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YouTuber 青星声ver.1 ~水橋拓真は選ぶ~  作者: わ→たく。
【YouTuberになりました】
8/50

文化祭当日

 チャンネル登録者数が一万人を越してからさほど時は立っていない。

 今日は年に一度の学校行事の文化祭。

 特に装飾はやらないと言っていたのだが、僕たちチャンネルが人気になったことにあやかって『チャンネル登録者数一万人突破YouTuber『青星声(せいせいせい)』のミズタクが推すアイス』という看板がクラスの入り口に飾られ、教室の中もダミーのカメラやYouTubeと書かれたオリジナルフレームなどが用意されていた。

 「何これ」

 「すごいでしょこれ。 前に装飾はしないってホームルームで発表された時に水橋(みずはし)くん寂しそうに見えたから女子みんなに頼んで男子にバレないように作ってたんだ」

 僕に話しかけてきた女の子はニヤニヤしながら教室中を見渡している。

 僕が寂しそうにしてたように見えたから内緒に作ってくれたのは嬉しいが、あの時は装飾に参加したかったが装飾をやらないと聞いてうつむいていただけなので複雑な思いである。

 「あ、ありがとう」

 女の子はニコニコしながら女の子がいつもいるグループの方に走って行った。

 そういえばあの子の名前ってなんだったっけ?

 髪色が左右で違うので記憶のどこかにはいるとは思うが全く思い出せない。 いや、そんなひとまずクラスにいないよな。

 右半分が黄緑色で左半分はピンクの二色のショートボブ。

 文化祭だからって気合い入れすぎでしょ。

 ピンクと黄緑色の髪にそれぞれ髪留めをつけている。 ピンク側には桜。 黄緑色側にはカエルとなんとも言えないバランスがいい。

 そして、少し髪が跳ねているのがまたこれはこれでアリだな。

 なんて後ろ姿を眺めているとこちらの視線に気づいたのか僕に向けてウインクをしてくれた。

 大きな瞳だが小顔で身長も百四十後半あたりと小柄。

 内気な性格らしく男子ともあまり話しているところを見たことはない。 髪のこともそうだけど、今日は文化祭パワーか何かで積極的に少しなっているのかな? 変わりすぎて少し怖いな。

 けど、彼女のことを一言でまとめると『かわいい』が当てはまるだろう。

 かわいいでは収まりきれない?

 なら『ギャラクシーかわいい』とでも言っておこう。

 て、何様だよ僕は。


 文化祭も始まってアイスの売れ行きも上々だ。

 うちの文化祭は二日制で、一日目は校内での披露。

 二日目は校外からのお客さんも来る。

 本来なら二日分用意して一日分ずつ売っていくのだが、午前中だけで一日分全て売れてしまったので二日目の分も気づかれない程度に値上げして売っていくことになった。

 なぜこんなにも売り上げがいいのかというと僕が客寄せパンダにされているからだと思う。

 アイスを一つ買うたびに僕とツーショット撮影ができるというサービス? (アイス一つの値段がアイス代+写真代の料金なのでサービスと言えるかはわからないけど)をしているので女性客が多い。

 僕的にも本当の視聴者さんとの会話ができたりと楽しいのでいいのだが、これがきっかけで学校がバレたりしないか少し心配である。

 てか、逆にバレていなかったらそれはそれでどうかなって思うけど。

 「昔出てたドラマの頃からファンでした」とか生の声が聞けて嬉しいのだが、明日は販売できるのであろうか?

