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97.おっさん・ちょいキレ

ちょっと主人公を黒くしすぎたかもしれないです。

ご不快の方は申し訳ございません。

 ■ 撮影 ■

 

 ゲーム内の動画や静止画を撮影するには撮影機と記録玉といわれる消耗品が必要になる。

 記録された映像は一般的な形式のファイルとしてダウンロードすることが可能。


 撮影機の機能は『撮影』『拡大』『縮小』『接写』『暗視』『再生』等

 より多くの機能を持たせるほど高くなる。

 記録玉と言われる記憶媒体を使用することで撮影可能。

 一度記録した記録玉を上書きすることは出来ない。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////




 帰り道は徐々にうだるような暑さから開放されていく、

 段階的な暑さの緩和から涼しいと感じる瞬間の清涼感がたまらない。


 行きに魔物溜りをちゃんと潰してきたからか、帰りは散発的にしか魔物も出てこない快適な状態。

 街に戻ったらどんな涼しい食事にしようかなどと想像を膨らませ、一仕事終えた後の満足感に浸っている時にそれをぶち壊しにする奴がいたとしたら?


 例えば久々に仕事が順調にうまくいっていた時に帰り際になってやらかす人間ってのはいるもんだが、それが故意でなければ黙って協力するだろう。


 だが悪意をもってぶち壊しにしてくる奴がいたとしたら?


 許すわけが無い。




 「ガイヤ! ストップ!」


 ちょうど通路から小部屋に入る瞬間殺気を感じる。

 自分に向けたものではないが、ガイヤがパーティだからかはたまた近くに並んで歩いていたからか、唐突に感じる殺気から身をかわすようにガイヤを後ろに引っ張ると


 ちょうどこれからガイヤが通るはずだった場所に剣が振り下ろされる。


 「ちっ外したか」

 「何やってんだよ!だっせぇなだから俺がやるっつったろ!」

 「前回はお前だったんだから順番だろうがよ!」


 「まあ、いいや。入って来いよガイヤ! 目的は分かってんだろ?」


 そう言いながら小部屋の奥のほうに少し移動する二人組み

 一人は剣と部金属系の装備、

 もう一人は槍と部金属系の装備の戦士風二人だ。


 警戒しながら小部屋に入るとさらに二人

 一人は【教国】風のローブに杖持ち、

 もう一人はどこのとは分からないがフード付マントと服装備、短杖持ちの術士二人だ。


 「ちっ情報と違うじゃないか、クエストの時はNPCと二人で活動してるって話だったろうが」

 「まあ、落ち着けって、見たところ『皮殻甲』装備みたいだし探索系だろ? 奇襲はかわせても戦力外だっての」

 「だから、その奇襲に失敗したからムカついてんだろ!」


 なんだか戦士風が言い合ってるうちにこっちもガイヤに事情を聞いておくことにする。


 「で? 知り合い? 目的って?」


 「間違いなくPKだね。知り合いじゃないが、向こうは知ってんだろうね。アタシもこれで結構有名人だからね」


 「PKって全然割に合わないって聞いたけど、何であえて強プレイヤー狙うのさ? 売名行為?」


 「いや、あるサイトで有志を募って強プレイヤーに賞金かけてんのさ、戦闘スタイル研究だったりスキル構成を見るためだったり」


 「ガイヤは闘技場で戦ってるんだから意味ないじゃん?」


 「逆に言えば一番構成が割れてるから与し易しと思う馬鹿が出るんだよ。後一番の目的はPKをゲームとして楽しむ為なんだよそのサイトの目的は」


 「ああ、ゲームのシステム的にはおいしくないけど、プレイヤーで盛り上げる為にそういうサイトを作ったと」


 「そういうことだね、何せフルダイブVRなんて物自体が出て来て間もないし、ここの運営もゲーム内での一年に一回のイベントがやっとだろ? 多分その他の検証だの臨床実験だのそっちのが優先だろうし、自然とプレイヤー間での娯楽ってのが発生するのさ」


 「コレだけやたらと広いフィールドがあって、任務をこなせばいろんなストーリーがあって、いろんな魔物がいるのに何が足らないと?」


 「何でもかんでも新しい刺激に飛びつく連中ってのはいるもんさ」


 「でも、どうやってPK成功させたか証明するのさ?」


 「そのサイトに戦闘動画をアップするのさ、それが賞金を受け取る絶対条件、どうせ聞かれると思うから先言っとくけど、静止画と動画を撮影できる撮影アイテムが存在するからね」


 「ところでPKって……」


 もう少し聞きたいことがあったが、無粋な連中はどこまでも空気が読めない。


 「おい! お前ら何勝手に話し込んでんだ! この人数に囲まれてんだぞ? もっとブルって命乞いでもしろや!」

 「まあ、そういう……」


 「死んだところでホームポイントに戻ってちょっとお金落とすだけだろ、何びびんのさ?(まあ、自分は旅の途中で結構な金額持ち歩いてるわけだけども、最悪全部落としちゃっても氷結酒売った金が入るから問題ないか)」


