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第二十七話 ナツ 10 いきさつ

本日二話投稿します。

このお話は一話目です。


25話のあらすじ

母の通夜の席で、血縁上の父に連れ去られるナツ。

霊力を暴走させるが、「霊力なし」の父には効果がなく、連れ去られてしまう。

初見の舞を舞うよう強制されるが、ナツの能力『一度見た動きは完全に模倣できる』完全模倣で見事舞いきる。


26話のあらすじ

ナツを救おうと幼い頃から奮闘するヒロとハルだったが、現在まで成果はでていない。

神の庭で神々から「母を救えなかったかわりに願いをひとつ叶える」と言われたが、ナツが願ったのは「母に会うこと」だけだった。

 次に現れたのは、最初に老人に連れてこられた稽古場だった。

 鏡に映るナツは、晃と同年代になっていた。

 先程まで見ていた五歳のナツがそのまま成長したような姿だった。


 くせのある髪はショートボブに整えられ、手足はすらりと長くなっている。

 猫のような大きな目は少年らしく細くはなったが、男性と言うにはまだ幼さを残している。

 目鼻立ちも、髪の色も、ナツの母を知っている人が見たら一目で「母子だ」と言い切れるくらい、ナツの母にそっくりだった。中性的な可愛らしい顔立ちだが、表情が全く無かった。

 背はあまり高くない。ヒロの話では晃よりも二年分大きくないといけないはずだが、おそらく晃よりも低い。

 それでもすらりと手を伸ばし舞うと、実際の身長よりも大きく見えた。

 稽古着なのか、着物に袴をつけて舞う姿は凛々しく、もう女の子と間違えることはなかった。。



 ナツが舞を舞っていると、同年代の少年が三人入ってきた。

 そして口々に悪口を言う。罵詈雑言とはこのことかと言いたくなるくらいの、聞いているだけで不快感の募るものだった。

 だがそれもナツにとってはいつものことなのだろう。無視して舞っていると、突然不愉快な気配がした。

 めずらしくナツが反応したことに気をよくしたのか、三人組は尚も悪口を言っている。が、ナツは聞いていない。そもそも三人組を見ていない。


 ナツが見ているのは、三人組の奥にある、宙に浮かんだ『面』だった。



「――あれ! あれが、白露様を飲み込んだやつ!!」

 晃の叫びにヒロも息を飲む。やはり『(まが)』はナツの元にも来ていたのだ。



「――そのチカラは、我のモノだ」

「お前なんか舞の才能しかないくせに!」


(まが)』の言葉と、一人の吐いた言葉が重なった。 

 当然、ナツは『(まが)』の言葉しか聞いていない。


 チカラ。強い霊力。高い属性。

 これがあるから、死ぬに死ねない。

 これがあるから、おかあちゃんのところにいけない。


 ナツの声が響く。

 きっと、考えていたことなのだろう。

 ナツは一つ息をつくと、皮肉な笑みを浮かべ、言った。


「欲しけりゃやるよ」


 少年達はカッとした。

 少年達も『霊力なし』なのだろう。これほどの邪気を背にして何も気づいていない。

 そのため、かけられた言葉は自分達に向けられたのだと思った。


 少年達がカッとしてナツに殴りかかろうとした。その時。

(まが)』がぐぱりと大きな口を開けた。


 あ やばい


 ナツは本能的に察した。

 これに呑まれたら、おれが消えてしまう。

 消えたら、おかあちゃんに会えない――。


 ナツの行動は一瞬だった。

 丁度目の前にいた邪魔な三人をあっという間に叩きのめし、『(まが)』に向かって霊力をありったけ叩き込んだ。

 ドガン! と音がして壁の一面が大破すると同時に『(まが)』も消える。

 そして、霊力を叩き込んだ勢いそのままに。


 するりと、異界に入ってしまった。




 目の前で昨日のナツに起こったことが繰り広げられ、晃もヒロも言葉を失っていた。

 やはり『(まが)』はナツのところに現れていたのだ。

 そして、ナツが返り討ちにしていた。

 異界に入ってしまったのは、本人の意思ではなく、やはり事故だった。


 じゃあ、ナツは今どこに?


 呼びかけようと晃が口を開いたとき。

 ぽう…と箱の中心部がほのかに明るくなった。

 その光の中にナツが立っていた。



「ナツ!」

 バン、とヒロが箱をたたく。

 呼びかけられた少年――ナツは、静かに微笑んだ。


「ヒロ」


 やさしい声だった。

 声変わりはしているだろうが、高めの声で、やさしくヒロを呼ぶ。

 先程見た袴姿で、静かに立っている。



「ナツ! 帰ろう! とにかくこの箱消して!

 晃と三人で共鳴起こしたら、たぶん出口作れるから!」


 ヒロはバンバンと見えない箱を叩いて訴える。

 だがナツはヒロに応えず、隣の晃に視線を合わせた。


「…こう?」

「うん! 晃だよ!『火』の霊玉守護者(たまもり)


 左手に霊力を集めると、霊玉が現れた。それを見たナツがにっこり笑うと、先程ナツが姿を見せたときから感じていた共鳴感がおさまった。


「君が、おれの意識を起こしたんだな」


 責めるでも怒るでもなく、淡々とナツが言うが、晃にはその意識はない。

 ヒロはやっぱりと言いたそうな顔をしているが、自覚がないので何も言えず、黙っていた。


「おれ、多分意識を失ってたんだと思うんだ」

 ぽつりと、思い出すようにナツが言う。


「ふっと気付いたら何かあたたかい気配がして。なんだろーって思ったらすごい衝撃がきて…」

 ヒロが笑顔で固まっている。ヤバい。と顔に書いてある。


「その衝撃で、何か昔のこと思い出してた。いいことも、いやなことも」

 それが晃達の見ていた光景だろう。


「その間ずっとあたたかい誰かが背中なでてくれてるみたいな感じがしてた。

 ――あれ、晃だろう?」


 確かにずっと見えない箱に手を添えていたが。

 そうなのだろうか。

 よくわからず、首をぐりぐりと動かすしかできない。


「会いたいって言ってくれてたのも聞こえたよ。――ありがとう。

 おれも、君に会えてうれしいよ」


 にこりと笑顔を向けられ、晃もほっと肩の力を抜く。

 これで、ナツをつれて帰れる。もう大丈夫だ。


「ヒロも、ありがとう。いつも迷惑かけて、ごめんな」

「迷惑なんて、そんなこと――! ぼくがしたくてしてることだ。

 ぼくこそ、ナツを助けられなくて――」



「でも、ごめんな。ヒロ」


 うつむいたナツがポツリと言う。

 その途端、見えない壁に土が地面からせりあがっていき、足元から覆われていく。


「ナツ?!」

 せりあがってきた土が、晃を、ヒロを弾き飛ばす。

 ナツは中心で笑顔で立ったままだ。


 「なんとなく、感覚でわかるんだ。

 この異界を保つのは、めちゃめちゃ霊力を使う。

 でも、外みたいに霊力が補充されることがない。

 ハルの異界と違って、咄嗟にできたからかな? そのへんうまくいってないみたいだ」


 だから、とナツは続ける。



「このままここに居続けたら、おれの霊力は尽きる」


 それはつまり、ナツの死を意味した。

次話は本日18時投稿予定です。

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