「……こんなやつ、人生で何人と出会えるんでしょう」



セノ:「さあ」



アレジ:「…あいつは。親友っていうやつだと思うんです」



0:アレジは拳をにぎりしめる



アレジ:「だったら俺は。世界を敵に回しても構わない。」



セノ:ああ、やっぱり、君だ。君たちみたいなやつなんだよ。僕が好きなのは



アレジ:「そう。思いました。」



セノ:ご覧。とっても、良い芽だろう



0:――――――――――――――



ビットマン:1995年。12月4日



ビットマン:アレジ・ロンドンに、中央統治反逆の容疑がかかった。



0:1995年12月4日。雨。局長室。



マルボロ:「……。」



アストレア:「手隙の執行部職員に捜索させていますが、未だ足取りは掴めていません。」



ビットマン:「ごほっ、…すまない、私のせいだ。私が君たちに、ごほっ、ごほっ」



アストレア:「ビットマン局長、無理をしないで下さい。あとは私達が」



ビットマン:「すまないな」



マルボロ:「俺が行きます」



ビットマン:「駄目だ。完治までにあと半月ほどかかる。傷が開くぞ」



マルボロ:「構いません。アレジは」



ビットマン:「許可しないと言っているんだ。命令を遵守しろ、マルボロ・セルベルト」



マルボロ:「アレジは俺の親友なんです!たった一人のっ。

マルボロ:もしもこれでアレジに何かあって、俺が寝たきりだったってんじゃあ、この先死んでも死にきれない!

