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第二十四話 ナツ 7 同じだよ

本日二話投稿しています。

このお話は二話目です。


前話のあらすじ

ナツと母が交通事故に遭う。

母が亡くなり、ナツが男の子だと報道されてしまう。

ナツの母が亡くなったのは自分がナツに会いにいったせいだと、自分を責めて泣くヒロだった。

 ぐすぐすと鼻をすすり落ち着こうとするヒロに、晃は静かな声でたずねた。


「ヒロは、自分のせいでナツのお母さんが亡くなったって思ってるのか?

 自分のせいで、ナツからお母さんを奪ったって、そう思ってるのか?」


 ヒロが黙ってうなずく。涙はとまったが、長いまつ毛が濡れたままだ。


「だからナツを助けたいのか?」


 晃の意地の悪い問いに息をのんだヒロだったが、少し考えて答えを出した。

「…違う」


 小さく首を振り、うつむいたままヒロは続けた。


「ナツは友達だ。友達だから、助けたいんだ」

「うん」

 ヒロの想いを認め、晃は言った。


「おれはやっぱりヒロが悪いとは思わない」

 驚き、顔を上げ何か言おうと口を開くヒロより先に晃が言う


「だって、俺も同じだから」


 その言葉にヒロは口を閉じる。

 聞く姿勢になってくれたことに安堵し、晃は続ける。


「おれも、小さい頃大変だった。

 同じ子が四人いるって聞いて、会いたかった。

 みんなもがんばってるって聞いてたから、がんばれた。


 おれも同じだよ。ヒロ。

 遠いから会えなかっただけで、会える距離だったら会いに行ってた」


 同じだよ。ともう一度言われ、驚きに開いたヒロの目から、一粒涙がこぼれた。


「だから、ヒロだけが悪いなんてこと、ないんだよ。

 だっておれたち、今よりずっと子供だったんだよ?

 それなのに、めちゃめちゃがんばってた」


 そうだろう? と晃に言われ、うん、とヒロがうなずく。

 うなずくと、ポロポロと涙がこぼれた。


「ハルだって、周りの大人だって、色々気を配ってくれてたんだろう?」

 結界の中でだけ会っていたと言っていた。遊ぶときも、周りに大人がいたと言っていた。

 うん。うん。と、ヒロはただうなずく。


「それなら、やっぱり巡り合わせが悪かったんだよ」


 ヒロのせいじゃないよ。と、もう一度告げる。

 ヒロは泣きながら顔をくしゃりとゆがめたが、何も言わなかった。


「なあ。ヒロ」

 ぐしゃぐしゃのヒロの顔をまっすぐ見つめ、晃は一生懸命に伝える。


「出会ったせいで悪いことがおきたなんて、哀しいこと言わないでくれよ。

 おれは、みんなと会いたかった。

 今日ヒロに会えてうれしかった。

 だから、会ったことが悪いなんて言わないでくれ。

 友達になれたことが悪いみたいなこと、言わないでくれよ」


 ヒロが驚きに息を飲み、泣きながら首を振った。

「違う、ちがうよ。

 友達になったのが悪いんじゃない。

 友達になりたくなかったんじゃない」


「うん。わかってるよ。だからさ」

 晃はヒロを落ち着かせるように、両手をぎゅっと握ってやる。


「いいことも悪いことも、起こってしまったものはどうしようもないんだ。

 大事なのは、これからだろう?

 これから、いっぱいいいいことが起こるように、がんばるしかないんだ」


 そして、ヒロに笑いかける。ヒロの心に火が灯るように願いながら。


「ヒロ。悪い言葉を使っていると、悪いことがやってくるよ。

『自分のせいだ』なんて、自分をいじめちゃだめだ。

『会えてよかった』って、『ナツはいい友達だ』って、良い言葉を使いなよ」


 いつも白露に言われていた言葉。

 言葉には『チカラ』がある。

 だから、悪い言葉を使えば悪いことがおこるし、良い言葉を使えば良いことがおこるよ。と。

 良い言葉を使えばきっと、ヒロも、ナツも、前向きになれる。

 きっと、のみこんでのりこえられる。



「だってなっちゃんかあさんは…」

「だってもだめ」

 めっ、と怒ったふりをしてにらむと、ヒロも口を閉じる。


「人の生き死には天命だよ。おれたち人間にどうこうできるものじゃない」


 修験者の祖父について修行をしていると、色々なことを見聞きする。

 そのたびに「何で?!」と思うが、祖父はいつも「天命だ」と言っていた。

 そう言って飲み込んで、進むことしか、遺されたものにできることはないのだろう。



「今回のことだってそうだろう?

(まが)』の封印が解けるなんて、結界が破れるなんて、誰も思ってなかった。

 白露(はくろ)様がのまれるなんて、考えたことさえなかった」


 思い出しただけで怖くなる。胸の奥がぎゅっと握りつぶされそうになる。


「おれを守って、おれのせいで白露様はのまれたんだ」


 反論しようと口を開いたヒロだったが、何も言えなかった。

 自分がナツの母に対して抱いている思いと同じだと気づいたからだ。



「おれも同じだよ。ヒロ」



 もう一度晃が言う。

 声が震えてしまったのは許してほしい。

 つないでいた手を離し、ヒロが晃をぎゅっと抱きしめてくれる。

 肩に顔を埋め、ぼろぼろとただ涙を流している。

 晃もヒロの背に腕をまわし、抱きしめる。なぐさめるように、すがるように。


「おれは、今日、ヒロに会えてうれしかったよ」


 泣きそうなのをこらえて何とか言葉をつむぐ。

 ヒロはただうなずくばかりだ。


 晃は真っ暗な中空に視線を向け、呼びかける。


「ナツ。聞こえているんだろう? ナツ」


 その呼びかけに、ヒロも体を離して同じように中空をながめる。


「おれは君にも会いたいよ。

 会って、話をしたい。

 一緒に遊んで、ごはんたべて、楽しいこともいっぱいしたいよ。

 なぁ、ナツ。出てきてくれよ」


 涙をぬぐったヒロも、晃の手を握り呼びかける。

「ナツ。一緒に帰ろう。異界(ここ)から出よう。

 ぼくは、ぼく達は、ナツを助けたいんだ」

本日もおつきあいありがとうございました。

次話は明日12時投稿予定です。

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