13話 お父さん……?
「そういえば、なんで家出したの?」
応接室への道中、私はロットにそんな質問をした。
もらった情報は家出したってところまでだったからね。
理由が気になる。
「その……お見合いをさせられる事になったので、逃げてきたのですわ……」
「え、お見合い?」
「ええ、お見合いですわ」
精霊にもお見合いなんて文化あるのか……。
そもそも、精霊とかってなんとなく勝手に湧いて出るように増えるイメージがあるんだけど……。
あ、でも、ロットにお父さんがいるってことは、基本的に人間とかと変わりないのか。
「とすると、ロットさんのお父さんが来ているのって、ロットさんにお見合いをさせるためって事ですかね?」
あ、そういえばそうなるか。
「一応確認だけど、今もお見合いとかはやりたくないんだよね?」
「もちろんですわ! むしろ、今は家出前よりも確固たる意思がありますわよ!」
ロットは語気を強めていた。
まあなんにしても、ロットをここに留まらせる方向性で動いて問題ないって事だ。
そんなこんなを話しているうちに、応接室の前に着いた。
「では、ワシは仕事があるのでここでさようならじゃな」
「はい、ありがとうございましたわ」
ローリィー先生と別れて応接室に入ると、そこには黒髪短髪の、20歳くらいの綺麗な女性がいた。
……ん?
「やっと来たか我が娘よ、今はロットと名乗っているのだったかな?」
「お父様……」
……んん?
「えっと、ごめんロット、お父さんなんだよね……?」
「はい、そうですわよ?」
ロットは何を当然なことをとでも言いたげだった。
あれ、私がおかしいのか……?
ちょっと自分の常識に自信が持てなくなっていると、背中を軽くつつかれた。
リリーだ。
「私、あの人女性にしか見えないんですけど、私がおかしいんですかね?」
「いや、私もそうとしか見えないし、おかしくないと思うよ」
どういうこっちゃと私たちがヒソヒソ話していると、ロットのお父さん(?)が話しかけて来た。
「君たち、聞こえているぞ」
あら、聞こえてたか。耳いいんだな。
「じゃあ、質問なんですけど、女性なのにお父さんなんですか?」
「ん? ああ、この器の話か。私たち精霊は君達でいうところの魂だけで存在しているからな。これは私と一番相性のいい器がこいつだったというだけの話だ」
「つまり、幽霊が憑依している的な……?」
「その例え、なんか嫌な感じがするが、そんなところだ」
ロットのお父さん(女性)は微妙な顔をしながら頷いていた。
たしかに、精霊そのものに実体があったらロットが杖に乗り移る時点で見えるはずだもんな。
「というか、そんな事はどうでもいい。我が娘、帰るぞ」
「い、嫌ですわ! やっとの思いで逃げてきたのに、なんでここが分かったんですの!?」
「あり得ないくらいに強い幼女が現れたとの噂を聞いてな。気になってその洞窟に行ってみれば、お前の魔力が残っていた。そこからここを突き止めるのはさほど苦労もなかったさ」
あー、あれのせいか……。
最後の方でロットがファイアボール打ちまくったもんな。魔力が残ったりしてもおかしくないか。
「とにかく、家に帰るぞ!」
お父さんは立ち上がると、ロットの手を掴んだ。
それを見て、私も反射的にお父さんの手を掴む。
いくら精霊が入っているとはいえど、筋力は20代女性くらいしかないらしく、両手を使えば振り払われることもなかった。
「君、なんのつもりだ?」
こちらを睨みつけて来るお父さん。
私も、それに対抗して、目をじっと見た。
「だって、ロットは嫌がってるみたいなので。無理矢理とかはあんまり良くないと思いますよ?」
「君には関係ない事だろう。それに、娘を待っている人もいる」
待ってる人って、お見合い相手のことか……。
「なら、なおのこと帰すわけには行きません!」
「いや、君にどうこう言われたくないんだが……」
まあ、そうなんですけどね。
でもロットも嫌がってるわけだし、私が出しゃばっても大丈夫だろう。
「とにかく! ロットは帰らせません!」
「いや、娘は今すぐ家に連れ帰る!」
お互いに一歩も引く気はない。
多分、このまま続けたら平行線になるな……。
私がそんな覚悟をしていると、リリーが挙手した。
「あの、一つ提案があるんですけど」
「ん? どうかしたのリリー?」
「提案だと?」
私関連(主にキスとかそこら辺)以外のことだと、結構消極的なリリーにしては珍しいな。
「どっちがロットさんの事を理解しているのか、勝負してみるのはどうでしょう?」
「ふむ、勝負か……面白そうだな」
お父さんは結構乗り気っぽい。
正直、このまま話してもロットを引き止められそうにないので、私も勝負自体は乗り気なんだけど、疑問が一つ。
「勝負って、どうやるの?」
ロットの事の理解度勝負って言っても、やり方がイマイチ分からない。
「はい、それはですね───」




