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93.結局石を掘りに行く

 ■ チャロアイト ■

 現実にも存在する石の名前。

 複数の鉱物がマーブル状に混ざり合うことで出来る自然の作り出す芸術のような石。

 ロシア語のチャロ(魅惑)に由来される名前と言われているが、その名の通り魅惑の石である。

 ゲーム中では癒しの石であり、肝機能上昇も見込めるとされる。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 石工長の家から出ると入れ違いに人が訪ねてくる所だった。


 危うくぶつかりそうになるもののするっと避けて家に滑り込んでいく様は完全に『出来る』人の動きだ。

 それもプレイヤーだろう。ステータスの高さを感じる。

 

 赤毛で荒っぽい雰囲気を感じさせるお姉さん。何かどこかで見たことある気がするが、思い出せない。


 まあ、いいかと手に入れたばかりの紫の石を天井に向けて眺める。光の透け具合を眺めて楽しむ。

 今度は逆に下に向けて、光の反射具合を楽しむ。

 光が直接当たらないようにして浮き出た模様を楽しむ。


 つい『グフフ』とどこぞの悪役のような笑いが出てしまうが、あくまで正規の手段で対価と引き換えに手に入れたものだ。自分は悪いことは一つもしていない。


 大事に両手に包むようにして後は宿に帰ってからゆっくり楽しもうかと思うと

 

 目の前に子供がいた。女の子だ。じっとこちらの目を見ながら手を差し出し、


 「私にも見せて?」


 と言ってくる。

 まあ、見せる位は構わない。自分の身長と対比すると140cm位の女の子だ。

 別に触られて不快な思いをする相手でもない。


 そっと石を渡すと自分と同じように光にすかしたり、光に当てたり、直接光が当たらないようにしながらひとしきり眺めて、石の感想を言ってくる。


 「『チャロアイト』人気のある石だけど。これは別格。黒すぎず白すぎず、紫の空間に銀の川が混ざり合い混沌とした宇宙の根源のようで、これから美しい物が誕生する寸前の光景を感じさせる。コレだけの質のものはそうそう手に入らない。石との出会いは縁だから本当に大切にして欲しい」


 「いや、言われるまでも無く大切にするつもりだけど。ルースで手に入れたからどうやって身につけるか考え中だけども」


 「この石は加工せずにこのまま使ったほうが良い。傷つきやすい石だから変に加工しないで周りを固定するようにアクセサリーにしたほうが良い。

 このサイズだとネックレスにして吊るすか、バングルにして二の腕につけるか」


 「そういうもんですか?」


 「そういう物! とにかくぶつけない場所に装備した方が良い。つけないともったいないけど、ぶつけるような場所につけちゃ駄目」


 ぶつけない場所と言われると意外と難しい。剣帯とかは結構ぶつけるし、胸はこの前、鹿からダメージ食らったばかりだし、手首も当たる気がするし、指輪やアンクレットにするにはちょっとサイズがあれだしな。

 そうなると消去法でバングルにして二の腕がいいか。


 しかしここまで話していて思うが、多分この子、子供じゃないな。若いドワーフだろう。


 石を返してもらい、バングルにすることを心にほぼ決めたところで、後ろから声がかかる。


 「うちの連れに何の用だい?!」


 石工長の家から立ち去るつもりで、うっかり話と石に夢中で、出入り口の前を占拠してしまっていた。

 そして、荒っぽいお姉さんに荒っぽく声をかけられてしまった。


 「いや、何の用と言うか自分がむしろ声をかけられていたんですけども」

 

 「あぁぁぁん?」


 めっちゃ下からねめ上げるように眼くれてくる。荒っぽいを通り越してガラが悪い。


 「止めた方が良い。この人は多分石と縁のある人だから、むしろ協力してもらった方が良い」


 「ふーんまあ、あんたがそう言うなら止めるけどさ。しかし怪しい男だね? 冑で顔隠してるし、試合じゃ私も人のことは言えないけど日頃からそんな格好ってのは感心しないよ」


 確かに、全然気にしてなかったけど、新しい冑手に入れてからずっとつけっぱなしだ。広いバイザーで視界も確保されてるし、あまり気にしてなかった。

 現実だったら暑くて気がつくのかもしれないが、ゲーム内ではなんとも無い。むしろ装備したまま歩いてる人も少なくないだろう。なんでそんな事で責められるのか、よくよく考えたらおかしい気もするが、街中だし、確かに怪しい気もしてくるし、でも顔がなぜか知られてるみたいだし隠さなきゃいけないし、色々な考えが頭をぐるぐると回り始めたところで、

 また話しかけられる。


 「ところであんた暇ならチョット一緒に石を掘りに行かないかい?」


 「なんで急にそういう話になるのさ?」


 「そりゃあうちの連れが、あんたにゃ石と縁があるって言ってるからさ」


 単純明快なようで、全然訳がわからない。


 「一応これでもあたしはこのゲーム内じゃそこそこ名前も売れてるし、チョット位戦闘指南の一つもしてやってもいいよ」


 「遠慮しておきます」


 自分には教官と言う師匠がいるので、別に指南とか必要ないのでスパッと断りを入れることにした。


 「はっはっは!遠慮なんてしなくていいんだぞ!コレで結構面倒見は良い方なんだ!私はガイヤこっちはマ・ソーニ」


 「一応、隊長って呼ばれてますけど」


 「あぁぁぁん?」


 めっちゃねめ上げるように見てくるんですけど、なにが気に障ったんだか


 「あんたが噂のぼっち将軍かい?」


 「いや、しがない【特務上級士官】です。将軍とかじゃないんで、まじで」


 「その階級が! もう【帝国】の有名プレイヤーだって証明しているだろうが! 私の顔を忘れたとは言わせないよ!」


 「いや、覚えてる気がするんですけど、どこであったかは覚えてません」


 「運営イベントで会ったろうが! 集団戦の時だよ!」


 嗚呼、完全に思い出した。本選トーナメントなのに雑魚ロールやってた変なチームだ。


 「まあ、うちは闘技場メインのクランだし、優勝は難しいと思ってたけどね、それでも集団戦もそれなりにやれるつもりだったのに、なんだい!いきなり動けなくしてきて」


 「話は石掘りながらでも出来るから一回落ち着いて」


 なんか、めっちゃヒートアップしてきたところに、思いっきりドワーフの子が水を差す。


 「それもそうだね」


 そして一気にクールダウンするガイヤ。なんか感情の起伏が激しい人だなぁ。


 「まっ取り合えずだ。一緒に石掘りながら色々と話そう。聞きたいことがあったら何でも聞いていいよ。話したくないことがあれば、そう言えば深く追求もしないしね」


 「一緒に石を掘りに行こう?」


 「そうだ、一緒に石を掘りに行こう。あんたも石とか嫌いじゃないんだろ?」


 まあ、誘われて断る理由も無いし、行っても良いんだけど、一つだけ先に聞いておこう。


 「逆にそっちは何で、石が必要なのさ? ただの石好きかい?」


 「いや、私のスポンサーからの依頼さ。気になるなら道々、話そうか」


 スポンサー? 正直気になるし、石も欲しいし、ついていくしかないようだ。この状況は

久々に投稿です。

申し訳ないですが、まだ当分マイペースに投稿します。

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