 さっきの仕返しに話を途中で遮ってやる


 「こいつ一丁前に人の話遮りやがる! 見たことも無いプレイヤーのくせして、ガイヤといるから気が大きくなってんのか? NPC連れて行くなら見逃してやろうと思ったが一緒にぶっ殺さなきゃダメか? こりゃあ」


 なんか悪役ロールのつもりなんだろうが間抜けだな?はっきり言ってさっきから動きが雑すぎる。術士と変わんないぞコレ、だらだらと動きやがって。まあいいか、弱くても何らかの勝算があってPKしようってんだから。


 「ふーん逃がしてくれるの? じゃあ、立ち去ろうかね」


 「おいおい、こんな雑魚共にびびって……る訳ないか。別にPKを返り討ちにする分にはペナルティはないんだよ?」


 「じゃあ、どのタイミングから返り討ちと判定されるのさ?」


 「まあ、攻撃を受けた時点だね?」


 「じゃあ、さっき避けたのは?」


 「すでに返り討ちの判定になってるね。ちなみにパーティだからあんたも問題ないよ」


 「そ?じゃあ、マ・ソーニ、行こうか。この辺の魔物は自分よりマ・ソーニの方が得意だろうけど」


 そう言いながらPK達の間をゆっくり通り抜けていこうとすると素直にマ・ソーニはついてくる。多分プレイヤー同士の争いには関わらないようにする仕様なんだろう。


 すると戦士風たちは何やらガイヤに話しかけ始める。まあ、自分のような無名プレイヤーを警戒してもしょうがないってことなんだろうし、何より獲物はガイヤなんだろう。


 「おいおい、いくらなんでも仲間見捨てていかないだろう普通、多少金落とす程度でびびってんのか?それとも死に戻りが嫌だってか?いずれにしても外道だな。勝てないから逃げるって、心が弱いって言うか精神力がたらねぇよリアルの意味でな」


 短杖の術士が何か立派なことをほざいてくる。人数集めてなぶり殺しにしようって奴が何の精神力なんだか


 「どうでもいいけどよ!さっさと去ねや!いつまでも始められないだろうが!雑魚がちんたら人の足引っ張ってんじゃねえよ。とろくせぇな」


 【教国】風の術士も大分ガラが悪いな。むしろ自分がいる所為で戦闘が始められないとかびびり過ぎだろ4人で囲んでおいて、

 嗚呼びびりだから人に攻撃的な言葉を吐くのか、納得。

 でも、それって大概後で痛い目に合うよね。

 それともあくまでNPCが邪魔ってだけかね?NPC攻撃するのはペナルティも大きいみたいだし、だとすれば自分は眼中になしか、それはそれで悪くない。


 術士二人の間を抜けて少し歩くと二人からの視線が切れる。

 多分ガイヤとの戦闘に気持ちをスイッチしたんだろう。


 無言でマ・ソーニの背中を叩くと、分かったとでも言うようにその場からそのまま歩いて離れていく


 自分は鞄からさっき貰った火石を出して左手に持ち、静かに腰のショートソードを引き抜く。

 

 静かに忍び寄り短杖の方が、馬鹿みたいに口を開け何か術を使おうとした瞬間


 左手に持った火石を食わせてそのまま口を塞ぎ、背中から心臓を貫くように剣を突き刺す。

 硬直した所で後ろに引きずり倒す、倒れたところで首を足で押さえつけながら鞄から火酒を出す。


 ようやっと硬直が解けたようだが、すでに熱くなっている火石を口から出すのに必死だ。

 何とか顔を横に向けてコロンと口から火石が出るが、そこに火酒をぶちまけると、引火し上半身が燃え始める、自分までを巻き添えを食らっても困るので離れると


 「熱い! 熱い! 熱いぃぃ!」と叫びながら転がり始める。


 ゲームなのである程度感覚は抑制されてるはずなのに随分とオーバーなリアクションだ。


 そして、ローブの術士はあっけに取られて棒立ちになっている。

 そんな反応でPKなんぞ良くやってきたなって感じだ。


 「ぼけっとしてるけど攻撃するよ?」


 と言って、喉めがけて突きを入れる。

 一応反応して杖を立てて防御しようとしたようだが、全然防御になってない。遅すぎるし進路も塞げてない、ただ杖を構えただけ

 いや、ちゃんと構えれば、それだけでも邪魔にはなるから

 つまりただ杖を持ってるだけといったほうが正しいか。


 まずは喉に一発。硬直する。


 「そんな遅くて大丈夫なの?硬直解けるまで待ってあげるから今度はちゃんと防御しようね?」


 そう言って、転がってる方に向かい剣を突き立て、


氷剣術 凍牙


 びくっと一震えする短杖の術士


 「熱い!冷たい!熱い!冷たい!熱い!冷たい!ひぃぃぃぃ」


 「なんだ熱い熱い言ってるから冷やしてやってるのにお礼も出来ないの?ちょっと常識が足りないんじゃない?そう言えば、どこぞの社長が言ってたけど、暑いからって仕事中に熱中症になったりのぼせて鼻血が出たり、血栓が溜まって脳梗塞になったりするのは全部精神力が足りないかららしいよ?

