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3話 スキル怖い

 ほっとけばずっと握手してそうだったリリーを止めると、部屋に入って準備を終わらせた。


 そして現在、お互いのベッドに腰掛けてお話しする体勢が整っていた。……んだけど。



 やばい、何話していいかわかんないぞ!

 転生してから話したのってお母様とメイドさんだけだし! なんなら前世もちょっと人見知りだったし!


「あの、さっきはテンション上がっちゃってすみませんでした……」


 私が心の中であたふたしていると、リリーがそう切り出してきた。


「いや、全然大丈夫! むしろリリーみたいな可愛い子と握手できて嬉しかったぐらいだよ!」


「えっ、可愛いですか……?」


 っておい! 何言ってんだ自分!

 やめて! リリーもそんな乙女チックに照れないで! スキル発動しちゃったか不安になるから!


「と、とりあえず改めて自己紹介しようか!」


「え、あ、はい! そうですね!」


 部屋にちょっとキラキラしたものが舞い出したのを力技で収めた。


「私はユリーナ・ロール、社会勉強も兼ねてここに通うことになったんだ。後々知ってもあれだし前もっていっておくと、伯爵家の娘です。だけど私自身がすごいわけでもなんでもないから普通に仲良くしてね!」


 物語の中だけだけど、よく貴族は政略的に仲良くされるっていうからね。同室で、異世界初の友達のリリーとは普通に仲良くしたかった。


「あ、やっぱりロールってあのロール伯爵家の事だったんですね」


 ん? あの(・・)


「私の家ってそんなに有名なの?」


 なんか悪目立ちするようだったらあんまりバレないようにしないとな。いじめられるのとか嫌だし。


「はい、私の周りだと結構有名でしたよ。伯爵なのに威張らず、平民に寄り添った暮らしをしているって」


「ああ、そういう事」


 よかった〜! むしろちょっと好感度高かなってるくらいだ。

 ありがとうお父様!


「あの、家にメイドが5人くらいしかいないって本当なんですか?」


「いや、メイドさんなら1人しかいないよ」


「えっ、1人ですか!?」


 えっ、そんな驚く事なの?


「それであんな大きな家、掃除できるんですか……?」


「うん、お母様も家事はやってるし、自分の部屋の掃除とかは私がやるからね。普通にいけるよ」


「なるほど……噂以上ですね……!」


 まさかこんなにも食いつかれるとは。

 今後挨拶のネタにしてもいいかもしれないな。


「って、私のことばっかりじゃなくて、リリーの事も教えてよ!」


「あっ、すみません!」


 これは自己紹介であって、ロール家への質問会ではないんだいっ!


「えっと、リリアーナ・アズリアです。リリーって呼んでください。この学校には……その……冒険者になる為に勉強をしにきました」


「冒険者! 凄いかっこいいね!」


 モンスターをバシバシ倒す冒険譚! 女子でも多少のロマンは感じるよね。


「……ユリーナちゃんは馬鹿にしないんですね」


「ん? どゆこと?」


 冒険者って馬鹿にされるようなものなの? 私、好印象しかないんだけど。


「いえ、普通、女子がなれるものじゃないって馬鹿にされるので」


 あぁ、そういうことか。

 たしかに、この世界ではHPや攻撃力のステータスが男子の方が高い傾向にあるからな。向き不向きでいえば、女子よりも男子の方が冒険者に向いているのは確かだろう。でも、だからって女性冒険者が馬鹿にされるのはおかしい。


 前世で男子っぽいってだけで色々あったので、男女平等に関しては結構真剣に考えてるんだよね。


「別に男女がどうとか関係ないよ。夢があるのはいいことだし」


 前世も今世も夢とかもったことないからね。

 正直、そういうのがある人は素直に羨ましい。


「うっ……そんな事言ってくれたのユリーナちゃんが初めてです……」


 私の言葉を聞いて、リリーは涙目になって喜んでいた。


「ちょっ、そこまで!?」


「そこまでですよ〜!」


 めっちゃ泣かれた。

 嬉し泣きだとわかっていてもどうしていいか分からなくなるなこれ。


「何かお礼を……あ、そういえばさっき手を繋いで嬉しいって言ってくれましたよね」


「ん? どした?」


 なんかリリーの様子が若干変だぞ。


「もしよかったらもう一回、手を繋ぎましょうよ。なんだったらそれ以上も……」


 まるで酔っ払ってるみたいになりながら、リリーは私の隣に座った。


 待って、これスキル発動しちゃってるよね!?


「落ち着いて! あれは言葉の綾というか、そういうのだから!」


「じゃあ本当は嫌だったんですか……?」


「いや、そんなことはないけどさ」


「じゃあいいじゃないですか」


 リリーは私の指に手を絡めると、そのまま私をベッドに押し倒した。


 やばい、止まる気配がない!

 スキルの効果強すぎない!?


「大丈夫です、優しくしますから」


 何を!? 何を優しくされるの!?


「私はそういうんじゃ───」

『コンコン、ガチャ』


「お二人とも、食事の用意ができ───」


 私が襲われるギリギリのところで、部屋の扉が開けられた。

 扉の方を見ると、そこにいたのは寮母さんだった。

 エプロン姿だし、食事の時間を知らせに来てくれたんだろう。


 普通にありがたいことなんだけど、今のこの状況確実に勘違いされるよな……。


「あ、いえ、大丈夫ですよ。女子校ですから今までにも何度かそういう関係の娘たちは見てきましたから。流石に初日からというのは初めてですが……」


 やっぱり!


「いや、これは違───」


「色々済んだら食堂に来てくださいね」

『バタン』


 いや、その、違うんですーーー!!!

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