12話 新事実
盗賊討伐からしばらく経ったある日の休日の事。
「そういえば、ユリーナちゃんってお見合いのお話とかないんですか?」
『あ、それ私も気になりますわ!』
ベッドでゴロゴロして暇を潰していると、リリーがそんなことを聞いてきた。
ちなみにロットは部屋の大きさの問題で杖の形になってもらっている。
「うーん、少なくとも私自身にそんな話が回ってきた事はないかな」
これまでの生活で、お見合いの話とか、許嫁がいるとかは何一つ聞いたことがない。
裏の方ではあったのかもしれないけどね。
「そうなんですね!」
『それなら一安心ですわ!』
2人とも嬉しそうだなぁ。
なんで安心なのかとかは聞かないでおこう……。なんとなく想像つくし。
「そういう2人はどうなの? 今までに好きになった人とかいないの?」
「私はいたことないですね〜」
『わ、わたくしもいたことないですわ!』
そうなのか。
2人とも可愛いから結構モテるんじゃないかと思ったんだけどな。
「あ、というかロットは記憶ないし分かんないか」
『へ? あぁ! そうですわね、わたくしは生まれた時からユリーナ様にぞっこんですわ』
ぞっこんって……。
『コンコン』
扉がノックされた。
こんな休日に人が来るなんて珍しいな。
「はーい」
扉を開けると、ローリィー先生がいた。
「休日にすまんな、少し時間あるかの?」
「はい、別に問題ないですけど、どうかしました?」
ローリィー先生が直接部屋を訪ねて来るなんて初めてだし、特に理由がないなんて事はないだろう。
「ロットに用事があっての」
「ん? わたくしがどうかいたしましたか?」
ローリィー先生の言葉を聞きつけて、後ろから擬人化したロットがやってきた。
「おぉ、ロット。急で悪いが、応接室に来てもらえるかの?」
「えぇ、別に構いませんけど、なぜわたくしなのでしょう?」
たしかに。
私やリリーならともかく、ロットを直接指名で呼ぶなんて不思議だ。
「まぁ、あれじゃ。お主の父親を名乗る者がやって来とるのじゃよ」
ああ、なるほど。ロットのお父さんが……
「「って、え! 父親!?」」
後ろのリリーと声がハモった。
「ロット、父親ってどういう事?」
「そうですよロットさん! 親御さんなんていたんですか!?」
私とリリーに詰め寄られて、ロットは少し困った様子だった。
「その、何と言いますか……」
言い淀むロットの代わりに、ローリィー先生がズバッと言った。
「端的にいえば、ロットは杖ではなかったのじゃよ」
「「……えぇ!?」」
衝撃すぎる新事実!
「そうなのロット?」
「ええ、その通りですわ……。騙してしまい、申し訳ありません」
深々と頭を下げるロット。
「いや、別にそれは気にしてないんだけどさ」
別に騙されたとかは特に感じていない。
だってロットが杖だろうとなかろうと、対応を変えたりするつもりは無いからね。
「でも、それだとロットさんは何者なんですか?」
「うん、それは私も気になるな」
ロットが杖じゃないとしたら、一体何なんだろう?
「実は、わたくしは、火の精霊なのですわ」
なるほど、だからファイアボールが異常な火力になったりしたのか。
杖との親和性が高くてもあのレベルにはならないって聞いてたし、それならまあ納得だ。
私は納得していたんだけど、リリーはそうはいってないっぽかった。
「え、ロットさんって精霊なんですか……!?」
「えぇ、そうですわ」
「びっくりじゃろ。ワシも知った時はかなり驚いたのじゃよ」
……なんだこの反応?
「えっと、精霊って何か凄いの?」
「何を言ってるんですかユリーナちゃん! 精霊って言ったら伝説の魔法使いが使役していた幻の存在ですよ! 全属性の精霊がいることは分かっているんですけど、それ以上はわからない神秘の存在でもあります!」
リリーがめっちゃ熱弁して来た。
夢は冒険者って言ってたし、伝説の魔法使いとか憧れるやつなんだろう。
「精霊については文献が少なかったのでな。ワシもまさかロットが精霊だとは見当もつかなかったのじゃ」
「なるほど、精霊の希少さはよく分かりました。でも、なんでそんな珍しい精霊が私の元になんて来たの?」
そんなに珍しいならはじめから杖に宿ってたとかはないだろうし、謎だ。
「実は、わたくしは色々とあって、今は家出中なのですわ。それで、なんとなく学校のあたりをうろついていたらすごく魅力的な方を見かけて、思わずその杖に吸い込まれたんですの。それ以降は、以前お話しした通りですわ」
なるほど、つまりは、また私の例のスキルが絡んで来てるわけか……。
魅力的なんて言われ方してるし、まず間違いないね。
「じゃあ、ごまかしてた理由は?」
「精霊なんて言ったら、物珍しがって何かされるかもと思ったのですわ……。あ、今はそんなこと思ってませんわよ!」
「うん、分かってる分かってる」
私は慌てた様子のロットをいさめた。
たしかに知らない人に自分が貴重な存在だって言うのはちょっと怖いよな。
初対面の人に自分がすごく高値で売れるものを持ってるって言うようなものだし。それだと奪ったり悪用してやろうと思う人もいるだろうから、大抵は隠す。
「まあ、大体の事情は把握できたよ」
「飲み込みが早いのぅ」
「まあ、これまでにも色々ありましたからね」
天界の都合で転生する事になったり、天使さんに男と間違えられたりしたのと比べたら、まだそんなに衝撃はない。
「よし、それじゃあ行くぞ、ロット」
「あ、それ、私も付いて行ってもいいですか?」
ロットのお父さんって個人的にすごく見てみたい。
「それはまあロット次第じゃの」
「わたくしは、むしろ付いて来ていただきたいですわ」
やった、ロットの許可が下りた!
「それなら私も行きたいです!」
「もちろん、みんなで行きましょう」
というわけで、応接室に移動することとなった。




