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95.採石場 赤い石の坑道

 ■ 石食蜥蜴(キャイル・フッカー) ■


 石の産出する坑道に現れるトカゲの魔物。

 硬い甲殻に覆われているが、腹側だけは防御が薄い。

 しかし、四足歩行、しかも地面すれすれの為打撃武器等硬い甲殻に有効な攻撃手段を用意しておくことをお勧めする。


 産出する石を食べるためその坑道で採れる石と同じ精霊の性質に寄る。

 石を食べるので、おしなべて甲殻は硬い。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 


 時折、マ・ソーニがそこいらの壁を掘りながら坑道を進み続ける。


 坑道と言っても数人が横に並んで歩ける程度には広げてあり、道も上り下り右折左折こそあれ、人が歩けるように整備してある。


 「あ、あ、あ、暑いよう、暑い」


 「そうだね、暑いね」


 「ん、暑い」


 なんか、ガイヤがふらふらと歩きながらぼやいている。

 まあ、確かに暑いのは暑いが、仕方が無かろう。

 何でも火精の宿る赤い石が採れる坑道に入ったのだから。

 

 先の分岐から欲しい石の種類に分かれているらしい。


 火精の赤い石の坑道で暑いなら、氷精の坑道は寒いのだろうか?

 まあ、氷精の石の坑道があるかは知らないけども


 そんな事を考えながらずんずんと奥に進んでいくとガイヤから謎のクレームが飛んでくる。


 「何で二人ともそんなに余裕なのさ! おかしいだろ! コレだけ暑いのにサクサク進んで!」


 「別におかしくとも何ともないし、自分も暑いのは暑いし。でも進まなきゃ任務進まないんだろ?」


 「ん、ドワーフは暑いのに強い。だから地下で鍛冶してるし」


 「そういや、自分のこの服装備、耐寒耐暑機能付だったわ」


 「はぁぁぁぁん? ずーるーいー! ずるいだろ! それは! アタシだけ猛暑でどんどん削られてるのに二人だけ余裕とかずるいだろ!」


 「いや、ガイヤの任務じゃないか。ずるいとか言われても、な?」


 「そう、ガイヤの仕事なんだから我慢する」


 「やーだー! やーだー! もう歩けない! 暑すぎる!」


 「はいはい、分かったよ。とりあえず次のセーフゾーンで休憩しよう」


 戦闘も採掘もマ・ソーニ任せでついて歩いているだけなのに我侭言い始めるガイヤに困ったものだと思いながら、次のセーフゾーンを探す。

 坑道内にもなぜか当たり前のようにセーフゾーンはあり、焚き火の跡があるから簡単に見つかるようになっている。


 セーフゾーンを見つけるととりあえず座り込み、休憩をする。

 ガイヤだけは妙にオーバーなリアクションで倒れこむように屈み込み動かない。


 このまま、空気が悪くなってもしょうがないので、取って置きを出すとしようか。


 「とりあえずこれ飲んで食べるといい」


 そう言って出したのは氷結酒とこの前ポッターのところで買った陶器の壷につけたピクルスだ。


 まあ、ピクルスと言っても大根とにんじんを適当なサイズで縦切りして

 お酢、水、砂糖、塩、ハーブ、にんにく

 を適当に壷にぶっこんでアイテムバッグに入れてたまに取り出して置いておくだけの代物だが。


 ガイヤに渡すと一口、口に入れて

 ぶっっっと噴出す


 「なんだいこれは!」


 「氷結酒とピクルスだね」


 「いや、酒って!これから戦闘しようってのに酒って!」


 「でも、耐暑効果でてるだろ?」


 「ああ、本当だ……って酩酊のデバフもついてるじゃないか!」


 「まあ、それはやむをえないんじゃないの? むしろほろ酔いなら多少感覚が鈍くなって精密な動きが出来なくなるだけで、士気なんかは上がりやすくなるし、悪いことばかりじゃない」


