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1.6 黒い王

「人よ。わしを何処へ連れて来た?」


黒い狼は、目の前に立っていた人間の手をなめた瞬間、森ではなく、真っ白な空間に男と二人だけになっている事に少し驚いた。


「あ、よかった。考えていることがわかる。そのまま思うだけでわかるから、とにかくすまない。俺の血をなめたことで、一瞬だけ俺の力場…まあ俺の作った空間に召喚している状態で、外との時間は止まっているから安心してくれ」


あたふたと早口で説明する男。

男の言葉を聞いて落ち着きを取り戻し、

黒い狼は立ち上がった。


「だいぶ特殊な話だな。人よ、名は何という」

「左之助だ。あなたは?」

「我は狼の王。名はない。強者として生まれ、王として生き、王として死ぬ者だ」

「……そうか。では王よ。唐突で申し訳ないが、俺の仲間になってくれないか」


黒い狼はそれを聞いて、左之助に向かって鼻息を吹きかけると、左之助の髪の毛が揺れた。


「それはできん。我にはするべきことがある」

「するべきこと?」

「我はこの森を統べる者として、荒れてしまったこの森の安寧を取り戻さなければならぬ」

「何かあったのか?」

「魔獣暴走だ」

「魔獣暴走?」

「魔獣から漏れる魔力に魅かれた大量の獣が、巨大な群れとなって移動する現象だ」


左之助の頭の中で、分身が見た街を襲う獣たちの姿を思い出す。


(あれが魔獣暴走か)


「つい最近、一匹の黒い猿がこの森を通り西に向かった。それに魅かれた獣どもがどんどん西に向けて動き、我の配下も数匹消えた。森もだいぶ荒れている。王としては看破できん」


王は苛立ち、威嚇するように唸る。

左之助は何となく王の鼻のあたりを撫でると、王はすんとした顔に戻る。


「王なら、配下がいなくなって大変じゃないか」


王は首を横に振った。


「魔獣暴走は我々にとって悪いことだけではない。大量の魔物と共に移動できることで、森の主たちと争わず遠くまで行くことでき、生息域を広げることができる。新たな出会いもあろう。まあ、生きていればだがな」

「……なるほど」

「左之助は、西に行くか?」


唐突の質問に少し左之助が驚いた。


「まあ、そのつもりだが」

「では、我は配下を一人お主に貸そう。共に西に向かった者たちがどうなったか調べてくれるだけで良い」


左之助は腕を組んで考える。


「難しいのか?左之助よ」

「……いや、わかりづらい話で申し訳ないんだが、もう、その群れは西の街を襲い、だいぶ人に殺されてしまっている」


王の話を整理し、左之助の分身が経験した町を襲う獣たちの姿を考えると、西に向かった魔獣暴走は街に到達し、人々に退治されている。


「それは本当か?なぜわかる」


王がそう言うと同時に、二人は力場から出され、再び森の中に左之助と王は立っていた。


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