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第十話 

一話ごとにタイトルつけることにしました!過去のにもつけますが、内容は変わりませんので、大丈夫です。

「うっ、緊張する...」


僕は携帯を見ながら、ずっとソワソワとした気持ちでいた。楽しみだけど、心臓が破裂しそうなくらい緊張する。みんなもそんなことがあったのではなかろうか?

待っている間、ずっと磯の香りが鼻腔を突き抜け、脳へと達する。それにより、海にいるのだと錯覚させられる。実際には違うのだが。いや、違くはないのかもしれない。

僕は今、海の近くにある水族館の入り口にいた。なぜならここでデート、もとい犯人探しをするためだ。

時計を確認すると、まもなく待ち合わせの十五分前になろうとしていた。


「ごめんなさーい、少し遅れてしまいましたわ!」


そう言って可愛らしいハンドバッグを片手にパタパタと駆け寄ってくるのは、今現在の僕の待ち人。


「あ、おーい!美桜先輩!」


僕は目一杯腕をブンブンと振って、ここにいることをアピールする。


「はぁ、はぁ。すみません、桜玖さん。少し遅れてしまいましたわ」


手を膝につきながら息を切らしている。きっと僕のことを見つけてから急いで駆けつけてきてくれたのだろう。さすが先輩、何で律儀なんだろう。


「遅れてなんかいませんよ。むしろ時間よりも十五分も早いじゃないですか。僕がちょっとだけ早く着きすぎただけですから、そう気に病まないでください」


美桜先輩は顔をあげてにこりと笑う。それはまるで、夏に咲くひまわりのような温かい笑みだった。

僕はその姿にドキッとして慌てて視線を逸らしてしまう。


「?どうかしましたの、桜玖さん?」

「え、い、いや、何でもないです!」

「そう?それならよくってよ。それじゃあ水族館に行きましょう!」

「あ!ちょ、美桜先輩!?」


僕の腕にしっかりと抱きついて、水族館の入り口に向かって力強く歩いて行ってしまう。僕はそれに引きずられる形で水族館の中に入るためのゲートに連れていかれる。



★★★



休日ということもあってか、周りを見れば人で溢れかえっていた。家族連れの人たちもいれば、女の子同士できゃっきゃうふふしている人たちも、もちろん恋人同士なのであろう人たちも多くいた。

その結果、入場まで少しの時間を要した。それでも美桜先輩と他愛無い話をしていると、いつの間にか自分たちの番になっていた。


「ようこそ!チケットを拝見しますので、お出しください!」


元気よくスタッフさんが僕たちに声をかけてくれる。


「これをお願いしますわ!」


それに負けじと元気よく返答する美桜先輩。別にここで張り合わないでもいいんだけどね。


「はい!チケットを確認しました!恋人ペアチケットが二枚ですね!それでは園内にて、お楽しみください」


僕たちは切られたチケットの片割れを受け取って中へと入場した。入場してから疑問に思ったことを聞いてみることにする。 


「そのー、美桜先輩」

「ん?なんですの?」


美桜先輩は今もなお、僕の腕に抱きついたままこちらを向き、可愛らしく首を傾げる。


「さっき恋人なんちゃらとかスタッフさんが言ってた気がしたんですけど」

「あら、あれのことね!あれはそんなに気にしなくても大丈夫でしてよ。恋人ペアチケットにすると、お値段がお買い得になって、色々な特典がついてきますの!だから普通のチケットを買うよりはいいんですのよ」

「あぁ、だからチケットは私が買うって言ってたんですね。美桜先輩のことだから何をやらかすのか少し心配でしたよ」


あはは、と乾いた笑みを浮かべた僕に対し、美桜先輩はフグのようにぷくーっと頬を目一杯膨らませる。


「もう!私が変なことをするはずないじゃ無いですか!いつ私が変なことをしたというのですか!」


うん、思い当たる節はものすごくある。あるけど今は言わないでおこう。これ以上先輩の機嫌を損ねるのは悪手だからね。


「そうですね、先輩は変なことなんてしてませんもんね」


うんうん、と僕は頷く。


「なーんか違和感がありますの」


僕のことをじーっと見てくるが、さっと目を逸らす。


「あ、それより早く海の生き物たちを見に行きましょう!」

「あ、ちょっと待ってくださいまし!」


僕は強引に先輩の腕を引っ張って、話を逸らす。先輩はなんだかんだ文句を言いながらも笑顔を浮かべたまま、着いてきてくれる。

そんな僕たちを見つめる影が二つ。

そうとは知らず、僕たちは呑気に水族館を満喫していくのだった。

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