 まあ、自分は社長じゃないから、冷やしてあげてるわけだけども、逆に寒いからって金属に触れなかったり、手が縮こまって怪我したりするのも精神力が足りない所為らしいね。精神力高い君ならちょっと暑かったり寒かったりするくらい問題ないんじゃない? はははははははははは」


 などと話しかけているとピクリとも動かなくなったのでとりあえず転がしておく。


 「さてと、お待たせ、仲間が死ぬまで待っててくれるなんて君は随分と正々堂々とした人なんだね、後ろから攻撃するなり逃げるなり、向こうの二人に混ざるなり出来たはずだけど?」


 「ひっひぇ、勘弁してくれ」


 「ああ、断るよ。とりあえずまた突くから避けるなりブロックするなりしてね」

 

 そう言って、また喉を突くもあっさりと突き刺さり硬直する。

 そして硬直が解けるまで待つと


 がむしゃらに杖を振るうので、ブロックするとまた硬直する。


 硬直が解けると両手で持った杖をまっすぐ振り下ろしてくるので斜めに相手の間合いに入り込むようにしてかわす。

 特に次につながる攻撃も無いようなので、とりあえず近い方の相手の右手を切る。

 切った反動で返すように今度は首を切る。ここで出血の状態異常が発生したようだ。


 ようやっと相手がこっちに正対したが、左手だけで杖を持っている所為かどこもかしこもがら空きだ。

 目の辺りを削ぐように撫で斬りにする。


 「ああ、あわあわ、ま、待って」


 「そんなに判断も遅い、動きも遅いで、今まで何やってたの? 誰も時間も待っちゃくれないよ? カタツムリの方がいくらか俊敏なんじゃない?」


 どうやら盲目が発生したのか頭を右に振り左に振りしながら、多分かなり少ないであろう視界で何とか相手を見つけようとしているのだろう。


 相手の足元にしゃがみこむようにして足を切りつけ、即座に今度は相手の横に回りわき腹に剣をつきたて、後ろに回っては後頭部に剣を突き立てる。


 そうやってなぶっている内に糸が切れたように崩れ落ちる。


 ガイヤの方を見るととっくに戦士風二人を倒してこちらの戦闘を見ていたようだ。かなり微妙な表情をしている。


 とりあえず、転がってる術士二人に手を当てると光の粒子になって消えて金を落としたので拾っておく。


 「まあ、そいつらはあんたが倒した分だからあんたが持ってきな」


 とガイヤが言うので、貰って行くことにする。


 そして、小部屋の壁に寄り剣を突き立てる。


 すると明らかに軽装のプレイヤーが現れる。


 「ふーん、どこかに撮影してる奴がいるんだろうと思ったけど、そこにいたんだねぇ」


 「戦闘中に殺気が飛んできてたからね。

 隠れるなら隠れるで殺気くらい消しなよ。それで自分だけやり過ごそうなって、そううまく行くわけ無いじゃない?」


 「勘弁してくれ……」


 「ん?ああ、嫌だけど」


 そう言って、抜いた剣で切りつける。

 2回も切ったあたりで硬直が解け逃げ出そうとするが、軽装のくせに動き出しが遅いので、後ろから足首を切るとものの見事にうつ伏せにすっ転ぶ


 「とりあえず撮った映像ってのよこしなよ」


 すぐに倒れながらもこちらに向き直った相手が黒い小箱のようなアイテムを差し出してくる。

 それを受け取ってガイヤに渡すと

 一つうなずくので


 軽装のPKの心臓に剣を突き込み


氷剣術 紅氷華


 全身が完全に凍りつき剣を引き抜くと崩れ落ちるようにして、赤い氷片を地面に巻き散らせる。

 そしてゆっくりと光の粒子へと変わっていく。


 「あんたねぇ、アタシはコレで間違いないよって意味で、うなずいたのに、何の躊躇も無く死亡させるとか、えげつなさ過ぎるよ!」


 「なんか、もう、イライラしてやった。後悔はしてない」


 ため息をつくガイヤ

 

 「街に戻ったら、何か冷たいものでも食べようか?」と聞くと


 「ん、そうする」


 いつの間にかマ・ソーニが戻ってきていたので、三人で坑道を抜ける。


 街には蜂蜜と何かの果物が売っていたので、カキ氷にする。

 まさか、カキ氷機やミキサーみたいな物がゲーム内に有るとは思わなかった。

 いずれも手動だが、結構お高い業者用らしい。

 いくらかのお金と引き換えに貸してもらい、ゲーム内でスイーツなひと時を過ごすのだった。


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[気になる点] 〉がむしゃらに杖を振るうので、ブロックするとまた硬直する。 とありますが、硬直するのは首を突くからではないのですか? それとも攻撃をブロックしても硬直が発生しますか? 前の文脈からは、…
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