 「くっ仕方が無い。背に腹は代えられないか・・・・」


 と飲み始めるガイヤ


 そして、無言でカップを差し出してくるマ・ソーニ

 

 無言で水を入れてやる。氷も添えてだ。

 何せ【帝国】なら売るほど氷が手に入る。アイテムバッグにもそれなりの量を詰め込んである。

 ただの氷なら嵩張る時は捨ててもなんの痛痒も感じないし。


 「むご……い」


 「いや、しょうがないだろ、これから石掘るのに感覚鈍られても困るし」

 

 「でも、氷結酒なんてめったにお目にかかれない」


 「んじゃ、任務終わるまで飲まないって約束するなら、瓶で渡すよ」


 「約束する!! なんなら私の取って置きと交換する!」


 そう言うので、アイテムバッグから氷結酒を出すとあっという間にひったくられて

 別の酒を渡される。


 「それは、ドワーフ謹製の火酒。普通に燃えるから武器としても使える。普通は飲むけど。

 銘品じゃない一般流通品だし、コレもつけるさっき掘って拾った火石」


 「いや、別に自分の氷結酒も銘品じゃないけども」


 「氷結酒の時点で、幻の名品だから! 幻の地酒で銘も無いけど流通量も全然ない」


 「ところでこの石めっちゃ熱いんだけどどうしたらいいのさ?」


 手の上でもうすぐ燃えますとばかりにどんどん熱くなっていく石、なんぞこれ?


 「はやくアイテムバッグにしまったほうがいい、特殊な容器に入れるかニューターの鞄に入れないと空気と反応してどんどん熱くなっていくから、終いには燃える」


 そう言うので、すぐにバッグにしまうことにする。アイテムバッグが燃えることは無いようだ。


 妙にニヤニヤしながら氷結酒を自前の鞄にしまいこむマ・ソーニ。

 まあ、ドワーフなら酒好きで当たり前か、喜んでくれるならそれでいいさ。


 一休みして

 「ガイヤ大丈夫そうかね?」と聞くと


 「ああ、さっきまでとは大違いさね、コレならいける」


 とのことなので再度出発。


 ほとんど一本道で、時折採掘用の小部屋がある程度のあまり代わり映えしない道をとりあえず進んでいると

 また一段暑さの増した小部屋にたどり着く。


 「そろそろ、魔物の種類が変わる頃だから注意して」


 とマ・ソーニから注意があったと思うとすぐに部屋の奥から、わらわら、のそのそと大きいトカゲ、コモドオオトカゲか? と思うほどのサイズ感と筋骨隆々とした姿。

 生では見たことが無いが、いずれ見てみたい動物に会えた様な感動に浸っていると


 「外殻は硬いからお腹を攻撃して!」


 とマ・ソーニからまた注意がある。


 だが四足の超低重心なのにどうやって腹を攻撃しろと言うんだか?

 すると


石槌術 筍石


 地面に叩きつけた大槌から放射状に次々と生える石の棘、

 まあ、棘と言うにはごつすぎるが、自分の半身程度の長さの尖った石が次々と生えていく


 術の名前はともかく自分の感想は


 「なんか魔法みたい」


 しか出てこなかった。

 