 まずそこが心配である。

 当たり前だが明日はこんなサービス? はしないよ。

 校外からお客さん来ちゃうし。


 午前中のシフトが終わったのでお昼休憩を取ることにした。

 と言ってもクラスの中で仲のいい友達とは違うシフトになってしまったので一人で回ることになる。

 文化祭ボッチとか個人的には寂しいが今回は仕方が無いということでと受け止めたはずだったが、やっぱり寂しい。

 寂しいからと言って何も食べないと午後も持たないので昼食をと思ったのだが、大体の飲食店は一日目休みで二日目に営業というお店が多いためどこもやっていなかった。

 そう言えば昨年も同じことをして腹をすかせながら一日過ごした思い出があることを思い出した。

 文化祭となると購買もやっていないので本当に厄介なのだ。

 しょうがないので今年もいや、多分来年も一日腹をすかせながら仕事をすると決めた。

 来年に関してはきちんと覚えておけばそんな失態は起きないんだけどね。

 ぐぅ〜と音を鳴らしながら一人で校内を歩き回っているとき、目の前に腰に手を当て両足は肩幅まで広げて立っている女子を筆頭に何人かの集団が表れた。

 その中にさっきの女子もいたのでクラスメイだとは思うが、名前は全然出てこない。

 黙って通り過ぎようとすると「ちょっと待ちなさい」と先頭にいた女の子に呼び止められた。

 さっきの子はツートンカラーのショートボブだったが、今回の彼女は腰のところまで長い茶色い髪は光に反射してとても綺麗だ。

 身長はさっきの子と同じくらい。

 右手首には色々なバンドをしていたり、ネックのところに眼鏡をかけていたりとかっこいい。

 女子高だったら間違いなく「お姉さま」と後輩に呼ばせていそうだ。

 いや、そんなこともないか。 うん。 絶対ないか。

 僕ななぜそんな子に呼び止められたかは知らないが聞き間違えだったのかと立ちさそうとする。

 「ちょっと私を無視するなぁ〜。 ってか、変なこと考えてたよね?」

 僕の手を引き耳元で囁く。

 場を考えてのことだとは思うがこれはこれで恥ずかしい。

 適当に言い訳をしてその場から立ち去ろうと思ったのが僕はその場に立ち止まり彼女の話を聞いてしまった。

 「水橋くんってお昼食べたの?」

 食べてないと答えると不気味な笑みを浮かべ、ツートンカラーの彼女に「(ひな)、よかったね」と言っていたがなんのことだか理解ができていない。

 というか、さっきのツートンカラーの彼女は『雛』さんっていうんだね。

 「あ、あのね。 これから私もお昼なんだけどお、おお弁当作りすぎちゃってい・・・・一緒にご飯食べない?」

 最後の方はあまり聞き取れなかったが多分ご飯のお誘いだろう。

 ご飯のお誘いを断ることなんて今の僕には考えられなくて雛さんの手を取りありがとうと言っていた。

 もしもこれがアニメーションだとしたら僕の目はキラキラになっていると思う。


 みんなで食べるものだと思っていたのだが、「私たちはお邪魔だよね」と言い捨て僕たち二人にしてどこかえ消えてしまった。

 雛さんはおどおどしながらどこか人目につかないところに行きたがっていたのでとりあえず卓球部の部室へ向かった。

 「なんかごめんね。 気を使ってもらって」

 さっきのおどおどした姿はどこへ言ったのかと思うくらい雛さんはクラスで女子と喋っている時と同じになっていた。

 こちらとしてはお昼をいただけるのであればどこでだって今は嬉しい。

 「今日は、自分で作ってみたから美味しいかは保証できないから、食べられなかったら残していいから」

 目をこれでもかというくらいギューとつむりながらお弁当を突き出してくれた。 ありがとう。 いただきます。 とお弁当をいただく。

 蓋を取ってみると・・・・。

 そこには人が食べるべきものなのかわからない黒い物体が入っていた。

 本当にアニメーションだったらモザイクがないと写せないかもしれないと思ってしまうくらいの代物だ。

 ゴクリ。

 僕はこれを食べるのか。

 正直言えば食べたくないが、せっかくもらったのに開けた瞬間にいらないとか失礼気周りない。

 意を決して口に入れた。

 「ガリ」

 歯が欠けるくらいの硬さだ。

 雛さんは感想を、目をキラキラさせながら待っているが、お世辞なんて言えたもんじゃない。

 しかし、この状況でまずいなんて言えず、一緒にもらったお茶と一緒にもらったお弁当の中身全てを流し込み美味しかったといいバレない程度に言い訳をしてトイレに駆け込んだ。

 トイレから帰ると雛さんは青ざめた顔で部屋の隅で体育すわりをしていた。

 何をしているのか聞くと、こんなに恐ろしいものを僕に食べさせてお世辞まで言わせてしまった自分が恥ずかしく逃げようと思ったがそれは失礼になると思いここで泣きながら帰りを待っていたらしい。

 頭にポンと手を乗せ耳元で囁くと涙が止みそのままかれこれ一時間くらい二人は卓球場を出なかった。

 今更だけど、トイレに駆け込むとか最低なことをしてしまったな。

 お詫びも兼ねて心絆(ここな)さんと吉野(よしの)先輩のクラスが小物販売をしていたのでそこで小鳥のキーホルダーを買って渡した。

 家宝のように大切にすると言ってもらってくれたのは嬉しかったが、そこまで大事にしなくても。


 教室では僕を目当てに来たお客さんが殺到しており混乱状態になっていたらしく、写真は後日でもいいと言ってくれる人には整理券を渡し、今日がいいという人には名簿にサインしてもらい帰り次第連絡するという状況が起きており、僕は後でお叱りを受けてしまった。

 そういえば、一日目はお昼休憩以外僕に休みはないの?

 ま、まさかそんなことは・・・・ありそうですね。 はい。 頑張ります。


 次の日は、学校バレをしないようにと学校を遅刻した。

 毎年文化祭の後には有志で撮影してくれた先輩たちが動画をその日に作り、体育館で上映し流れ解散が恒例となっていた。

 僕はそれがみたかったので最後のオリエーテーリングのみ参加し、その後すぐに帰宅したので学校にいた時間は一時間もない。


 文化祭から明日で一週間経つが、文化祭以降雛さんとも話せていない。

 こちらから話すようなネタもないし、あちらも少し僕のことを避けているのか、それとも文化祭パワーがなくなってしまいいつもの内気な雛さんになったのかわからないが話せていないので残念に思う。

 もしも僕がライトノベルやギャルゲーの主人公だったらうまくやれてあわよくば彼女にできていたかもしれないのにな・・・・。 あわよくばって何考えてるんだ僕は。

 でも、小鳥のキーホルダーはカバンにつけてくれているし嫌われたわけではないと思うけど。

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