プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
実在の地名が出てきますが、違う世界の同じ名前の場所としてお楽しみください。
本日五話投稿します。
男は遊具メーカーの社員だ。
公園や幼稚園で使われる遊具のデザインから製造、メンテナンスまで行う会社に勤めてもう二十年になる。
大きい遊具から小さい遊具まで、色々な製品に携わってきた。
どの現場でも、子供達が思う存分身体を動かして喜んでくれる。
幸せな仕事だと自負している。
今日の現場は、小さな公園だ。
古くなった遊具を撤去し、新しい遊具を設置する。
せまい敷地でも色々と楽しんでもらえるように、考えに考えた複合遊具だ。
地元の人が通りすがりに、何ができるのかと現場をのぞいてくる。
ちいさな子供の「どんなのができるのかな」「たのしみ」という声が耳に届くと、胸がくすぐったくなる。
もう少し待っててくれよ。とびっきり楽しい遊具を用意したからな。
現場監督を任された男は、誇らしい気持ちをそっとかくして作業を見守る。
元あった遊具を撤去し、トラックに積み込み運び出す。
作業は順調すぎるくらい順調だ。
問題はここからだった。
ここ京都市は、歴史の古い街である。
つまり、どういうことか。
少し地面を掘れば『なにか』が出てくる、ということである。
例えば、昔の人が使っていた生活用品。
例えば、家の跡。
人骨や刀剣類なんかが出た日には最悪だ。
そんな『なにか』を掘り当ててしまい、作業が中断することはしょっちゅうである。
そのため掘削を伴う工事の場合は、事前に文化財保護をする役所にも報告しなければならない。
今回の現場は、最初に公園にするときに大規模な発掘調査がされているので、高確率で何もないとは思うが、新しい遊具はいままでのものよりも深い基礎を必要とするため、数メートルは深く掘らなくてはならない。
なにも出てくれるなよ。と、作業員全員が祈りながら、ショベルカーの掘削作業を見守る。
はたして。
ガツッという音とともに、ショベルカーが動きを止めた。
「何か当たった」
ショベルカーの運転手が、ふるえる声で報告をあげながらアームを上げる。
その途端。
どっと突風が掘った穴から噴き出した。
ガスか?! と警戒し、顔を腕でおおう作業員。
しかし突風は一瞬のことで、すぐにあたりは何事もなかったように落ち着く。
ガス特有のにおいも感じない。
何だったのだろうと穴をのぞき込み。
「…今日の仕事はこれで終わりだな…」
そこにあったのは、明らかに人工物と思われる球体。
きれいに真っ二つに割れていることから、ショベルカーの爪が当たって割れたのだろう。
水晶のような素材に見える、ソフトボール大のまん丸い物体。
割れた断面から黒っぽいもやのようなものがあがってる。
これがなにかはわからない。
わからないものが、出てしまった。
現場監督はため息を一つつくと、役所に電話をすべくスマホを取り出した。
次話は本日12時投稿予定です