マルボロ:お願いします、局長、アレジは俺が連れ戻す!何があっても!」



ビットマン:「だが…」



アストレア:「なりません。私は言いましたよ。そういう時が来たら、私は人を殺すと。私が出ます」



ビットマン:「……」



アストレア:「構いませんね。ビットマン局長」



マルボロ:「俺を連れていけ。そうじゃなきゃ、この場であんたを殺すぞ。ビットマン」



ビットマン:「ほぉ。」



アストレア:「今の発言、中央統治反逆未遂と捉えますが」



ビットマン:「マルボロ・セルベルト。発言を取り消せ」



マルボロ:「断ります。俺を派遣しないなら、この場であんたを殺す。もちろん、貴方だってそうだ。アストレアさん」



アストレア:「…正気、ですか」



マルボロ:「俺が弱い強いって話じゃねぇよ。俺が、今。そういうつもりだっつー話だ。」



アストレア:「悲しい事ですね。」



ビットマン:「セルベルトっ!」



マルボロ:「…」



ビットマン:「発言を取り消せ。命令だ。」



マルボロ:「あんたを殺すんだ。命令に従う義理はねぇな。あんたが、俺の要求を飲むべきだ」



ビットマン:「最後だ。マルボロ・セルベルト。」



マルボロ:「…」



ビットマン:「発言を取り消せ。私に、部下を殺させるな。そういう命令をさせるな。頼む」



セノ:「お邪魔します〜っと。情報局特務監査役、セノ・アキラです」



アストレア:「セノ…?」



セノ:「アレジ・ロンドン四等監察官の居場所が割れたよ。」



マルボロ:「っ!本当ですか!」



セノ:「うん。場所は中央政府管轄、フィレンツェ地区地下教会。B12の4

セノ:赫い林檎の保管場所だ」



アストレア:「…!」



セノ:「端的に言うと、アレジくんはなる気だよ。異常体に」



マルボロ:「―――。」



0:マルボロは部屋を出ようとする



ビットマン:「おい!セルベルト!!動くな!」



マルボロ:「断ります」



0:アストレアが立ち塞がる



アストレア:「監督武官命令です。マルボロ・セルベルト。そこから動いてはいけません」



セノ:「あー。修羅場って感じ?」



マルボロ:「…。なんかのクソつまんねー講義で聞いたことがある。異常性ってのは、そいつが持つ心理的特徴を大きく反映するって」



アストレア:「…」



マルボロ:「俺がこの異常性を持ったのはきっと、馬鹿みたいに真っ直ぐ、周りを置いて歩いていくあいつと一緒に歩く為だ。」



ビットマン:「セルベルト、最後だ。動くな」



マルボロ:「そんで。あいつの傍に、誰よりも速く駆け付ける為だ。」



0:マルボロは体勢を変える



セノ:「ははっ」



ビットマン:「セルベルト!!」



アストレア:「LANCE―――

マルボロ:「AXXELLアクセルっ!!」



0:マルボロは姿を消す



ビットマン:「…。アステル監督武官、局長室を。壊さないで欲しいな」



アストレア:「すみません。」



セノ:「これは。あれだね?アレジ・ロンドンに引き続き、マルボロ・セルベルトも、反逆かな」



アストレア:「…。私も出ます。」



ビットマン:「既に幾人か派遣した。君が出るほどでも」



アストレア:「ビットマン。私が、出ます。」



ビットマン:「…頼んだ。」



0:アストレア。退室



セノ:「…やけに殺気立ってるねぇ、みんな」



ビットマン:「…ああ。皆、子供だ」



セノ:「死にかけは言うことが違うねぇ」



ビットマン:「何を言ってるんだ、私だって、子供だよ。勿論、君もな」



セノ:「ははっ、難儀だね」



0:フィレンツェ歴史地区。地下



アレジ:(M)階段を、降りる。



アレジ:(M)暗く、深く、長く、底は見えない。螺旋階段はひとつ段を踏み下ろす毎に音を軋ませる。



アレジ:(M)階段を、踏み、降りる。階段を、踏み、下がる。階段を、踏み。落ちる。階段を――



アレジ:(M)踏み。外す。



アレジ:「…くそ、足場が悪いし暗い。何処にあるんだ。」



マルボロ:「AXXELLアクセルっ。げほっ、ぐっ」



アレジ:「マルボロ…?」



マルボロ:「アレジ。お前、なにしてんだ」



アレジ:「なんでここに居るんだ」



マルボロ:「俺の質問に答えろ。こんな所で何してるんだ。任務じゃないだろう、それは」



アレジ:「ち、調査だよ。調査。この辺りで怪しい動きをしてる異常体がいるって聞いてさ」



マルボロ:「じゃあなんで単独行動なんだ」



アレジ:「マルボロが、怪我してたから、無理させられないと思って」



マルボロ:「嘘だな。何年友達やってると思ってる。馬鹿にすんな」



アレジ:「…林檎、を」



マルボロ:「…」



アレジ:「…強い異常性をさ、引き出してくれる物があるんだよ」



マルボロ:「それがなんだ」



アレジ:「俺には、力が無い、このままじゃ、お前は酷い目にあう。どうしようも無いんだ、これしか。ない…

アレジ:だから…!」



0:アレジはマルボロの肩を掴む



アレジ:「頼む…。黙っててくれ…!」



マルボロ:「…なんて顔してやがる。なあ。そりゃやっちゃダメなことしてる顔だよな。

マルボロ:そんな顔、俺に(向けるんじゃ)」



アレジ:(食い気味に)「分かってる!!分かってるんだよ、こんな事が間違ってる事くらい。

