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「玲先輩! 玲先輩! ありましたよっ!」
本屋に着くなり新刊コーナーに走り、お目当ての本を見つけて大はしゃぎする後輩ちゃん。
お行儀悪いからやめなさい。あと恥ずかしいです。
「良かったね」
「はいっ! 先輩もどうです?」
本を手に取りこちらに差し出してくる。
もともと買う気だったけどここで貰ったらなんか調子に乗りそうだなぁ……。
とはいえ買うのは確定なので後輩ちゃんから本を受け取る。
「読んだら感想言い合いましょうね!」
「積み本たくさんあるんじゃないの?」
「何よりも優先しないといけないものってあるんですよ! 玲先輩とかこの本とか」
「積まれてる本と著者が可哀想だよ」
「後でちゃんと読みますもん!」
いじけた様子で頬を膨らませ抗議してくる。
「ほら、お目当ての本が見つかったなら早く買って帰るよ」
「あ、ちょっと待ってくださいよ〜。せっかく来たんだからついでに何冊か……」
そう言って棚を漁り始める。
そんな事してるから積み本が減らないんじゃないの?
自分の本もその積まれていく本の中に埋もれてしまえばいいのにと切に願う。
「お待たせしました。行きましょー」
結局数冊の積み本になるであろう本を手に戻ってきた。何冊くらい積んでるんだろう。
会計を済ませて外へ出る。
「何冊くらい積んでるの?」
「んー。そうですねー軽く100冊くらいじゃないですか?」
「どこにそんな置き場が……?」
「私の家お金持ちなんで! お嬢様なんですよ私。逆玉しちゃいます?」
「生憎お金には別に困ってない」
そもそも使い道がないし……。
「お金持ちのお嬢様属性も興味なしですか。玲先輩ホモなんですか?」
「そんなわけないだろ」
「ならどんな人がタイプなんですか?」
「うるさくなくて」
「なくて」
「自分を売り込みにこなく」
「こなく?」
「計画的で本を積まない」
「……」
「ショートの子」
「……玲先輩完全に私だけをピンポイントで弾いてきてますね?」
ありゃばれた?
「さぁ? 心当たりがあるなら理想とはかけ離れてるね。残念だなぁ」
「絶対わざとに! 真面目に聞いたのに」
「真面目に答えたじゃん」
「もういいですよぅ。ほら行きますよ!」
「え、どこに」
「せっかく街に出たんですからデートしましょう。喫茶店に!」
「ケーキかパフェが食べたいだけね」
「玲先輩って私の心読めるんですか? いつもいつも……」
「後輩ちゃんは単純だから」
「突然褒めてどうしたんですか」
「褒めてはいない」
「あ、もしかして馬鹿にされました?」
「どうでしょ。そんなことなんかより喫茶店行くの?」
「そんなこと……。行きます! 私がよく行くお店があるんです。そこ行きましょ〜」
上機嫌に足を弾ませ前を歩く後輩ちゃん。それに合わせて揺れるポニーテールが目を惹く。
なんでこんなに可愛い子が自分にこんなに絡んでくるのだろうか。
小説の書きすぎで妄想と現実の区別もつかなくなってたり?
「そりゃ流石に失礼かな?」
「玲先輩なんか言いましたー?」
「なんも言ってないよ。早く案内してよ、外暑くて死にそう」
「直ぐ近くですから。暑いならくっついてあげましょうか?」
「新手の嫌がらせか」
「いい匂いしますよっ!」
いい匂いと暑さでなんでいい匂いを取ると思ったのだろうか……。