 自分も氷精術を使っていたころはアイスボルト! 何て言って氷の杭みたいなのを飛ばしていたが、一本ポーンと飛んで、狙った相手に当たるだけだった。


 そんな事を考えてる間に一体を倒し、もう一体をひっくり返す。

 ひっくり返ったオオトカゲを石の棘が消えるタイミングを見計らって、叩き潰す。


 「おお、やるねぇ! じゃあ、アタシも行くよ!」


 とさっきまで自分と同じように戦闘でも空気だったはずのガイヤまでやる気だ。

 すると


火拳術 噴火


 燃える拳を地面に叩きつけたかと思うと近寄って来るオオトカゲの足元が赤く光り、一瞬の間をおいて火が噴出す。そして浮かせた相手に


武技 崩拳


 一歩踏み込み腰の回転で打つような中段突きを見舞うと、ひっくり返って腹を見せたまま動かなくなるオオトカゲ


 思わず出た感想は


 「何か格ゲーみたい」


 「とぼけたこと言ってないであんたもやんな!」


 いや、さっきまで自分と同じ空気だったくせによく言うよ。


 「いや、自分そういう技持ってないし」


 「なんだい精霊術持ってないのかい?」


 「氷剣術なら持ってるけど、そういう技は無いな」


 「じゃあ、とりあえず剣を地面に刺して術発動してみな!」


 ガイヤがそういうので言われたとおり剣を地面に突き刺し


氷剣術 凍牙


 精神力を剣に思い切りこめていくと


 自分を中心に地面が白くなっていく。


 「地面が白くなる術だね!」

 

 「後ちょっと涼しい」


 「なるほど、自分が地面に術を使うと地面が白くなって涼しくなるのか、暑い地域のキャンプに最適だね!」


 「んな訳あるかい!」


 「分かってるって、ただつっこみって難しいだろ。被せてぼけるか、流すかしか自分には技能が無いのさ」


 「大丈夫だから! とりあえずつっ込んどきなよ。多少外してもプロじゃないんだから! それもコミュニケーションだよ!」


 「ん、見たところ白い範囲に入ると移動速度が落ちるみたい。それに動きも全体的にちょっとだけ遅くなってる?」


 「そうだねぇ、あんたの術がどういうもんか知らないけど、デバフ系が乗りやすいのかもね」


 剣を引き抜いても1分位は白いままだった。

 それが効果時間なのだろう。


 「自分の術は剣が冷たくなる術だよ」


 「ふーん、なるほどねぇ」


 つっ込まれないな?


 「つまり、氷精術でも冷性を抽出したタイプの術」


 「冷性?」


 「ああ、例えばアタシが使ってる火でも熱性もあれば、火自体を生み出す場合もあるわけだ」


 「じゃあ、ガイヤは手が燃えてるから、火を生み出してるわけか」


 「いや、両方だね。あたしの情報は結構掲示板でもかかれてるし今更隠すことでもないから、

 ちょっとだけ教えるとサブジョブで【巫士】を取って火精関連を強化してるのさ。

 あんたが【巫士】取らずに両方なんて取ろうとしたら中途半端な性能になるだけだから、一つの性質に絞ったのは正解だよ」


 別に絞ったんじゃなくて教官からコレしか教わってないだけなんだけど。


 「ちなみに石精は硬性が有名。これは防御力とか丈夫さを補助してくれる」


 「むしろ土とか地じゃなくて、石なのね」


 「石は土の仲間、氷も水の仲間」


 なるほどね近似の精霊みたいなのもあるわけだ。

 そうなると精霊の種類ってかなり沢山あるんじゃ。


 「多分、精霊っていっぱいいると思ってるんだろうね?

 いるよ。ちゃんと祀られてる精霊から隠されたような精霊まで色々とね。

 私は【巫士】取ってるし、今更火以外は取得できないからね、興味があるなら探してみるのもいいんじゃないかい?」


 「まあ、道々縁があったら」


 と、まあ精霊について教えてもらいながらも、着々とオオトカゲを倒していく、マ・ソーニとガイヤ。

 移動速度が遅い方が倒しやすいとのことで、自分も地面が白くなる術を発動する。


 小部屋にわらわらと現れたオオトカゲも、この面子ならあっさり倒しきってしまった。


 だが、お目当ての採掘場はもう少し先らしい、とりあえずついて行く事にする。

夏ホラー2018を応援しています。

今年の正月からの利用なので、イベントにわくわくしてます。

びびりですが。

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん やっぱり何でこのゲームのプレイヤーは自分本意で我が儘なヤツばかりなんだろう… 久々にはじめから読み返してるけど、今更ながら結構気になる…
[一言] もしかしてマ・ソーニってプレイヤーじゃなくてNPC?
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