アレジ:でも、こうでもしないとお前を守れない」



マルボロ:「そんな事いつ頼んだ。お前は昔っからそうだ、自分で何もかも抱え込みやがって」



アレジ:「仕方が無いだろ…!おかしいのは世界の方だ!馬鹿な世界に対抗するなら、馬鹿になるしかない!」



マルボロ:「なあアレジ、なにがあったって俺はお前の味方でいてやる。話してくれ、どうしてそうなった?どうして、もっと俺を」



アレジ:「うるさいなぁ…。黙っててくれよ!俺がやらなきゃダメなんだっ。俺がっ

アレジ:俺がやらなきゃだめなんだよっ」



マルボロ:「…!なんだよそれっ」



アストレア:(被せて)「LANCEランス



0:二人の目の前に大槍が突き刺さる



アレジ:「っ!この異常性、またお前か…!アストレア・アステル…!」



マルボロ:「アストレアさん…っ。ちょっと待ってください!」



アストレア:「アレジ・ロンドン。貴方を、中央統治反逆の罪で、執行対象とします。」



マルボロ:「くそ…!どいつもこいつもっ、アレジ、逃げるぞ!!」



アレジ:「…」



マルボロ:「聞いてんのか!アレジ!!」



アストレア:嗚呼。



アレジ:「こっちだ。こっちに抜け道がある」



アストレア:やはり。



マルボロ:「分かった!!AXXELLアクセル!」



アストレア:あれは雛だ。雨風の厳しさを、未だ知らない。



アストレア:そっちに行ってはいけない。そこは、険しすぎる



0:場面転換



マルボロ:「…げほっ。あぁ〜くそ、ここ、どこだ。わけも分からず飛んできたから分からん」



アレジ:「……」



マルボロ:「湿気が凄い、見た感じさっきよりも地下に潜ったみたいだが、本当にこっちであってんのか、アレジ?」



アレジ:「……」



マルボロ:「アレジ…。お前」



0:アレジは林檎を齧っている



マルボロ:「何を、「食ってる」…?」



アレジ:「……あ。」



0:林檎を落とす



マルボロ:「言えよ。何食ったんだ、お前」



アレジ:「…ごめん」



マルボロ:「ごめんじゃ、ねぇだろ…!てめぇさっきの見ただろ!?

マルボロ:アストレアさんが殺しに来たんだよ!!俺らを!

マルボロ:それを食っちまったらもう後に引けねぇって分かってんだろうが!」



アレジ:「ごめん」



マルボロ:「お前なぁ…。俺を守りたいって言うなら、そんな方法じゃなくたって、あっただろ、他になにか!!

マルボロ:そんなに死にてぇのかてめぇは!」



アストレア:「やはり駄目、でしたか」



マルボロ:「何とか言えよ、アレジ…!」



アレジ:あそこには居るのは、誰だろう。意識が朦朧として来た。女の人だ。マルボロがずっと俺に何か叫んでる、怒ってる、のか



アストレア:「…残念です、アレジ・ロンドン」



マルボロ:「…お前は本当に馬鹿だ、本当に、本当に、全部自分でやろうとしやがって、この馬鹿野郎」



アレジ:耳鳴りが凄いな、うるさい。気持ち悪い。頭が痛い



アストレア:「LANCEランス



アレジ:ああ、あれ。なんでここに居るんだっけ。おかしいな、何もかも、どうでもよくなって、きた



マルボロ:「…たまには、さぁ…。俺を、頼れ…!」



アレジ:何かが飛んでくる。槍?危ないな、当たったら死ぬでしょ。走って避けても間に合わない。誰でもいい、なんでも。



アストレア:「どうか、安らかに」



アレジ:僕じゃない誰かに死んでもらわないと



アレジ:『SCRAMBLEスクランブル



マルボロ:「俺は、お前の親友だから――

0:――――――――――――――――――

アレジ:…?俺は何をした。何だろう?マルボロと、俺の場所が入れ替わってる。うん、多分そうだ、だってほら、俺に向かって飛んできたあの槍は

アレジ:マルボロの頭を砕いてる

アストレア:「異常性…!アレジ・ロンドン、あなたと言う人は…!」



セノ:「ぷっ!あはははっ。やあやあ!楽しそうなことやってるじゃない!混ぜてよ」



アストレア:「セノ…!」



セノ:「ねぇ。アレジくん。今どんな気持ち?彼を救う為に得た力で、彼を殺した。今、どんな気持ちなの?」



アレジ:「なあ。聞いてた話と、違うじゃないか」



セノ:「なにが」



アレジ:「マルボロは、助かるんだろ。じゃあなんで、マルボロが死んでるんだよ、なぁおい、セノさん!」



アストレア:「…!」



セノ:「ぷっ。冗談キツイって!!誰がマルボロくんを殺したのさ!

セノ:ねぇ、ねぇねぇねぇ!誰だよ!言ってみなよ!!アストレア?僕??ねぇ!誰が殺したんだよ、君の親友を!」



アレジ:誰が?誰だ。誰が殺したんだ。アストレアか?セノさんか?誰だよ。なあ。誰が誰が誰が



アレジ:「ははっ。

アレジ:―――「僕」か」



セノ:「ぷっ」



アレジ:「は、はははっ」



セノ:「ははっ」



アレジ:「ははははははははははははは、ははははははははっ!!ははははははははは!!」



セノ:「あーっはははははは!!ひゃ〜!ははははははははははっ!」



アレジ:「なんだよ!!なにが、したかったんだ僕は!!結局、死んでるじゃん!!

アレジ:僕が、馬鹿だから!!死んじゃったよ!!マルボロが!!僕のせいで!!はは、はははっ!」



セノ:「異常性の暴発、ここまで来ると異常性に乗っ取られるの方が表現が近いなぁ!

