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しおり。  作者: tear.
3/14

3

「玲先輩。ちゃんと読んできました?」


 放課後、図書館に着くなり後輩ちゃんに捕まってしまった。


「とりあえず座らせて欲しいんだけどど……」


「あ、ごめんなさい。どうぞどうぞ」


 出されたパイプ椅子に座って荷物を置く。

 向かいに後輩ちゃんが座ったので借りた本を返す。


「はいこれ」


「泣きました?」


「いいや」


「本当に読みました? ?」


「まぁ……」


 読んではいないけど内容知ってるしセーフだよね。


「感想は?」


 楽しそうに聞いてくる後輩ちゃんは純粋に好きな作品について話したいだけなんだろう。

 でもこれ割と拷問ですよ。


「なんで殺すのかと」


「なんでとは?」


「別に殺さなくてもバットエンドにできるんじゃないかなって。あとはなんでバットエンドなのかなって」


「うわー。玲先輩アンチだ……。アンチぽいこと言ってる」


「聞かれたから答えたのに酷いな」


「そんなの作者しかわからないんじゃいですか? その時殺したかったのかもしれないし。バットエンドの方が感情移入すると思ったんじゃないですかね」


 作者でもわかってないんですよ。ごめんなさい……。


「悲愛しか書けないとか」


「だとしてもこんなの書けるなら十分だと思います。いいなぁ私もこの作者さんの小説のヒロインになりたいです」


「後輩ちゃんじゃ無理でしょ」


「なんでですか」


「ヒロインがこんなに幸せそうな人だとバットエンドにできない」


「もっと幸薄そうな人生送ってればよかった……」


「送っててもなれるとは限らないでしょ……」


「作者に会って直談判!」


 是非やめていただきたい。


「作者と知り合いなの?」


「全く。性別も歳も住んでるところも知らないです」


「絶望的だね」


 目の前の人なんですけどね。絶対言わないよ。


「私も小説書いてみようかな」


「突然だね」


「書いて売れたら会えるかもしれないじゃないですか」


「その考えはなかったよ。恋愛小説かける?」


「恋する乙女ですよ? 恋愛小説の1つや2つ書けますよ」


 恋してなくても書けるししてても書けないものだと思うけどなぁ。


「なら頑張って」


「玲先輩も書いてみません?」


「いやだ」


「即答ですね」


「恋愛とかわからないからいいよ」


「そろそろ私からの熱烈な愛情を受け取っちゃえばいいんですよ」


「された記憶がない」


「嘘だ……。毎日こんなにアピールしてるのに?」


 絶望的な表情で頭を抱え出す。

 いやまぁわかってるけど、ね?


「ビッチな後輩ちゃんのやることなんていちいち気にしちゃいられない」


「ビッチじゃないですから! 一途ですし!」


「はいはいー。犯人はみんなそういうよ」


「どうやら玲先輩にはスキンシップが足りないみたいですね……!」


 手で何かを揉むような仕草をしながらジリジリと近づいてくる。


「触れたら1週間口聞かないよ」


「うっ……。それは卑怯ですよ!」


「あ、貸し出しが来た。いかないと」


「逃げた! 玲先輩のチキン!」


 人をチキン呼ばわりするなんてチキンに失礼じゃないか。




「玲先輩! 玲先輩! このあと暇ですか?」


「暇を潰すのに忙しい」


「相変わらず意地悪ですね……」


「それでどうしたの?」


「あ! そうですよ! このあと街の本屋さん行きませんか?」


 凄いハイテンションで迫ってくる後輩ちゃん。


「なんか欲しい本でもあるの?」


「はい! 今日は前に言っていた作者さんの新刊ですよ! 今日読まないともう死んじゃいます!」


 そーいえば今日発売なのか……。完全に忘れてたや。それにしても本当に好きだったんだ。あの時だけの勢いだと思ってたけど案外熱狂的だ。


「良かったね」


「ですから行きましょうよー玲先輩!」


「1人で行けばいいんじゃ……」


「女の子がデートに誘ってるんですから黙ってくるべきですよ!」


「デートに誘ってるつもりだったのこれ」


「いえ、全然。口実ですけど……」


「雑すぎるでしょ。まぁ本買うくらいなら付き合うよ」


 自分でも初版は買っておきたいし。


「それじゃ早く行きましょ! 玲先輩っ」


 嬉しそうに笑いながら手を差し伸べてくる。

 その姿は小説のヒロインのようで。

 ただ自分の小説には勿体無いほど綺麗に輝いていた。


「玲先輩?」


「あ、ごめんごめん。いこっか」


 差し出された手を取って椅子から立ち上がる。


「玲先輩珍しく手、取ってくれるんですねっ?」


「気分だよ。もう離すけどね」


「離しませんよ」


 指を絡ませてしっかりとホールドしてくる。

 少しでも許した自分が馬鹿だった。

 後輩ちゃんの手はとても細く。柔らかい。


「有料ね」


「本一冊で手を打ってくださいー」


 払うのは別にいいんだ……。


「ていうかここ学校なんだけど。みんなに見られるじゃん」


「今更じゃないですか?」


「既成事実を作ろうとするんじゃない」


「えへへ、バレましたか。まあたまにはいいじゃないですか」


 どうせ玄関で離すんだしいっか。

 小説の中に出てきそうなシチュエーションだけど、全然ドキドキもしないや。相手の問題かな?


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