勧誘と選択
「明けましておめでとうございます」
年も明け始めての土曜日。 今日も一週間分の動画を撮るために吉野先輩の家に集まっていた。
動画もある程度撮り終えたところで避けていたこの話題になった。
「それで拓真はどっちを選ぶの?」
僕は・・・・
クリスマス前のある休日、僕はそこである男性と会う約束をしているため、ある事務所に来ていた。
「お久しぶりです」
僕のことを待っていてくれたのは赤いメガネとリーゼントでアニメを好きでない人でも知っているくらいの大物声優さん。
「中三以来だよね。 もう立派な男性だね。 かっこいいよ」
もう誰と会っているか予想はついているとは思うが、多分その人。 三浦さんが東京都千代田区に建てた『大沢ボイスエンターワン』という事務所で数年ぶりに再開したんだ。
なぜ今日僕がここに訪れたかというと、この事務所について三浦さんの口から聞きたかったから。 電話でも良かったんだけどせっかくなら会いたかったし。
昼食をご馳走になりながら昔話など一時間くらい話してから本題に入った。
「もう今年で僕も成人しますし、事務所に入ろうが何しても構わないけど大学だけはきっちり四年で卒業するようにと言われたくらいですかね」
このことで昔お世話になったし一応報告はしないとね。
「なら良かった。 うちとしては声優事務所だからYouTuberだけをやるのであれば青星声の二人をうちで契約することはできない。 でももし二人が声優としてもやってくれるなら話は別だが。 まあ初めは所属タレントではなく準所属タレントにはなってしまって拓真くんとは別のかたちになってしまうけど」
多分、声優をやらないかと説得したとしても二人はやらないだろうな。
「拓真くんがむかし、芸能界に未練があると言っていたのを思い出して誘ったのは建前。 やっぱりうちとしても華は欲しいからね。 今人気のある無所属の人を欲しいっていうのが本音」
他の事務所とは違って本音もきちんと教えてくれるってなんか嬉しいな。
「いろんな事務所からも誘われているとは思うが、多分YouTuberをやめてうちに入ってという誘いだと思うんだけど。 やっぱりそうだよね。 そっちの方が事務所側に負担がかからなくて済むし楽なんだよね。 だけど拓真くんはYouTuberを続けたい。 だから断ったんだよね」
芸能界に未練がないと言ったら嘘になるけど、今ここでYouTuberをやめても将来同じようにYouTuberに未練を残しそうだし、何より二人と撮影しているあの時間がとても楽しいから。
「そんな時にうちからYouTubeの活動に関してはこちらも無い知識を使ってサポートする。 今までのように青星声の活動をして欲しいのだが、miniの活動・・・・ラジオだけ悪いようにはしないからね。 という電話が来て戸惑っているって感じだよね? この従業員が言っていることには嘘は一切ない。 まあこちらとしての本音はYouTuberの仕事をバックアップするからこっちにも手を貸して。 それで最終的には声優としてだけで働いて欲しいと思ってる。 ていうのが拓真くんを誘った本音」
ラジオだけってどういうことなのかよくわからないし、『YouTubeの活動に関してはこちらも無い知識を使ってサポートする』ってどこまでサポートしてくれるんだろう?
「すごい失礼な言い方をするとYouTuberだけで食べていける時代はそう長くはないと思ってて、YouTuberとしてだけの事務所に入っているんだったらこっちに入っていた方がいいんじゃないかなって個人的には思うし。 まあ僕らがどこまでサポートできるかはわからないけど『青星声mini』というか、『ミズタクが一人で三〇分ラジオをやってみた。』に関しては全力でサポートさせてもらうし。 どうかな」
もっともだと思う。 YouTuberとして後何年やっていけるのか僕もわからない。 不安定な職業だし、これからの長い人生を考えると安定した他の職に着くのがベストだとは思う。 まあ声優になったとしても不安定なのは変わらなさそうだけどね。
「え? ラジオについて聞きたい。 知っているかはわからないけどラジオ銀っていうラジオ局さんあるじゃん。 そこのラジオ四月に向けてかなりの番組の放送時間移動や終わっちゃうらしくて、うちの声優のラジオもやらないかというお話が来てるの。 一応枠はもらったんだけどそこで『ミズタクが一人で三〇分ラジオをやってみた。』やれたらなって思って。 miniの活動を取るような形にはなっちゃうけど今と同じ感じにラジオをやれてお金も今よりももらえるとしたら悪い話じゃないかなって思って。 時間帯? 時間帯は日曜の二十二時からの枠。 水輝さんのラジオが終わるのかって? てか、水輝さんと知り合いなんだ。 そういやこの前コラボしてたね。 うん。 ちゃんと見てるよ。 まあ水輝さんのラジオは終わらないよ。 水輝さんのラジオは二十一時からに時間が変わるんだって」
ラジオだけはってそういうことか。 そうなると今まで全世界放送なのが放送範囲か狭まってしまうよね。 今まで聞いてくださっていたリスナーさんに申し訳ないよな。
「あとこっちは定かじゃないしまだ噂程度だけど二十一時半から二人のラジオをやるっていう計画もあるらしいんだよね。 まあ計画も噂だしほんとかどうかもわからないけどね。 ここだけの話、水輝さんのラジオ枠本当は一時間らしいけど拓真くんのラジオが次の時間にやると聞いたときに三十分二人でやりたいと言っているらしいよ。 まあ噂だけどね」
水輝さんと僕の番組・・・・。 しかも、水輝さんが自分のラジオの枠を減らしてまで企画してくれたなんて。
「うちの所属タレントの件は来年の一月後半までに教えてくれればいいからそれまでじっくり他の事務所と比べたりしながら決めればいい。 一月後半以降だとラジオも動き始めちゃうから枠は無くなっちゃうけどね」
「それで、僕は三浦さんの事務所に入ろうと思います。 三浦さんがどうとかじゃなくて、自分で始めたプロジェクトのラジオをYouTube見ない人にも聞いて欲しい。 もっと大きくしたいって思ったのが一番です。 だから、青星声として同じ事務所に入ることはできません。 もしも、それでトラブル等があれば僕は青星声を抜けます。 そっちの事務所が行うイベントに関して僕は参加できないと思います。 それでも一緒に活動してもいいですか?」
「ふふ。 やっぱりね」
事務所に入ると相談した時から二人はこうなることを予想していたみたいだった。
「悩んで出した結果なら仕方がない。 これからもよろしくね」
心絆さん、吉野先輩と固く握手を交わした。
しゃぁ〜! どうも皆さんこんにちは作者のわ→たく。です。
前回のところで水輝伊乃とのコラボは終了しました。 YouTubeを見ていて私も思うのですがコラボ後の動画ってなんか寂しいですよね。
そして今回は拓真の選択回でした。 この選択が今後の三人によっていい選択なのかは誰にもわかりませんがいい選択になってくれればいいですね。
それではまた明日も読んでください!




