92.宝石回
■ 宝石② ■
宝石の名前やデザインは現実に順ずるものとオリジナルのものと存在する。
色で属性は分けられるが、石の性質は様々である。
効果は現実に順ずる物では無いのでご注意ください
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道々、町に寄っては石のことを聞く、本当に楽しみだ。
昔から知り合いには言えない自分だけの趣味。それが、綺麗な石集めだ。
初めて石に心が高鳴ったのは小学生の時に科学博物館のお土産屋さんで買ってもらった水晶だったろうか。
付属の緑の巾着袋に入れて、いつでも持ち歩いたもんだ。
裏に住所と電話番号と名前の書いたお守りと一緒に首から提げていたのを未だに覚えている。
いい歳になって、自由に出来るお金を持つ様になってからはこつこつと色々な種類の石を買ってしまうようになって、日々眺めたり話しかけたりしている。
ちなみに今一番気に入っているのは黒いラブラドライトで、青いラブラドレッセンスが自分を魅了する。
ただ、その黒いラブラドは球になっているので、光る部分は限られている。その微妙な角度でしか光らない奥ゆかしさが自分はたまらないのだが。単純に虹色に光る様を眺めたい時は平面磨きやルースの方が派手できれいなものが多い。ルースも色違いでいくつか飾っている。
ピンク、パープル、イエロー、グリーン、そしてブルー
一見地味なグレーの石が不思議な虹色の光を生み出す神秘に白飯三杯いけてしまう。
そうして、この山の街に着く『ヤターナー』だ。
ちゃんと別の町で名前は聞いておいたのだ。なんか、喜ばしげな名前だ。幸先が良い。
しかし石の街の割には建物はレンガだ。
もっとヨーロッパの古い建築のような石造りの町並みをイメージしていたのだが、予想が外れてしまった。
まあ、ヨーロッパに行ったことなぞ無いのだが、サグラダファミリアとかパンテオンとかそういうイメージが勝手に先行していた。
ただ、家の横やら作業場のような広場には石の彫刻がある。
そして、綺麗に同じ大きさに切り並べられた石材はどう見ても床材にしか見えないのだが、街中は土の道だ。
ちなみに街道の線路に敷かれている石は誰もがイメージするだろうバラストだった。
まあ、兎にも角にも石工長に会いに行こう。そして、宝石を売ってもらうんだ。
氷水晶は武器にしてしまったが、出来れば装飾品が欲しいな。
前にクラーヴンから武器に宝石を混ぜるって話を聞いた時は単純にゲームの中のアイテムだろうとしか思っていなかったが、そこらで石ころを拾うようになってからか、はたまた氷水晶を見てからか、むくむくとゲーム内でも石を集めたい衝動に駆られる様になってしまった。
現実ではそうそう手に入らないあんな石~♪ ファンタジーならではのこんな石~♪
鼻歌交じりに歩きながら、道々人に石工長の居場所を尋ねつつ
たどり着いたのは綺麗な青い砕石を固めた床に白灰色の石壁の家だ。他のレンガの家とはちょっと趣が違う。流石は石の街の代表の家、一味違う。
インターホンなんてものは無いので、普通に玄関をノックするも誰も出てこない。
なので『お邪魔します』と言って扉を開ける。
まあ、このゲームの場合それで怒られる事は無い。
むしろ入っていかないと話が始まらないのだから仕方が無い。
流石に勝手に家捜しするようなことは無いが、人がいない時はちゃんと鍵がかかっているし、人がいればちゃんと出てくるので、家捜しなんて出来ないけどな。
「ん? 何か用か?」
如何にも無愛想な職人風ドワーフだ。
しかし、もう大分慣れた。
1.酒を出す!
