デート!?
「しゃぁ〜! どうも皆さんこんばんは青星声miniのミズタクだ」
一眼レフやビデオカメラなど持っていないのでスマフォでの撮影。
はたから見ると自室で一人喋っている変人だ。
サブチャンネル『青声星mini』にはまだ一度も投稿していなかったが、チャンネル登録者数は、メインチャンネルよりかは少ないが約二万人を突破していた。
このチャンネルは年明けから毎週火曜日は僕の企画を投稿することになっていて、そのほかの曜日は色々なYouTuberが使い分けているのと同じような感じで使われる。
いわゆる編集でカットした所などを載せたりするチャンネル。
「このチャンネルは作られてから数ヶ月経ちましたが、今日まで動画が一本もあげませんでしたが、メインチャンネルと同じくらいのチャンネル登録者数でびっくりですよ。 今日から毎週火曜日は僕が動画を出させていただきますのでよろしくお願いします」
特にやりたい企画も特になかったので一月は作曲づくりをすることにした。
「一ヶ月に出す動画は四本。 一年に出す動画は単純計算で四十八本。 サブチャンなのでゆる〜く頑張ります。 今月は作曲を四週にわたってやっていきたいと思います。 ということで早速やっていきましょう」
ちなみに僕は作曲のやり方を何も知らない。
何で作詞からやってみることにした。
「まずはどういうコンセプトの曲にするか決めるため、このBOXの中に色々なコンセプトを入れて、引いたコンセプトでやっていきたいと思います」
何枚かコンセプトを入れ引いた結果コンセプトは『片思い』に決まった。
高二の文化祭の時に出会った後から雛さんのことを目で追うことが増えていた。
もしかしたらこれが恋心なのかもしれない。
そう思ったことは一度もなかったが、片思いといっても現在進行形でしているわけでもないので雛さんをモデルに作ることにした。
「とりあえず何からすればいいのかわからないのでとりあえず『片思い』っぽい単語を書き出すことにします」
・・・・・・。
書けない。
とりあえず片思いをコンセプトにしているアーティストの曲をかたっぱしから聞きまくる。
動画的にはつまらない動画になりつつある。
いや、もうつまらない。
はじめにどうやって視聴者さんの心を引くかが課題なのだが、これでは、はじめっから躓いている。
苦し紛れに出た答えはーーーー
「初めて一人でやる動画で、多分この動画を僕が見てる時もつまらないって思うと思うので、この企画は動画外で作り上げることにして、一回目の動画がこんな感じで申し訳ないですけど、来週からはほかの企画やるのでまた来週お会いしましょう」
この動画にはバッドボタンが多く押されていた。
「何この動画⁈ 本当につまらない。 こんなんで視聴者さんが喜ぶと思うの? もっと真面目にやって」
僕はこの動画を投稿した次の日に心絆さんに呼び出され説教を受けていた。
隠し撮りをしていたので僕が怒られている動画を来週出そうかななんて思っていた。
はじめの動画がつまらない動画。
次の動画が怒られているってこれはこれでアリだと思うな。
そう思って翌週僕が怒られている動画を投稿するとコメントに『まさかのストーリー!?』など視聴者さんの驚いたコメントが多く書き込まれていた。
年明けから三ヶ月が過ぎようとしていた。
「ねえ拓真。 明日って何か予定ある?」
「特にないですよ」
「じゃあ明日は沼津田駅に九時に集合ね」
心絆さんはその言葉を残して吉野先輩の家から帰って言った。
集合時間の三十分も前に着いたのだが、どこに行くのだろうか?
「拓真お待たせ〜。 それじゃあ行こうか」
どこに行くか教えてもくれずJR総武線快速・久里浜行へと乗り込んだ。
そこから二回の乗り換えを経てオッパマ駅へやってきた。
なんで追浜なんだろう?
心絆さんに手を引っ張られながら向かった先は僕の好きなプロ野球球団の二軍のスタジアムである横須賀スタジアムだった。
動画でも撮るのかと思っていたが、心絆さんはいつもの猫耳パーカーではなく、見た目はダボダボのボアコート一枚羽織っているだけに見えるし、何よりもカメラなど持っている気配はない。
「今日って動画は撮らないんですか?」
何言ってるの? 今日は野球観戦しに来たんだよと言われた時はびっくりした。
『青声星mini』の評判がよくないから手伝ってくれるのかと思っていた。
他力本願な考えが恥ずかしい。
予想以上に観戦に来ているが多かったため球場の中に入るだけでもかなりの時間がかかってしまったため、個人的に好きな位置での観戦ができなかった。
僕が内野席で好む場所は横浜スタジアムでいう『内野指定席C』の場所に当たる。
なぜ好むかはただ単に横浜スタジアムで外野席が取れなかった時はいつもその場所で観戦していたため慣れた場所だからという理由なだけで見れるならどこでもいい。
しかし、今回マウンドより後ろに座った。
心絆さんが初めて座った場所だとはしゃいでいるのでナイスこの席と心の中でつぶやいていた。
今日の投手の発表でなぜこんなにも多くのファンが駆けつけたのかがわかった。
「本日の両チームのバッテリーをお知らせします。 先行のゴールドファイターズ。 ピッチャー野嶋。 キャッチャー浜星。 後攻のスカイスターズ。 ピッチャー日公。 キャッチャー札幌。 以上本日のバッテリーでございます」
なんかややこしいな。
甘いマスクで若い女性ファンに人気な二〇一五年のドラフト二位の当番だからこんなに多くの女性ファンが駆けつけたのだろう。
今回のキャンプは若手の育成に力を入れているのかベテラン選手は全員二軍でコーチと共に選手を強化していた。
そのため若手選手は二倍の知識を入れることができ、今年こそは優勝するのではと騒がれているのでとても楽しみだ。
そのため、一軍では見ないような選手ばっかりなのかと思っていてがそうではなかった。
二軍の練習試合だと舐めていたが、両チームとも一軍のキャンプには漏れてしまっていたが、一軍で活躍している選手もスタメンで出ていた。
試合は九回まで両者譲らない展開で代打のサヨナラレフトオーバーで試合は終わった。
球場の雰囲気はクライマックスシリーズのようだった。
一軍と応援歌が違うため応援歌を歌うことはできなかったが、静かに野球を観戦するのも楽しかった。
「心絆さん! 今日は誘ってくれてありがとうございます。 今年初観戦が心絆さんと来られて良かったです」
ポッと顔を赤らめながらリフレッシュは出来た? と聞かれた時にはドキッとした。
横須賀スタジアムから帰りご飯を食べたりして家に帰ったのは十時を過ぎていた。 ん? 二十三時?
「やってしまったァァァアアアアアア」
今日の試合のサヨナラを見たときに叫んだくらい大声を出してしまった。
今日は好きな声優さん水輝伊乃さんのラジオだったのに聞き逃してしまった。
しかも、新曲がフルで聴けるとうい噂があったので・・・・ん? ラジオ。