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第三話 霊玉守護者(たまもり)

またも説明回です

本日五話投稿します

このお話は四話目です

 白露(はくろ)の大きな身体に抱きつく。

 やわらかな毛が頬をなでる。あたたかな体温がじんわりと自分の身体に沁みてくる。

 白露に抱きつくと、それだけで(こう)は安心して幸せいっぱいになってしまうのだ。


「霊力は安定しているようね」

 大きな顔を近づけ、額と額をぴとりとくっつけて白露が言う。

 もふもふの毛がくすぐったくてたまらないが、それ以上に甘えられるのがうれしくてじっとする。

 祖父母には「もう子供扱いしないでよ!」と言ってしまうが、白露にはまだまだ甘えたいのだ。


「おれ、背も伸びたし、体力もついたんだよ! 霊力コントロールだって、前よりもっと上手くなったんだよ!」

 前に会って三ヶ月しか経っていないので、実際はそう変化ないだろうが、白露に会うとつい大口をたたいてしまう。


「ほんとうね。えらいわね。晃」

 褒められれて頬にすりすりと頬ずりをされる。うれしくて誇らしくて、むふー!と鼻息がもれてしまう。


「じゃあ、どのくらいコントロールが上手になったか、見せてもらおうかしら」

 白露の目がいたずらっぽく光る。

「うん!」

 返事をすると晃は抱き着いていた白露から離れ、ぐっと拳を握る。すぐに白露が周囲に結界を展開する。これで多少は何があっても大丈夫だ。


 開いた左の手のひらには、ピンポン玉くらいの大きさの珠があった。


 外は透明で、中は炎がゆらめいているように紅い。珠の表面には赤い文字で『火』と書かれている。


 晃は手のひらに乗せた珠を白露に見せる。少しずつ霊力を込めていくと、中の炎がゆらゆらと揺れる。

 やがて炎は大きくなり、晃の手を包む。それでも晃も白露も平然としている。


「じゃあ、いくよー」

 一言告げて、晃が左手の炎を操る。大きくしたり小さくしたり。いくつもの小さな火の玉を出してお手玉のように投げてみたり。長い炎を出してくるくると巻き取ったり。炎をどれだけ操っても、山の木の枝一本、地面の落ち葉一枚燃えることはなく、晃の霊力も安定したままだ。


「すごいわ! 晃。ここまでコントロールできてるなんて!」

 白露に褒められ、むふふーと喜ぶ晃。炎がうれしそうにくるくると晃を包む。


「もう立派な『霊玉守護者(たまもり)』ね」




 物心つく前から、眠る前にいつも聞いた、昔話。

 白露のふかふかのおなかにもたれ、優しく紡がれる話を聞く。




 むかあし、むかし。

 とても霊力の強い男がおりました。


 男は「霊力の強い自分こそが王様にふさわしい」と、いって、たくさんの妖を引き連れて、(みやこ)の王様のところに行きました。

 ところが、それに気づいた王様の部下に止められ、殺されてしまいました。


 男は「憎い」「うらめしい」と苦しんで死にました。

 男の霊力はとても大きかったので、死んだその地が力を得て『()』になろうとしていました。

 憎しみや恨みといった負の気持ちからできる『場』は、妖や悪霊を生み、集め、災厄を起こす原因になってしまいます。


 そこにたまたま通りかかったお姫様が、『場』になる前に男を封じることにしました。


 ところが、男の霊力はとてもとても大きかったので、お姫様でもひとつに封じることができません。

 そこでお姫様は男の魂はその地に封じ、男の霊力を五つに分けて、都のあちこちに飛ばしました。

 自然の中で、あるいは人の手で清められ、浄化しますように。

 お姫様はそう願ったのです。


 やがて、男の霊力が込められた『霊玉』は、木火土金水それぞれの強い霊力を持つ者に託されるようになり、霊玉を守る者は『霊玉守護者(たまもり)』と呼ばれ、みんなの幸せのためにがんばるのでした。




「おれのこの霊玉(たま)が、その霊玉(れいぎょく)なんだよね?」

「そうよ。晃がこの世に生まれた時、手に握っていたのよ。霊玉を託されるのは、強い霊力があることもだけど、何より心がきれいな人。晃のまっすぐでやさしい心が、この霊玉を浄化(きれいに)する、何よりの力になるのよ」


 幼い頃から何度も何度も聞いた、おとぎ話。

 何度も何度も聞いた、『霊玉守護者(たまもり)』のこと。


「じゃあ、おれの『火』の霊玉のほかにも、あと四つあるの?」

「そうよ。たまたま今代(いま)はみんな晃と同い年なのよ。みんな男の子で、とってもいい子ばかりよ」

 霊玉守護者(たまもり)が五人そろうのは、四百年ぶりくらいじゃないかしら。と白露は言う。


「五人が一緒になると何が起こるかわからないから、四人といっぺんに会うのは今は無理だけど、もう少し大きくなったら別々にでも会えるかもしれないわ」

「ほんとう?! おれ、仲間に会ってみたい!」

「そのためにも、霊力コントロールができるようにならないとね」


 そうして、白露は教えてくれる。


 霊玉守護者(たまもり)の持つ霊玉は霊力の塊なので、悪い心を持った者が手にするととんでもなく悪いことを引き起こしてしまう。

 悪い人に霊玉を渡さないよう守護す(まも)ることが、一番大切なこと。

 自分が霊玉を利用する心の弱い悪い人にならないことも、大切なこと。

 霊玉守護者(たまもり)が自然の霊力を取り込んだり、穏やかににこにこ過ごすことで、霊玉にも良い霊力が込められて、霊玉が浄化されること。

 五つの霊玉全てが浄化された時、大元の封じられた男の魂も浄化されること。

 霊力が強くて、五行のどれかが特化して強い者に、霊玉がひきつけられること。

 たいていは修行を重ねて強い霊力を得た時に霊玉を手にすること。

 生まれた時から霊玉を持っている今代の五人はオカシイこと。

 晃以外の四人も晃と同じように霊力コントロールの修行をがんばっていること。

 このまま大人になっておじいさんになって、次の霊玉守護者(たまもり)に引き継がれるまで、霊玉を守ってほしいこと。


 どこかで、自分と同じ霊玉守護者(たまもり)に選ばれた子が、同じようにがんばっている。

 そう思うだけで、幼い晃の心はあたたかくなる。がんばろうと前を向ける。


 そうして晃は毎日山を駆け、修行に励むのだった。

次話は本日21時投稿予定です

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