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「涼しいですね〜」
「エアコン効いてるもんね」
「玲先輩は何食べますかー?」
メニューを置いて机に体を投げ出しながらケーキを眺める。
「後輩ちゃんってお淑やかって言葉が1番似合わないよね」
「お淑やかな方が好きです?」
「いやお淑やかな後輩ちゃんとかなんか気持ち悪いからそのままのあざといままでいいと思う」
「あざといですか⁉︎ 私って」
「自覚ないのね……。あ、この新作の桜タルトと珈琲のセットね」
「私よりメニューですか……。私はマスカットのモンブランとカモミールティーにしようかなぁ」
「そういうところは女子力高いよね」
「私だって先輩が知らないだけで女子力塗れなんですからねー」
知る機会がないからね。
店員さんを呼んで注文を済ませる。
すると後輩ちゃんは体をそわそわとさせ落ち着きなく鞄に何度も目線を泳がせる。
そんなに読みたいのかな。気にせず読めばいいのに、そいいうところで気を利かせなくても……。
「読みたいなら読めば?」
「いいんですか?」
「別に許可取ることじゃないと思うけど……」
「それじゃ遠慮なく! ケーキ来るまでですけど」
「お構いなく」
こっちも携帯で書き物するし。
今日はなんだかリア充ぽい。こういうのを書いて最後に結べばパッピーエンドになるのだろうか。
――玲君と後輩ちゃんが結ばれてハッピーエンドでいいじゃないの?
担当さんの言葉がふと頭に蘇る。こういう物語がパッピーエンドなのか?
軽く考えるとどうしても悲愛が浮かんでしまう。振られたり、後輩ちゃんが死んだり……。
いやもう辞めておこう。縁起でもないし。
ちらり後輩ちゃんの方を覗くと俯き、真剣な顔で読書をする姿が目に映る。
落ちてくる前髪を耳にかける仕草をしたり、途中でページを1つ戻って確認したり。見たこともない表情が代わる代わるにやってくる。
さすが文学少女。様になっている。
ふと後輩ちゃんが本から目線を外してこちらを見た。
目が合ってしまう。
後輩ちゃんはわずかに首を揺らし静かに微笑み読書へと戻っていく。
あんな笑い方も出来るんだ。今のはちょっとドキッとしてしまった。
小説のネタになりそうだし今のはちゃんと鮮明にメモしておこう。