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6話 魔力欠乏症

 目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。


「おお、やっと目ぇ覚ましたか」


 声のする方向に目を向けると、そこには白衣の女性がいた。


「ここは……?」


「ここは保健室だ。私は養護教諭のフロル・ロス、よろしくな」


「はい、よろしくお願いします」


 保健室って……そうか、私魔法の実技で倒れたんだったか。


「そういえば、授業は……」


「グラウンドあんな爆破されて続けられるわけないだろ……って言いたいところだが、ローリィーがすぐに直して滞りなく終わったってよ」


 そうか、ならとりあえず一安心だ。

 私のせいでみんなに心配かけて授業を止めるとか申し訳なさすぎるもんな。

 ローリィー先生には後でお礼を言っておかないと。


「そういえば私、なんで倒れたんですか?」


「そりゃあれだよ、魔力欠乏症だ」


 魔力欠乏症……?

 名前から察するに魔力を使い果たして無くなったとかそんな感じのやつかな?


「ん? お前魔力欠乏症知らないのか?」


「はい、詳しくは知りません」


 あれ、もしかして常識だったりするのかな? 箱入りだったからいまいちこの世界の常識が掴みきれてない感じがする。


「まあ、なんつうか名前の通り魔力を使い果たして欠乏する病気だな。症状としては息切れとか動悸とか、酷いのだと今回のお前みたく倒れることもある。つっても命に関わるようなもんでもねぇし安静にしてりゃ治るよ」


 なるほど、それなら安静にしておこう。

 今の口ぶりだと逆に安静にする以外に解決策もないっぽいし。


 私が安静にするために起こした体を寝かせようとしたその瞬間、ものすごい勢いで扉が開けられた。


「ユリーナちゃん大丈夫ですか!?」


 そこにいたのはリリーだった。


 授業は止まらなかったといえど倒れた事に違いはないもんな。

 心配かけちゃったんだろう。申し訳ない。


「おいこら〜ここ保健室だぞ。一応静かにしろよ〜」


「あっ、ごめんなさい! でもユリーナちゃんが心配で……」


「ユリーナならただの魔力欠乏症だから気にすんな。あそこのベットで寝てるよ」


 そう言って私のベットを指差す先生。


 そうしてリリーと目があった瞬間、リリーはものすごい勢いで私に飛びついてきて、


「……っ!」


 抱きつきながらキスをされた。


 えっ、ちょっ、待って! リリーって心配だとこんなことする子なの!?

 あ、スキルか? スキルなのか!?


 困惑しまくる私をよそにリリーのキスは10秒くらい続いた。


「どうですか? 楽になりましたか?」


 キスを終えたリリーの第一声はそれだった。


「いや、楽にって……ってあれ? 心なしか楽になってるような……」


 さっきまで体がだるかったんだけど、今はそれがない。

 なんだろ? ショック療法みたいなやつなのかな?


「おいおい、独り身の前でずいぶん見せつけてくれるな」


「見せつける……?」


「いや、思いっきりキスしてたじゃねぇか。なんだ? ショック療法みたいなやつか?」


「キス……あぁ!! ユリーナちゃんごめんなさい! これはショック療法とかじゃなくて……!」


 自分が何をしたのかをようやく把握したらしいリリーが急に慌てだした。


「ショック療法じゃないならなんなんだ?」


 目の前でキスを見せつけられたのがよほど気に食わなかったのか、先生は若干いたずらな笑みを浮かべていた。


 いっても女の子同士ですよ……?


「えっとですね、あの、私『魔力譲渡』っていうスキルを持ってまして、他の人に魔力を与えられるんですよ」


「魔力譲渡って他人に魔力渡せる結構レアなスキルじゃねぇか! ……でもなんでキスする必要があるんだ?」


 うん、そこは謎だよね。


「いや、私まだスキルを使いこなせてないので唇から唇にしか魔力を流せないんですよね……」


 なるほど、だからとっさにキスをしてきたわけか。

 元気になったのも魔力が戻ったからなんだろう。


「なるほどなぁ……。それにしても魔力譲渡って使い道、冒険者ぐらいしかねぇよな」


「はい、だから将来冒険者になれるよう修行中なんです」


「ほぅ、まあ頑張れよ」


 へぇ、魔力譲渡って冒険者向きなのか。

 確かに、魔力の受け渡しとかできたら色々役立ちそうだもんな。


「でもあれだな、仮に冒険者になったら他の冒険者にキスしまくるわけか。……ちょっと変態っぽいな」


「だからそうならないために頑張ってるんですよ! というか私は変態じゃないです! 変態じゃないですからねユリーナちゃん!」


 泣き出しそうな目でこっちに訴えてくるリリー。


 ちょっと驚きはしたけど私を助けようとしてくれたわけだもんな。変態なわけがない。


「うん、分かってる。だいぶ楽になってるし、リリーはすごいよ。ありがとう」


 私は心の底から感謝を伝えるとリリーの頭を撫でた。


 すると、リリーはその数秒後くらいに『ボンッ!』って音がなるんじゃないかってくらいに赤面した。


「──────っ!!!」


 そして、声にもならないような叫び声をあげながら保健室から走り去っていった。


 ……やばい、やっちゃったな。


「全くお前らは随分と見せつけてくれるんだなおい」


 ……いや、だから女の子同士ですよ先生?

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