人形遣いの旅、プロローグ
一時間企画「VS」で戦闘描写がしたかった。時間なくて世界観説明で終わった感はあります。悔しいが供養という事で。「嘘」「赤い」も少し入れています。
森の中を私は相棒である少女とともに歩く。少女は端正な顔をこちらに向けて首をかしげる。これは問いかけでしょうね。ここで合ったいるのか、と聞きたいみたい。
「ええ、そうよ。いつも悪いけど前衛をお願いね」
そう私が言うと、目の前の少女……バリュキリアルはうなずいた。
そして、木々の合間から飛び出してきた猪を少女はその身に似合わない長剣で切り裂いた。私は会話の途中ですでに後ろに飛び呪文を詠唱している。
「やっぱりこの森はおかしいわね。【光の鎚】」
動きを止めている猪型の人形に私は自身の持つ消費の軽い魔法でとどめを刺した。
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ここで、私の現状について説明しておこう。私は協会からの要請を受けてある森の探索をしているところ。やけに敵性の意思を持った人形があふれているらしい。人形っていうのはここでは意思を持つものを言い、伝説的な人形遣いが遺したコアというもので自立運動が可能になったものである。その伝説の人形遣い、ドールの遺した技術で相棒のような人形をつくり共に戦う……それが私たち人形遣いである。今の私の相棒は最高傑作ともいえるもので最高のコアを準備して反応を帰すレベルのものを作り上げた。それがバリュキリアルである。
そんなバリュキリアルがこちらを見てきた。私はなんとなく言いたいことを察して答える。
「そうね、いい加減原因が分かればいいのだけど。もう猪と虎は見飽きたわ」
この森に来てからその二種類の人形をよく見かける。
ドールはその技術力で様々な革命を起こしたが、その最深部は誰も手が届いていない。そんな革新の一つがコアで、野良の人形遣いが自分の作った人形を野生に放つという問題も発生している。基本的にはそんな野良の人形の討伐をしている私とバリュキリアルだが今回は人形遣いの協会から要請を受けてこの森の調査に赴いているのである。
「どこに原因があるのかしら。さすがに疲れてきたわ」
一応虎と猪は人形の中では強い方に部類されるものだ。バリュキリアルも少し疲れているように見えるし何とかしなければ。
私の最高傑作であり最高の相棒であるバリュキリアルはそこらの虎の人形には後れを取らない、相棒としての贔屓目が入っているが伝説のドールの十傑作と呼ばれる野生の人形に匹敵するかも知れない。奴らはドールの遺産の中でも悪質であり強力な人形だ。それぞれに特徴があるらしいが、伝説の域を出ない。
などと親ばかを発動させていると、バリュキリアルが手招きをしていた。
「どうしたの」
そう言い近づいたところ木々の合間をバリュキリアルは指さした。あちらに何かあると言いたいようだ。
「あっちね、行ってみましょうか」
私には何も見えなかったがバリュキリアルは見えたのだろう。性能をよくし過ぎるのも問題だ。だが、バリュキリアルを疑うという発想はないので進む方向を調節することにした。
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木々を抜けるとそこには洋館があった。明らかに場違いである。だが、ここにきて組織だった悪い人形遣いのグループが森に人形を放っているという予測が合っていたと分かる。ならばあとは殲滅するだけだ。
「行きましょうか」
そういうと自然といつも通りバリュキリアルは前に立ってくれる。
「ありがとね」
そういうと彼女は少し微笑んだような気がした。そして、洋館の扉が開かれる。
『こんにちは、侵入者。あなたは旦那様に招待されたものではないようですね』
屋敷の中にはメイドがいた。その手には二本の棒を持っている。あれは私も使った事のある、編み棒だ!
「やっぱり人形遣いが原因だったのね。覚悟しなさい」
『あら、あなたも旦那様と同じ……ならば試練をあたえなければなりませんね』
こちらが戦闘態勢をとると、謎のメイドも二本の棒をこちらに向けてきた。そして、メイドは目に見えないほどの手際で……人形を5体生み出していた。
その内訳……猪3体に虎2体。
「なんて早さよ! でも猪や虎程度なら」
バリュキリアルが前で止める間に私は呪文を完成させる。
「【光の円舞曲】!」
光の円が私たちを囲いそして一気に広がることで目の前の五体を吹き飛ばした。
『なるほど、ではこれです』
メイドはそう言うとすでに完成していた竜を二体突進させてきた。さらにメイドは虎を生み出している。メイドを叩かなければ無限に出てくるだろう。
「キリがないわね。奥の手を使いましょう」
バリュキリアルにそう伝えると私は長い詠唱を開始した。バリュキリアルはその間、長剣を盾にして私を守ってくれる。絶対に破らない自信があるからこそ彼女に守りを任せて詠唱が出来るのだ。
そして、完成した。
「人形一体技! 【戦天使の翼】!」
そういうと、かなり後ろまで追い込まれていたバリュキリアルの手を持ち呪文の効果を渡す。バリュキリアルの後ろに赤い羽根が開き、一斉に薙ぎ払った!
一瞬で竜も虎も薙ぎ払い、奥のメイドもその余波の赤い羽根で編み棒をはじきとばしていた。
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「危なかったわね……なんであの準備のときこちらを襲ってこなかったのか。それに猪と虎と竜しか作らなかったし……何者なのかしらこの子?」
バリュキリアルは赤い羽根を出しっぱなしにして興奮しているので少し置いておくとしてこの子の話を聞きたい。
『見事です……旦那様もお認めになるでしょう』
「旦那様って何者よ」
『私をお創りした……ドール様でございます』
「なんですって!」
『私はイオン。旦那様の十番目の作品』
「という事はこの森の異変はぜんぶドールの遺産のせいだったわけね……」
こうして、図らずもドールの遺産のかけらに触れた私は、協会から、そしてイオンからドールの十傑作の暴走を止めるように頼まれることになる。
こうして、私の旅が始まるのだった。
この設定はバトルものでバディものという胸熱設定なのでもっと生かしたかったです。