セノ:いやぁ〜面白い!面白い面白い!好きだなぁ、君見たいなやつ」



アストレア:「セノ。答えなさい。あなたが仕組んだのですか。これを…!」



セノ:「仕組んだだなんて反応に困るな。

セノ:最も、ここの場所を教えて、ロックを全て解除して、警備員を殺して、警報機を壊したのも僕だけれど。

セノ:それでも僕は決して無理やり彼に林檎を食わせたわけじゃない!

セノ:彼が、彼の意思で食べたんだ!その結果、マルボロくんは死んでしまったけれど。

セノ:ああ、因みにまだだよアレジくん。君の異常性の真髄は、ここからだ」



アストレア:「どういう意味ですか、それは」



セノ:「黙って見てなよ。大陸、中央、あの街でも中々お目にかからない、面白いものが見れる」



アレジ:もう、何も考えたくない、ただ分かるのは、目の前の死体から首が生え揃っていく光景だ



マルボロ:「…ぅう〜」



アレジ:はは。なんだ。元気じゃん



マルボロ:「はぁ〜っ!びっくりしたビックリした!死ぬかと思ったよ、マジで!いや死んだけど!」



アストレア:「…なにを、みている。私は」



セノ:「ふんふんふんふん。こいつぁ大豊作!

セノ:あんな可愛い冗談に騙されてこんな事までやっちゃったアレジくんの為にわかりやすく言ってあげるとね!」



アレジ:「なに、が」



セノ:「君は、彼の「体の状態の時間」を「移動」させたんだ。」



アレジ:「ぇ…?」



セノ:「言ったろう?

セノ:林檎を食べると非常に強力な異常体になるって

セノ:異常性は面白いよ。こういった哲学的な能力定義だからこそ様々な応用と、解釈が可能だ」



アストレア:「貴方はどこまでも…」



セノ:「僕は悪くないよ、アレジ・ロンドンという人物がもっと「強く在れば」こんな事にはなり得なかったのだからね!」



アストレア:(話を聞かない)「定義収束 『鋼』。」



0:――――『鋼』―――――



セノ:「お…?出たね?対象が死ぬまで出られない固有領域、「鋼」。久しぶりに見たなぁ、さっすがステージ6のアストレアさん!



