9.【北砦】にて試験2終了
■ 雪百足 ■
寒冷地に生息する魔物である
通常寒冷地における百足虫は小型で土中に住まうことが多い
しかし 魔素の影響により巨大化し動物や人間を捕食するようになった種類の一つ
その中でも、特に雪中の行動を得意としている
また保護色のように白くなっているため不意打ちを食らうことも多い
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砦に着くと早速教官から、
「全員無事にたどり着けたな。これにて、二つ目の試験は終了とする。今後、諸君はこの【北砦】を中心に任務を行ってもらう。
砦中央一階にコレまでどおりの受付、東棟には食堂と休息所がある。西棟は物資の集積所、南棟は兵士以外のものが泊まれるようになっている。
向こう一ヶ月はこちらに滞在してもらうが【古都】に用があるものは定期的に輸送車が出るのでそれに同行すること。以上!」
「教官!試験の結果は、どうなったのでしょうか?」と、心配性のやつ。
まあ、そりゃそうだ、試験のために来たのにその結果が分からないとくれば、当たり前の質問だ。
自分はすでに試験のことを忘れてたわけだが。
「試験はまだ続いている。ここでの任務達成状況が三つ目の試験と言って良いだろう。仮ではあるがすでに諸君の希望兵科を登録してある。任務に邁進するも良し、本当に自分にあった兵科なのか確認するのも良い。諸君の今後を左右する時間である。有意義に過ごすように」
なるほどね、試験っていうから、何か合格ラインでもあるのかと思いきや、適性テストだったわけね。
農家の次男坊捕まえて結構本格的なことやってるわな。
「他に質問が無いようであれば、解散!」
皆、思い思いに散っていく。
今日のゲーム時間はまだ余裕はあるが、新たに初めてのクエストを受けるほどでは無さそうだし、とりあえずここの兵長と顔合わせして装備品返却しておきますか。
中央棟に向かうとすぐにカウンターがある。中には、五厘刈りのおっさんがいる。
「こんにちは、今日から配属されました。装備品の返却をしたいんですけど」と声をかけると
「おう【熟練兵】の一人か、話は聞いてる。任務完了の報告もな」
「あれ?試験て続いてるんじゃないんですか?」
「いや、ここに到着するまでで、とりあえず一区切りだ。と言うわけで報酬は、どうする?」
「貯金でお願いします。」
「ああ、兵舎預かりだな。分かった。ところで、お前は途中魔物と戦闘したとあるが、ドロップ品の扱いはどうする?自分で商業組合に持って行ってもいいし、ここで報酬と交換しても良い。
自分で持ち込んだほうが相対的に高く引き取ってもらえることが多いが、ここで、報酬と交換なら、一律で損も得も無い。持っていく手間が省けるだけだ」
「じゃあ、報酬と交換で。」
ドロップ品をその場で提出する。
「あいよ、受け取った。この金も預かりでいいんだな?」
「お願いします。装備品も提出しますね。」
と言ってすぐにカウンターに置く。
「結構ダメージがあるな。確かに受け取った。なにか用があれば、また声をかければいい」
さ、て、と、なんか疲れたわ~
その足でそのまま東棟へと向かう。
入ってすぐのところにある食堂で食事を受け取って席につき、空腹度と渇水度を満たしていると、さっきの少年兵が向かいに座ってきた。
「お疲れ様!さっきはすごかったですね一人で魔物に立ち向かって、バッサリ!!」
いや、バッサリでは無いな絶対。なんかゴリゴリって感じだったはずだ。
「やっぱり、接近職の方がかっこいいかなとも思うんですけどね。父の奨めで【狩人】をやっていたことがあって、弓の方が慣れてるんですよね。ちなみにルークって言います。よろしく」
「よろしく、自分は特にコレといった武器のこだわりもないただの【兵士】だよ」
「しかし、よくあの状況で反対側を警戒してましたね。みんな雪鳥蜥蜴に気を取られてたのに、意外と実戦経験豊富だったりするんですかね」
いや、かなり熱に浮かされてたよ。
「戦うのは初めてだったね」
「へ~初めてでもあんなふうに倒せるなんて、すごいですね。ちなみに皆がやたらと興奮してたのは、『士気』のせいじゃ無いかと思うんですよ。教官が引率してたから、戦闘で教官のスキルが反応して、士気が上がった興奮状態に酔ったんじゃ無いかと」
『士気』ってのは初めて聞いたな。
「士気が低いと【恐慌】みたいな精神系の状態異常にかかりやすいし<指揮>のような部隊を率いるスキルを使用できなくなるから、ある程度上に行くと士気上昇系のスキルを取ってることが多いらしいんですよ。
いや~迂闊でした。子供のころから父について回って、少しは魔物と戦った経験もあるので冷静に戦えると思ってたんですけど。思い上がりでしたね。少し興奮しただけであんなに振り回されるとは、まだまだ経験が足りないですよ」
なんか、やたら勝手に説明してくれるな。
「今日は、もうお休みですか?装備品外してるし当たり前か。なんか方々で話を聞いてるとこれからは小隊での行動が増えるみたいだし、今後組むこともあるかもしれないしよろしくお願いします」
「よろしく」
そしてお休みだ。
いや、別に殺すわけじゃないが、なんか本当にもう疲れたわ。
食堂を後にして、休息所でログアウトだ。