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第九話 ハルとヒロ

本日も五話投稿しています

このお話は五話目です

 案内された個室にボストンバックを置くと、トイレを借りて手を洗う。


 食堂だという部屋に入ると、大きなテーブルがその部屋の中央に居座っていた。

 テーブルの上には所狭しと料理の乗った皿が置かれている。


 十脚並んでいる椅子の一つに、晴明(はるあき)が座っていた。


 こっち座れ、と指示され向かうと、カウンターキッチンの奥から一人の女性が出てきた。



 胸の上あたりまであるやわらかな茶色のふわふわの髪は後ろでひとつに束ねられている。

 ふっくらとした頬は紅く色づき、大きな目は垂れていて、可愛らしい顔立ちをより甘く見せている。


 弘明(ひろあき)を女性にしたらこの人になる、という女性だった。


 あわいピンクのワンピースのようなエプロンの下は白いブラウスとベージュの細身のズボン。

 ゆったりしたエプロンで体型は分からないが、大人なのは間違いない。

 弘明のお母さんかお姉さんか。そう思って挨拶しようとすると、晴明が紹介してくれた。



「僕の母だ」

「えっ?!」



 思わず声があがった口を、あわてて自分の手でふさぐ。

 すると女性も弘明もくすくすと笑った。笑い方までそっくりだった。


「はじめまして。晴明の母の明子(あきこ)です。(あき)さんって呼んでね」


「あの、えと、すみません。吉野から来ました、日村(ひむら) (こう)です」


「よろしくね。晃くん」

 すわってすわって。と椅子をすすめられる。

 晴明の正面、弘明の隣だ。三人で机の三辺それぞれに座る。



 まだ疑問が顔に張り付いていたのだろう。笑いながら弘明が説明してくれた。


「ぼくの実の母と明さんが従妹(いとこ)同士なんだ」

「そうなの。ちぃちゃん――ヒロちゃんのお母さんと私って、二人でいるとよく双子と間違えられてたくらいそっくりなの」

「で、ぼくは母似。だから、明さんとも似てるってわけ」


 血縁関係はあったようだ。



「てことは、弘明さんと晴明さんて――」

「ヒロ」

 にこにこ顔のまま、強く言い返される。


 え? と思っていると、にこにこ顔のまま弘明がさらに押してきた。


「ヒロ。こっちはハル」

「ひ、ヒロ、さん」

「『さん』いらない。敬語もいらない」

 さらに迫力が増した。

「ヒロ!」

「よし」

 たった今までただよっていた不穏な空気がパッと霧散したことにほっと胸をなでおろす。


 目線で晴明も呼ぶようにうながされる。

「ハル」

「よし」

 こちらはニヤリと意地の悪そうな笑みで答えてくれる。やっぱり狐みたいだ。




 席についてすぐ明子に電話を渡された。

 自宅に電話をし、祖母に無事安倍家に着いたことを伝える。

 明子も電話に出てくれ、祖母にあいさつしてくれた。

 今日のミッションクリア、と、ほっと息をつく。




「ぼくらははとこだね。ちなみにハルは百(パー)父親似」


「明さんの要素まったくないよね」とヒロが笑うのを、ハルも「だよな」と笑って受け入れている。


 その言葉を聞いて、晃は一つ納得したことがあった。

「はとこかあ。だからお二人、似てるんですね」


 ん? と同時に二人に顔を向けられ、あわてて自分で自分の口をふさぐ。



「えと、二人、よく似てるの、はとこだからなんだな」


 タメ口タメ口、と意識して何とか言葉が出てきた。

 しかし二人が注意を向けたのは敬語ではなかったらしい。


「えぇ~! ぼく、こんなキツネ顔じゃないよ?!」

「僕だって、こんなタヌキ顔じゃないぞ」

 二人で同じような表情で言い合っている。仲良しだ。


 するとカウンターキッチンに下がっていた明子が、盆に茶碗をのせて戻ってきた。

 とん、と目の前に茶碗が置かれる。炊き立てのごはんの香りがふわりと鼻をくすぐる。


「二人一緒に育って兄弟みたいなものだから、似てて当たり前ね」


 くすくす笑いながら言った言葉に、二人は同時に反応した。


「「だとしたらもちろん兄はぼく」僕」


 えっへん。と同じように胸をはって同時に言った後、二人がにらみ合う。



「何言ってんのハル。いつもお世話してるのぼくでしょ」

「ヒロこそ何言ってんだ。僕のほうが二日早く生まれてるじゃないか」


 あらあらうふふ。と頬に手を当てほほえむ明子は、止める気がないらしい。


「さあさ。ごはんがあったかいうちに召し上がれ」

 晃にかけられた言葉で、二人もようやくじゃれあいを止めた。

短いですがキリがいいのでここまでで。

説明ばかりのお話にお付き合いいただきありがとうございます。

本日の投稿はここまでです。

次話は明日9時投稿予定です。

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