セノ:本当にめちゃくちゃだっ。すごいすごいっ



セノ:凄いからここから出しておくれよーっ。」



アレジ:なんなんだこの人たちは。なんの話しをしてるんだ。本当に心底、どうでもいい。



アストレア:「私は、そうですね、数百年生きて来ましたが貴方のような方をなんと表現すればいいのか分かりません。

アストレア:怒りと、失望で泣いてしまいそうな。そんな感情です」



アレジ:うるさいなぁ、もう。本当にうるさい



セノ:「ねぇそんな事より顔を合わせて会話しようよ、ここは不気味だしその話に興味が無い」



アストレア:「そうですか。やはり貴方のそれは私には到底理解が及ばない。」



アレジ:どこかへ、行きたい、ここじゃない、どこかへ。どこでもいい



セノ:「そうそうそう!あの時からこうしてればよかったんだよ!っと!」



0:セノはナイフを投げるとアストレアは動きを止める



セノ:「ふぅ、ただいま」



アストレア:「…貴方に負けることはない。とは言いきれませんが、やはり私では貴方を殺す事は不可能のようですね。」



アレジ:「うるせぇなぁもう!!黙ってろ!!」



アストレア:「…っ!」



マルボロ:「AXXELLアクセルっ」



0:マルボロはアストレアを蹴りつける



アストレア:「つっぅ。マルボロ・セルベルト…!」



マルボロ:「今だァ!逃げるぞアレジぃ!」



セノ:「あぁんらっきー!僕も僕も!」



アストレア:「セノ!待ちなさい!」



0:セノはアレジの元へ駆け寄る



セノ:「いいや待たない、最強とサシでやり合うつもりは無いしね!さぁアレジくん。好きなところに飛んじゃってくれ」



アストレア:「LANCEランスっ」



アレジ:「SCRAMBLEスクランブル



0:三人はその場から消える



アストレア:「……まんまと、してやられましたか。

アストレア:初めてです。ここまで誰かを殺したいと思ってしまったのは。」



0:アストレアは月を眺めた



アストレア:「聖女の名が泣いてしまいますね。マーリーン」



0:場面転換



0:どこともしれない場所



アレジ:「…ん」



セノ:「やあ。アレジくん。おはよう。落ち着いたかい」



アレジ:「…うん。酷く冷静だ」



マルボロ:「死んだかと思ったぞマジでよォ、まぁ生きてて何より」



アレジ:「…マルボロ」



マルボロ:「ああ、なんだ。」



アレジ:雰囲気が違う。マルボロの顔で、マルボロの声で、違う人が喋っている。



アレジ:それでも、やっぱりどこか変わらない。



セノ:「君の「転移」の異常性が、どこまでマルボロくんの脳回路に届いたかはさておき



セノ:時期に君も林檎の影響で内面から蝕まれる。



セノ:最後に祈っておくことはあるかい?それが恐らく、人として願う最後の感情だろう」



アレジ:「…」



セノ:「さあっ。言ってご覧よっ。君はどうしようと思ったっ!?その力を得て!何をするべきだと思う!?

セノ:あんな大罪を冒した君がたどれる先はどこにあると思う!?」



アレジ:「…っ」



0:マルボロはセノを蹴りつける



セノ:「ぶごっ」



マルボロ:「うるせーよおっさん。」



アレジ:「…マルボロ」



マルボロ:「こんなつまんねー口上に付き合うなよアレジ。お前が決めろ。

マルボロ:重要なのはお前が何を思ったかだ。

マルボロ:安心しろ。俺だけは、お前の味方だ。死ぬまでついてってやる。

マルボロ:だから、お前が決めろ」



アレジ:「…分かったのは。なにもかも、間違ってることだけだった。」



セノ:「…は。」



マルボロ:「…それで?」



アレジ:「腐ってる。根っこじゃない。土が腐ってるんだ」



マルボロ:「…おう。」



アレジ:「…どいつも、こいつも」



アレジ:「有罪だ」



セノ:やっぱり、良い芽だ



マルボロ:「――分かった。最後まで、付き添ってやる。だから」



0:マルボロはアレジの顔を叩く



マルボロ:「ちゃんと笑え。」



アレジ:「…うん。僕は、笑っているよ。マルボロ」



0:―――――――――――――





0:『マルボロOUT。グローザIN』





0:『某日。ベネツィア南西。』





セノ:(M)人類の原罪は、林檎を食べたことだという



0:『ロック・ストーン収容施設』



アレジ:やあ、こんばんは。



グローザ:誰だアンタ



セノ:(M)この世は腐っていると彼は言った。



アレジ:はっ!私は当308号室専属看守、アレジ・アンドレイでありますっ



グローザ:悪いが、私はあまり冗談の通じるタチじゃあない。もう一度聞く、アンタは誰だ



アレジ:流石の迫力だね、アンダンテ・S・グローザ



グローザ:ラストチャンスだ。アンドレイ。お前は――



アレジ:僕はアレジ・ロンドン。



セノ:(M)権利に溺れるもの。権威に貪欲なもの。人を蹴落とすもの。目を背けるもの。もしくは、人そのもの。



ビットマン:報告だ。赤い林檎がロック・ストーン収容施設を強襲した。



アストレア:…また、彼ですか。



ビットマン:ああ、またあいつだ。今すぐに執行官を数名派遣する。



0:(アストレアOUT。マルボロIN。)



ビットマン:ロック・ストーン収容施設にて赤い林檎主犯、アレジ・ロンドンの姿を確認した。警戒ステージは5。各員、その拘束、処分に尽力する様。



ビットマン:以上。命令を遵守しろ。



セノ:(M)だから、どうやら彼らは世界にナイフを突きつけたらしい。



マルボロ:お?やっと帰ってきたかよ、アレジ



アレジ:うん。思いのほか頑固だったよ



グローザ:…。



セノ:(M)それは感情であり、人間性であり。或いは



マルボロ:バヘミアン、ドリアード、リベール、んでここ、ロック・ストーンは墜した。次はどこだっけか



アレジ:アーヘンだよ。勿論、次は君も参加だ



グローザ:そうか。好きにしろ



セノ:(M)純粋な悪意



マルボロ:そんじゃあ行くかっ、アレジ



アレジ:うん。



0:『アレジは両手を空に掲げた』



アレジ:さあ。どいつもこいつも有罪だぁっ。



セノ:(M)端的に言うのであれば、それが林檎だった。




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