表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゆく年くる年

ゆく年くる年2

作者: 御荘庵(黒瀬みさが)

 丑年がもうすぐ終わる。


 俺の家ではその年の干支のヤツを迎えるという風習があり、大晦日の夜は交代のために玄関を開け放っている。

 交代は通常、除夜の鐘が鳴り終わるまでに行われるが、前年はせっかちなねずみが除夜の鐘の鳴り始めとともに交代を待たずに去り、丑(俺はうっしーと呼んでいる)は最後の鐘の音が消える頃やって来た。


 今年は除夜の鐘が鳴る前から、すでに玄関前に横たわったヤツが面倒臭そうにこっちを見ていた。


 「ワイは可愛いネコちゃんやぞ」


 ……いや、お前どう見てもトラだろ。


 玄関前の声を聞きつけて、うっしーがやって来た。

 「あれぇー、お早いですねぇー」

 おっとりした声で語り掛けるうっしーに、自称ネコちゃんが言い放った。


 「お前、旨そうだなー。おっ、家主、こいつの腹の下で火ぃ焚いて、バーベキューしようぜ」


 微かに波乱の予感を感じた俺はポケットに手を突っ込み、「ネコちゃん」の前にブツを放り投げた。


 「ほわあああ」


 「ネコちゃん」が悶えた。

 マタタビは何てネコ科に効くのだろう。

 俺は感心しながら、うっしーに一年間世話になった感謝を述べ、送り出しの準備を始めた。


 「えー、私は急ぎませんのでぇー。来年のお話をしましょうかぁー」


 人面丑はおっとり話し始めたが、俺は尻を押して玄関から送り出した。

 丑は何やら言いながら、ゆっくりと遠ざかって行った。

 交代終了。めでたしめでたし。


 さて、あとは玄関前で悶えまくっているヤツを家に招かねばならない。

 丑より図体はデカくないが、引きずり込むのは面倒そうだ。


 「家の中にはマタタビがまだまだあるぞー」

 「マジかー、行く行く」

 マタタビに酔いまくったトラが身を起こす。


 チラと見えた尻尾の先が二つに割れているような気がしたが、まあ気のせいだろう。

 ゴキゲンな足取りのトラを、俺は家へと招き入れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