いのたく ZERO LIVE
六月二十三日の土曜日。 天気は晴れ。
今日は『いのたく』の初めてのイベント。 しかも、このイベントで『いのたく』継続有無の発表が行われる予定だ。
今日のイベント名は『いのたく ZERO LIVE』。
今までの三ヶ月はスポンサーになってくれる会社探しのプレゼンテーションの期間。 スポンサーがついてやっとONEにしたほうがかっこいいというたまたま来ていた僕のマネージャーである高城利規の意見が採用されてこの名前になった。
会場は日本の夢の国の近くにある会場。 ちなみにこの会場は僕が初めて声優さんのイベントに行った思い出のある会場。 その時はCブロックの四列目くらいに座れたんだっけな。 初めて生で声優さんを見れて感動したっけ。
会場が突然暗くなった。 オォー! と野太い声が聞こえてくる。
「「せーの。 いのたく」」
僕たち二人はステージに立った。 ステージから見える客席は海のように青一色。 厳密にいうと青でも二種類の青だが、絵に描いたような海みたいでとても綺麗。 語彙力が足りないなと言われそうだが、綺麗としか言えない。 客席からは何度も見たことはあったが全然違う。 前にいのっちゃんのステージにも出してもらったがその時よりも感動するわこれ。
始まったばっかりだがもう涙が出て来そうだったがギリギリのところで堪えて挨拶とフリートークを始めた。
フリートークを終えて一つ目のコーナーが始まった。
「「いのたく存続ゲームその一」」
その一ということなので他にも何個かあるがその中でも今回は極めて簡単なゲーム。
「二人の気持ちは同じかな?」
名前は違うが色々なイベントでよくやられているゲームの一つ。 どんなゲームかというとパーソナリティーの二人の気持ちを確かめ合うコーナー。 あるお題を言ってそのお題の答えが一致していたら成功。 外れたら失敗というシンプルかつ人気のコーナー。 例題をあげると、『好きな動物は』という問題に「ねこ」「猫」なら成功。 「ねこ」「ハムスター」なら失敗。
「それじゃあ早速始めてみようか。 一つ目のお題は・・・・」
スクリーンには『好きな四字熟語』というお題が写っていた。
「四字熟語なんて知らないよ」
「一問目から難しいなこれ。 と言ってもやらなきゃいけないんだよね」
スタッフさんからスケッチブックとペンをもらいシンキングタイムスタート。
そしてシンキングタイムが終わった。
「それじゃあいっせいのせで見せますか」
いっせいのせでスケッチブックを見せると『あー』と野太い声が会場内に響いた。
「いのっちゃんの『曖昧模糊』ってなに? 初めて聞いたんだけど」
画数の多い漢字だなこれ。 あやふやなさまって意味らしがこの意味があっているのか曖昧模糊らしい。
僕が書いたのは『以心伝心』。 漢字も簡単だし、このゲームを四字熟語にするとこれかなって思ったから絶対行けると思ったんだけどな。
四字熟語の他に会場の近くに夢の国があるので『夢の国といえば』と『作家といえば』の二つのお題が出て来たが、作家といえばしか当てられなかった。
『夢の国といえば』は、僕は黄色い犬のキャラクターを描いたがいのっちゃんは海の方にあるあの山の名前を書いていた。 いのっちゃんは山の名前か陸の方にある城の名前を書くかで迷ったらしいが、どちらにしろ気持ちはすれ違ったな。
『作家といえば』の方は簡単だった。 二人とも『涙もろい』と回答した。 前回の収録の前にゴメスさんがYouTubeで同い年らしいプロ野球選手の引退試合を見て泣いていたからなんだけどね。 やっぱり最近の出来事を思い出しちゃうよね。
引退したプロ野球選手って高校時代ともに甲子園に行った選手らしい。 引退試合では四打数三安打三打点二ホーマーでファンからするとまだまだ戦えるじゃんって声がすごかったらしい。 その引退したプロ野球選手と仲が良かったらしく、引退試合も招待してくれたらしく球場で号泣したらしいって話も聞いたら涙もろいって書いちゃうよね。
ゲームの結果としては三連敗しなくて良かったけど幸先悪いな。
「いや〜。 早いもんで全てのコーナー終わっちゃったね」
トークコーナーなど挟みながら他のゲームをこなした。
結果としていえば惨敗。
ほとんどのゲームで得点を上げることができずラジオ継続のためのゲームだったのにいいところを見せられなかった。
声優の仕事として初めての仕事がこの『いのたく』のラジオだったからできればもっと長くやりたかったんだけど・・・・厳しいかな。
「まさか全てのコーナーでやらかしてしまうとは思わなかったよー。 このゲームって・・・・」
僕の口を両手で塞ぐ。
「ダメ。 それ以上言わない。 声に出さなければあの結果のことは誰も気づかない」
会場が笑いに包まれた。
お客さんはケラケラ笑っているがこっちはハラハラしている。 今にも倒れそうだよ。 そんな中でもきてくれたお客さんを楽しませなくちゃいけないなんて結構きついんだな。
そんなことを考えていると結果ができたと知らせるチャイムが鳴った。
「このチャイムが鳴ったということは」
「結果が決まったってことだよね? キンチョウシテキタ」
緊張しすぎて片言になってるよいのっちゃん。
さん、に、いちとカウントダウン。 僕らの後ろの電光掲示板に動画が流れた。 その動画の内容は・・・・」
「春から始まった『いのたく』。 今日のイベントの結果次第でラジオ継続有無が決まります。 今日のゲームの結果は五つの種類のゲームをやってクリアしたのは一つのみ。 結果からすれば継続は・・・・。 今日の二人の失敗を恐れず無邪気な姿勢に裏で泣いていた作家ゴメスより継続について発表します」
え? なに? この動画で発表みたいな感じだったじゃん。 まだドキドキしなくちゃいけないの!? 寿命縮むよ。
ゴメスさんが本当に泣いてたのかってくらい笑顔で登壇して大きく深呼吸をした。 その深呼吸を見たファンの方々は成功を煽るように野太い声が響いた。
「結果からいうと『いのたく』は継続しません。 そして、『水輝伊乃に任せなさい。』と『水橋拓真の声声声ラジオ』も来週が最終回です」
しゃぁ〜! どうも皆さんこんにちは作者のわ→たく。です。
先に投稿した作品では水輝伊乃のライブに行っていましたね!私も推している声優さんのライブに七月に行ってきましてその時のことを思い出しながら書きました!
五ヶ月も前のことを思い出すって昨日の夕飯も思い出せない私には案外大変でしたが楽しんでいただけましたでしょうか?
そして今回の話では複数の人気ラジオが同時に最終回とか放送局もすごい賭けをしますよね。
それではまた明日も読んでください!




