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第十五話 晴臣

怒涛の説明回が終わったので、投稿ペースをゆっくりにします。

おつきあいいただけるとうれしいです。


本日は三話投稿します。

このお話は一話目です。

 がチャリと、どこかの扉が開く音がした。


(おみ)さんだわ」

 パタパタと明子が部屋の外に出る。少しすると、スーツ姿の男性と一緒に戻ってきた。


 一目見ただけですぐにハルの父親だとわかる。

 ヒロの言っていたとおり、ハルに瓜二つだ。

 すっと通った眉に、吊り上がった目。黒髪は後ろになでつけてあり、いかにも仕事のデキる男、という感じだ。

 二十年後のハル、と言われても納得のそっくり度だ。


「君が(こう)くんか」

 彼は部屋に入るなり晃を見つけ、声をかけてきた。

 席を立ち、はい。と返事をすると、彼は申し訳なさそうにへにゃりと眉をよせた。

 そうすると、キツい印象の顔がやさしく親しげなものにかわる。


「今日は迎えに行けなくてごめんな。無事ここまで来られてよかったよ」

 お家には連絡したかい? と問われ、うなずく。


「まぁ見たらわかるだろうけど。これが僕の父。安倍(あべ) 晴臣(はるおみ)だ」

「はじめまして。晃くん。――といっても、僕は君が赤ん坊の頃に一度会ってるんだよ」

 大きくなったなあとしみじみ言われ、照れくさくなる。


 その時、ポン。と、あることが思い浮かんだ。

「もしかして、じいちゃんが持ってた名刺の人ですか?」

「ん? 昨日電話してこられたのが、その名刺を見てのことだったら、僕だよ」


 どういう事情で赤ん坊の晃に会い、どういう理由で名刺を渡したのかはわからないが、ひとつわかっていることがある。

「あの。京都への行き方のプリント作ってくださったのって、もしかして…」

 晴臣は何も言わない。何も言わないで、ただにっこりと笑っている。

 それだけで十分だった。この人があの虎の巻を作ってくれたのだ。


「ありがとうございました。あれ、すごくわかりやすかったです。おれ、初めて電車に乗ったんですけど、おかげで一人で京都まで来られました」

「お役に立てたならよかった」

 そう言って微笑む彼は、大人の男だった。

 晃よりもずっと背も高いし、体つきもがっしりしている。ハルにそっくりなのに、笑うと穏やかな雰囲気になる。ハルが笑うと悪だくみしている狐みたいなのに。不思議だ。


「迎えにいけなくてホントごめんな。大変だったろう」

 よしよし、と子供のように頭をなでられるが、いやな気分はしない。

 実際何回も泣きそうになったが、それは黙っておく。いいえ。とだけ答えておく。


「ハルとヒロも仕事増やしてごめんな。これ、おわび。上賀茂にいくやつがいたから、買ってきてもらった」

「や・き・も・ちー!!」

 袋を受け取るなり、ヒロが狂喜乱舞する。「まだあったかい!!」と叫び、晴臣に感謝のハグをする。

「ハルもこれなら食べられるだろう?」

「…うん。ありがとう」


 そう言われて初めて、ハルがお茶の間何も食べていないことに気付いた。

 話すのが忙しかったからかと思っていたが、それだけではないらしい。

 はにかみつつもやわらかく笑う顔は、やっと同い年だと思わせるものだった。


 晴臣も席に着き、またお茶を煎れてもらい、焼餅をいただいた。

 半分はそのまま。半分はトースターで温め直して。

 これも上品なあんと皮のバランスが絶妙で、ぺろりと食べてしまう。

 もちろん半分以上はヒロの腹におさまった。


 明子が言うには、ハルは忙しくなると食事をとらなくなるので、品数で攻めて何か一口でも食べさせようとするのだそうだ。

 昼食は普通に食べていたようにみえたが、明子にしてみれば「たくさん食べてた」ということだ。

 逆にヒロはストレスが強くなると甘味を爆食いする。甘いものばかり食べて食事が食べられなくなり、栄養バランスが崩れるので、やはり食事が大変らしい。

「困った人達ですね」と正直な感想を述べると、明子には喜ばれ、ハルとヒロにはものすごくいやそうな顔をされた。




「じゃあ、そろそろ出発しようか」

 ハルと話し合いを済ませた晴臣にうながされ、席を立つ。


 部屋を出ると、すぐそこが玄関だった。

 さきほど靴をおいた玄関とは明らかに違う。

 晃の家は田舎の宿坊を兼ねた家なので、宿坊の玄関、日常用の玄関、勝手口と入口が複数ある。

 だから、明らかに別の玄関でも「そういうものかな」と思っていた。


「晃。念のため、これつけて」

 ブルーグレーの上着を羽織ったヒロに手渡されたのは、腕時計だった。

 ベルトも文字盤も黒。文字盤に刻まれている文字と針は銀色。ゴツゴツしていないシンプルな時計だが、すっきりしていてカッコよかった。

 うながされ、左の手首につける。カッコいい。テンションが上がる。


「それ、盗聴防止と認識阻害ついてるから。念のためにね」


 何だか聞き慣れない単語がでてきたぞ? とヒロを見ると「ぼくも臣さんもつけてる」と左手首を見せてくれた。

 ヒロは晃と同じデザインの時計。晴臣は何だか高そうな時計だった。


「外は文字通り魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界だから。念には念を入れて、ね」

「霊力の強いヤツほどよく効く。霊力の少ない一般人にはあまり効果がない」


 ハルとヒロは漫画やアニメ、小説といったものを見ては、実際に試しているという。

 参考にするのは、体術、魔法、アイテム作りと多岐にわたる。実際実用化に成功したアイテムや術もたくさんあるというのだから驚きだ。


「アイテムボックスもあるよ」

 アイテムボックスの意味が分からずきょとんとしていると、「何もないところで物を出し入れできる不思議な空間」と言って、どこからか妙な文様の描かれた紙を取り出した。

 五枚の紙をトランプのようにパラっと広げて見せてくれる。

 陰明師が術を行使するときに使う札だと教えてくれた。


「これも結界術の応用だね」

「すごいな!」

 ぱっと札をどこかに消したヒロに、晃は素直な感想を伝える。ヒロはにっこり笑って

「霊力が高ければできる術だから。多分晃にもできるよ」


 今度教えてあげるね。と約束してくれた。

次話は本日12時投稿します

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