聖女、ザイーネを確保する
名前 :ザイーネ
攻撃力:5+100
防御力:4+100
速さ :2+100
魔力 :14,666
スキル:『滅炎』 炎属性魔術の威力が上がる
名前 :ビフリート
攻撃力:51,821
防御力:50,980
速さ :3,908
魔力 :37,475
スキル:『炎の鎧』 すべてのダメージを激減する
『炎生』 炎の鎧がある時、ダメージを回復する
無謀です。自殺行為です。
魔力値がすべてじゃないけど、同属性でこのレベルの魔族に挑む時点で正気じゃない。
どこを間違えたらそんな判断に至るんだろう。
自分に絶対的な自信を持っていたようだけど、今はそんな様子もない。
主の消失により、魔物の巣が崩壊する様を背景に私はザイーネを観察した。
「た、助かったよ。君がいなかったら、どうなっていたか……」
「本当ですよ。ところであなたの名前は?」
「クイントだ」
堂々と偽名をかまして逃げる気でいる。
ザイーネの正体についても、すでに割れているんだけどね。
実家のほうもすでに騎士団の手の内だし、逃げ場なんかどこにもない。
そうとも知らずにザイーネは怯えた振りをして、機会を伺っていた。目線が騎士団のほうに向いて隙あらばという感じだ。
「彼らは王国騎士団です。今回の討伐に協力していただく予定でした」
「そうなんだ。すごいなぁ、騎士団を引き連れているなんて……」
「ひとまずあなたを保護します。ここからならカドイナの街が近いので、そちらで休みましょう」
「よかった……助かった……」
この白々しい演技で騙し通せると思っている辺り、まだ子どもだ。いや、私より年上なんだけどさ。
「ソア殿、恐れ入りました。我々騎士団、しかとその活躍を目に焼き付けました」
「ありがとうございます、ラドリー騎士団長。これで少しは彼らに私の実力を認めていただけたのでしょうか」
「……言葉を失っているようですな」
確かにさっきから静かだ。
あまりに現実離れした事態に、頭の中で処理が追いつかないのかもしれない。皆、黙って粛々と移動している。
無駄に部隊を引き連れているように見えるけど、これからこの人達には各街や村の警備についてもらう。
ハンターズの勢いをここで止めると共に、国内の防衛を一気に強化するのが狙いだ。
その為に、ザイードには然るべき裁きを受けてもらう。カドイナの街で、すべての準備は整っていた。問題は他のメンバーの所在かな。
「もう少しの辛抱ですよ。カドイナの街に着いたら、ゆっくりと休んで下さい」
「そうさせてもらうよ」
少し表情が緩んだ。油断してくれるとありがたい。もちろんゆっくりと休ませるつもりはないからね。
本当は炎の魔人討伐の後で噂を流しておびき寄せるつもりだったけど、好都合だった。まさか鉢合わせになるなんてね。
「カドイナの街は自警団に支配されてるって聞いたけど?」
「それはもう解決しましたよ。ご安心ください。今は屈強な冒険者や騎士達に守られています」
「へぇ、意外だね」
「意外ですか? いつまでも同じ状況が続くとは限りません。例えハンターズのような人達がいたとしても、です」
皮肉を込めたつもりだ。
このザイーネは調べた限り、世の中を完全に舐めている。何でも思い通りになったし、これからもそうだと信じているんだろうな。
残念ながら、悪が栄え続けた試しなんてない。特にこの国ではね。
ザイーネに通じたのか、少しだけ私を睨んだ気がした。
* * *
「ちょっとグスカス……本当にやるの?」
「急げよ。チンタラしてんじゃねぇ」
ザイーネを放置して逃げる途中、大部隊が近づいているのが見えた。
オレの直感だが、あれは炎の魔人討伐の為に編成された部隊だ。だとしたら、鉢合わせになるのはまずい。
ザイーネがくたばってくれりゃ御の字だが、万が一にでも奴らと接触されたんならマジでまずい。
プライドが高いザイーネがどうするかはまったくわかんねぇ。
だけどもし、奴からオレ達の情報が漏れたらどうなる。
「理屈はわかったけどさぁ。カドイナの街に入るとか、やばくない? それより遠くに逃げたほうがいいって」
「食い物がどれだけ残ってるか確かめろよ。カドイナ以外の街に行くだけ残ってるか?」
「ゲッ! マジでほとんどないじゃん! もっとあったはずだけど?!」
「アレだ、アレ」
オレが親指でキャランを指す。奴が食い物に手をつけちまっていた。
「うめぇうめぇ! ギャハハハハ!」
「キャラン! お前、なに勝手に食ってんのよ! それなくなったら、これからどうすんだっつってんだよ!」
「うるせーなぁ! ギャハハハ!」
「ぶっ殺す!」
「よせ」
オレだって殺してやりてえよ。
だけどあの馬鹿の幻術がなくなりゃ、逃走率も生存率も極端に下がる。
イラつくが、こういう時こそ冷静にならないとな。
「そいつを利用すりゃ、カドイナの街にだって入れるかもしれねぇ。中に入って手早く補給を済ませるだけでいいんだ」
「危なすぎだし……」
「おいおい、オレ達が求めていたのはこれじゃねえのか? ザイーネじゃねえが、ゲームは楽しまねぇとな」
「ま、それもそうか」
気性の激しい女だがこいつも大概、いい加減に生きてきただけはある。
楽しけりゃいい。オレもこいつもザイーネもキャランも、そこは同じだ。
でなけりゃ親父の元でぬくぬくしていたさ。
「ザイーネなんか放っておいてさ。私達だけで楽しもーよ?」
「あぁ、今までどうにかなってきたんだ。これからもどうにかなるさ」
それにオレにはこいつがある。
どんな奴だって二丁の魔導銃で頭をぶち抜きゃいいんだ。
いつかの騎士二人には油断したが、次はねぇよ。
あぁー、早くぶっ放してぇな。うずく、うずく。
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