第十三話 共鳴とは
説明回です
本日五話投稿します
このお話は四話目です
「ナツは元々霊力が高いし、とある事情で異界にしょっちゅう出入りしていた。
だから、身に危険を感じる『何か』があって、とっさに異界を作りだして逃げ込んだんだと思う」
ナツの天才っぷりが裏目に出たな、とハルはため息をつく。普通はそんなに簡単に作れるものではないらしい。
「ナツが自分で異界を発動したことは今までにない。
だから、時間経過を考えることも、出口を作りだすこともできないと思う。
だからこそ、こっちから出口を作ってやらないといけない」
ということは、ナツを探し出したらおじいさんになっている、という心配はしなくていいようだ。
しかし出口もなく閉じこもっていると聞くと心配だ。異界の中がどんな世界かは分からないが、早く出してあげたい。
「出口を作るって、そんなことできるのか?」
晃が聞くと、ハルは「これも憶測だけど」と前置きして続けた。
「霊玉守護者同士の共鳴を使って、できるんじゃないかと思うんだ」
「共鳴」
そう言われ、思い出す。
先程初めてヒロに会った時、身体の奥底で『何か』が響き合っている感じがした。
「さっき初めてヒロに会ったとき、なんか、身体の中が響いてる感じがしたけど、それのこと?」
「そう。それ」
正解! とヒロが指を立てる。
「霊玉守護者の持つ霊玉は、元々は一人の男の霊力だった。
だからだろうな。霊玉守護者同士が近づくと、共鳴するらしいんだ」
四百年前に『禍』の封印が解けたのも、偶然霊玉守護者の五人が封印石の上で出会ったため、霊力の共鳴が起こり封印が解けたんだ。とハルが話してくれる。
「封印も結界の一種だから。共鳴で封印が破れたなら、同じように共鳴で異界への扉を開くなり壊すなりできるんじゃないかと思うんだよ」
はーなるほど。と晃は納得する。
ちゃんと根拠のある話のようで、それならばやってみる価値はあると思った。
「実は晃が来てヒロと共鳴していたとき、期待したんだよ。ナツを呼び戻せるかもって」
だめだったけどな。と言うハルは、最初からそこまで期待していなかったのだろう。ちょっと肩をすくめただけだった。
「二人でダメなら別の霊玉守護者で試して。それでもダメなら方法を変えて。とにかくナツを呼び戻したいんだ」
五人そろわないと『禍』を封じることができないからな。
ハルはそう言っているが、単にナツ自身を心配しているのは二人の態度でわかった。
「共鳴って、どうしたら起こるんだろうな」
素朴な疑問をぶつけると、二人共困った顔をした。
「それがよくわかっていないんだよ。まだ会ったことのない霊玉守護者同士が出会うと、共鳴が起こるんだが、お互いに霊玉守護者だと――同じ存在だと認めた途端、共鳴が止むみたいなんだ」
確かに。
「さっきもそうだった」
晃が言うと、ヒロも同意するようにうなずいた。ハルも「やっぱりか」と言っただけだった。
「とりあえず、晃と佑輝を会わせて。それでダメならトモと。ダメなら佑輝とトモで試して、それでもダメなら何か方法を探っていくしかないだろうな」
ヒロは全員に会ったことがあるので選外にされている。
ハルが風船をつまんでいた指をはなすと、シュルシュルと風船がしぼんでいく。
これ捨てといて。と、しぼんだ風船を明子に渡し、ハルは再び晃に向き直った。
「まずは佑輝のところに行ってくれ。
佑輝は昨日から剣道部の合宿で大津に行っている。
今日の夕方に帰ってくる予定だから、それに合わせて行ってほしい」
ヒロと二人、自家用車で佑輝の家に行ってほしいと言われる。
「最終的には五人で『禍』を封印してほしい。
『禍』を封印すれば、白露様も開放されると思う」
何をしたらいいのか、どうしたらいいのかわからない晃には反対する理由もない。黙ってうなずく。
しかし、ふと疑問が浮かび、口を開く。
「どうしてその、佑輝とトモ? に来てもらわないんだ?」
自分は吉野から一人で来たのに。
その思いが伝わったのだろう。ヒロが「晃は大変だったよね。ごめんね」と言ってくれた。
ふうっ、とハルが大きく息をついた。お茶を飲もうとして中身が空なのに気付き、湯呑みを戻した。
その様子を見ていたのだろう。明子がすぐに急須を持ってきて、全員の湯呑みを満たしてくれた。
「霊玉守護者のことは、なるべく秘密にしておきたいんだ」
そう言って、ハルはお茶を一口飲んだ。
「霊玉守護者のことは秘密にしておきたい」
そう言われて、晃は首をかしげた。
別に黙っておくことないんじゃないか?
現にウチのじいちゃんもばあちゃんも白露様も知って――
そこまで考えて、ハッとした。
修験者のおっちゃん達やお寺のお坊様達は、晃の霊力が強いことは知っている。
だが、霊玉守護者というのは知っているのだろうか。
そういえば、白露から、霊玉は誰にも見せてはいけないと言われている。
お茶で喉を潤したハルは、湯呑みを置くとひとつ息をついた。
「昔な。実際あったんだよ。
霊玉守護者の持つ霊玉を手にすれば膨大な霊力を手にできるって考えた阿呆が、霊玉守護者を襲うことが」
白露からもいつも言われていた。悪い人に霊玉を渡さないよう守れ、と。
「霊玉守護者が人格者でないとなれないのは、その大きすぎる霊力を悪用されないためだ。
でももし不埒者がその霊力を奪ったら? 悪用したら?
ろくなことにならないのは、火を見るよりも明らかだ」
だから少なくともここ三百年は、安倍家では当主にしかその存在を伝えないようにしているという。
「それでも、情報なんてものはどこからもれるかわからない。
実際安倍家にヒロがいる。感知に優れた者が視たら、何か察することもあるかもしれない」
そして、今回の『禍』の封印が解けた件。南の結界が破れた件。
「別々の対策班で調査させているが、当然関連づけて考えるだろう」
そうして『禍』のことを調べられたら、霊玉守護者に行き当たることも考えられる。
もしも、霊力守護者の――霊玉の存在に気付いた者が、その膨大な霊力を奪うことを考えたら。
「そうなったら、まずいんだよ。これ以上問題増やしてほしくないんだよ」
色々苦労しているらしい。
吐き捨てるようにいうハルに、事情を知らない晃でも同情した。
次話は本日21時投稿予定です