2.用件をはっきり言う
コレで大体【鉱国】の場合は大丈夫だそんな気がする。
まずは氷結酒を取り出して、相手に差し出す。
そして『宝石を少し譲っていただきたいのですが、見せてもらうことは出来ますか?』
「ふん!こんないい酒を出されれば嫌とは言えないな。ついて来い」
と言って、歩き出すのでついていくことにする。
本当にもう【鉱国】はこのパターンで何とでもなりそうだ。分かりやすくて助かる。
「見たところ要人用の許可証を持っているから、通したけどな。通常は店で買うもんだからな」
本当に申し訳ない。もう石工長に会って宝石を買うことしか考えてませんでした。
「で?何が欲しい?」
通された先には広さこそ大したこと無いが、几帳面に陳列された石の数々、光源は何かよく分からないが、暖色系の明かりに包まれて光り輝く石達に心拍数が上がり続けること留まるところを知らない。
「すみません、何が欲しいかは考えてこなかったのですが、コレだけの石の数々を見れただけでも嬉しくて鼻血がでそうです」
「まあ、好きな奴が見たらそうなるだろうな。俺の若い頃からのコレクションだが、本当に欲してる奴には譲ることにしている。
逆に代々の石工長に伝わるようなものは別のところに保管してあるし、渡すことは出来ないがそこは了承してくれ」
「貴石類はそうそう手に入らないものだとは聞いてますので、気にしないでください。むしろここの石に出会えただけで、十分に感謝しています」
ゲームの中の作られた光景だなんてことは忘れて見入ってしまう。
現実より現実のようで夢としか思えない光景。
どんなに見比べても同じ石は無いようなのに理想の上を行く美しさが自分を魅了してやまない。
「まあ、端から説明をして色々と石について語り合いたいところだが、俺も今や立場ってものがある。手短に決めてくれ、相場通りで売ろう。お主は相当な石好きと見たしどれでも大事にしてくれるだろう」
ま・じ・か~コレだけの宝の山から手短に決めてくれってそんな後生な。
「なんなら、俺が決めてやろう。まずは置石がいいか身につける石がいいか?」
うおっいきなり質問が始まってしまった。
「置くところが無いので身につけられるもので」
「じゃあ、精霊の力を使えるものが良いか、補助的なものが良いか」
「精霊は、氷精の術を使ってますけど、剣に腕輪にとあるので、補助系が良いですかね」
「ふむ、俺の見る限りステータスは平均的だし、何かに特化しているようにも見えないな」
「まあ、戦闘スタイルは近接メインですけど、支援術も攻撃術も使いますし、精神力も生命力もスキルで補強して、防御もブロックが基本だから多分耐久もそこそこあるだろうし、近接系の耐性スキルも取ってるし、不意打ち対応もしていますね、装備品も手入れできるし、料理も一応簡単なものなら出来るし、強いて言うなら打撃力と遠距離攻撃手段に乏しいですかね」
「それは、石じゃ補完できないしな。まあ、石斧使えば打撃力は上がるだろうが、使わないんだろ?」
「石斧を使う予定はないですねぇ」
「じゃあ、石臼にするか?粉とか挽くのに良いのがあるぞ」
「いや、簡単なものしか作れないので、粉で買いますわ」
「ふむ、じゃあこれだな」
と言って紫の石の小さなルースを見せてくれる。
紫と言っても、少量の黒から明度の違う紫、それに白がマーブル状になった。美しい色合いの石だ。
「紫は全般に回復力を助ける癒しの石として使われるがな、こいつは産出するとすぐに飛ぶように売れてしまう、この国で一番人気の石だ」
「チャロアイト……?」
「ほう、よく知ってるな。さっきも言った癒しの能力に加えてさらに肝機能上昇も期待できる石だ。つまり、いくらでも飲めるようになる石だな」
「買います!」
見た目の美しさもさることながら、ハッキリした能力まで提示されてしまっては買わぬわけには行くまい。
なによりいずれ現実でも手に入れようと思っていた石だ。
「ふん、そしたら細工や彫金をやっている街まで、持って行って装飾品にでもしてもらうんだな」
と先程の石を差し出してきたので、受け取り、提示された値段を支払う。
手の中で転がしたり、光に当ててみたりと、もう気持ちの高鳴りが抑えきれずに過呼吸になってくる。
「うん、一応俺も忙しいからなそろそろ帰ってくれ」
「申し訳ないです。良い物を買わせていただいて、ありがとうございます」
そう言って、石工長の家を後にする。本当はもっと端から石の名前や由来や、効果なんかを聞いてみたかったが、仕方があるまい。またチャンスがあったら来よう。
なにか、忘れている気がするが、まあいいや。今日はひたすらにこの紫の石を愛でるとしよう。
最近ペースが落ちています申し訳ございません。
色々書いてみたいシーンがあるのですが、どこに入れていくか迷う次第です。