隣の席
「霧斗あっち行ってキモイ」
女の声が響く。霧斗と呼ばれた人物はそそくさとその場を去った。
女の名前は鷹野梨華。梨華は超がつくほどの美少女だ。髪はあまり長くなく耳に耳のあたりまでだ。身長は百六十六ありクラスの中で一番ちっこい。だから愛嬌があるのだが霧斗だけには冷たいのだ。
そうゆう霧斗は何なのかというとクラスで一番影が薄い上に引きこもりだ。本名篠宮霧斗。八歳の時に事故で両親をなくした。それ以降3歳年下の妹の面倒を見た。興味がなかった料理をしたり洗濯をしたりしてきた。よくぼーっと外を眺めたり本を読んでいる。宇宙や地球の歴史、神話などに詳しい。これは余談なのだが霧斗は動画投稿サイトに料理の動画を投稿し続けておりフォロワーは一億人を越えている。いわば凄く人気だ。しかし学校では本を読んだりしているため友達は一人しかいない。
「おーい霧斗じゃねぇか。席どうだったか?」
帰ろうとしたとき一人の男に声をかけられた。
その男の名前は野口瞬。かつて梨華に告白し見事玉砕した。瞬にも3歳年下の妹がいる。
「なんだ瞬か、ラッキーだったよ。一番後ろの窓際の席だった。ちょうど外が眺められるし」
霧斗は表情をほとんど変えず単調に答えた。そんな霧斗を見て瞬は頭をかきながら言った。
「ちげぇよ。隣の席、梨華ちゃんだろ?超ラッキーじゃねぇか」
「鷹野さんはどうせ俺には冷たいし関係ないよ。それじゃ妹の世話があるから」
そういって霧斗は去っていった。その様子を陰ながら見ていた梨華は心に決めたのだった。
必ず霧斗を惚れさせて見せると。そのためには対応から変えなければならない。梨華はどういった対応だったらいいかと家に帰って調べるのでるのであった。
翌日、朝一で学校にきていた霧斗は宇宙についての本を広げると熱心に読み始めた。
「霧斗くん、おはよう…この二学期よろしくね」
急に梨華の声がしたことで霧斗は少し驚いたがなんらあわてる様子もなく素っ気ない返事で返した。
「鷹野さんか。ん、おはようございます」
「なんで敬語なの?」
「だってはなしたことないし」
「ならもう話したから敬語じゃないね」
「わかった。鷹野さん」
「まずはその鷹野さんというのをやめようか。名前で呼んで」
「わかった。じゃ宜しく、梨華」
そういった会話をしながらも霧斗はなにげに本を読み進めていくが内心では驚いていた。昨日まであんなに冷たかった梨華が別人のように霧斗に接触してきたからだ。
一方梨華はというといきなり梨華と呼び捨てでいわれたことで心がドキッとなった。