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人類の退化  作者: 有酒 歩水
1/1

労働



〈貴方はあと48時間後に確実に死にます。さて、それまでの48時間、貴方は何をしますか?〉



仕事帰りの社会人が店内を騒然と行き交う中、就業中である丹沢悟はひたすらに、目の前に無造作に置かれた商品のバーコードを機械で読み取る。

「合計で1480円のお買い上げになります」

全てのバーコードを読み取り、合計金額を言い終えると同時に、客である作業着の男性は財布の中から、千円札2枚を取り出し、こちらの方へ投げてよこした。

レジに2000と打ち込み、機械が計算してくれたお釣り金額を素早く取り出す。

「520円とレシートのお返しになります。ありがとうございます」

軽く会釈をし顔を上げた時には作業着の男性は既にいなく、代わりに小太りの中年男性が籠に満杯に敷き詰められた、コンビニ弁当と共に現れた。

中年男性の背後に並ぶ長蛇の列が目に入った。どの客もこの男性同様、籠満杯に商品が入っているのに気づき憂鬱になりながらも、先程と同じくマニュアル通りの作業を淡々とこなした。

30分程経っただろか。先程まで騒然としていたのと打って変わり、従業員以外の人物は誰一人として居なくなり、店内は静寂に帰った。

弁当、菓子パン、おにぎり、ジャンルごとに分けられた棚は殆どが空になっているのを確認するのと同時に、短時間で溜まった疲労が、ため息として漏れ出した。

「お疲れ様。やっぱ金曜日に2人だけって大変すぎるよね」

労いと微かな愚痴が混ざり合った様に声を掛けてきたのは、隣のレジを担当していた、先輩の加藤理加だった。

悟より5歳上の24歳のフリーターだ。高校を卒業してからずっとここのコンビニで働いているらしかった。

「お疲れです。まだ2時間しか経ってないのに、すでに疲労困憊ですよ。まあ、ババアを入れられるよりはマシですけど」

苦笑混じりで同じく愚痴をこぼした。悟が言うババアというのは、パートタイムの野田という年配の女性だ。

「そっか。今この時間帯入れるとしたら野田さんくらいだもんね。それならまだ2人で頑張る方が良いよね」

理加も悟と同様に野田に対して嫌悪感を抱いているため、野田の話題になる時はいつも愚痴だった。

「そうだ、丹沢君。お客さんがいない今のうちに休憩入ってきていいよ。確か裏に廃棄のショートケーキ置いてあったよ」

2人の時はいつも人のいない時間を見計らって、交代しながら休憩を取っていた。

今日も今のうちに休憩を終わらせて終業時間の10時まで働かなくてはいけない。

「了解です。あんま人来る様だったら呼んでください」

そう言い悟はデザート用のフォークをレジ下の棚から取り出し休憩室に向かった。

飲料類を保管している場所から持ってきたケーキと、自宅から持参した缶コーヒーをテーブルの上に並べて、携帯を起動させる。

ケーキを食べながらメールの返信をしたり、ゲームをするのが悟の休憩時間の決まりになっていた。

いつもの様に先にメールの返信をしようとした悟は違和感を覚えた。いつもは3,4件程度しかメールが来てないのに反して数十件とメールが送られてきていたからだ。

一番上に表示されていたのは、悟の友人である幸田樹からのものだった。携帯の画面をタッチしトーク画面を開くと、樹からはURLが送られていた。

それをタッチすると一つのニュースサイトに飛ばされた。何故仕事中にこれを送ってきたのか、樹の意図が分からず、文句を言おうと画面を戻そうとした悟だったが、ある記事の見出しに目が釘付けになった。

それは『巨大隕石が地球に向かい落下!!』というものだった。

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